あふれた愛 (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087478174

感想・レビュー・書評

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  •  読んだ瞬間にいきなりざわざわしました。主に背筋が……。
     怖い! 怖いよ!
     一つ目が、いきなり妻に「私、子供を殺してしまうかもしれない」と言われた話なんですけど。
     僕は、仕事があれ、なので。
     スイッチが仕事モードになって。
    「どんな時に?」
     というように言い出しかねない……んですけど。
     でも一般的には、この話の主人公みたいにうろたえるのが普通なんだろうな……ということは、理解できる(苦笑)

     だから、この話の主人公を責める訳にもいかないんですが……。
     結局、その狼狽え方が間違った方向に行っちゃって。
     妻に「別れよう」と言われてしまうんですよね。

     まぁ、正直、仕方ないかな……と、思わないこともないんですが。
     けれど、妻が「殺してしまうかもしれない」と言ってからの主人公の男の人の焦燥っぷりが、すごーく身につまされて。
     こういうことってあるよなー……と、思ってしまう訳ですよ。
     で、最初に偉そうなこと言ったかも知れないけど。
     もし、自分が同じ立場だったら、自分も慌てるだろうなー……と思って。
     大分寒くなった。

     男の人の慌て具合がとんでもなく寒くなって、心配してるのに、それがちゃんと表現できなくて……って辺りが、むずかしいな……と思ってしまった。

     そんな感じの家族の問題を抱えた人達の短編がいくつか入ってます。
     ちょっぴり背筋が寒くなりますが、そういうのに興味がある人は、是非、読んだら面白いと思います。

  • 最近、集中的に読んでいる、天童荒太。
    これまで『悼む人』『永遠の仔』と、長編を読んできました。
    「他にどんな作品があるのだろう」と思い古書店に行ったら、この短編集が置いてあったので読んでみることにしました。
    収められているのは4つの作品。
    いずれの作品も、心に傷を負った人物が登場します。
    心のバランスを失いかけた彼・彼女が、パニックになりながらも、身近にいる異性との触れ合いによって、自らを見つめ直す姿が、描かれています。
    改めて題名を読むと、「愛」がテーマなのですね。
    そして、各作品を読んでいて、先に読んだ2長編と、共通する部分を感じるなと思いました。
    登場人物に、辛い境遇にある人が多いので、気が滅入りそうになることもありますが・・人生で考えるべきことを提示してくれる作家さんですね。

  • 重いものが目の下にたまった感じがします。4つの話は白黒映画のように頭の中を通りました。

  • 切ない。心の隅が痛くなる。

  • 巻末の文庫版あとがきから。「仕事も家庭も健康も、また対人関係や、自分と家族の将来においても、そこそこうまく噛み合って、平穏に暮らせてゆけること自体、実はとても奇跡的なこと」

  • 天童氏の作品を読むのは、「永遠の仔」以来2作目。
    この人の本は、読む人の年齢や状況でだいぶ評価が分かれる気がする。
    「永遠の仔」は、とにかく暗く、救いようのない話という記憶だが、
    この「あふれた愛」を読んで、筆者はもっと違うことを伝えたかったのかも知れないと感じた。
    というのは、この本には4つの物語が収録されているのだが、
    2話目を読んだ時に、「永遠の仔」と同じ感想を持ち、気持ちが凄く沈んで
    続きを読む気が失せ、読むのを中断していた。
    しかし、その後3、4話を読んでみると彼の書く物語は、単に悲しいだけとか不幸なだけとかそんなものではないような気がした。
    上手く伝えられないが、彼の書く物語はさらっと読むものではないと思う。

    今度は、心して「悼む人」を読みたいと思った。

  • 興味があるものの全く手をつけずにいた作者
    この人の作品は重いと思い込んでいたのですが、
    短編4作品ですっきり読め、さらにはとても暖かみを感じました
    単純な話ばかりではなく、この作者さんならではの奥深さが垣間見れて、
    こういう短編集なら何冊でも読めると思いました
    単純な自分自身の驚きを含めての久々の星5つ

  •  短編集。それぞれの愛についての物語。

  • 壊れそうなものを、そっと大事に大事に抱きながら生きているひとたちの物語。あまりに儚くて脆くて、今にも崩れてしまうのではないかと見守るようにして読んだ短編集でした。どうかこの人たちに幸あれと願わずにはいられなかった1冊。

  • あとがきに
    「『あふれた愛』はどの物語も、心や体や生活の、
    ちょっとしたタイミングのずれによって、
    相手を傷つけたり、追い詰めたり、
    みずからを苦しめたりする人々が登場します。」
    とあるとおり、もどかしくて
    決してさっぱりはしない物語が集まった短編集。

    でもなぜか楽というか、見ないようにしてたものを
    見れてかえって良かったという感じ。
    それで今後は自分は背伸びする必要もないなぁと思いました。

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著者プロフィール

天童 荒太(てんどう・あらた):1960(昭和35)年、愛媛県生まれ。1986年「白の家族」で野性時代新人文学賞受賞。1996年『家族狩り』で山本周五郎賞受賞。2000年『永遠の仔』で日本推理作家協会賞受賞。2009年『悼む人』で直木賞を受賞。2013年『歓喜の仔』で毎日出版文化賞を受賞する。他に『あふれた愛』『包帯クラブ』『包帯クラブ ルック・アット・ミー!』『静人日記』『ムーンナイト・ダイバー』『ペインレス』『巡礼の家』などがある。

「2022年 『君たちが生き延びるために』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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