失敗学のすすめ (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062747592

感想・レビュー・書評

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  • 失敗学の権威とも呼べる、畑村洋太郎さんの著書。
    人類は失敗から学んできた、何か物事をやるのに成功事例から学んでも似たり寄ったりのものしか出来ない。失敗しながらも創造していくこと。
    2万件の失敗データベースを作ったけど、有効活用されていない話は辛かった。失敗した人が振り返って成長していくものだとしても、組織みんなが失敗を続けるのは効率が悪い。どうすれば失敗を共有し、同じような失敗を防げるか。その答えもあったように思う。

  • 失敗やそこから発生する事故。なかなかその本質は、単純そうで、対応を誤るととんでもないことにつながる難しさをはらんでいる。失敗の起こるメカニズムや、その後どのように対応したらよいのか?についてわかりやすく解説してある。ただ、不祥事が続く会社で、この本をみなが読んでいればいいのだが、残念ながら浸透していないし、実践されていないのが現状ではないか?もう一度この本を読みなおしてはどうか?

  • “失敗から学ぶ”がとても大切なこととして言われるが、そもそもその失敗自体中身が無数にあって、個々人でそのどこを失敗と捉えるかによって方向が違ってくることをまず理解しないとならない。
    本書を活かすならば、自らの悩んでいる失敗についてしっかりと定義付けすることが大切だと思った。

  • 「こうやれば上手くいく」より「こうやればダメになる」を知る(P12)

    共有すべきは成功例ではなく失敗例。

    失敗例を共有することで、人と同じ失敗を避けることができ、時間と労力の浪費を防ぐことができる。

    失敗の痛手をプラスに変える(P16)

    失敗はマイナスの影響があることは事実だが、そこから学び、次に生かす材料にすれば、失敗というマイナスをプラスに変えることができる。

    行動しなければ何も起こらない。失敗を恐れて何もしないのではなく、失敗しても、そこから学び、改善していくことが大切。

    子どもには小さい失敗をさせる(P27)

    子どもが失敗しないよう、大人が「あれもダメ、これもダメ」とダメ出しするのはNG。子どもには、致命的にならない、小さい失敗を経験させる。

    子どもにあえて失敗を経験させることで、子どもが自分で物事を判断する力を養うことができる。大切なのは、子ども自身が体験で学べるようにすること。

    失敗の原因(P60)

    失敗してしまう10の原因。

    1・無知

    →「こうすれば失敗が防げる」と解決策や予防策が分かっているにも関わらず、本人の勉強不足や無知によって起こる失敗。

    2・不注意

    →人為的な不注意によるもの。注意力不足、過労や寝不足等も要注意。

    3・手順の不順守

    →しかるべき手順を守らなかったために起こる失敗。

    4・誤判断

    →状況を正しく理解できなかったために起こるミス。判断ミスによる失敗。

    5・調査と検討の不足

    →判断材料の不足や検討不足によって起こる失敗。

    6・制約条件の変化

    →事前に想定した条件が変化してしまうことによって起こる失敗。

    7・企画不良

    →企画そのものに問題があることによって起こる失敗。

    8・価値観不良

    →自分の価値観が周囲と違うことによって起こる失敗。「俺はこうやって上手くやってきた」など、自分の過去の成功例に頼って失敗してしまうケースもこれ。

    9・組織運営不良

    →物事を実行する組織自体が上手くいっていないために起こる失敗。

    10・未知

    →前例のない新しい体験で、誰もが新しく対応を迫られて失敗してしまうケース。この失敗はとても価値のあるものであり、未知の失敗から学ぶことで、新しい発見がある。

    失敗は過程と結果等を知識として残す(P98)

    失敗したことから教訓を学び、それを未来の生かすため、失敗例は何をしてどんな失敗が起こったのか、知識化させることが大切。

    失敗を1つの知識として、情報共有する。

    人の失敗は責めない(P116)

    失敗を知識化させ、1つの情報を残すために注意したいのは、失敗した人を責めないこと。

    大切なのは責任を追求することではない。今後同じような間違いが起きないようにすること。聞き手は批判的な言動を慎み、失敗が起こった過程、原因等を、冷静にヒアリングすること。

    感想など

    「失敗」というと、ネガティブなもの、できれば避けたいものというマイナスイメージがありますが、人はミスや失敗から学べる生き物。

    何かに挑戦し、そこで思い通りにいかず、失敗してしまったときにこそ、人間力が試される瞬間。失敗から原因を分析、次に生かすことで、失敗がプラスの「恩恵」に変わるのかも。

    起こすべき行動はどんどん起こし、そこから軌道修正、学びつつ前進していきたいものです。

  • 企業、組織が捉える失敗の考え方として、大変興味深かった。東日本大震災の大分前にかかれた本だが、当時の政権の対応や企業不祥事を見ると、まだまだ改善の余地がある。

  • 一番最初に私が勤めた会社は、いわゆる「現場」があったので、失敗に対する意識は結構高かったと思う。ヒヤリハットやハインリッヒの法則も新入社員の時にきちんと教わったし、QC活動も盛んだった。
    ただ確かに、「研修や訓練をしっかりやっているから絶対大丈夫」「QC活動をこれだけ熱心にやっていれば事故を起こすことなどあり得ない」的な雰囲気はあったように思う。また自らの経験と勘だけを過信している「偽ベテラン」も力を持っていた。どんな状況にも対応できるような本物の知識や判断力という点では、正直少し不安なところもあったように思う。
    私がその会社を辞めたのは、本書が出版される前だったので、その後のその会社のリスク管理についてどうなったのかはわからない。ただおそらくは、日本の会社というのは、どこの会社もここに書かれていることは「わかっているし、そういう組織や体制を作りたいけど、なかなかうまくいかなくて」というところなんだろうと思う。一人一人は、失敗から本物の使える知識をきちんと学びたいと思っているし、想定外の状況にも臨機応変に対応できるようになりたいと思っている人の方が多いんだと思う。でも、組織となるととたんに動きが悪くなる。で、既成事実づくりのためだけの研修や会議、訓練になってしまう。なぜなのか。会社だけでなく、学校や政治にも共通するように思える。そして、東日本大震災を経験して、変われたところもあれば、変われていないところもある。「悲劇の〇〇」とか「訓練したから安心安全です」などと、いまだに平気で言ってしまう。国民性とか社会の在り方とか、やっぱりそういうところにまで行きついてしまうのかなあ…。
    なお、個人的には失敗情報の記述の仕方がとても参考になった。個人レベルでも、ダイエットの失敗とか、貯金が目標額に届かなかったとか、そういうこともこの本に書かれている失敗情報の記述方法で分析してみたら面白いかもと思ったので、やってみようと思う。

  • 失敗をオープンにすることで注意喚起となる。失敗を学問と捉えた本。

  • ビジネス書かなと斜に構えて読み始めたが、とても良い本だった。
    ・失敗を記述、記録するだけでは不足で、知識化までやる必要がある
    ・失敗は、客観視ではなく実例をその時の感想も含めて記録する
    ・退職後の再雇用の方は、その部門の技術の萌芽期、成長期を知っている(こともあるから)、成熟期以降しか知らないに若手が経験を聞くチャンス
    など。
    今の職場と照らし合わせて見たい。

  • 来月会社で失敗学のセミナーがあるので予習。
    組織横断的に成功例やノウハウを共有する機会はあってもなかなか失敗を共有する機会がないように、
    日本では(といっても海外で働いたことないけど)失敗をオープンにはしたがらないよね。
    でも失敗こそ知見として蓄積、分析されるべきというのはそのとおり。

    大切なのは、あーあやっちゃった、運が悪い、じゃなく失敗をきちんと分析すること。
    いわゆるヒヤリハットもこれだよね。

  • 工学の専門家が書いた失敗に関する学。失敗をどう昇華すれば良いか具体的で参考になる。10年以上前に書かれているが、はからずも三陸の津波対策の話、原発の話に触れていて身につまされるものがある。失敗を財産に。

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著者プロフィール

1941年東京生まれ。東京大学工学部機械工学科修士課程修了。東京大学名誉教授。工学博士。専門は失敗学、創造的設計論、知能化加工学、ナノ・マイクロ加工学。2001年より畑村創造工学研究所を主 宰。2002年にNPO法人「失敗学会」を、2007年に「危険学プロジェクト」を立ち上げる。著書に『図解 使える失敗学』(KADOKAWA)、『失敗学のすすめ』『創造学のすすめ』(講談社)『技術の創造と設計』(岩波書店)、『続・実際の設計』(日刊工業新聞社)『3現で学んだ危険学』(畑村創造工学研究所)など。

「2022年 『やらかした時にどうするか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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