- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087211856
作品紹介・あらすじ
パンデミックで注目を集めた3人の論者が
これからを生きる拠り所となる哲学を語る!
コロナによる初の非常事態宣言後、新聞紙上などでいち早くウイルスとの共生を訴えた生物学者・福岡伸一、コロナ禍で注目された「利他」を学問として研究する美学者・伊藤亜紗、「パンデミックを生きる指針」が大反響を呼んだ歴史学者・藤原辰史。
感染症拡大で混迷を極める世界を考える上で、示唆に富む視座を提供する3人が、今の政治、経済、社会、科学から抜け落ちている「いのち」に対する基本的態度――「生命哲学」を問う。
今こそ、「個々の生命に価値がある」ということを守らなければ――福岡伸一
耳を傾けることによって、自分の思い込みから自由になれる――伊藤亜紗
負の歴史を直視することで現在を生きる指針に変えられる――藤原辰史
新型コロナウイルスがもたらす危機の多くは、人類史にとって新しい危機ではない。
しかも、確認される危機のかなりの部分が、私たちが身近に感じてきたり、私たちが見て見ぬふりをしてきたりした危機である。
「ポスト」(post/後の)コロナの課題は、「アンテ」(ante/前の)コロナの課題の継続もしくは発展であることが、ここでは確認されていくだろう。
ポストコロナに新しい時代を創造しよう、と粋がる人も多いが、実際は、アンテコロナに山積した課題をみんなの課題として取り組むタイミングがやってきたと考える方が正しいと思う。(「はじめに」より)
NHK BS1スペシャルで大反響を呼んだ「コロナ新時代への提言2 福岡伸一×藤原辰史×伊藤亜紗」の番組内容や未放送シーン、さらに新たな鼎談を加えて完全書籍化!
【目次】
序 自然(ピュシス)の歌を聴け――福岡伸一
はじめに 藤原辰史
第1部 論考・コロナが投げかけた問い
第1章 コロナは自然(ピュシス)からのリベンジ――福岡伸一
第2章 思い通りにいかないことに耳を澄ます――伊藤亜紗
第3章 コロナがあぶり出した社会のひずみ――藤原辰史
第2部 鼎談・ポストコロナの生命哲学
第4章 漫画版『ナウシカ』の問いかけ
第5章 共生はいかに可能か
第6章 身体観を捉えなおす
第7章 ポストコロナの生命哲学
おわりに 伊藤亜紗
【著者プロフィール】
福岡伸一(ふくおかしんいち)生物学者。青山学院大学教授。ロックフェラー大学客員研究者。著書に『生物と無生物のあいだ』など。
伊藤亜紗(いとうあさ)美学者。東京工業大学教授。著書に『どもる体』『記憶する体』『手の倫理』など。
藤原辰史(ふじはらたつし)歴史学者。京都大学准教授。著書に『ナチスのキッチン』『戦争と農業』『分解の哲学』『縁食論』など。
感想・レビュー・書評
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パンデミックで大注目の論客、福岡伸一・伊藤亜紗・藤原辰史がこれからを生きる指針を語る!『ポストコロナの生命哲学』(集英社新書)9月17日(金)発売|株式会社集英社のプレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000263.000011454.html
ポストコロナの生命哲学/福岡 伸一/伊藤 亜紗/藤原 辰史 | 集英社の本 公式
https://books.shueisha.co.jp/items/contents.html?isbn=978-4-08-721185-6詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
最近推しの学者さん、伊藤亜紗さんと福岡伸一さんの組み合わせに、読まなきゃと刺激を受ける。
藤原辰史さんからは『ナウシカ考』につながる話題があって、あー、買って良かったなと、満足。
全体を統括しているのは、ロゴス(言葉・理性)とピュシス(自然)というキーワードだ。
そもそも、ウイルスも、人間のピュシスとしての生に深く関わる存在である。
だから、ウイルスを根絶させる、戦って人間が勝つという言葉に違和感を覚えるということだった。
そこで、ロゴスとしての社会は、人の生き方をコントロールするために手を伸ばす。
行動に制限をかけ、相互に監視を強め、それを善いこととして一方的に価値づけてしまう。
アフターコロナの世界では、そうした大きなシステムに対して疑いの目を持つことの必要性を説く。
けれど、私たちは、安全で清浄な社会に、随分と深く浸ってきたのではないだろうかと思う。
危険で汚いものは、悪と見なしていることと、同じ意味でもある。
そのことが、システムとサービスによって、さらに徹底され、維持されて欲しいと願っている。
これは結局、『ナウシカ』の墓所と変わらない。
私たちは、ナウシカと共に墓所を破壊出来るか?
三人の視点は、これかこれ!と整然と分けられるものではなく、ぐちゃぐちゃと入り混じった混沌に向けられている。
伊藤亜紗の「さわる」と「ふれる」の違いも、藤原辰史の「もれる」の生命との結びつきも、考えてみると、とても面白く魅力的だ。
科学への比重から哲学へ。
分析しても見えなかったものを、直観する。
先日読んだ『科学と哲学』ともピタリと符合して、良かった。 -
“人間とは、不思議な生物である。脳を肥大化させたおかげで、自然の中に因果律を見出して、過去から未来を予言できるようになった
それだけではない。遺伝子の掟から逃れた。遺伝子の掟とは端的に言えば「産めよ増やせよ」である。種の保存よりも、個の価値に重きをおけた”
新型コロナウィルスが全世界のヒトの活動を封じ込めたのは、つい最近。私は、神の采配かな、という印象を受けた。『コミュ力』とかいって、コミュニケーションが得意な人に利点があるとされていた社会で、それが「なるべくコミュニケーションを控えるように」と根底から前提が覆された。世界中で活動が止められて、高速で何かに向かって走り続けていたヒトたちが、止まらざるを得なくなった。ヒトは、やりすぎたんじゃないか。
ヒトは社会を作り、論理(ロゴス)を手に入れて、自然(ピュシス)を理解し、解明したつもりになっていた。
自然(ピュシス)は山や川や森だけじゃない、ヒトこそが自然である。自らの身体が最も不確かな自然であることをすっかり忘れてないか?
3人のNHKでのインタビュー番組に鼎談を追加したこの本。しかもこの3人を繋いだのは漫画版「風の谷のナウシカ」だという。話の中にもナウシカの漫画のストーリーが出てくる。ナウシカをヒントにコロナ後の時代を考えるというテーマでもあった。これは、ナウシカ読み返さなきゃ。 -
学者の方が語り合う。
難しい。 -
新自由主義の行き詰まりから利他主義が、そしてコロナ禍からも利他のキーワードが出てきた。ポストコロナは、経済も哲学も利他かな。
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シブ知 7・3
かかった時間 150分くらい?
NHKの鼎談をもとにした新書。話題の3人がコロナについて語るなかで、自身の問題意識とか生命とか肉体とかについて語る。読みやすい。
福岡伸一はまあ置いといて、伊藤亜紗の「ままならない肉体との共存」の話とか、藤原辰史の「きれいすぎるものはヤバい」という話は、発見があったり、共感できたりするものだった。
3人の共通点として「ナウシカ」(漫画版)があったらしく、鼎談でも重要な話題になっていた。とても面白そうなので買おうかなと思った。 -
いやあ本当に良い本だった。NHKの番組も見ていて、それも良かったのだけれど、やはり本の方が数倍良かった。一貫したテーマは「ピュシスの歌を聴け」ということ。最近、YouTubeで養老先生の語りを毎日聴いているので、そこにあったことばとごっちゃになっているのだけれど、でもまあ同じようなことを言われているのは間違いない。ピュシス(自然)には良いことも悪いこともあるけれど、それらをひっくるめて受け入れていくよりない。ロゴス(ことば、論理)によって世界を切り開いて来たために、ピュシスの反逆にあっている。いや、それは人間がそうとらえているだけであって、ピュシスにとっては自分たちの振る舞いをふつうに行っているだけなのだろう。養老先生は数字を信用しないと言っていたが、その気持ちもよくわかる。もっと自分の感覚を信じた方が良い。しかし、そのためにはもっとピュシスを感じた方が良い。そこで通学時間を30分以上に設定するなんていう提案をされていた(これは養老案)。知り合いがコロナの後遺症で常にたばこ臭いと言っている。感覚を狂わされてしまうのだとしたら、これはやはりピュシスの反逆なのかも知れない。最後に、伊藤亜紗さんが「『感じる』力を取り戻す」と言っている。大切なことだと思う。美学者が重要だがテーマにしたことがない「なぜ感じると人は元気になるのか」という件を読んで一瞬エロティックな意味にとってしまい「ドキッ」としたのだけれど。さてさて、「ナウシカ 漫画版」を全巻そろえるかどうかが目下のところの悩みだ。基本的にマンガは一切我が家にはない。良いマンガがあるのも知っているし、昔は「ガロ」とか買って読んでいたけれど、もうとにかくかさばるので買えない。かと言って、読むのなら紙の本がいいし。図書館を使うこともできるが、でも良いものは持っていたいし。ああ本当に悩ましい。
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色々な視点から見た考え方に目からウロコ
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福岡さんの 動的平衡関係、生物と無生物のあいだ
に入り込んで、このほんをコロナという切り口から購入! ナウシカのアニメ映画化でも今を写すなあと感動してたのに、アニメの方が更に問題提起が重たかったとは! 買おうかとも思いましたが、この時期にもっと心が重くなるのではと躊躇。
鼎談の内容が高度でなかなかついてはいけなかったけど、気付きを沢山いただきました! -
2022/02/14 amazon 924円