光の帝国 常野物語 (集英社文庫)

  • 集英社 (2000年9月20日発売)
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本 ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784087472424

作品紹介・あらすじ

穏やかで知的で、権力への志向を持たずに生きる常野の一族。人を見通し、癒し、守る、その不思議な能力は何のために存在するのか。優しさと哀しみに満ちた壮大なファンタジー。(解説・久美沙織)

感想・レビュー・書評

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  • ほんまに凄い能力ある人達って、実はひっそりと生きていくもんかもしれんな。
    力を見せびらかしても、ロクな事なさそうやし。
    世界征服に興味がある訳でもなく、大自然と一体化して、ゆったりと生きて。
    権力欲とか物欲もなく。
    そんな人々の話。
    短編やけど、それぞれが繋がってる?

    まぁ、別に能力なくても、個人的には、そんな方が好きやけど。
    大自然と一体化は…
     大自然の中に、
      コンビニないし、
      本屋ないし、
      映画館もないし、
      ショッピングセンターもないしetc
    無理やけど。
    あるわ!私、物欲が…(^◇^;)

    『常野』という言葉の由来。
     権力を持たず
     群れず
     常に在野の存在であれ

    何かカッコ良い生き方やな。







    でも、生活は都会でしたい気分 笑

    • ゆーき本さん
      大自然にウーバーイーツ来てくれるかな?ネットショッピング届けてくれるかな?WiFi繋がるかな?
      でもやっぱり本屋でウロウロしたいし スクリー...
      大自然にウーバーイーツ来てくれるかな?ネットショッピング届けてくれるかな?WiFi繋がるかな?
      でもやっぱり本屋でウロウロしたいし スクリーンで映画観たいし。やはりある程度都会がいいか笑
      2023/10/28
    • ultraman719さん
      本屋ウロウロして、大スクリーンで映画を観る!
      私の休日の行動パターンのようです 笑。
      やはり、必要!
      本屋ウロウロして、大スクリーンで映画を観る!
      私の休日の行動パターンのようです 笑。
      やはり、必要!
      2023/10/28
  • 恩田さんの書いた独特で壮大なファンタジー。超能力を持った常野一族の物語。恩田さんの考える不思議な世界観で難しく、内容が深い。登場人物が常野を軸に少しずつ繋がっていて面白い。

    常野の意味は、「権力を持たず、群れず、常に在野であれ」だ。超能力があっても普通の人と同じように穏やかにひっそりと生きていて身近に感じる。だが、超能力があるから迫害されたりもしている。常野一族と同じように現代社会でも人より何かとても優れている人にはとても憧れるが、彼らも大変な思いをしていて、悩みもあるのだろう。

    私は超能力なんてないが、権力なんか考えず、穏やかにひっそりと生きていきたい。恩田さんのファンタジーは不思議な魅力があり、なぜか爽やかな読後感を感じさせてくれる。

  • 10の作品からなる短編集でした。様々な特殊能力を持つ常野由来の人々のお話ですが、それぞれの物語のタイトルがとても気に入りました。「大きな引き出し」なので「しまう」、「オセロ・ゲーム」だから「裏返す」、「歴史の時間」は「思い出す」、まあ「草刈り」は「草刈り」だけど。こんなところに独特なリズム感も感じながら一気に読み切りました。

    短いながらも印象に残る作品も多かったです。冒頭、「大きな引き出し」では不覚にも涙してしまいました。これは予想外で、そういう作品がこの後も続くのかと身構えましたが、個人的には涙はここが山場でした。「光の帝国」は不気味な雰囲気が少し気になりましたが、短くも起承転結がはっきりしており、とても読み応えがありました。あとは「二つの茶碗」「歴史の時間」「黒い塔」の緩やかな繋がり具合も登場人物を整理しながら連作のように楽しみつつ読みましたが、最後の「黒い塔」はタイトルからは真逆の暖かさをとても感じる作品で深い余韻に感じ入りました。

    そして最後の「国道を降りて…」です。何かが動き出すような、ゆっくりと胎動し始めたかのような予感を感じさせる終わり方。この作品はこの本のこの場所にふさわしい、とてもふさわしい、そう思う一方で実のところ頭の中に浮かんだのは「蜜蜂と遠雷」でした。そうか、この二人が20年の時を経て、楽器を変えて…なんて脳内妄想に走ってしまいました。

    恩田さんご自身が後書きに書かれているとおり、「手持ちのカードを使いまくる総力戦」の一冊、常野由来の人々のお話という前提の元、随分とバラエティに富んだ10の景色を見せていただきました。

    • yyさん
      さてさて さんのレビューを見て、これは読まなくてはと思い、手に取りました。期待を裏切らない作品で、愉しいひと時を過ごさせていただきました。
      さてさて さんのレビューを見て、これは読まなくてはと思い、手に取りました。期待を裏切らない作品で、愉しいひと時を過ごさせていただきました。
      2021/02/06
    • さてさてさん
      yyさん、こんにちは。
      この作品、常野由来の人々を堪能できる作品で私もとても好きです。恩田さんならではの世界観の物語。言葉の使い方の面白さも...
      yyさん、こんにちは。
      この作品、常野由来の人々を堪能できる作品で私もとても好きです。恩田さんならではの世界観の物語。言葉の使い方の面白さもあって、一気に読んでしまいました。是非、他の常野由来の作品も読まれることをおすすめします。
      今後ともよろしくお願いします!
      2021/02/06
  • 宮城県にある常野という地に生まれた者たちは、特異な力を持っているという。
    膨大な情報をまるで引き出しにしまうかのように記憶すること家族、人の未来を見通す力を持った女性、二百年もの月日を生きる老人。かつて一族を総称して地名でもある「常野」を語っていた彼らは、現在ひっそりと人類に溶け込んで生きている。
    本作『光の帝国 常野物語』は、そんな摩訶不思議な力を持った常野一族にまつわる短編が全十編が収録されている。

    超常的な力を持つ常野で生まれた者たち。だが、不思議と彼らの日常は私たち読者とあまり変わらない。学校へ行き大人になり、仕事をして子供を育てる。そうやって社会に溶け込む姿を見ていると、常野一族は私たちの世界にも実在するのではないかと、つい信じてしまいそうになる。
    特に好きだった作品は、『光の帝国』と『国道を降りて…』の二作。
    表題作『光の帝国』は、さまざまな境遇で社会から締め出された常野一族の子供を育てている分教場の話。
    描かれた惨劇は胸を抉るものだったが、そのラストには拭いきれない優しさが滲み出ており、悲しい物語にもかかわらず不思議と穏やかな心になれる。特に私は、ツル先生の元に常野の子供と彼らの先生となる大人たちが集っていく場面に、大きな優しさと平穏を感じ取った。
    『国道を降りて…』は、美咲という女性の視点で描かれる。美咲という名前にフルート奏者という設定。その部分からある短編との繋がりを知った私は、まるで雷に打たれたような衝撃を受けた。
    また、彼女が憧れるチェロ奏者・川添律とのエピソードも甘酸っぱくて微笑ましい。恩田作品の中に音楽が絡むと、どうしても『蜜蜂と遠雷』を連想してしまう。青春小説と芸術小説、二つのジャンルを掛け合わせたものを描いたら、恩田陸氏に勝る作家はいないと確信できる。読後感もとても爽やかだった。

    このように、連作とまではいかないが各短編はゆるやかな繋がりを見せる。
    短編集なのでひとつひとつの話はあっさりとした読み心地。にもかかわらず、どこか懐かしさを帯びた不思議で優しい物語たちに惹かれてしまうのは、恩田陸氏の幻想的で柔らかな文体によるものだろう。
    息も忘れて物語に没入してしまう恩田作品が多い中で、ホッとため息が出てしまうような爽やかな作品も鮮やかに世に放ってみせる。流石、恩田陸。私の推し作家だ。
    久美沙織氏による文庫本解説もたいへん素晴らしい。読者の恩田陸像への解像度を明瞭にするとともに、他の恩田作品も読みたいと思わせてくれる。文庫本で本作を手に取った方はぜひ、解説までじっくり楽しむことをおすすめする。

  • 「常野」と繋がっている人々の物語。1つ1つの話は読み応えがあって、この本にしかない、不思議な世界観だった。

    あとがきを読んで納得。SFから生まれた物語だったのね。

    続編も楽しみ!

  • 特殊能力を持つ一族の物語。
    その能力の持ち主であることがわからないように暮らす一族。
    科学的に有り得ない超能力を持つ人が出てくる話は好きだ。

    9編目の「黒い塔」は特に面白かった。
    実は私自身も宙に浮くことができて、しばしば(睡眠中に)泳ぐように空を飛んでいる。

    「蜜蜂と遠雷」で出会った恩田陸さん、こんな小説も書くんだと思いながら読んでいた。
    10編からなる短編集の最後「国道を降りて…」で、突然「蜜蜂と遠雷」と繋がった。
    冷静に考えてみれば、聴衆者の心を震わす一級の楽器の演奏者、まさしく特殊能力の持ち主ではないか。
    物静かで自己主張しない日本人・律のチェロの演奏の描写も「蜜蜂と遠雷」のそれと重なった。

  • 再読。10年以上前に読んで細部は忘れてたけれど読み進めるうちに感動がよみがえった。『しまう』『裏返す』の言葉は自分の中で流行ったなとか‥『お祈りの言葉』は忘れがたい。優しくて哀しくて愛おしい全て詰まったお話。

  • 「常野」の一族にはそれぞれに不思議で奇才な能力があった。彼等は権力への志向を持たず、穏やかで知的で、常野から離れても、ふつうの人々の中でひっそりと暮らしている。彼等は何のために存在し、どこへ帰っていこうとしているのか?

    物語は常野一族をめぐる10の短編から構成されていて短編ながら繋がりのあるお話もあった。

    ただ、どうも色々な「常野」の話を盛り込み過ぎた感が否めない。場面もコロコロと変化し、時空を超えたりするものの、着地点がみえずいまいち入り込めなかった。個々のお話の展開は素敵なんだけどなぁ。

    「世界が何か新しい局面を迎えようとしている。
    常野の人々が時代の表面に出なければならないような世界に」・・・最後まで残念ながら、この世界がみえて来なかった。小さく纏まって終わった様な印象だった。

    想像していたファンタジーでは「常野」の魅力的で壮大なスケール感を生かしつつ、読み手を何処かへ導いていく様なイメージだったので、少し物足りなさを感じた。
    私の読解力不足なのかも・・・

    余談だが、作中に出てきた「いちごみるく」
    どうやらこのキャンディがストーリーにしっくり来る作家さんは多いようだ笑
    ここ最近もみかけたが恩田陸さんもそのようだ。
    噛める?食べる?キャンディ、懐かしいなぁ。


  • 気になっていたのに、なぜか手に取らずに来てしまった作品。
    『時期じゃなかった』のかな?
    でも、今回、ブクログのレビューを見て「読まなくちゃ!」と思い、
    図書館検索をしました。
    そうしたら、なんと『閉架』扱いに!

    人目につかない書庫から出てきたこの作品は、
    不思議でちょっぴり怖くて、そして温かい気持ちにさせてくれました。
    たとえ特殊能力を持っていなくても、権力を持たず、群れず、
    常に在野の存在でいられる人たちがたくさんいたら、
    世界はどんなに穏やかになることでしょう。

    読み進めると、あの衝撃的に美しい『蜜蜂と遠雷』の世界へと
    ゆっくり流れていく感じがします。
    もしかしたら、あのコンクール会場の客席に
    ツル先生が座っていたのかもしれない…と、つい妄想してしまいました。

  • ファンタジー!
    密やかに暮らす異能の者。子どもから大人になるときに、その能力に気づく。大人たちは子どもを守りながら、この世界での自分たちの立ち位置を探している。
    根底に流れるのは、優しい心だ。

    続編もぜひ読みたい。

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著者プロフィール

1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』で、「日本ファンタジーノベル大賞」の最終候補作となり、デビュー。2005年『夜のピクニック』で「吉川英治文学新人賞」および「本屋大賞」、06年『ユージニア』で「日本推理作家協会賞」、07年『中庭の出来事』で「山本周五郎賞」、17年『蜜蜂と遠雷』で「直木賞」「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『ブラック・ベルベット』『なんとかしなくちゃ。青雲編』『鈍色幻視行』等がある。

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