此の世の果ての殺人

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065289204

感想・レビュー・書評

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  • 以前は欠かさず読んでいた江戸川乱歩賞受賞作だが、ここ最近はご無沙汰だった。今回久しぶりに手にして、おお!こういう作品も採用されるのかと驚いた。

    舞台は2か月後に小惑星が衝突し人類滅亡が迫る世界。そこで起きた連続殺人事件を主人公たちが解決しようと奮闘するお話。もう滅びるのに殺人事件の捜査をするというところがシュールだが、大枠でいうと特殊設定ミステリになるのだろうか。

    ただ、巻末で評者の先生方が口を揃えて仰るように、ミステリの設定としては真新しいものではない。私もいくつか頭に浮かぶし、中には全く同じ舞台設定のものもある。本書がとても魅力的なのは、世界がそんな状況である、にもかかわらず、自動車教習所に通う女性と、にもかかわらず、その教習に付き合う奇妙な女性教官を主人公のペアにした点だろう。そして死体は、彼女たちの教習車のトランクから発見されるのだ。

    特殊設定にさらに特殊な設定を重ねていく見せ方が見事だし、細かい小道具の使い方も丁寧で、こういう点が評価されての受賞であろうと思う。面白くて、さくさくと読み進めていける。そして何と言っても驚きなのは、作者が若干23歳という事実だ。これは今後に期待しかない。

    肝心の謎解き部分だが、私はあの推理で犯人が導き出せるとは思えなかった。評者である大御所たちが誰も不満を述べていないので、私がひねくれているのかもしれない。しかし、個人的にせめてミステリの世界だけは、最初から最後まですべてが論理で説明できるものであってほしいと思う。あの人は最後はどうなったのかなどと想像する余地もないくらいに、痺れるような論理で白黒はっきりつけてほしいのである。

  • なんか思ってたのと違う、、が正直な感想。
    前情報無しで読んだからかな?
    比喩や冗談ではなく本当にこの世の果てが舞台の物語。世界が終わることが確定している世界で起こった殺人。この状況でだれがどうして殺人を犯すのか。個人的には、このwhyが最も重要な部分だと思って読んでいたから、なんか、、残念、、かな。

    実際にこんな世界になったら自分はどうするだろう。とずっと考えながら読んでいた。家族がいるなら最後まで生き延びる道を模索するだろうか。一人きりなら死を受け入れるだろうか。案外逃げずに留まって死を選ぶ人が多いのかな。。。
    そんな感想になるのは、このミスや本屋大賞ではなく江戸川乱歩賞だからなのかなとも思ったり。

  • 終末ものを読んだときいつも思うのは、自分だったらその時を誰とどう迎えるかっていうこと。どうあがいても区切られた命の期限が変えられないとしたら…
    警察が機能していない中で起こる殺人事件、イサガワ先生とハルちゃんのコンビがそれぞれの思いを抱えながら犯人を追っていく。
    (結局ただのサイコパスなクズ野郎が犯人だったことにはムカついた)
    絶望的な状況にあってもなぜか読後感は爽やかだった。

  • 特殊な世界観で最初から驚きの連続でした。
    一瞬でコロコロ話が変わってしまうぐらい展開が早くて面白かったです。

  • 大宰府自動車教習所に通うハル。教官のイサガワ先生と山道教習に出ると、異臭がひろがり目の前に枝から下がった人体がフロントガラスにぶつかった。山に入ると一面首つり人だらけだった。・・母は少し前着の身着のままで逃げ、父は昨日自殺しました。弟はひきこもりです、と聞き出す先生に答える。先生は「それでお父さん、もう埋めたの?」・・え? どういう状況? 

    と思うと、もうすぐテロスという惑星がこともあろうに阿蘇に衝突する、という状況。日本人は大方国外に逃げ出している様子。次は高速教習で、車のトランクを開けるとなんと惨殺された死体が入っていた。さらに福岡とか他に2件の刺殺死体が上がっている様子。

    実は教官のイサガワ先生は元警察官で、ハルと殺人を捜査することに。

    この惑星衝突を避けて人が逃げ出して荒廃した状況、というSF的設定が新鮮。でも雰囲気はSFではなくあくまでも普通のミステリーという感じ。殺人の動機自体は犯人が言うにはこの荒廃とリンクしているのだが、実のところこの犯人は荒廃状況が契機になっただけで、その萌芽はあったのではないか、という気がした。

    かなり昔のドラマ「ぼくらの勇気 未来都市」をちょっと思い浮かべた。キンキキッズが出ていたもので荒廃した都市が舞台だった。検索してみると1997放送で、幕張が舞台で微生物により町が荒廃、という設定だった。

    著者1998福岡県生まれ。
    2022年、第68回江戸川乱歩賞を受賞した本作でデビュー

    2022.8.22第1刷 図書館

  • ずっと読みたかった本が図書館にあったのを見て即貸し出しました♪表紙イラストの空の色が素敵です。
    お話の舞台は福岡。
    この本の世界では2023年の冬ごろだけど、あと2ヶ月で世界は終わるというのに運転免許をとるため、主人公のハル(23歳)が自動車教習所のイサガワ先生から運転を教わる。
    ある日、教習車のトランクを見ると女性の死体を発見。
    世界は終わるというのに、何のために犯人は殺害したのか?
    ハルはなぜ今になって運転免許を取得しようとしているのか?
    個人的には後半から面白くなっていって一気読みでした!

  • これがデビュー作…。圧倒されました。
    特殊設定だけど、その世界観を脳に理解させるのに、なんの抵抗もなく物語に入り込める書き出しで、気付けば夢中になってました。
    あらゆる設定が、いいな!と思います。メインとなる女性2人も良いし、そこに加わる人物の要素や物語が進むにつれ関わっていく場所など。
    残酷だと思うし、つらいと感じる場面もあるけれど、読後感も悪くなくて良かったです。
    詳しく書くのはどうかと思うので、こちらのレビューは短めに。

  • 数か月後、地球に小惑星が衝突してもうすぐ世界は滅亡する。
    そんな中起きる殺人事件。
    もう設定がすごい。
    先生の「まだ地球は終わってない」というセリフが好き。
    確実になくなってしまう世界で未来はないかもしれないけど、まだ自分は生きているから今はある。
    今を精一杯、自分に嘘をつかずに生きている姿は素晴らしいと思った。

  • 面白かった!一気読みでした。
    読後の心地いい疲労感は久しぶり。

    「二ヶ月後、隕石が地球に衝突し滅亡する」
    社会は機能を失い、人々は隕石衝突地点の日本から脱出しようと町からはどんどん人が消えていく。
    そんな状況で自動車教習所に通う主人公と教官のイサガワが「死体」を発見。
    一体どうなるのかーー。

    終末期の人類のパニックを描きながら、殺人事件の犯人を追う幾つも見処のあるストーリー展開。
    これは途中で止められない!
    緊迫したシーンでは知らず知らず肩に力が入ってしまった。

    ミステリーを読み終わったあとの爽快感が気持ちいい。
    さすが江戸川乱歩賞受賞作。面白かったです!

  • 世界観が割としっかりしていて良かった。
    犯人は、世界観の割に釣り合ってないと感じた。
    ただ展開は臨場感があって良かったと思う。

    作中のような隕石じゃなくても、この世に水爆などの兵器が使われたら同じように地球を粉塵が覆って人類含め多くの生物が亡くなる可能性が高いわけで、戦争が起きてる今タイムリーすぎて暗くなった。
    もうみんな平和に生きよう?権力も金も最後に残るのは虚しさだけだろうに。

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著者プロフィール

1998年福岡県生まれ。九州大学文学部卒。2022年第68回江戸川乱歩賞を本作で受賞しデビュー。

「2022年 『此の世の果ての殺人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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