- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062751216
感想・レビュー・書評
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芥川賞受賞作を初めて読みました。
まだ自身が未熟なので理解しきれていない所もあるのですが、情景がありありと浮かんでくる表現が多く、とても魅力的な文章でした。陰鬱な雰囲気が良かったです。映画も見てみたいと思いました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
暗い…
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読み始めから、夢遊病者の話かしらんと思わせるような展開。
ヒタヒタと子供の足音が続くかと思いきや、くたびれた男に忽ち入れ替わる。そこには、時代が変わろうとも沼のような混沌と浮かび上がれないまま、蠢いている人の姿がありました。
怖いもの見たさで?!読み続けましたが、どこか谷崎潤一郎の世界に通じるのかしらん、個人的に苦手分野。
湿っぽくて息苦しくて、淫靡。
終末、読みにくい部分もありましたが、実はここが、この話の真髄かも。
読んでいる間、陰鬱さから離れられず。
ここまで引きずられるというのは、
そういう意味では、読み応えのある小説だったかな。
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「春されば卯の花腐し我が越えし妹が垣間は荒れにけるかも」という万葉集の和歌がタイトルの元になっている。主人公、栩谷(くたに)の気持ちを象徴しているかのような雨が印象的だった。栩谷の名は、「花腐し(はなくたし)」から取ったのだろうか。
芥川賞を受賞した表題作のほか、1作品収録。 -
映画「花腐し」を観てから、この脚本が原作とは激しく違うものらしいということを、いくつかの評論、レビュー、コメントなどで知り、原作と脚本(シナリオ)の間の違い、シナリオが原作から受け継ぐものとはどんなものだったのかを知りたくて手に取りました。そして戸惑いました。登場人物のプロフィールはもちろん、置かれている状況も周辺も、何もかもが違うと言ってもいいくらいに違う。
でも、映画「花腐し」の原作はこの小説「花腐し」なんだと受け入れられる。そう感じることができました。わかったような気がしました。
小説「花腐し」は正直なところ、僕には難しい、難解な小説でした。小説だけを読んでいたら、きっと今、自分が感じているような「感じ方」には至ることはなかったかもしれないけれど、映画と小説の両方を観て読んで、この二つの作品の中に描かれているものが一つになってわかったような気がしました。
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「ひたひたと」と「花腐し」の2篇。
どちらもずっと雨音を聞いているような感じの作品だった。止まない雨、その中での徘徊。身体的な徘徊と精神的な徘徊とでぐちゃぐちゃになっていて、まるで夢遊病者の語り。「ひたひたと」では「を」の字のように曲がりくねった路地というのが出てきて、妙に印象に残った。語句と語句をつなぐ「を」という平仮名を使うところが酔狂だ。こちらもいきなり複数の叉路にふと立たされるようだ。
「花腐し」は、厭世観たっぷりの男ふたりと女ひとり。淫夢のようであり、哲学的でもある。
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『花腐し』
綾野剛さん主演で映画化されると知り、観る前に読んだ。
文体が独特で終始じめっとして陰鬱な感じ。正直読み終えて、え、これ映画にして面白いのかな、と思ってしまった。
だけど映画ではかなり脚色が加わっており、より深みのあるものになっていた。小説にはない設定や過去の回想シーンがたくさん追加されているのに原作のイメージが崩れることはなく、むしろ元々こんな裏設定があったのでは、と思わせるほどだった。
短いストーリーからこんな風に話が広がるんだ、と驚いた。
映画を観てから再読。
はじめの印象とだいぶ違って感じた。
いつもなら嫌悪感すら抱くような内容だが、ちょっと見る目が変わったかも。
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短編を二つ収録。『ひたひたと』はかつての洲崎パラダイス、『花腐し』は今の新宿の、性風俗街に通いつめる男たちと、そこで春をひさぐ女たちの物語。性は、生に結びつくものであるが、死とも隣り合わせ。街のなかで、性と生と死が繰り広げられ、登場人物たちは、生きて、喘いで、まぐわって、死んでいく。私たちが生まれて死んでいくとは、どういうことなのか。それは、万葉集の編まれた古代から今現在まで、なにもかわらない。人が生きて、性愛に苦しんで、誰かを愛して、死んでいくことの本質など、変わりようがないのだから。