スモールワールズ

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065222690

感想・レビュー・書評

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  • 【収録作品】ネオンテトラ/魔王の帰還/ピクニック/花うた/愛を適量/式日

    「ネオンテトラ」「ピクニック」は怖い。「魔王の帰還」は姉のキャラがいい。「花うた」は難しいが、外野が何かをいうのは違う気がする。「愛を適量」の父親は情けないが憎めない。

  • 6編の短編集。それぞれ完結はしていて、少し時間が重なっている。
    家庭のなかの閉鎖感がよく描かれていると思った。
    ピクニックは衝撃な真実。
    魔王の帰還と花うたはよかった。
    最初と最後の短編の繋がりが、読み終えてから分かった。繋がっていたのは、後輩だと思う。

  • 初読みの作家さん。

    ブクログの色んな方のレビューを拝見して読んでみたいと思い、即図書館に予約を入れたので、新しい本なのに比較的早く借りられた。

    しかし読み始めた時にはすっかり本書がどういうタイプの本だったか忘れていた。
    「感動系だったっけ?何だったっけ?」と考えながら、つまり前情報無しのまっさらな脳で読み進め、1話目の途中あたりで「あれっ、これってもしかして怖い系?」となった。
    そして2話目に入って、「ああ、登場人物が微妙〜に繋がってる系だ」と気付く。
    この2話目の『魔王の帰還』の魔王こと真央が私は好きだ。

    「繋がってる系」は私は好きなのだが、本書はその繋がりがなかなか巧妙に溶け込んでる系(なんだそれ?)なので感心した。
    どうせ「繋がってる系」ならば、全話がちゃんと繋がり、更に最終話がまた1話目にもちゃんと繋がることを私は「繋がる系」に求めているのだが、なかなかそういう作品にお目にかかった記憶が無い。
    ところが本書は全話に繋がりが仕込まれている上に、ちゃんと「ふりだしにもどる」だったので(ということは彼の結末も読者は知ってしまっているのだが)、もやもやせずにすっきりできた点も良かった。

    普通はこういう、後から単行本にまとめる時には、単行本化にあたり「加筆・修正しました」と書かれていて、「後から繋げたんだなぁ。凄いな」とか、「だからこことこことはどうしても繋げられなかったんだなぁ」とかなるのだが、本書にはそれが無いので、作者は最初から全話の構想ができていたのだろうと勝手に推測する。

    最終話『式日』は切なかった。
    各話、題材も書き方もなかなかバラエティにとんでいて、遅読の私が2日で読み終わったのは、ものすごく引き込まれた証拠。

  • 一穂ミチさん、新聞の書評で気になって初読み。
    怖い、ほろ苦い、温かい、いろんな感情が入り交じって読了後はなんとも言えなかったけど翌日なんか気になりもう一度パラパラ読んでしまった不思議な短編六篇。好きなのは「魔王の帰還」、真央の温かさと強さが岡山弁で増幅され、泣けて泣けて心が満たされた。他作品も読んでみたくなった。

  • 一穂先生の著作は初めて読んだが、ジャンルが多岐にわたっているのに皆密度が高いしいろんな角度から攻めてきて面白かった。
    『花うた』『愛を適量』『魔王の帰還』は今までにない面白さと思う。特に『花うた』は文章ならではの面白さと、話の切なさとで一気に読んだ。
    読みやすい文章、予想と少し違う方向の結末、自分にはない言葉選びがすごく素敵で、他の作品も是非読みたい。

  • 一穂ミチさんの作品は2作目です。
    複雑な家庭環境をもつ6つの作品集。親に翻弄される子供達の話が多かったです。

    『ネオンテトラ』えっ?と声に出してしまいそうな展開でした。
    『魔王の帰還』兄妹の心温まる物語。一番良かった。
    『ピクニック』心がザワザワするちょっと怖い話でした。
    『花うた』加害者と被害者の妹のやりとり。これも切なくて後半の展開にえっ?って思いました。
    『愛を適量』父と娘のこじれた関係。面白かったです。
    『式日』先輩と後輩の話。
    また、一穂さんの本を読んでみたいと思いました。

  • 感想を書くとしたら奇想天外なのかな。
    それぞれの短編全くちがう話であり、それぞれすぐ話に入り込めた。おもしろいけど、なんとも言えない気持ち悪さだったり、不思議さがある本だった。

    え、え、、?と言いたくなるような場面が何度もあった。

  • 6短編。「ネオンテトラ」も「ピクニック」もちょっと想像を超えている。姪の子どもを養子にする、娘が下の子を誤って死なせてしまう。女の強さ、母の強さが要所要所に見え隠れする。
    「花うた」刑務所にいる加害者と殺された被害者の妹。2人が心通わせていくうちに加害者が内省していく、そして出所後。加害者が記憶をなくしていくのに、彼が作った物語には涙。罪を償う証となった。

  • 6作の短編からなり、いずれも人間の奥底を針でつつくような痛みがあった。それぞれについて簡単に振り返りたい。
    *ネオンテトラ
    主人公の思考回路が怖い。夫の浮気に冷静で、少年と姪の関係を利用、自分の人生を設計していく。これまで嘗めてきた辛酸がジワリと広がっていく感じ。まさかの結末だった。
    *魔王の帰還
    いい話だった。お姉さん好き!最後、ちょっと泣けた。彼女、前の作品の最後にちょこっと出演?
    *ピクニック
    最初に、この語り手、いったい誰?と、つまづいた。最後にわかって背筋が凍る。お母さんの秘密が明かされる瞬間に、昏倒しそうになった。どうか、これ以上の悲劇を繰り返さないで…。
    *花うた
    受刑者と加害者家族との手紙の交換がメイン。互いの手紙の中だけで登場人物の背景が浮かび上がる手法だ。加害者家族にしてみれば心が張り裂ける思いで書いているのだろう。しかしだんだん互いの距離が近くなり…。予期できない結末だった。
    *愛を適量
    離婚して長年不摂生している中年教師が、ある日突然娘の訪問を受ける。ジェンダーの問題が絡むが、一番のテーマは「尽くしすぎる心理」だろう。「相手のため」も自分のためなのか。興味深い。
    *式日
    最初の物語の登場人物が出てくるが、名前はいっさい出ない。語り手は「向田邦子」似だというが、一体誰なのだ?一人称を示す言葉も出てこないので、誰だかさっぱりわからない。定時制高校に通っていた過去はわかった。「私」「僕」など男女の別を表現するような言葉を表さないところがにくい。

    読み終わって1日たったが、まだ心がざわついている。

  • 6篇とも作品の雰囲気が違って楽しかったです。
    「ネオンテトラ」:切なく進む話かと想いきや…この終わり方が結構好みでした。
    「魔王の帰還」:本作の中で一番好きでした。姉の選ぶ生き様がかっこ良い!
    「ピクニック」:ちょっとゾワっとする後味でした。これくらいのホラーならいけるかも!と思えました。
    「花うた」:加害者と被害者が関わる時の関係性にも決まった形はないのだなと思いました。この中で一番切ない話かもしれません。
    「愛を適量」:適量の難しさ、すごく分かります。のめり込むと突っ走ってしまったり、他のことにはドライな対応になったり、難しいです。
    「式日」:気の使い方って何が正解か分からなくて向き合えない、というところに共感しました。
    全体を通して、生きていくのって大変だよねと寄り添ってもらえる感覚のする作品でした。

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著者プロフィール

2007年作家デビュー。以後主にBL作品を執筆。「イエスかノーか半分か」シリーズは20年にアニメ映画化もされている。21年、一般文芸初の単行本『スモールワールズ』が直木賞候補、山田風太郎賞候補に。同書収録の短編「ピクニック」は日本推理作家協会賞短編部門候補になる。著書に『パラソルでパラシュート』『砂嵐に星屑』『光のとこにいてね』など。

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