- Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
- / ISBN・EAN: 9784065331439
感想・レビュー・書評
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いやー、参った。
昭和感漂う大作をアイドルを肩書きとする彼が書いてしまうとは…。
恐れ入りました。
前作が高校生直木賞などで話題となったけど、イマイチ刺さらなかったが、今回はあらすじを読んでこれはと思い手に取ったら大正解だった。
登場人物が多く、人間関係が複雑だから、頭の中で相関図を描きながら読み進めた。
参考文献がとても多く、しっかり調べ上げて書いたことがよくわかり、彼の並々ならぬ努力、思い入れがが伝わった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
いやぁ、驚いた!これをまさか現役アイドルが書いたとは。
正直、期待していなかったんですよね。『ニュース』の加藤シゲアキが何冊か小説を書いていたのはもちろん知っていたんですが、絶対に面白くないだろうと。
でも、この『なれのはて』はみなさんの評価も高く、なんとなく手にしてみましたが、いやぁ、驚いた!これをまさか現役アイドルが書いたとは!となるわけです。
報道を外された守谷の異動先となったイベント事業部。正直気が入らない仕事だが、ある絵をきっかけに時代を超えて絵に関わる人たちが動き出す。
吾妻の祖母が所有する『ISAMU INOMATA』のサインがある一枚の絵。この絵の展覧会を開こうと奮起する守谷と吾妻。その著作権を調べていくうちに絵にまつわる壮大な物語が展開されていく。
いやぁ、面白かった!一枚の絵からこんな展開に発展していくとは。もし、私と同じようにアイドルの小説かぁと思っている人がいたら、その色眼鏡を外して読んでみてください。読み終えた時にはその偏見はすっかり消えて無くなっていますから。 -
読書備忘録809号。
★★★★★。
ブクログレビュアーさん皆様のひとことめ。
「イヤー、参った!」
まさにこれです。
加藤シゲアキさん。
アイドル業も作家業も本業と自信を持って発言されるだけあります。フジ系列の「タイプライターズ」終わってしまった・・・。寂しい!
最終回の辻村深月さんの会に直木賞発表の日のドキュメントをやっていましたが、この作品が直木賞になっていたとしても全く違和感がない。
オルタネートは「ふ~ん」でしたが、今回はそれほどの大作でした。
主人公守谷京斗。TVキー局JBCの社員。
報道畑だったが、訳あってイベント事業部へ異動となった。報道命だった本人からしたら、終わった、という異動。ただ、異動した事業部には、熱き社員吾妻李久美がいた!
吾妻は自ら企画したイベントを実現したい想いがあり、報道で活躍した守谷にアドバイスをもらう。ひとつのイベント構想が目についた。1枚の絵画の展示会。それは吾妻の祖母が所持していた1枚の絵画。絵に心を奪われた吾妻はこの絵画の展示会を実現したいと思った。
絵画のサインは、イサム・イノマタ。
誰?この人。
展示会の開催に、著作権という大きなハードルが立ちはだかる。
作者に承諾をえる。または、著作権は一定の期間で消滅するので、本人が存命かどうか。もう亡くなっているならいつ亡くなったのか・・・。
そして、守谷と吾妻のイサム・イノマタ探しが始まる!
守谷は報道の同僚にイサム・イノマタという画家の調査を依頼する。浮かび上がってきた情報。
秋田県で1961年1月4日に、猪俣傑が焼死した。その弟、勇が1960年の大みそかに行方不明になっていた。猪俣勇がイサム・イノマタなのか?
守谷と吾妻は秋田に飛ぶ。守谷は報道時代の伝手で秋田県警の長谷川を伴って猪俣家へ。
そして、秋田の石油に翻弄された猪俣一族の数奇な歴史が明らかになっていく!
猪俣家の黒歴史のプロットが凄まじいです。加藤さん!凄い!
最近多いですが、備忘録とは言えこの作品の根幹なので絶対に書けない!
なので、登場人物からのちょっとしたサワリを。
傑と勇の父、兼通。油に魂を持っていかれた悲しい男。
傑。兼通が興した猪俣家の品格を保つために暴走・・・。
勇。太平洋戦争終戦前日に最愛の人、及位(のぞき)君衣を失った。油のせいで。そして愛する人の忘れ形見を引き取る。絵を描くことがすべて。
輝。悲しい出生。しかし猪俣家の為にすべてを捧げた男。
及位道生。勇に引き取られる君衣の弟。発達障害。加えて、絵を描くことに対するサヴァン症候群。
忘れてはならないのは主人公のバックグラウンドの物語。これもこの作品に厚みを持たせている重要な要素。
守谷は実家の造り酒屋を継いでほしいという親の気持ちを踏みにじって報道の道に。実家との関係を勝手にギクシャクさせていた。
そして吾妻。母は干渉が半端ない毒親。干渉から抜け出すためにメディアの世界へ。
猪俣家の調査を通して、自らのルーツである実家との係わりに変化が出てくる。
そして肝心のイベント。怒涛のエンディング!長い長い前半、中盤を乗り越えたエンディング。一気に★5つの要素となりました。最終ページ443P。読者の全員が望んでいたエンディング。目からジュースが!
ホントに良かったぁ。
しかし、作品タイトル。なれのはて。
読了後に思うのは、悪い意味でのなれのはて。加えて、最終形態として良い意味でのなれのはて。
守谷のなれのはて。吾妻のなれのはて。エンディング2人(ネタバレなので言えない)のなれのはて!
とにかく登場人物が多い!メモしながら読まないとヤバい!登場人物というページが欲しい作品でした!
加藤さん!次の作品をお待ちします!-
2024/03/10
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すみません、勘違いしてた、加藤さんでなく勇が書いた絵ですね!
どっちにしろちんぷんかんぷんなので読みたいですが…予約59人…
買うしか…すみません、勘違いしてた、加藤さんでなく勇が書いた絵ですね!
どっちにしろちんぷんかんぷんなので読みたいですが…予約59人…
買うしか…2024/03/10 -
2024/03/10
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「なれのはて」のタイトルのように、すべてのなれのはてを垣間見たような壮絶な作品。ミステリであり、壮大な人々の人生であり、一枚の絵から様々な物語が出来上がりとても面白かった。
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巧みな情景描写に操られて異世界へ。闇を覗いた罰で這い上がれず、数奇な運命に共鳴、心が傷む。なのに、埋め合わせのように癒しを求めてるのナンデダロウ?自分の成れの果てはウスバカゲロウでアリたい。
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加藤シゲアキ頑張った!
と上から目線なのは申し訳ないのだが、一気読みする面白さ。
それと同時に、前半と最後の帰結の素晴らしさに比して、途中から粗筋を追っているような書き方が残念。直木賞を逃したのはここらへんなんだろうなと思いながら読んだ。これを高村薫なんぞが書いたら、400ページ上下二巻で描き尽くしちゃったのでは?小川哲でもやっちゃうかな。
テーマのあまりの壮大さに筆が走ってしまったというか。そもそも400ページにまとめ切れるテーマではないのだと思う。どうしてそんなことをしたのか?という一人一人の理由が今ひとつ見えてこないのが残念。いつかわかる、と思って読んでたら終わってしまったという感じ。
選考委員がまたチャレンジしてほしいと言ったのもよくわかる。
いや、それでも十分楽しめました!
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オルタネートに続き、加藤シゲアキさん2冊目。
何とも力強い、ふたつの「なれのはて」の物語。
たった1枚の絵から始まる、重厚な、時代をまたいで繰り広げられる、一族の夢と遺根と愛の物語。
ひとつひとつ謎が明らかになって、明らかになったことでまた新たな謎が生まれて。全く展開の予想がつかなかった、最高の社会派ミステリ。
戦前から戦後の地方の様を、ここまで巧みに描き出せるものかと感嘆しました。登場人物達の息吹が、これでもかと言うほどに伝わってくるほど、緻密な文筆です。登場人物ひとりひとりの、守谷の、吾妻の、小笠原の、長谷川の、八重の、君依の、兼通の、傑の、勇の、道生の、輝の、生き様がありありと感じられます。
最初は芸術的な感じだなァとしか思えていなかった表紙が、読み終えた後に改めて見ると意味が変わる。さすがすぎる。 -
惹きつけられる力のある一枚の絵。
その絵をめぐり、壮大なストーリーが展開する。
加藤シゲアキ天才。
伏線の回収もお見事。力作。
本の世界に入り込めた。面白かった。
日本で原油が取れること知らなかった。
覗き込むと黒い液体が。
「なれのはてです。」
これを作ったのが輝の父。たった1人で。
輝が自分の親について真喜夫さんから教えてもらった時の言葉。それがタイトルに。
絵を描いたのは、イサム・イノマタではなく、
勇と一緒に生活をしていた及位道生。
スピンオフで道生さんの話をもっと知りたい。
吾妻のお母さんは、道生さんのこと、絶対に知っていると思った。やっぱりと思った。
守谷さんも、小学3年生の時に道生さんに助けてもらっていたこと、思い出せたのは奇跡。
ラストの感動は大きかった。
素晴らしい話だった。
直木賞は受賞できなかったけれど、加藤シゲアキさんの話はどれも面白い。
次作も必ず読む。
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なんとか直木賞発表までに間に合った。他作品を読んでいないから、比較はできないけれど、ものすごい力作であることは確か。一体この作品を書き上げるためにどれだけの取材と勉強をしたのか計り知れない。
初めの方は、過去の事件を紐解いていくスタイルや、絵画の謎、報道の仕事などが『存在のすべてを』と重なって見えて、比較読みできるかなと思いながらのんびり読んでいたけれど、そこに戦争というワードが絡んできたあたりからゾクゾクした。
登場人物が過去から現在にわたっているので、年表と家系図を作りながら読んでいった。読書ノートも何ページも使って。それだけのスケールがある作品だった。
これは余談だが、明日は直木賞発表前のインスタライブをやるとかやらないとか。文学賞は一般の人たちにはあまり興味を持たれにくいけれど、アイドルという立場を利用して読書や文学の面白さも伝えている作者を尊敬するし、これからも応援したいと思う。