あおい (小学館文庫 に 17-1)

著者 :
  • 小学館
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感想 : 331
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094081732

感想・レビュー・書評

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  • 西さんのデビュー作なのか。読みながら良い意味で違和感を覚えます。ある意味、完成度が高い。ひょっとして現在のものより良いんじゃなかろうか。同時に何かを「描きたい」という強いモチベーション・意思のようなものを感じます

    どこかキチンとして無くて、将来とか世間とか気にしないけれど、今の一瞬や仲間にはそれなりに誠実な「現代の若者」を描いた作品。
    私の中で西さんは「どんな人であれ、自分を肯定しようよ」と語りかけてくる作家さんです。ただ、この作品ではそこはあまり強く感じません。ポジティブに肯定するというよりニュートラルにあるがままに描く、そんな感じの作品です。

    登場人物たちの思わぬ発言や行動、流れとは無関係に思えるもの、逆らうようなものがしばしば現れます。でもそれが不自然ではなく、むしろ心や気持ちの揺らぎを表しているようで、上手いなと感じます。
    改めて良い作家さんだな~という印象です

  • あおい
    著:西 加奈子

    直木賞の受賞の「サラバ」を読み
    著者の最近の話題作である「漁港の肉子ちゃん」を読み、短編集である「炎上する君」を読み、角度を変えてエッセイ「ごはんぐるり」を読んだ。

    西加奈子氏の全てがわかったとは言えないものの、次読むモノには違う何かを求めた。

    迷わず決めたのはデビュー作である「あおい」
    ガンガンに上がった私の期待というハードルをひょいと飛び越えるかと思っていたが、ひょいと下をくぐって驚きを与えてくれた。

    青春を語る年代の主人公でもないもののどこか青春というかすぐ壊れそうで脆い感情で出来上がった見世物を色々な角度から眺めている気分にさせてくれる。

    変化球はないもののまっすぐではなく角度を変えて感情に突き刺さってくる言葉のチョイスは流石。

    右にも左にも上にも下にも読むものの感情を揺さぶるも最後はしっかりと仕上げてくる。
    勢いを感じる作品。

  • どの物語も短いのに、むき出しのまんまで迫ってくるもんだから、まるでどろどろのゾンビに追いかけられるような感覚になった。悪い意味ではない。
    これが芸術なんだろうなという文体で、すぐには飲み込めなかったから、読み終わるのになかなか時間がかかってしまった。「あおい」は特に続きを読みたいのになかなか読み進められなかった。暗い気持ちになるわけではなく、かといって読み終わって清々しい気持ちにもなれない。(私だけ…?)なんとも形容しがたい感情が巡ってくる。読み終えたあとはすこぅしほっとしてひと息つくことができる。
    一人称の感じ方だけで物語が展開していく部分があるのを見て、西加奈子さんはかなり自分の世界観を中心にプライベートでも動く人なのかな?と作者のことを知りもしないのに考える。
    大体、小説というものは一人称の場合、その人の視覚的な視点で物事が動いているように見せていると私は認識している。けれどそれとは違う展開を活字に興すことができているのが、「これが凡人には成せない技なのか…!」と読んでいて驚愕してしまう。なのに独りよがりの文体にはなっていなくて、ちゃんと読者を引っ張っていってくれるので「あれ?この場面はどうなっているんだ?」とならないのがすごい。
    最後の山崎ナオコーラさんの解説。私と同じ考えの部分がある!と大興奮(笑)
    物語の締めくくりに相応しい、西加奈子さんを知る作家さんの視点での解説は是非読んでほしい!

  • ちょっとしたことろに女性の生の心情が見えて、ブルースやなって思った。

  • 共感は絶対できない。ただ、こういうふうに素直に生きれる人は羨ましく思うし、近くにいたら認めてあげたいと思う。

  • 読み始めたときは、独特の文章に馴染めなかったけど、
    読み進めるとすぐに、どっぷり世界観にハマってしまいました。めちゃくちゃ好きだ。
    レトロな緑や紫のフィルターのかかったような色彩の
    世界で、同世代の私は、ちょっと古着が流行った学生時代を思い出して懐かしかった。
    なんだかとてもリアルで息をしているような小説でした。とにかく好きです。

  • 西加奈子のデビュー作。表題作「あおい」の他、「サムのこと」「空心町深夜2時」の短編を収録。

    ・・・
    西さんの恋愛ものは難しい。自分の常識に合わない女の子が大概主人公。

    裏表紙を見ると、27歳、スナック勤務、三歳年下の駄目学生・カザマ君と四カ月前から同棲し、彼の子供を身ごもる、とあります。

    友達ならば面白いんだろうなあとか感じます。でも、私の読み方は自分だったり近しい人を投影して読むタイプ。こういうのが自分の嫁だったり娘だったりしたら・・・それは困りますわ笑。

    ・・・
    散々ウームと(やや否定めに)唸りつつ、でそれでも読んでしまう、西さんの作品。
    ふと考えるのは、自分は一体何に惹かれるのか、ということ。

    山崎ナオコーラさんが書いている解説にその答えが。
    「率直」「みたまんま」。

    これです。
    「あおい」にせよ「サムのこと」にせよ、登場人物がどうにも憎めない。でそれはやっぱりどの人物も「率直」なんです。私はこういう、思ったことをそのまま伝える人に親近感を感じるみたいです。

    もちろん、伝えることには非常な技術が必要であり、その言語力だけは西加奈子レベルでありますからね笑 この言葉のセンス、これが私にとっての西さんの一番の魅力なのかもしれません。

    ・・・
    ということで西さんのデビュー作でした。

    恋愛小説が好きな方、純文学が好きな方、西さんが好きな方にはお勧めできる作品です。
    因みに私は「サムのこと」が面白いなあと思いました。友人の葬式で初めてその友人の素顔を知るという話です。

  • 西加奈子さんの本は、惹きつける力がすごい
    読み始めて直ぐ、捲る手が止まらなくなる。妙にリアルで、真っ直ぐで少し生々しい
    キャラクターを表す時の比喩が面白いなぁと思った
    表題作含む3作全て、もう終わりか…となんだか寂しい思いにさせる
    もっとこの人たちの人生を読みたいって思う

  • 西加奈子の小説の濃い部分を更に煮詰めたみたいだった。カロリー高め

  •  好きって凄い。

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著者プロフィール

1977年イラン・テヘラン生まれ。2004年『あおい』で、デビュー。07年『通天閣』で「織田作之助賞」、13年『ふくわらい』で「河合隼雄賞」を、15年『サラバ!』で「直木賞」を受賞した。その他著書に、『さくら』『漁港の肉子ちゃん』『舞台』『まく子』『i』などがある。23年に刊行した初のノンフィクション『くもをさがす』が話題となった。

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