- Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065222690
感想・レビュー・書評
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私の感受性は感応しやすく、読んでいて重苦しく憂鬱な気分になり、現実感が強いこの作品に途中で「あーこれは苦手」とも思いましたが、何故か続きが気になり読了。
伏線や構成が見事。後半の話が良かった。
生死は必然。誰もが激動の人生を送る。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
家族にまつわる6つの連作短編小説。
どの章にもミステリー要素があり、テンポのよい文章に引き込まれて面白かったです。
不穏で狂気を感じる章もあれば、コメディータッチの章もあり、各々カラーは異なりますが、一貫して悲しみや孤独といった苦い感情が描かれています。
「魔王の帰還」「愛を適量」「式日」が好きでした。悲しみや孤独を感じる登場人物に寄り添う、少し優しい時間が描かれていて安らぎを感じました。 -
①ネオンテトラ
モデルの美和は旦那の浮気を知りつつも、夫婦関係を続けている。美和は子どもができずにいた。
ある夜、向かいのマンションで父親に怒鳴りつけられている少年を見る。美和の姪っ子の同級生の笙一だった。夜のコンビニで笙一と出会ってから、定期的にコンビニで会うようになる。
ラスト。驚く展開が用意されている。
②魔王の帰還
ガタイはデカいが女子に不慣れな鉄二は、女子と話すこと以外にも苦手なことがあった。魔王。鉄二の姉だ。魔王こと真央は離婚をすると言って実家に帰ってきた。
とにかくキャラが秀逸!一番好きな作品。これは是非長編でも描いていただきたい。これだけだったら間違いなく⭐︎5。いやぁ、面白かった!魔王最高!!
面白いだけじゃなく、ホロっとさせるんだからズルい。
③ピクニック
生後10ヶ月の赤ちゃんが亡くなった。死因は急性硬膜下血腫。頭に衝撃が加わったことが原因とされた。赤ちゃんを見ていたのは祖母の希和子。警察は希和子が殺したとし、逮捕した。
希和子が殺すわけない。娘であり、亡くなった赤ちゃんの母親である瑛里子は希和子の無実を信じ弁護士とともに無実を勝ち取った。
しかし、驚くべき事実が隠されていた。
不思議で少し怖い物語。
④花うた
たった1人の家族を殺された深雪。犯人である秋生と手紙のやり取りをしていくうちに秋生の人間性がわかってきて。
なんとも切ない物語。秋生が書いた物語が良かった。
⑤愛を適量
これは良かった!『魔王の帰還』の次に好きな作品。
うだつの上がらない中年教師の慎悟は妻と離婚し、日々を消化するだけの毎日を送っている。
ある日アパートに帰ると知らない若者がいる。15年も会っていなかった娘だった。見事に変貌を遂げた娘は見た目は男。娘はトランスジェンダーだった。
たった数日の不思議な生活が始まった。
慎悟は大切なものを捕まえることができるのか。
⑥式日
後輩と先輩。2人は好き同士だった。1年ぶりの後輩からの電話は、父親が亡くなったから葬式に来て欲しいというものだった。
離れていた時間を埋めるように寄り添っていく2人。
もどかしくも愛おしい物語。
どれも良かったが、とにかく『魔王の帰還』、『愛を適量』は素晴らしかった。ベタだけど泣かされてしまった。素敵な作家さんと出会うことができた。 -
一穂ミチ作品は初めて。短編6作ですが、あったかい話からゾクっとする話まで多種多様。どちらが本来の作風なのか、他作品が楽しみ。
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短編集ですが、それぞれの話しに程よい読後感を感じられました。微妙に登場人物がリンクしているように感じられるのは読んでいて、面白いというか筆者のなせる技なのかな。
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【2022.0215 前半追加(なんと漏れていた。すまぬ)】
<率> 最初の一話『ネオンテトラ』を読んだ後 まずすぐに作者一穂ミチの貌写真を見てみたくなってググッた。顔写真は無かった。少し記事はあったので拾い読んで作者が『BL』作品を沢山書いてきた作家なのだと知った。さてとどうしようかと思った。今年六三歳になる僕が BL なる言葉と意味を知ったのは2~3年前だったかな。その時BL作品を読んでみようなどとは思わなかったしその通り読んでいない。今作を読むと BL作家の作品を読んだ と意云う事になるのかしら。ならばよおし!と思って続きを読む。
そして皆さまと同じ様に僕も作中歌?の「バロックホーダウン」をYouTubeで検索して聴きました。もちろん聴いたことあるメロディでした。 実は僕の長男が幼稚園の頃に園内鼓笛隊でさかんに演奏していました。その幼稚園は全国的にもとても鼓笛隊の演奏レベルが高くて なんと本物のDL(はい,あの千葉県浦安市にあるTokyou-DL本物ですよ)へ招かれて実際にあのパレード通りで演奏行進しました。当然僕も父兄としていっしょに行きました。ああ懐かしい。
全体としては文芸作品としてかなりレベルの高い面白い作品だと思う。 が,『花うた』と言う作品を読んでいて思った。この作者が書くこの物語ならきっと驚く様なラストを味あわせてくれるだろう と。※ (ここで少々長い注記ウンチクです。直前に「味あう」と書いた部分ですが実は本作本文の274ページに「味わう」という正しい書き方で載っている。決して 味 に逢うのではなくて, 味 をみんなで分かち合うのです。この作者,いっかいのBL作家では終わらない何かを持っています。僕もこの先強力に応援するかもしれないのです)。
(※から続く)期待はあっさり裏切られた。BL作家と言えども普通の文芸作品を書くと普通のラストシーンしか書けなくなるのだと。本文を引く。「さくらがぜんぶちってもふたりでみていました。」などと云うくだらない情景描写で終わる作品は卑怯です。もっと考えろよあんたプロの作家さんなんだろ と思いました。高言 すまぬ。
で,本作はなんと,発足当時はキッパリと分けて
(ここから以降だけが2021.0214に載った) 運営されていたらしいが 最近は本の雑誌社と云う出版社が密かなる営利目的で強力に独占主催する『本屋大賞2022』のノミネート作品なのです。
同賞は,歴史だけはあるが最近は権威も由緒もない塵芥賞やチョッキ賞を遥かにしのぐ人気を本買人(読者とも云う)から得ていて 受賞作はもとよりノミネートされただけで本の売り上げは一気に桁が上がるらしい。つまり儲かるのだ。
その際の利権はいったいどこにあるのかが最近は大きな話題になっている模様。 おそらく数十億と云うマイナイが飛び交っているのであろうが 一体どこをどう飛んでいるかは謎である。 いや僕は決して 悪い とは言っていない 別にそれでいいのである。金しか人類の明確永遠的な目的などどこにもないのであるから。
だが今年度は競争ノミネート作にとても手ごわい(例のロシアの少女が狙撃するやつとか)のが多くて,すまぬがとても本作での受賞はむづかしいと思われる。本作も面白い作品なのにまことに不運でした。すまぬ。ではまた。 -
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第9回静岡書店大賞が決定!4部門6作品の受賞者のコメントを掲載 | ほんのひきだし
https://hon-hikidashi.jp/boo...第9回静岡書店大賞が決定!4部門6作品の受賞者のコメントを掲載 | ほんのひきだし
https://hon-hikidashi.jp/bookstore/141904/2021/12/08
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どの短編も個性的でした。今の自分の暮らしからは遠い内容でも、不思議と受け入れられる温かさを感じました。”人を許す”ということについて考える一冊でした。
「理由とか原因を他人に紐づけてると人生がどんどん不自由になる」という言葉にハッとさせられました。
2021,5/2-5/4 -
登場人物、それぞれの小さな世界の短編集6編。
気持ちがジェットコースター並みに揺れます。
ゾワッとする話、ホッコリした気分になる話、再生の話…。
それぞれのお話の何かが少しずつ重なってくるので、ループして読みたくなる。
何か読みたいけど、どのジャンルが良いか迷った時にオススメです。