海が見える家 逆風 (小学館文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094070583

感想・レビュー・書評

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  • 人類が誕生した時、
    日々は生き残りをかけた
    瞬間の連続だったと思う。
    死はすぐ目の前にあって、
    死なないことがすなわち生きることだった。
    大型動物たちは牙をむいて、
    同じく自らの命を続けるため、
    隙あらば人類の命を狙う。
    自然も脅威だ。
    時に過酷な寒さとなって体温を奪い、
    時に熱となり水分を奪い、
    時にすべての命を奪って
    人間の命を絶やそうとする。
    その中を人類は生き抜いてきた。

    そうした過酷な日々でありながら、
    それでも生き延びてこれたのは、
    その日々のどこかに
    遊びを見い出してきたからだと思う。
    喜びや楽しみを感じる心があったからこそ、
    人類は過酷な世界をも乗り越え、
    時には哀しみや怒りさえも利用し、
    現在の文化や生活を作り上げた。
    死は一見、遠くになった。
    生活は快適になり、身の安全は守られ、
    自然の脅威も飼いならす。

    本当にそうだろうか。
    その中で失ったものはないだろうか。
    安全な生活、快適な世界は、
    加速度的に安全に、どこまでも快適へと進化する。
    その進化は年々スピードを上げる。
    誰もその進化を止めることはできない。
    その一方できっと多くのものを失い続けている。
    一人で生きること。
    今を生き延びること。
    自分の力で生活すること。
    あるものの中で工夫すること。
    自然のともに生きること。
    何気ない日々の中に楽しみを見い出すこと。
    思い出そう。

  • 3作目は ネガティブな内容盛りで
    現実の厳しさを 染み染み感じました。

  • 106冊目(11-3)

  • 「食う」ということについて考えさせられた。
    「食うということは、他者を食らうことでもある」本当にその通りだ。
    生きものはみな殺生をして生きている。
    それなのに人間は殺生を他人に任せている、自分が生きたいのに、生きるためなのに。
    海が見える家シリーズの第3作はかなり深い話だった。
    台風の直撃によって激変した生活、生きていくということの厳しさ、難しさ。
    何のために生きるのか、いや、生きるために何をしていくのか、、
    そして最後の最後、悲しすぎるよ、、幸吉さん

  • 入社1ヶ月で会社を辞めた文哉。父が遺した海が見える家で暮らすことになり、そこでは別荘の管理などを中心に生計を立てている。現地の人たちと交流しながら、そこの特産を販売したり、農作物を作ったりと気持ちとしては順風満帆だった。会社を立ち上げて、軌道に乗ろうとした矢先、大きな多風が直撃された。現地の人と復旧作業をしたり、かつての同級生と再会したりと、また新たな文哉の生活が一変していく。


    「海が見える家」シリーズの第3弾です。今回は台風に襲われたのをきっかけに新たな進歩が垣間見れます。
    初めてシリーズを読む方には、ここからだとちょっと物足りないかなと思いました。文哉の背景がいかに大変だったのか。その心理描写を把握せずに読みますので、なかなか表面的にしか感じないかもしれませんので、ぜひ前作を読んでからをお勧めします。

    今作では、台風からの再出発だけでなく、新たな現地の人・同級生の登場といった交流も描かれています。それらに苦労していましたが、人生を投げ出さずに一歩ずつ向き合いながら、前向きに頑張っている姿に自分も少しずつ頑張ってみようと思わせてくれました。

    メインは台風からの再出発ですが、個人的には同級生との再会の話が印象的でした。
    人生はお金だけじゃない幸せもあります。都会とは違った体験や魅力が詰まっていますが、生活するとなると、持続することは並大抵のことではありません。

    現地に行ってみないとわからない理想と現実。同級生との価値観の違いが、大人になってこそ感じるものがあり、しみじみと心に刺さるものがありました。

    人それぞれ幸せを感じるものは様々です。相手とは違くても、それを批判することはナンセンスです。何が、自分にとって「幸せ」なのか。

    今、いる立ち位置・場所が幸せなのか。答えは自分にしか出せませんが、模索しながら、人生を送ってみてもいいのではないかと思いました。

    何も行動せずにじっといていたり、諦めるよりも、何か行動を起こすことで、化学変化が起きるかもしれません。

    お金がなくても、幸せであれば、それで良いんじゃないか。
    そんなことをこの本を通して、思うようになりました。
    すぐに人生が変わるわけではありませんが、少しずつ変わっていくことで、人生が豊かになるかもしれません。
    自分もちょっとずつ頑張ってみようと思いました。

  • この小説を読んで一番思ったこと。それは、自分でできることは自分でやったり、自分にできることを増やしていくことはとても清々しく、こんなにも生きている実感を与えてくれるものなのかということ。無理は禁物だけど、少しずつでも自分でできることを増やしていきたい。
    あとは、日常の「あたりまえ」を見直してみようと思った。お風呂は毎日入るけど、せめてシャンプーは一回にするとか!(今まで2回洗ってた…)
    他にも、イノシシのことが知れて面白かった。イノシシが体の汚れを落とすために水稲に被害を与えていることや、ミミズが好物のために畑で掘り起こしをすること、赤トウガラシの匂いが実は苦手であることを知れた。生き物はみんな殺生して生きている。今の自分にできる一番身近なことは、食事の際にしっかり「いただきます」と「ご馳走さまでした」を言うこと。
    生きる実感を得るためのヒントをたくさんくれた小説だった。

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著者プロフィール

千葉県生まれ。商社、出版社勤務を経て作家に。二〇〇六年『サッカーボーイズ再会のグラウンド』でデビュー。「サッカーボーイズ」シリーズ、「海が見える家」シリーズの他に『帰宅部ボーイズ』『ようこそ、バー・ピノッキオへ』『会社員、夢を追う』『太陽と月サッカー・ドリーム』などの著書がある。

「2022年 『サッカーデイズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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