- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087205220
作品紹介・あらすじ
経済は破綻し格差は拡大する一方、将来への希望を持つことが難しい日本にあって、「幸せ」は遠のくばかりと感じている人は多い。しかし、実は日本人は自ら不幸の種まきをし、幸福に背を向ける国民性を有しているのではないか-。精神科医、心理学者でもある作家が「幸せになれない日本人」の秘密を解き明かし、幸福になるための発想の転換法を伝授する。追い求めている間は決して手にいれることのできない「幸福」の真の意味を問う、不幸な時代に必読の書。
感想・レビュー・書評
-
幸せとは幸せだと認識できること
自己の認識を変える以外に幸せになる方法はないと思う
今の自分が不幸だと思うとき、周りの環境や人がそう思わせているのであって、それが事実ではないということを認識しなければいけない
✏自分の苦悩にばかりアンテナを向けていると、どんどん視野が狭くなり、客観性も失われていく。自分が誰よりも不幸に思えてきて、周囲の人が抱えている痛みに鈍感になり、人間関係にも悪影響を及ぼしかねない。
✏真に悩む、悩み抜くとは、自分の苦悩を材料に考え抜くということ。普段から何か問題が起きたときに、その遠因と近因を多角的、客観的に分析し、今の自分にできる対策は何かと考える習慣のある人は、自己憐憫の罠や自分の不幸を誰かのせいにしたくなる心の動きに、そう簡単に飲み込まれない。
✏人はときどき、何が自分を幸福にするかについて間違った理論を作り上げ、それに基づいて欲望を形成した結果、ミスウォンティングをおかすことになる。
✏確固たる「個」は、自分の頭で考え抜くと同時に、互いの意見をぶつけ合いながら人間関係を深めていったり、ときには周囲の声に抗ってでも自分の意思で選択し行動することによってしか鍛えることができない。
✏必要なのは、変えることのできないものを受け入れる冷静さ、変えることのできるものを変える勇気、その2つを見分けるための知恵
✏周囲の環境や運ではなく、その人が世界とどう関わっていくかという、人間の生きる姿勢が幸福を作る。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
アーティストとして生きている中で、同時に心理カウンセラーを志して、心を扱う本をたくさん読みました。
その中でも「不幸な国の幸福論」は、身にしみた本の一つです。
7年前、アジア各国を巡っていた頃を思い出しました。
第三章「幸福は「しなやか」な生に宿る」を読んでいた時です。
以下、僕の体験です。
アジアで見かける多くの外国人(僕を含めて)は、裕福だからこそ、その地に降りたって、ここぞとおいしいものを平らげていました。
そのほとんどが、肥満体型で、現地の人のほとんどが普通かそれ以下にやせ細ってる。
食べ物に困っている国の中にいて、その場所で、私たちはぶくぶくと太っていて、とてもいけないことをしているような・・・
そんなことに気づいていきます
食べ物と同じように、これで充分と思えば、充分幸せなのに、「もっともっと」と思ってしまう。欲求は絶え間ありません。
そのことが本当に幸せなのか?
「不幸な国の幸福論」を読んで改めて気づかされました。
程よく、今日、食事にありつけたことで幸せを感じられる人もいる。
反対に、「もっともっと」とおいしさ、高級感、食べる量にたいして、絶え間ない欲求を発っし続ける人もいる?
(そのほとんどが先進国に人なんだけども・・・)
今の自分を幸せと思えなければ、新たな欲求がやってきて、自分はその欲求に従う生き方をしてしまいそうです。
自分がほしがればほしがるほど、弱者から結局は奪っているものもあると言うこと。
とりわけ日本では、現状維持、今の自分に満足するという考え方が情けないことのように言われることもある。
でも、この本を読んで、改めて思ったことが、
今を幸せに思いたい
ということでした。そして、新たな欲求に従わずに生きられることで、自分自身、なにに従うべきか、じっくり考えることができるのかと思います。
一読者として、著者 加賀乙彦先生には、お礼を申し上げます。
ありがとうございました。 -
先日、鬼籍に入られた精神科医でもある作者のある意味本業とも言える内容の作品。毎年3万人の自殺者を出す日本人の一見恵まれているようで不幸な国民の為の幸福論。
自分が必要とされていると思うことが、人間を強くする。ヴィクトール・フランクル「夜の霧」を読んでこんなまとめ方をしています。【すべての人間は全宇宙にたった一度、二つとない在り方で存在している。そしてその一回性と唯一性が他に類を見ない、人それぞれの運命をもたらす。一人ひとりの人間に備わっているかけがえのなさを意識したとたん、生きること、生き続けることに対して私たちが担っている責任の重さに気付かされる。その責任を自覚した人間は、生きることから降りられない。もし運命があなたを苦しめるのなら、その苦しみを引き受けることに、二つとない何かを成し遂げる、たった一度の可能性がある。人間が生きることには、常にどんな状況も意味がある。苦しむことにも意味があるのだ。だから、人生に期待するのをやめて、人生から自分が何を期待されているのか考えよう。】
そして、寿命があることによって逆に命の尊さと充実を感じることが出来る、例えば本人も本書執筆した2009年にはちょうど「雲の都」を創作中であり完結する前に死を迎えるだろうと書いていましたが、無事2012年全5巻完結させることができたのは何よりでした。合掌。 -
なぜ幸せを感じられず心を病んでいくのか? の説明が的確で超納得。心の病気を扱う医師ゆえこうした説明も難解になりそうなものだが、とても端的でわかりやすく、すっと入ってきます。
自分と向き合い考え抜く力の重要さを改めて強く感じました。
「足るを知る=諦めるというのは単に断念することではなく、あきらかに見極めること」という文にも腹落ちでした。
少し前に加島祥造氏の老子本を手に取ってみたものの、文体がどうも受け付けず挫折した私。加賀さんの現代訳本があったら嬉しいなぁと思ったり。
フラットな視線で綴られた前半に比べ、老いと死についての章は温度がぐっと高くなる感じ。筆者自身の思い入れの強さが伝わってきます。
そして特筆すべきは語り口の優しさ。経済発展の歴史に対する苦言すらソフトな味わい…加賀さんがまたちょっと好きになりました。 -
特に教師という職業に従事されている方には必読書にして頂きたい一冊。
小学校の道徳やホームルームの時間に充てて欲しい。
齢八十を超えた精神医学者が著書であるが、そのせいか語り口がとても柔らかい。また、戦争を経験している世代でもある。
もちろん、教師以外の方にも推薦図書です。
近年稀に見る良書。 -
「経済は破綻し格差は拡大する一方、将来への希望を持つことが難しい日本にあって、「幸せ」は遠のくばかりと感じている人は多い。しかし、実は日本人は自ら不幸の種まきをし、幸福に背を向ける国民性を有しているのではないか-。精神科医、心理学者でもある作家が「幸せになれない日本人」の秘密を解き明かし、幸福になるための発想の転換法を伝授する。追い求めている間は決して手にいれることのできない「幸福」の真の意味を問う、不幸な時代に必読の書。」
目次
第一章 幸福を阻む考え方・生き方
第二章 「不幸増幅装置」ニッポンをつくったもの
第三章 幸福は「しなやか」な生に宿る
第四章 幸せに生きるための「老い」と「死」
あとがき
加賀乙彦(かがおとひこ)
1929年生まれ、作家、犯罪心理学者。 -
感想
自分の立場を客観的に見る。何か起きた時に自分を可哀想と思いすぎない。いつまでも引きずり嫉妬が心を蝕む。幸福になるために冷めた頭で考える。 -
悩み抜いて自分を客観的に見ること。自分があの人と同じ立場だったら幸せに思うのか。
考え方、ものの見方を変えて誰かに貢献すること。
希望を持つこと。 -
東大の医学部で犯罪心理学と精神医学を学んだ経歴を持つ医師で、小説やエッセイなどを手掛ける作家としても活躍して日本の「文化功労者」にも選ばれた加賀氏による幸福論。終身雇用や年功序列という従来の「日本型システム」が崩壊し、若者が将来への希望を持つことが難しい今の日本において、その原因が、自ら不幸の種蒔きをする日本人の国民性にあると指摘する。筆者は本書の出版から30年近くを遡る1980年に「生きるための幸福論」(講談社現代新書)という著書を出しており、物質的に豊かになった日本人が果たして「本当の幸せ」を手に入れているのか、という疑問をずっと世に投げ続けている。
-
他人の目を気にしすぎない。
しなやかに生きる