失敗学のすすめ (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062747592

感想・レビュー・書評

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  • 人はなぜ失敗してしまうのか、また失敗から何を、どのように学べば良いのか。
    アメリカのタコマ橋の失敗や雪印の食中毒事件といった例をあげながら、それらの失敗の原因と対策を論じる。現場の責任にせず、いわば必然的に事故が起きるまでの、組織体制や心構えなどの背景まで焦点を当てていてなるほどなと思った。ある程度後追いの理屈に思えなくもないけど。

    多くの事例から「失敗」が起きる要素を法則化、概念化して広く応用できる「知識」にしようとしている一方で、それが抽象的な枠に無理やり押しはめている感がぬぐえない。失敗の法則をグラフ化しているのが謎。

    「偽ベテランにならない」というくだりが一番腑に入ったかな。

  • この書籍は、雑誌プレジデントにて紹介されていた中の一つ。 「失敗学とはいかなるものか」と興味本位で手に取った。

    失敗は成功の母とはよく聞くフレーズであり、そのとおりだと思う。

    しかし、この著書の中でしばしば登場するが、失敗とは妬み嫌うものであり、隠したがるものである。

    失敗を次に生かすことは個人レベルではできても、自分の失敗を他者へ伝達し、それを生かしていくことは正直むずかしい。

    一番説得力のある話は、著者の大学の学生の失敗談。

    フッ酸を素手で触って負傷した話である。

    本来、手袋をしなくてはならないところを素手で触り、爪の間に注射針を刺す治療を2か月続けたとか・・・読んでいる私自身も痛くなってしまうような話であるが、これは効果的であろう。 誰もこのような経験はしたくないはずである。

    また、現代のマニュアル化についての批判もおもしろい。

    個人的にはすべてマニュアル化したほうが、効率的でよいのでは、と考える人間であるが、マニュアルに記されていない特別な場合、思考停止状態に陥るのは間違いない。

    自分の職務だけではなく、全体の流れ、構造を理解しておくことが大事であることは納得できる。

    そのような人材をどう育てていくかは企業努力になっていくのか?

    あるいは、行政が主導でやるべきなのか? むずかしいところではあるが、長期的に見た場合、企業の利益につながることは間違いないであろう。


    失敗は起こるものと考え、失敗に正しく向き合って次に生かす

    わかっていても、なかなか実行できないのがわれわれ日本人なのかもしれない。

    後を絶たない企業の不祥事は、「失敗 = 悪」という文化が成り立っているせいもあるのであろう。

    失敗を恥ずかしいこと、悪いことと決めつけず、それを分析し、発展させていく能力を養っていくこと。

    企業だけでなく、一個人にとっても、成長する上で大切なことであろう。

    自分には2歳になる息子がいるが、何にでも興味を示し、時には痛い目にもあいながら日々成長している姿は、この考え方に近いものがあるのかもしれない。

    これからの人生に、自分の失敗をしっかり生し、成長していけるよう心がけていきたいと考える。

  • 失敗は成功の母。
    創造の方法学の名前が出てきた、久々にまた読もうかな。

  • 文科省(当時科学技術庁)の失敗知識活用研究会や、その後の「失敗まんだら」のもとになった一冊。創造的な仕事とは、そもそも 1000ある失敗の中の 2つか 3つの成功から生まれるものであり、失敗を嫌っていては何も生み出せない。失敗から学んでいく姿勢や失敗知識を活用するシステムが大切だ、と説く。

    特に技術の成熟期において手順のマニュアル化や分業化が押し進められ、生産性が向上する一方で作業者が思考停止状態に陥り、全体を見ない個別最適によって致命的な「失敗」が生じるという指摘は耳が痛い。うちの会社だよ、コレ...。「樹木構造による理解」の持つ脆弱性についての指摘(人間は物事をタクソノミーで整理したがるけど、現実はメッシュ状になっているから、その認識差が失敗を引き起こす)も興味深い。

  • 朝日新聞に載ってた記事から、「失敗学」という言葉
    学会の理事長、畑村さんを知った。
    面白そう!と手に取ったが、なかなか難しかった。
    一度で全ては理解できなかったけど、
    「失敗体験に積極的に学ぶ」という視点はすごく
    ためになる。
    失敗を恥と考えず、これを真正面から受け止め
    多くのことを学ぶ。・・・第1章を読んだだけで、
    そのノウハウを学びたい!と思った。

    失敗原因の階層性(社会性、個人性)
    失敗原因の分類10項目、
    (無知、不注意、手順の不順守、誤判断、
    調査・検討の不足、制約条件の変化、企画不良、価値観不良、
    組織運営不良、未知)
    途中変更の諸悪、
    失敗の成長(ハインリッヒの法則)
    1つの重大失敗のもとには、軽度の失敗が29があり、
    まずいと認識する潜在的な失敗が300はある。
    新聞沙汰になるような事故やトラブルが
    ある日突然、降って湧いたように現れることはない。
    失敗はできれば「見たくない」という意識があり、
    「見たくないものは見えない」性質を持っている。
    失敗情報は隠れたがる、単純化したがる、
    組織内を上下しない・・・ここらへんはなるほど~と
    とても参考になった。

    そして一番大切だなと感じたのは、
    失敗は知識化しなければ伝わらない!!
    失敗にいたる脈略を記述することで初めて伝わる。
    記述の6項目、
    「事象」「経過」「原因(推定原因)」「対処」「総括」
    →知識化、この流れはすごく大切だと感じた。

    なるほど~と共感したのは、
    日本は失敗が起こった時に「責任追及」と「原因究明」を
    同時に行うシステムであるが、本来は分離して進めることが望ましいこと。
    いわゆる、アメリカの司法取引制度がその手立てのひとつであること、
    「司法取引」という言葉の意味を、今まであいまいにしか
    捉えていなかったから、とてもしっくりと来た。

    技術(組織)の萌芽期、発展期、成熟期、衰退期を経てダメに
    なっていくこと。
    局所最適、全体最悪=成熟期にある組織が気を付けなければならない、
    失敗の形の一つ。

    何となく認識していたことでも、言語化してもらうことで
    妙に自分のなかでしっくりとくる。
    学術的な内容に近いところを極力、分かりやすく伝えてくれている
    本だと思う。
    学生時代にこういう先生に会える学生は幸せだなと思う。
    失敗をしない近道、正解を教えてくれるのではなく、
    失敗は忌み嫌うのではなく、そこから学ぶ、知識化する。
    私もそんな風に学びたかったなぁ。
    今から出来ること、始めよう!

  • 仕事柄ヒヤリハットや事故異常報告など共有し再発防止に努めているが、作成してやった気になって、結果に繋がってないことから読んでみた本です
    事故災害を減らすためまだまだやれることはあると感じられた

  • 自分が若い時とてつもない失敗を沢山して、沢山辛い思いをしたから、後輩には同じ思いをさせたくないと思った。

    後輩が失敗しないように、マニュアルを作って、手順を全部細かく説明して、注意するポイントも思いつく限り伝えた。
    後輩のためと思ってやっていたけれど、自分のしてたことは間違っていたかもと思った。

    自分も沢山失敗をしたけど、それらがなければ今の自分になれてなかったのだと気付かされた。
    改めて失敗振り返ると、そこから学んだことが沢山あった。

    後輩が成長する機会を奪っていたかもと反省したので、これからは沢山失敗させようと思う。

  • 失敗について体系だって記述されている良書。
    失敗についての考え方の基礎が学べた

  • 失敗は成功のもと。などという言葉はあるが実際には取り入れられていない。
    成功話だけではなく、失敗談も同じく重要。

    本書では、失敗を人間が関わっている。と、望ましくない結果。がキーワードとしている。
    失敗を否定的に捉えない。
    失敗の原因。無知、不注意、手順の不順守、誤判断、調査・検討の不足、制約条件の変化、企画不良、価値観不良、組織運営不良、未知。
    樹木構造は頭を整理する方法としては、大変見やすく優れたもの。ただし横のつながりが見えにくいと言う問題点がある。

    失敗は人に伝わりにくい。失敗は伝達されていく中で減衰していく。失敗情報は隠れたがる。失敗情報は単純化したがる。失敗原因は変わりたがる。失敗は神話化しやすい。失敗情報はローカル化しやすく、他の場所へは容易に伝わらない。失敗は知識化しなければ伝わらない。と言う失敗の性質がある。

    失敗情報の残し方。事象、経過、原因、対処、総括、知識化。

    失敗を資産として取り扱うこと。そして失敗は避けられないのだから、それをどう生かすか。だと考えた。
    よく言われるが大きな失敗のもとには数多くのヒヤリハットが隠れている。いわゆる、ハインリッヒの法則。

  • p119
    失敗情報の記述は。「事象」、「経過」、「原因(推定原因)」。「対処」、「総括」の項目ごとに行うべき
    であるのは前項でも述べました。

    p217
    道への遭遇を原因とする「よい失敗」は、いくら注意を払っても避けられないものです。こういうケースまで厳しく責任が追及されるようでは、社会の中では失敗はなおさら忌み嫌われ、時に隠され、隠蔽されることにもなりかねません。その結果、社会の発展は停止してしまいます。これでは「失敗学」で主張するような、失敗を許容生かすポジティブな文化を築くことが出来ません。
    だからといって、本来起こしてはならない悪い失敗まで闇雲に許容してしまうのもまた困りものです。傲慢な意識やちょっとした不注意などを原因とする意味のない失敗をとがめることをしないと、実害ばかりが大きい失敗をいたずらに繰り返させることになりかねないからです。
    この悪い失敗には、むしろ強く懲らしめるようにと毅然とした態度で立ち向かう必要があります。こうしたさじ加減になるのがいわば法律であり、法整備には社会として失敗にどう立ち向かうかという思想を反映させるべきです。

    p242
    これを「局所最適・全体最悪」と言いますが、失敗を誘発し、組織に著しい損害を負わせる直接の原因になることはよくあることです。

    p280
    企業のみならず日本全体の問題として考えなければならないことはこうしたマネ文化のツケは、安全管理がまともに出来ずに、事件、事故をいたずらに繰り返している昨今の風潮の中にもはっきりと表れいます。はいけいにあるのは、おてほんがあって、決まり切ったものをやれば失敗を防ぐことが出来ると考えていた社会全体に広がっているナンセンスな盲信です。

    p294
    生産現場に限らず今日本中のあらゆるところで起っている問題は、根っこの部分に全てこの「見ない」「考えない」「歩かない」があるように私には見える。この姿勢をあらためない限り何をやってもうまくいかない。とくにIT全盛のいまは、世の中の変化のスピードも速くなってきている。これではいいおてほんにまなんでもいちじてきなせいこうさええられないかもしれなくないし、現実にいまの社会はそのようになっているように見える。

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著者プロフィール

1941年東京生まれ。東京大学工学部機械工学科修士課程修了。東京大学名誉教授。工学博士。専門は失敗学、創造的設計論、知能化加工学、ナノ・マイクロ加工学。2001年より畑村創造工学研究所を主 宰。2002年にNPO法人「失敗学会」を、2007年に「危険学プロジェクト」を立ち上げる。著書に『図解 使える失敗学』(KADOKAWA)、『失敗学のすすめ』『創造学のすすめ』(講談社)『技術の創造と設計』(岩波書店)、『続・実際の設計』(日刊工業新聞社)『3現で学んだ危険学』(畑村創造工学研究所)など。

「2022年 『やらかした時にどうするか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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