スモールワールズ

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065222690

感想・レビュー・書評

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  • 様々な味わいの一冊。

    家族、友人関係、小さなコミュニティの小さな時間を切り取った六篇の物語は様々な味と変化で心を掴んできた。

    まさに色とりどりのドロップキャンディ。

    明るさや微笑ましさの甘い、頬が緩む味はもちろん、哀しみや心がざらつくような苦みもスッと心に沁みるハーブ味も涙味も。

    そして絶妙な加減でその味を一話ごとに、一話の中でさえも変化させていくのがたまらない。

    理不尽な人生も感情も生きているからこそ得られる時間。

    もっと味わいたい、もっと響く味、言葉が隠れているかも…そう思わせてくれる世界を感じた。

  • すごく良かった。
    50ページ前後の短編が六話、たったの50ページでこの読み応え、充実感…
    どのお話も結構刺激的なテーマでテイストはバラバラ。
    複雑な家庭や問題を抱えている人達のお話。
    人の複雑な本心、距離感や微妙な関係、言葉の棘、女性の勘の鋭さ、そういうのがとっても上手い。

    多彩なアーティストのベストアルバムみたいでした。
    短編集ははずれのお話があったり、やっぱりある程度長いお話じゃないと内容がな… なんて思ってしまう事も多いけど、これはとても良い短編を選りすぐった一冊といった感じ。
    少しだけ繋がっているお話同士もあるけど、無理に連作にした感じは無く、それでいて統一感の無さを全く感じないくらい、そのお話に夢中になれる。

    べた褒めですが、私には良い所しか無い一冊でした。
    手放すのが惜しい一冊、また再読したい本でした。

    • あゆみりんさん
      ほん3さん、良い所しかなかったんですもの〜
      読み終わったばかりなのに、もう読みたい(๑˃̵ᴗ˂̵)
      ほん3さん、良い所しかなかったんですもの〜
      読み終わったばかりなのに、もう読みたい(๑˃̵ᴗ˂̵)
      2022/08/13
  • 他所には口外できないことが、人や家族には大なり小なりあると思う。生育歴、価値観の違い、些細なボタンの掛け違い、自分を見失う出来事など複雑な要素が絡み、人生には予測出来ないことが起こる。
    一つ一つ、カテゴリーが違う小さな世界の6章。一つ目からの不穏な空気、三つ目でぞわりとする面白さ、その後どんどん感情移入し、ラスト式日ではじんわり。そして最初に戻ったのは言うまでもありません。
    好みは「ピクニック」、「花うた」手紙のやり取りで感じ取れる二人の心の動きがよかった。自分の気持ちに正直に、強く生きている深雪に心打たれました。「愛を適量」適量というのは難しいです。父と娘の会話に終始愛情を感じ、親子だなと、ほろりときました。
    深みがあり個性が違う全ての章が、読後一つとなり胸に迫ってきた。また、章の持っていかれ方(章の配列というか)がいいなと思いました。
    歪な家族かもしれないが、その中にしかわからないことも沢山あって、何を幸せと捉えるのもバラバラ。
    失くしたピースのかけらの意味するものを噛みしめ、
    しかし、執着するのではなく手放すことも必要で、時に任せてみる。こういう生き方できたらいいと思いました。

    • Manideさん
      kazekaoru21さん

      よいコメントですね〜
      すごいこの本に興味を惹かれます!!
      ぞわりとする面白さって表現がいいですね。
      参考にさせ...
      kazekaoru21さん

      よいコメントですね〜
      すごいこの本に興味を惹かれます!!
      ぞわりとする面白さって表現がいいですね。
      参考にさせていただきます ^_^
      2022/07/01
    • kazekaoru21さん
      Manideさん

      こんばんは。
      拙いコメント読んで下さりありがとうございます。
      三つ目から引き込まれていった気がします。
      全体的...
      Manideさん

      こんばんは。
      拙いコメント読んで下さりありがとうございます。
      三つ目から引き込まれていった気がします。
      全体的に明るい話ではないですが、じわっとくる感じで面白かったです。
      おすすめです(^^)
      2022/07/01
  • 約1年先の次回の本屋大賞候補に早々と上がっているという評判をきき、手に取った。結果、大納得。6月の1冊目で早々すごい本に出会ってしまった。

    世界のどこかで転がっている、特別でもなんでもない人生が描かれていた。
    人生の不思議さ、難しさ、優しさ、どうしようもなさ。
    特別でもなんでもない。生きるって不思議だし難しい。だけど、生きるってちょっといいかもしれない。
    優しくも悲しくも怖くもある。けれどそれが人生の醍醐味というものなのかもしれない。

    うまくいえない機微や、普段見逃してしまいがちな何気ないやりとり、そこから生まれるささいな感情を、こんなふうに切り取って描写できるなんて。
    すごい作家さんに出会ってしまった気がする。ほかの作品も読みたい。

    短編集で、1つ1つ独立しているかと見せつつ、「10ヶ月の赤ちゃん」や「定時制の高校」などほんのちょーっとだけ、ほかの短編と重なりのある部分があって、まさにこの世界みたいだなあと思った。(そしてまさかの「○○」まで…!!!)
    うまく言葉にできないような読後感を味わった。
    またすぐに読み返したくなるラストだった。


    冷静になればこんなのただのなんでもない話のはずなのに
    なんなんだろうこの気持ち。


    「かけらも土地勘のない街の明かりがそこらじゅうに灯り、その、どこにでもある、平凡な眺めをきれいだと思った。後輩が引き寄せられた光。よく分かる。自分のものじゃない明かりほど美しく見える。団地、マンション、アパート、戸建て。あれらの窓の内側に孤独も痛みも後悔も暴力も当たり前に存在し、光という闇だってあるのだと分かっていても惹かれてしまう。」
    296ページのこの文が、まさにこの作品を端的に表している表現だと思った。

    • アールグレイさん
      こんばんは☆
      お久しぶりです!
      衣都さんはずいぶん前にこの本を読んだのでしょうか?数カ月前かな?私は今日、さっき読み始めました。最初の話、夫...
      こんばんは☆
      お久しぶりです!
      衣都さんはずいぶん前にこの本を読んだのでしょうか?数カ月前かな?私は今日、さっき読み始めました。最初の話、夫の携帯にカッカしています。
      Σ( ̄□ ̄)!
      これからどうなるのかな?!!旦那が帰って来ました。夕飯の支度です。
      (^_^)/
      2021/08/17
    • 衣紅*海外在住さん
      ゆうママさんこんにちは!
      読み終わった日のうちにレビューを書くようにしてるので、2ヶ月前ですね。
      最初の話はなかなかとんでもない展開の話だっ...
      ゆうママさんこんにちは!
      読み終わった日のうちにレビューを書くようにしてるので、2ヶ月前ですね。
      最初の話はなかなかとんでもない展開の話だったかと思います。私は最初を読んだ時は「これが本当に評判いい作品なの?!」と慄いた覚えがあります。笑
      だけどぜひ最後まで読み進めてほしい作品です。感想楽しみにしています☻
      2021/08/18
  • ひとつひとつの話の印象が全く異なる。一話ずつ違う人が書いたのかと思うほどで、私はそれを読みづらく感じてしまった。
    突飛な展開と、一話ごとに変わる文体に頭がついていけず。どんな気持ちで読んだらいいのかわからなかった。

    「愛を適量」の先生は割と好きかな。「適量」を知る事で、これからはもう少し生きやすくなるんじゃないかな。

  • 2022年の本屋大賞3位。
    「ネオンテトラ」
    「魔王の帰還」
    「ピクニック」
    「花うた」
    「愛を適量」
    「式日」

    6つの物語からなる短編集。どのお話も色合いが異なるのだが、全章おもしろかった。
    特に私の好みは「ピクニック」と「愛を適量」。

    「ピクニック」は急な視点で語られる真実にゾクっと鳥肌が立つ。不運な悲劇でなんとも言えない読後感に襲われた。忘れなれないお話になりそう。

    「愛を適量」はジーンとくる。何事も適量って難しい。父が抜け殻のような人生から、娘と向き合うことで徐々に成長し、生きる活力を取り戻していく姿がとてもよかった。〝だって親の言葉だったもん〟最後のやり取りは泣けます。

    短編集なのに読んだ後の満足感がすごい。喜怒哀楽の全部を引き出される作品でした。

  • 幸せの尺度は人それぞれに違う。
    ある意味、幸せなんて自己満足に過ぎない。
    なのに周囲の人からも幸せだと思われたいから、無理をしてでも幸せの仮面を被り、取り繕ってしまう人もいたりして。
    そんな不器用な人を取り巻く世界を描いた連作短編集。

    夫婦、親子、姉弟、先輩後輩、と様々な人間関係の中で、人は自分の尺度を押し付け押し付けられて、思い通りにならないやるせなさに押しつぶられながらも、やっぱり一人では生きていけない生き物。
    そんな面倒くさいジレンマにもどかしさを感じつつ、それでも人と人とが寄り添う姿にほっとするのだから不思議。
    生きることは絵空事ではない。
    ジタバタするのもまたいいものだ。

    表紙の写真が短編集の全てを絶妙に言い表していて巧い。
    一人一人はこの立体作品のようなちっぽけな世界に生きている。
    そんなちっぽけで凸凹な世界が寄り集まって、社会は成り立っているのだ。

    特に『魔王の帰還』が良かった。

  • ずっと気になっていた本で、直木賞候補に選ばれた直後
    やっと読むことができました。

    6つのお話があって、1つ目の『ネオンテトラ』では
    「なんだ。しょせんフィクション。」
    と思ったのです。

    が、続く2つ目から5つ目が
    目の1センチ下のちょっと奥や、胃のあたりに刺激
    というか、ふだん穏やかに暮らしているせいか、
    あまり感じることのなかった心のどこかに
    「ネガティブな中での愛」を味わえたというのか。

    そしてなんと6つ目で、
    期待外れと思わされた1つ目の話が気になって頭から離れず
    読み返してしまったのです!

    私はこの続きを知っている…。

    思い起こせば、3つ目『魔王の帰還』に4つ目『ピクニック』に繋がる発言があって、もしかしたら再読すれば他にもいろいろあるのかも?

    本当に読んで良かった、中身の濃い本でした。

  • 一穂さんの他の作品はいくつか読んでいたのに、本屋大賞受賞作であるこちらがなぜか積読されたままに…。忘れていたのだが、ずっと読みたいとは思っていた作品なので、お宝発見という気持ちでワクワクしながら読み進めた。
    結果、めちゃくちゃ良かった!短編だが、どの章もかなり読みごたえがあり、感じることも多かったので一つ一つ感想レビューしていきます。

    『ネオンテトラ』
    夫の不倫と不妊で、うまくいかない夫婦生活を送る美和と、中学生の姪っ子の同級生である笙一との危うい交流を描いた物語。年齢的にも立場的にもちょっと距離があるからこそ、互いが干渉し過ぎず楽だと感じる関係性はとてもよくわかる。姪っ子の境遇は気の毒だけれど、美和が今幸せで、私は嬉しい。

    『魔王の帰還』
    前半コミカルなトーンだったが、ラストは本作の中でも(個人的に)一番泣ける物語だった気がする。
    勇の離婚届の文字…。ただただ泣けた。。。

    『ピクニック』
    冒頭では、
    育児ノイローゼによる我が子殺害のお話し?
    と思いきや、読み進める中で、
    冤罪と家族の絆のお話し?
    へと様相が変わり、
    ラストで真相が明らかになる。内容も語り口もちょっとホラー要素あり。
    子供の死を通して、"家族"という繋がりの複雑さ、不安定さが何重にも垣間見える物語。
    家族だからなんでもオープンは綺麗事。家族だからこそ、嘘や秘密によって、ささやかだけれどかけがえのない日々の平和が保たれる。そんなようなことを改めて感じさせられた。

    『花うた』
    傷害致死で懲役五年の刑に科せられた秋生と、その被害者遺族である深雪の文通から成る物語。単純な加害者と被害者の関係から、文通を通して互いの過去を知り、長い時間をかけて恨み、憎しみから愛へと感情が変化していく様子が描かれる。唯一の肉親である兄をこの世から奪った秋生のことがこんなにも憎いのに、その憎しみ、哀しみをぶつけられることができる相手もまた秋生しかいないという現実。人の心の複雑さ、機微、変化をこんなにわかりやすい形で一つの小説にできるって本当にすごいことだなと感じた。秋生の脳震盪の後で、漢字からひらがなに変化していく様には胸が苦しくなった。

    『愛を適量』
    長年離れて暮らしていた父とトランスジェンダーの娘との束の間の再会を描いた物語。子供の頃に身体の変化への抵抗感をカミングアウトとした佳澄に対する父の反応は正直0点だが、「俺のをやれたらいいんだけどな」のことばは100点満点。慎悟の紛れもない愛だなと思った。娘として(息子として)、やっぱりこれは嬉しい。不器用でも、表現がガサツでも、伝えようとする気持ちと、受け止めようとする心があれば、想いは伝わる。

    『式日』
    高校時代の先輩ー後輩関係にある男性二人が、後輩の父の葬儀を機に再開し、過去を回想しながら当時の心境を語り合い、未来に向けて一本踏み出す物語。
    「自分の人生を、物語みたいに味わわれたくない。そんなふうに身構えて、耳をふさいだ。耳をふさぐことは、口をつぐむことでもあった。訊かれたくないから、訊かない。レスポンスが怖いのだ。肯定であれ否定であれ、自分の投げた言葉に何かが返ってくる、それを待つ一瞬がどうしようもなく耐えがたい」
    この文章が特に響いた。ただでさえ不安定で繊細なメンタルである高校時代、自分を守る為に相手の出方を伺いながら、適度な距離を保つことに必死だった自分を思い出した。最後に第一章の『ネオンテトラ』と繋がる形も美しかった。

    最後に…
    全章を読み終え、改めてスモールワールズというタイトルが含む意味の深さを感じることができたんじゃないかなと思う。
    自分が生きている環境、人との関係なんて、世界のほんの小さな、限られた場所でしかなかない。だけど、だからこそ、そこでの関係性を壊さない為にもがき苦しみ、他人からの評価を気にして自分らしさを見失ってしまう。どの章も、ままならない日常の中で、それでもなんとか生きている人々の物語。私だけじゃない、みんなが狭い世界で戦っているんだと安心させてもらえる作品だなと思った。
    老若男女問わず、全ての人にお勧めしたい作品です。

  • 隠し味に毒味の効いた6編の”愛情”を描いた短編集。

    きれいごとだけでは済まない現実。
    生々しい悩みや、悪意、憎悪、喪失の陰に佇む確かな愛情にぐっとくる場面が多々。
    全く関連のない6編ながら陰と陽の使い分けがうますぎて感情を揺さぶられまくる。

    また、ちょっとホラーめいた結末あり、書簡形式の妙味ありの引き出しの豊富さや、ネオンテトラで始まりネオンテトラで終わる粋な構成など、短編集として完成度高し。

    ちょっとべたと言えばべただけど、『魔王の帰還』が好きかな。

    新しめの作家さんかと思い込んでいたら、なんとデビューは2008年。
    どこに隠れていたんですか。
    次作が難しいぞとamazon検索してみたら、『砂嵐に星屑』という群像劇物が最近出ているらしい。
    群像劇は好きなので期待大。

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著者プロフィール

2007年作家デビュー。以後主にBL作品を執筆。「イエスかノーか半分か」シリーズは20年にアニメ映画化もされている。21年、一般文芸初の単行本『スモールワールズ』が直木賞候補、山田風太郎賞候補に。同書収録の短編「ピクニック」は日本推理作家協会賞短編部門候補になる。著書に『パラソルでパラシュート』『砂嵐に星屑』『光のとこにいてね』など。

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