作品紹介・あらすじ
新米陰陽師と美形あやかしの迷コンビ誕生!
「来たれ。そして、我に仕えよ!」
ときは平安、華やかなりし京の都のそこかしこ――夜の闇やよどみには、目に見えない物の怪たちが跋扈していた。さて、まだ幼い顔をした陰陽寮の新米役人・大江春実の夢は、いつか一人前の陰陽師になることだ。しかしまだまだ未熟ゆえ、うかつに召喚したあやかしに、圧倒的な能力差で敗北し、食事がわりに自らの寿命を提供することになってしまった。
「式神がほしかっただけで、自分が物の怪の保存食になりたかったわけじゃない……」
嘆く春実に、美形のあやかし・雪羽はせせら笑う。
「悔しかったらあたしに勝てばいい。寿命が残っているうちにな」
かくしてここに新米陰陽師と、飄々とした式神もどきという世にも奇妙な凸凹コンビが誕生した。
春実は同僚の頼尚とともに、左大臣の邸・万華院へと向かう。そこでは夜な夜な青白い謎の人影が徘徊し、ついには使用人の男が頓死したのだという。春実らはこの問題を解消するため、陰陽寮から派遣されたのだった。
果たして春実は、豪邸で起きる怪事件を解けるのか?
感想・レビュー・書評
絞り込み
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文体は、ほぼ一行文章。簡潔、丁寧に、軽く書いてある。
しかし、文章からにじみ出るものは、スランプと苦行だ。苦しみ抜いて書いた感じがある。だから、一行ずつの文章なのに、なぜか頭に全く入ってこない。読んでいるとつらくてしんどくなってくる。よほどこのストーリーを書いている時苦しかったにちがいない。むしろ、この話を書き終えることによってスランプを脱したのかも知れない。初めて読む著者なのに、そんなことを感じてしまった。
後半になると、わずかに息を吹き返してくる。
展開をまとめると以下の通りとなる。
① 死亡事件が貴族の館で起こる。
② 主人公は見習い陰陽師。見習いの日々を送る。本の整理をしている。司書的な感じ。
③ 貴族の館に兄貴分とともに派遣されることとなり、式神を呼ぼうとしたら、無慈悲なあやかし最強キャラが出現。美青年だ。主人公がとても甘く美味しいので、すぐに全部食べず、少しずつ食べるために、主人公にとりつく。また主人公が正義漢を持つとその味が甘くなる。
④ 事件のあった貴族の館にとりついた怨霊の調査をする。
⑤ 調査中、あやかしの相棒が色々と手伝ってくれる。(サブシナリオ 日陰のもとになかなか会おうとしないあやかし。自分がいると体調が悪くなるからいかないという。のちに出会いのきっかけになった梅の花を日陰の枕元におく)
⑥ 七君との出会い。七君は、左大臣が女房に手を出して生まれたこども。
(サブシナリオ 七君へ伸ばす手。怨霊じゃない霊が表れる。後にこれが自分の父親である左大臣の生き霊だとわかる)
⑦ 各大臣の妻の紹介と調査をする。
(サブシナリオ 白い子どもの出現・主人公との因縁。後にこれが、主人公の父親が守った少女だとわかる。その少女がお礼に父親の刀をここまで持ってきてくれた。その刀が、最後の敵である兄貴分と戦う時の武器であり魔除けとなる)
⑧ 姫の護衛。
(謎の伸びてくる手との戦い(伸ばす手は、左大臣の生き霊)
⑨ 姫と主人公とあやかしの三コンビに。左大臣の妻の一人に事件について聴く。
⑩ 左大臣の4人の妻の一人、殺される(犯人は兄貴分。むかし、この妻と好き合っていた。しかし、彼女だけが良い身分になり、自分は下っ端の陰陽師であるため、自分を出世させてくれない彼女を恨み、殺した)
⑪ 主人公、実家に帰る。あやかしと良い感じのコンビになる。
⑫ 実家で、父の死を語る。
(サブシナリオとの交差。父は離島を守る武士だった。)
⑬ 生き霊登場。カラスから手が落ちる事件も起こる。主人公、館に戻り、一番トップの左大臣の妻のもとへいく。
⑬ 妻達を一人一人取材 関係がドロドロしているとわかる。
⑭ 七君、自分にまとわりつく幽霊に話しかける 母でないとわかる。
⑮ 結局わからず、捜査は終了といわれる
(七君を育てている日陰とあやかしのラブストーリーがむかしあったとわかる)
⑯ 何もできずに実家に帰る
⑰ 実家に刺客がやってくる。殺されかける。あやかしと協力して返り討ちにする。
⑱ 左大臣の家で、日陰が危篤で主人公がよびだされる。危篤は演技で、主人公に問題を解決してもらうために呼び出した。
⑲ 左大臣の臨終になりかけ、犯人が姫達でないとわかる。(生き霊が左大臣と判明)
⑳ 自分の兄貴分が犯人だったとわかる。父の刀で倒す。メインシナリオ終了。
㉑ あやかしはかつて最強のあやかしだった。日陰が死んでその弔いをする。すべてのサブシナリオが終了。
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中村ふみの作品は妖、異界、不思議な話が読みやすくのめり込めるから面白い。無慈悲な妖の正体については明確に書かれていないが、あの人なんだろうなというモデルは思いつくくらいの歴史と結びついてるのもいい。ただのファンの感想です。
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読みはじめはよくある和ものファンタジーかと思っていたけれど、
読後の爽やかさと強すぎないキャラクター、そこに加えて
ほんの少しの寂寥感もある、素敵な物語だった。
続きがあるのなら読みたいと思うくらいに。
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陰陽寮の下っ端役人が式神を召喚しようと試みたものの呼び出した相手が強力過ぎて逆に憑かれる羽目に。
そのまま依頼のあった屋敷に赴けばそこで殺人事件が…と言う物語。
ですが何だか盛り上がりもあまり無くだらだらと話が進んでいくように感じられました。
鳥が咥えてきた手はだたの偶然と言うことで良いのでしょうか?
何だか出来過ぎて不自然で手の件は無い方が良いように思えました。
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中村ふみ氏にしては、凡庸な作品。登場人物もありがちで、展開もよめてしまう。
夜見師の冴えはない。
残念。次作に期待したい。
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ヒロインの七君が生い立ちに負けず(良いとこの姫だけど)行動的で前向きで好感が持てる。その育ての親の日陰様も。そっちに気を取られて犯人は誰かかんがえず読んでたら意外だった。
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雪羽みたいな妖良いなぁ。
日陰様との関係性がど好み過ぎた。
興味を引いてたどころか、かなり日陰様のこと気に入ってたんだよなあれ。
屋敷に着いて早々に会いに行くし、時期外れの梅の花まで渡すし、経まで上げるしさ。
ただ興味を引かれただけでは、そこまでしないよね?
想っていたんだなぁ、と。
七君のこと、桔梗の上が面倒見てくれることになって良かった。
どうなることかと少し不安だった。
格が上がるけど、いつかは二人が結ばれることになるのかな?
頼尚が犯人ってところには驚いたけど、伏線は張られてたか……気付かなかったな。
著者プロフィール
秋田県生まれ。『裏閻魔』で第1回ゴールデン・エレファント賞を受賞し、デビュー。他の著作に『陰陽師と無慈悲なあやかし』『なぞとき紙芝居』「夜見師」シリーズなど。秋田県在住。
「2022年 『異邦の使者 南天の神々』 で使われていた紹介文から引用しています。」
中村ふみの作品
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