光の帝国 常野物語 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 12570
感想 : 1381
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087472424

作品紹介・あらすじ

膨大な書物を暗記するちから、遠くの出来事を知るちから、近い将来を見通すちから-「常野」から来たといわれる彼らには、みなそれぞれ不思議な能力があった。穏やかで知的で、権力への思向を持たず、ふつうの人々の中に埋もれてひっそりと暮らす人々。彼らは何のために存在し、どこへ帰っていこうとしているのか?不思議な優しさと淡い哀しみに満ちた、常野一族をめぐる連作短編集。優しさに満ちた壮大なファンタジーの序章。

感想・レビュー・書評

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  • 恩田さんの書いた独特で壮大なファンタジー。超能力を持った常野一族の物語。恩田さんの考える不思議な世界観で難しく、内容が深い。登場人物が常野を軸に少しずつ繋がっていて面白い。

    常野の意味は、「権力を持たず、群れず、常に在野であれ」だ。超能力があっても普通の人と同じように穏やかにひっそりと生きていて身近に感じる。だが、超能力があるから迫害されたりもしている。常野一族と同じように現代社会でも人より何かとても優れている人にはとても憧れるが、彼らも大変な思いをしていて、悩みもあるのだろう。

    私は超能力なんてないが、権力なんか考えず、穏やかにひっそりと生きていきたい。恩田さんのファンタジーは不思議な魅力があり、なぜか爽やかな読後感を感じさせてくれる。

  • 特殊能力を持つ一族の物語。
    その能力の持ち主であることがわからないように暮らす一族。
    科学的に有り得ない超能力を持つ人が出てくる話は好きだ。

    9編目の「黒い塔」は特に面白かった。
    実は私自身も宙に浮くことができて、しばしば(睡眠中に)泳ぐように空を飛んでいる。

    「蜜蜂と遠雷」で出会った恩田陸さん、こんな小説も書くんだと思いながら読んでいた。
    10編からなる短編集の最後「国道を降りて…」で、突然「蜜蜂と遠雷」と繋がった。
    冷静に考えてみれば、聴衆者の心を震わす一級の楽器の演奏者、まさしく特殊能力の持ち主ではないか。
    物静かで自己主張しない日本人・律のチェロの演奏の描写も「蜜蜂と遠雷」のそれと重なった。

  • 10の作品からなる短編集でした。様々な特殊能力を持つ常野由来の人々のお話ですが、それぞれの物語のタイトルがとても気に入りました。「大きな引き出し」なので「しまう」、「オセロ・ゲーム」だから「裏返す」、「歴史の時間」は「思い出す」、まあ「草刈り」は「草刈り」だけど。こんなところに独特なリズム感も感じながら一気に読み切りました。

    短いながらも印象に残る作品も多かったです。冒頭、「大きな引き出し」では不覚にも涙してしまいました。これは予想外で、そういう作品がこの後も続くのかと身構えましたが、個人的には涙はここが山場でした。「光の帝国」は不気味な雰囲気が少し気になりましたが、短くも起承転結がはっきりしており、とても読み応えがありました。あとは「二つの茶碗」「歴史の時間」「黒い塔」の緩やかな繋がり具合も登場人物を整理しながら連作のように楽しみつつ読みましたが、最後の「黒い塔」はタイトルからは真逆の暖かさをとても感じる作品で深い余韻に感じ入りました。

    そして最後の「国道を降りて…」です。何かが動き出すような、ゆっくりと胎動し始めたかのような予感を感じさせる終わり方。この作品はこの本のこの場所にふさわしい、とてもふさわしい、そう思う一方で実のところ頭の中に浮かんだのは「蜜蜂と遠雷」でした。そうか、この二人が20年の時を経て、楽器を変えて…なんて脳内妄想に走ってしまいました。

    恩田さんご自身が後書きに書かれているとおり、「手持ちのカードを使いまくる総力戦」の一冊、常野由来の人々のお話という前提の元、随分とバラエティに富んだ10の景色を見せていただきました。

    • yyさん
      さてさて さんのレビューを見て、これは読まなくてはと思い、手に取りました。期待を裏切らない作品で、愉しいひと時を過ごさせていただきました。
      さてさて さんのレビューを見て、これは読まなくてはと思い、手に取りました。期待を裏切らない作品で、愉しいひと時を過ごさせていただきました。
      2021/02/06
    • さてさてさん
      yyさん、こんにちは。
      この作品、常野由来の人々を堪能できる作品で私もとても好きです。恩田さんならではの世界観の物語。言葉の使い方の面白さも...
      yyさん、こんにちは。
      この作品、常野由来の人々を堪能できる作品で私もとても好きです。恩田さんならではの世界観の物語。言葉の使い方の面白さもあって、一気に読んでしまいました。是非、他の常野由来の作品も読まれることをおすすめします。
      今後ともよろしくお願いします!
      2021/02/06
  • 再読。10年以上前に読んで細部は忘れてたけれど読み進めるうちに感動がよみがえった。『しまう』『裏返す』の言葉は自分の中で流行ったなとか‥『お祈りの言葉』は忘れがたい。優しくて哀しくて愛おしい全て詰まったお話。

  • 気になっていたのに、なぜか手に取らずに来てしまった作品。
    『時期じゃなかった』のかな?
    でも、今回、ブクログのレビューを見て「読まなくちゃ!」と思い、
    図書館検索をしました。
    そうしたら、なんと『閉架』扱いに!

    人目につかない書庫から出てきたこの作品は、
    不思議でちょっぴり怖くて、そして温かい気持ちにさせてくれました。
    たとえ特殊能力を持っていなくても、権力を持たず、群れず、
    常に在野の存在でいられる人たちがたくさんいたら、
    世界はどんなに穏やかになることでしょう。

    読み進めると、あの衝撃的に美しい『蜜蜂と遠雷』の世界へと
    ゆっくり流れていく感じがします。
    もしかしたら、あのコンクール会場の客席に
    ツル先生が座っていたのかもしれない…と、つい妄想してしまいました。

  • ファンタジー!
    密やかに暮らす異能の者。子どもから大人になるときに、その能力に気づく。大人たちは子どもを守りながら、この世界での自分たちの立ち位置を探している。
    根底に流れるのは、優しい心だ。

    続編もぜひ読みたい。

  • 常野一族はAI、ロボットのような能力を持つ正真正銘の人間。無限にしまえる(記憶できる)力、未来がわかる力、遠耳(遠くの音が聞こえる力)、空を飛べる力、いつまでも生きることができる…人間が羨む能力を持つがゆえに、ひっそりと生きていかなければならない切ない運命を少し寂しく感じた。苦手な短編ながら連作短編集なので繋がりがあり引き込まれてしまい、一気に読んでしまった。

  • ただ人として生きていたいだけなのに、世界はそれを許してくれない。そんな痛みを抱えながら息をひそめている人たちは現実世界にもいるはず。イジメとか、妬みとか、虐待とか。なんて哀しい世の中だろう。こんな世の中おかしい。そう思うのだけれど、思うだけじゃ何にも変わらない。それは分かっているのだけれど。
    常野の人々はそれぞれの不思議な能力を持っているために辛い道を歩んできた。それでも、彼らは穏やかで知的で、ひっそりとふつうの人々の中に埋もれて暮らしている。心根の優しく強い人たち。
    彼らにも親はいて祖父母がいて、その先に沢山の祖先がいる。赤い血が流れ、温かい涙が頬を伝わる。愛の言葉を伝えあい、友情を深める。そう人なのだ。彼らの紡いできた歴史を、誰が否定する事が出来ると言えるのだろうか。人としてただ生きていくことを許さないと言えるのだろうか。
    人数が多いほうが正しいとか偉いとか、人と違うことをするから変わってるとか、わたしは人を否定するようなことは絶対しない。そう誓った。

  • 学生時代に読んだ筒井康隆氏のSF物を思い出した。

    東北のある地域に昔から関わりのある常野一族は、とても不思議で魔法のような力を持っていた。
    驚くべき力を持ちながら、どの人も温厚で物静かな人柄が滲み出ている。
    いつの世も、世間とは異なる人種は生きにくいものだと改めて思い知る。
    とても切なくやりきれない。

    今は各々が別々の場所に住んでいても、いつかは帰りたい場所・常野…。
    みんなが無事帰ってくることをツル先生がずっと待っていてくれる!
    今年もあの懐かしい丘の上に立っているはずだ。
    ラストの「遠回り」に泣けた。
    例え遠回りでも、いつか帰ってくるんだよ。

  • 200年以上という長寿を生き、遥か遠くを見渡せる
    目や耳を持ち、未来を予知し、記憶と想いを保存する。
    大多数の人達と異なる能力を持つ常野の人々。

    異形のものは憂惧され淘汰される民主主義の国で
    散り散りになった常野の人たちは
    長い長い時間の川を越え、
    幽かな光の元に集まり始める。

    等しくきらめく生命の海。
    大きな営みの中に生かされていることを
    忘れてしまった私たち。

    星と夜明けを夢見ながら、
    全ては全てありのままに平行し
    存在していくための常野の人達の運命と戦い。
    光の生まれた場所が心穏やかに
    手を繋ぎ暮らせる場所であるよう
    祈りながら続きの常野の世界へ。

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著者プロフィール

1964年、宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』でデビュー。2005年『夜のピクニック』で第26回吉川英治文学新人賞および第2回本屋大賞を受賞。06年『ユージニア』で第59回日本推理作家協会賞を受賞。07年『中庭の出来事』で第20回山本周五郎賞を受賞。17年『蜜蜂と遠雷』で第156回直木三十五賞、第14回本屋大賞を受賞する。

「2022年 『本からはじまる物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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