光の帝国 常野物語 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 11247
レビュー : 1324
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087472424

作品紹介・あらすじ

膨大な書物を暗記するちから、遠くの出来事を知るちから、近い将来を見通すちから-「常野」から来たといわれる彼らには、みなそれぞれ不思議な能力があった。穏やかで知的で、権力への思向を持たず、ふつうの人々の中に埋もれてひっそりと暮らす人々。彼らは何のために存在し、どこへ帰っていこうとしているのか?不思議な優しさと淡い哀しみに満ちた、常野一族をめぐる連作短編集。優しさに満ちた壮大なファンタジーの序章。

感想・レビュー・書評

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  • 10の作品からなる短編集でした。様々な特殊能力を持つ常野由来の人々のお話ですが、それぞれの物語のタイトルがとても気に入りました。「大きな引き出し」なので「しまう」、「オセロ・ゲーム」だから「裏返す」、「歴史の時間」は「思い出す」、まあ「草刈り」は「草刈り」だけど。こんなところに独特なリズム感も感じながら一気に読み切りました。

    短いながらも印象に残る作品も多かったです。冒頭、「大きな引き出し」では不覚にも涙してしまいました。これは予想外で、そういう作品がこの後も続くのかと身構えましたが、個人的には涙はここが山場でした。「光の帝国」は不気味な雰囲気が少し気になりましたが、短くも起承転結がはっきりしており、とても読み応えがありました。あとは「二つの茶碗」「歴史の時間」「黒い塔」の緩やかな繋がり具合も登場人物を整理しながら連作のように楽しみつつ読みましたが、最後の「黒い塔」はタイトルからは真逆の暖かさをとても感じる作品で深い余韻に感じ入りました。

    そして最後の「国道を降りて…」です。何かが動き出すような、ゆっくりと胎動し始めたかのような予感を感じさせる終わり方。この作品はこの本のこの場所にふさわしい、とてもふさわしい、そう思う一方で実のところ頭の中に浮かんだのは「蜜蜂と遠雷」でした。そうか、この二人が20年の時を経て、楽器を変えて…なんて脳内妄想に走ってしまいました。

    恩田さんご自身が後書きに書かれているとおり、「手持ちのカードを使いまくる総力戦」の一冊、常野由来の人々のお話という前提の元、随分とバラエティに富んだ10の景色を見せていただきました。

  • ファンタジー!
    密やかに暮らす異能の者。子どもから大人になるときに、その能力に気づく。大人たちは子どもを守りながら、この世界での自分たちの立ち位置を探している。
    根底に流れるのは、優しい心だ。

    続編もぜひ読みたい。

  • 再読。10年以上前に読んで細部は忘れてたけれど読み進めるうちに感動がよみがえった。『しまう』『裏返す』の言葉は自分の中で流行ったなとか‥『お祈りの言葉』は忘れがたい。優しくて哀しくて愛おしい全て詰まったお話。

  • 常野一族はAI、ロボットのような能力を持つ正真正銘の人間。無限にしまえる(記憶できる)力、未来がわかる力、遠耳(遠くの音が聞こえる力)、空を飛べる力、いつまでも生きることができる…人間が羨む能力を持つがゆえに、ひっそりと生きていかなければならない切ない運命を少し寂しく感じた。苦手な短編ながら連作短編集なので繋がりがあり引き込まれてしまい、一気に読んでしまった。

  • 学生時代に読んだ筒井康隆氏のSF物を思い出した。

    東北のある地域に昔から関わりのある常野一族は、とても不思議で魔法のような力を持っていた。
    驚くべき力を持ちながら、どの人も温厚で物静かな人柄が滲み出ている。
    いつの世も、世間とは異なる人種は生きにくいものだと改めて思い知る。
    とても切なくやりきれない。

    今は各々が別々の場所に住んでいても、いつかは帰りたい場所・常野…。
    みんなが無事帰ってくることをツル先生がずっと待っていてくれる!
    今年もあの懐かしい丘の上に立っているはずだ。
    ラストの「遠回り」に泣けた。
    例え遠回りでも、いつか帰ってくるんだよ。

  • 200年以上という長寿を生き、遥か遠くを見渡せる
    目や耳を持ち、未来を予知し、記憶と想いを保存する。
    大多数の人達と異なる能力を持つ常野の人々。

    異形のものは憂惧され淘汰される民主主義の国で
    散り散りになった常野の人たちは
    長い長い時間の川を越え、
    幽かな光の元に集まり始める。

    等しくきらめく生命の海。
    大きな営みの中に生かされていることを
    忘れてしまった私たち。

    星と夜明けを夢見ながら、
    全ては全てありのままに平行し
    存在していくための常野の人達の運命と戦い。
    光の生まれた場所が心穏やかに
    手を繋ぎ暮らせる場所であるよう
    祈りながら続きの常野の世界へ。

  • ただ人として生きていたいだけなのに、世界はそれを許してくれない。そんな痛みを抱えながら息をひそめている人たちは現実世界にもいるはず。イジメとか、妬みとか、虐待とか。なんて哀しい世の中だろう。こんな世の中おかしい。そう思うのだけれど、思うだけじゃ何にも変わらない。それは分かっているのだけれど。
    常野の人々はそれぞれの不思議な能力を持っているために辛い道を歩んできた。それでも、彼らは穏やかで知的で、ひっそりとふつうの人々の中に埋もれて暮らしている。心根の優しく強い人たち。
    彼らにも親はいて祖父母がいて、その先に沢山の祖先がいる。赤い血が流れ、温かい涙が頬を伝わる。愛の言葉を伝えあい、友情を深める。そう人なのだ。彼らの紡いできた歴史を、誰が否定する事が出来ると言えるのだろうか。人としてただ生きていくことを許さないと言えるのだろうか。
    人数が多いほうが正しいとか偉いとか、人と違うことをするから変わってるとか、わたしは人を否定するようなことは絶対しない。そう誓った。

  • 予想以上によかった!
    いろんなところで涙がこぼれそうになりました
    ツル先生や亜希子の両親の話など、熱い文章では
    ないんですが、そこがまた頭にすっと染みこんで
    いくようで素直に没頭できました

    基本的に恩田陸さんの「人」に対する目は
    暖かだと思います
    その暖かさと透明感とそして根底にある寂しさと。

    遠野物語がベースにあるようですが、それよりは
    土着的でなく恐怖感もなく、東北地方独特の
    雄大な山々に吹き抜ける風のようなさわやかさを
    感じます

    続編があるようですので、それを読むのが楽しみです

    • 澤口聖史さん
      恩田さんの「人」に対する目は暖かい。まさにそうですね‼︎それぞれの倫理観が整っていてその言葉とても納得できます。
      恩田さんの「人」に対する目は暖かい。まさにそうですね‼︎それぞれの倫理観が整っていてその言葉とても納得できます。
      2019/11/17
  • 高校の時からの私の愛読書です。
    最近、読書熱が再加熱してきたので、何だか読みたくなって再度読み返しました!

    これこれ、この世界観!!切なくて優しくてかなしいけど温かい。ゆっくり味わって読もうと思っていたのに、あまりの懐かしさと物語の相変わらずの面白さに、1日とちょっとで読んでしまいました。

    静かな哀愁漂う小説が好きで、読んだことない方には是非おすすめしたい1冊です!
    続編もいくつか出ているので、それも再読予定です◎

  • 1話目の「大きな引き出し」からもってかれて1冊通して心地の良い緊張感があった。
    優しくて品のある世界観が素敵過ぎて本を(常野の人たち)をぎゅっと抱きしめたい気持ちになった。
    全貌が詳しく書かれていないのと、一つ一つの話が複雑に絡み合って、、みたいな感じではないから色んな解釈ができて、それが尚この世界観を美しく作ってる気がした。
    めちゃめちゃよかった!

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著者プロフィール

恩田陸(おんだ りく)
1964年、青森市生まれ。水戸第一高校を卒業し、早稲田大学進学・卒業。1991年、第3回日本ファンタジーノベル大賞最終候補作となった「六番目の小夜子」でデビュー。2004年刊行『夜のピクニック』で第26回吉川英治文学新人賞及び第2回本屋大賞、2007年『中庭の出来事』で第20回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。2017年『蜜蜂と遠雷』で第156回直木三十五賞、第14回本屋大賞、第5回ブクログ大賞などを受賞した。同作品による直木賞・本屋大賞のW受賞、そして同作家2度目の本屋大賞受賞は史上初。大変大きな話題となり、代表作の一つに挙げられるようになった。同作は2019年4月に文庫化され、同年秋に石川慶監督、松岡茉優・松坂桃李らのキャストで映画化される。

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