ワーカーズ・ダイジェスト

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087713954

感想・レビュー・書評

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  • 31歳の2人の佐藤さん、奈加子と重信の1年間を描く「ワーカーズ・ダイジェスト」と、先輩の処遇に動揺する3人の会社員の話、「オノウエさんの不在」の2編を収録。
    それにしてもこの作家、「会社員」というものを描くのがほんとうに上手いよなあ。この本のブックカバーには、独り暮らしの会社勤めであろう女のワンルーム内を描いたイラストがあしらってあるが、「そうそう、こんな感じよね」といいたくなる細部の集積具合が、実に見事なのである。なすびオンなすびカレー、とかね。
    心当たりがないのに同僚から嫌われたり、意味のわからないクレームをつけてくる謎の夫婦にからまれたりと、客観的に見ると事件とまでもいえないくらいの事件に遭遇し、周りの評価が気になり、しかしまあどうでもいいかと思ったり。
    いわゆるサラリーマン小説のように、仕事に対する心構えだとか組織に対峙する個に焦点をがっとあてているわけではないのに、会社で働くということの切ないようなしんどさと、それをやりすごす小さな力を発揮して生きている、ごくごくふつうの男女の営みを、こんなにくっきり描き出している小説は、意外に少ないと思う。生き生きと仕事している登場人物はほぼ皆無であるにもかかわらず、この作家の書きぶりは、思わずビビッドと呼びたくなる。なぜか愛着のわく作品である。

  • 切り捨て

  • 大阪のデザイン事務所に勤め、副業でライターの仕事をする奈加子。
    大阪出身で東京の建設会社に勤める重信。
    共に代理で出た仕事の打ち合わせで出会った2人は、年齢も、苗字も、誕生日まで同じ。
    数時間を共有しただけの2人だが、肉体的にも精神的にもさまざまな災難がふりかかる32歳の1年間を、2人は別々に、だけどどこかで繋がりを感じながら生きていく―

    感想の書きにくいお話でした-
    特に大きな事件事故が起こるわけでもない日常系。
    仕事やプライベートで人とぶつかったり、ぶつかるのが嫌でかわしたり、どーでもよくなっていっちゃったり、反省してみたり。
    あるある!で、本当に身近にいそう、だけどやっぱり物語の中の主人公だからちょっと充実してるかな。
    2人の佐藤さんはアンテナが面白いモノを拾うのが上手いと思う。
    佐藤さんはライターしてるからアンテナ張ってるからってのもあるだろうけど、佐藤氏は天然なのか大阪人だからなのか面白いな-なすスキーだし、楽器選びとか。
    知ってる場所や路線が出てきたので、更に身近に感じた気がする-

    『オノウエさんの不在』はまたよくわからない…
    オノウエさんに恩や気持ちのある外野3人が、事情をうっすら噂でしか知らないオノウエさんの処遇についてワイワイガヤガヤしつつ友情めいたものを築いていた。ってことで?
    で、自分もかつてのオノウエさんのように後輩に接するように成長したんだよ、て感じですか。
    表題作よりカリカリキリキリしてて、うーん。

  • なぜか元気が出る読了感。

  • 同い年・同じ誕生日の、2人の佐藤さん。仕事に生きながらも、恋愛に、人間関係に、悩みがある。
    ラストに2人が再び出会い、先のことは想像にお任せ〜という終わり方で、ちょっと物足りない気もした。

    もうひとつの短編は、話題の中心人物は一切登場しないものの、人物像は鮮明に浮かび、おもしろいなと思った。

  • 仕事がらみで偶然会った同姓同年齢の男女のそれぞれの日常を相互に語る物語。なぜだが分からないけど職場でそっけない態度をとる人の心情等が詳細に描かれ、自分自身に照らし合わせて腑に落ちた。働く女性が日々感じる恋愛・友達・仕事が短い中にもぎゅっと収められていて共感する人が多いのではなかろうか。読みやすく、同編に収められている「オノウエさんの不在」もさらっとして読みやすい。

  • 同い年で同じ誕生日、同じ苗字。
    普通なら運命的なロマンスになりそうだけど、
    働く30代男女の日常がとても淡々と綴られていく。

    ピークを越えて衰え始めた身体、それなりに受け流す事
    も出来るようになってきた仕事や人間関係。
    いちいちリアルなところに妙に惹き付けられてしまう。
    「ワーカーズ・ダイジェスト」というタイトルがぴったり。
    こんな毎日を過ごしているのは自分だけじゃないんだなと、
    ちょっとだけ安心できるような本。
    個人的にはせっちゃんの婚活がすごく応援したくなった。

    併録の「オノウエさんの不在」はいまいち面白さがわからなかった。

  • こうやって描かれると、現代社会で働く私達って実は結構過酷な状況にいるよなぁと実感する。でも、その時々でそれなりに苦しかったり悩んだりすることはあっても、殆どの人はなんとなく自分に折り合いをつけて、それなりに楽しく生活しているのだと思う。私にとってリアルに感じられる日常が…ドラマらしいドラマは起こらない…書かれていて、でもなんとなく薄っすら前向きになれるようなお話。
    ただ、主人公達が割と繊細だと思うのだけれども、彼等の考え方や感じ方に軽い違和感があって、自分はやっぱり楽観的な人間なのかも、とも感じた。

  • 仕事小説のアンソロジーで初めて津村さんの作品を読んだら面白かったので読んでみた。
    大阪と京都で働く、同い年で同じ誕生日の男女の日々。ラストに思いがけない再会を果たす二人は今後どうなるのか。
    柴崎友香さんの作品に近い、おちがないけどリアルな人間模様が楽しかった。

  • おそらくどうでもよいと思われる
    会話を、再現する天才だと思います。
    ペレはEDやなかったんや…て 笑

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著者プロフィール

1978年大阪市生まれ。2005年「マンイーター」(のちに『君は永遠にそいつらより若い』に改題)で第21回太宰治賞。2009年「ポトスライムの舟」で第140回芥川賞、2016年『この世にたやすい仕事はない』で芸術選奨新人賞、2019年『ディス・イズ・ザ・デイ』でサッカー本大賞など。他著作に『ミュージック・ブレス・ユー!!』『ワーカーズ・ダイジェスト』『サキの忘れ物』『つまらない住宅地のすべての家』『現代生活独習ノート』『やりなおし世界文学』『水車小屋のネネ』などがある。

「2023年 『うどん陣営の受難』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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