真田太平記(十二)雲の峰 (新潮文庫)

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  • / ISBN・EAN: 9784101156453

感想・レビュー・書評

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  • 最終巻十二巻「雲の峰」
    豊臣は滅び徳川の天下となり、家康も死去。
    二代将軍秀忠の時代となります。

    さて、時代劇などにおいて、大阪の陣での豊臣家家臣たちは「数年籠城して、家康が死んだら、有利な状況で和睦、千姫の父である秀忠は家康より交渉しやすいだろう」と考えていた…ように描かれますが、
    あくまでも「後世からみると」ですが、
    大名家も公家も押さえつけ取り潰し、風紀が乱れたと朝廷の女官たちも処罰させるような秀忠のほうがよっぽど怖い。
    やっぱり”大阪の陣”というものを起こした時点で豊臣家に行く末はなかっただろう…。

    …とまあ、こんなコワい秀忠政権下で、真田信之は真田家の行く末に暗いものを感じ、ますます身体を引き締めます。
    そして草の者のなかでただ一人生き残った女忍びのお江さん。
    上田に戻り信之の元で真田家を守るための忍び働きを行います。
    信之54歳、お江さん65歳くらい?
    まだまだ草の者としての腕前は超一流。
    真田家を取り潰そうとする幕府との駆け引き。
    このへんの描写は著者も実に楽しそうです。歴史に大きな流れは描いたのでこの長期小説をどう絞めるか、描きたい人の描きたいことを描くぞーという状態か(笑)

    そして最終巻らしく、生き残った者たちの”その後”が静かに語られます。
    穏やかな晩年を過ごす者、失脚する者、飼殺される者、失意のうちに消える者…。
    そんな姿が静かに描かれます。

    この長期連載のラストは、真田家が上田から松代に転封となるところで終わります。
    これからは実直な昔ながらの武士のままでは生きられない政治の世界となります。そんな中古い時代を生き抜いた誠の武士である信之、古い時代の卓越された忍びの術を持つお江さんは老境に入ってもまだまだ隠居などしていられないようです。

    お江さんについては…後書きで作者は「お江のその後を私は知らない」と書いています。「しかし彼女のことだからきっと長寿を保っただろう」。あとは読者の想像にお任せということなので、信之の裏で忍び働きしながら穏やかに老後を過ごしたと思っておきましょう。信之さんは94歳で亡くなるのだからこの先まだ人生は長い、身分を超えて良い茶飲み友達は必要だろう(笑)

    そして後書では、真田家のその後が描かれて…終幕。

  • 【読了メモ】あ、あ、あ、終わってしまった、作品が。あ、あ。ああ、もう、ああしか出てこない。

  • とうとう最終巻を読み終えた。
    初めての歴史小説、初めての池波正太郎だったが、読みやすい文体でさくさくと読み進められた。
    時々「〇〇は先に述べた通りだ」とか「話をもとに戻そう」などの語り口調で親近感ももてた。

    それにしても、9年間も新聞連載されたとはすごい。
    膨大な数の登場人物は、とうてい全ては把握できないまま読んだが、細かい人物描写で情景が浮かんでくるのが楽しかった。
    読み終えてすこし淋しい。

  • 最終巻。
    大坂の陣が終結し、幸村も逝ってしまった後の真田家。
    読む前は“おまけ”的な巻なのかと思っていましたが、そんな事全然なく、とても面白く読めました。
    幕府の陰謀から家を守ろうと奮闘する、信之以下、真田家の家臣たち。今までの馬場彦四郎の動向にモヤモヤしていただけに、お江の活躍は胸がすっとしました。さすが頼れる忍びですな。
    最後は松代に国替えになり、上田を去る場面で幕を閉じますが、後書によると後にまた騒動が起こるとか・・・ですがそれはまた別のお話です。

    全巻通して。
    武田家滅亡から、徳川政権確立後まで、まさに戦国乱世を真田一族と共に駆け抜けたような感慨があります。
    昌幸・信之・そして幸村・・それぞれの生き様がとても素敵でした。
    ちなみに、この真田父子をもっとも悩ませたのは、秀吉でも家康でもなく、樋口角兵衛だったと思います。。。

  • 伏線が全て1つにまとまっていく心地よさ。

    これほど読後感の余韻に浸れる作品に出会ったのは何年ぶりだろう。

    前11巻の内容は全て12巻を収束させるために描かれたと思われるほどに素晴らしい内容。

    全12巻は長いが読む価値アリ。

  • 1-12巻まとめて・・・。
    私の歴史小説デビューの本。
    どこまで史実でどこからフィクションか分からなくなってしまいそうです。
    続きが気になって毎日読んで、読後は達成感で一杯になれます。

  • 真田家の存続に子を二手に
    それも死をもって
    家を守るとはどういうことなのか
    歴史小説の常套テーマだが
    その度に考えさせられる

  • 波瀾万丈の真田家の物語、ここに完結。

    前巻にて大阪夏の陣が終わり、今作はその後の真田信之を中心に、主要登場人物たちのその後が描かれる。

    全12巻、大変に楽しんだ。
    真田父子3人のみならず、お江をはじめとする草の者たち、向井親子、鈴木右近、樋口角兵衛、滝川三九郎などなどの魅力的な登場人物たち。
    真田一族の波瀾万丈の史実を中心に、草の者の活躍や真田家のお家事情などを絡めた、エンターテインメント性の高さ。
    智、仁、勇で象徴される真田父子の生き様のカッコ良さ。
    池波正太郎ならではの情感。

    さすがに太平洋戦争を経験する世代の著者とあって、女性観などが現代の価値観からしてあまりに古いのが難点か。

    とはいえ、歴史小説において、オールタイムベストクラスの面白さの作品だったと思う。

  • ついに12巻目読了。
    12巻目は大坂夏の陣の後の、真田伊豆守信之のお話。
    大坂夏の陣も終わって、世の中は平穏になり、大御所の家康も亡くなって、将軍秀忠の時代になった。
    秀忠は、関ケ原の合戦に真田の妨害により遅参し、家康にこっぴどく怒られた。
    この為、秀忠は真田を良くおもっていない。秀忠はなんとか口実を付けて、真田家を取り潰したい為、隠密を送りこむ。
    しかし、信之は知略により、危機を乗り越えた。

    世の中では、あまり知られていない信之に焦点を当て、語られている。
    信之は父の昌行や弟の幸村に劣らず、天下を取るに足りる知将であったようだ。
    信之の、小野のお通にたいする恋情や、草の者のお江の活躍など、面白かった。

  • 高校時代にこれが原作のNHKのドラマが大好きだった。
    いつかはこの作品にチャレンジしたいと思いつつ40年近く過ぎてしまった。
    この最後の巻の辺りは記憶から抜け落ちてしまっていた。
    大体、真田一族ものは幸村主人公が多く信之がこんなにクローズアップされるのはこの作品くらいだろう。
    そういう点を除いてもこの作品が真田一族を扱った小説の中でも最高峰なのは間違いない。

  • 最終巻は、五十を越えて燃え上がる伊豆守信之の戦魂と恋情、住吉慶春とお江二人の忍び働き、そして幕府(秀忠)との闘い。いずれも面白い。
    6月から読初め12巻を読み切って茫然としている。池波正太郎の歴史、人間、人生に対する深い洞察に感謝。楽しかった!

  • 大坂夏の陣の後の話であり、真田昌幸も幸村も既に世を去っているため、読む前はエピローグ的な内容になっているのかと思った。

    確かにそういう側面もあるが、しかし物語はまだ続いていた。つまり真田vs徳川の闘いは終わっていなかったということである。

    前巻までは真田昌幸・幸村vs徳川家康だったのが、この最終巻では真田信之vs徳川秀忠になっている。もちろん、互いに武器をとってのドンパチというわけではないが。

    信之が松代に移るところで話が終わっているため、信之と秀忠のどちらが勝ったのかは定かではないが、松代藩は明治維新まで生き残ったわけだから、その意味では信之の勝ちではないかと思う。

  • 2017.5.25
    いい小説。忍者が小説に入り込むことで、敵味方を俯瞰できたきがする。

  • 天下を取った徳川家も太刀打ち出来なかった、
    真田家の興亡を描いた作品。
    著者の抜群の文才で戦国の世の泥臭さ、友情、愛情、激情、権謀術数が堪能でき、読者は戦国時代にタイムスリップ出来る。
    敵味方に分かれても変わらない兄弟の絆、最後の最後の最後まで不屈の闘志を貫く幸村に感動。
    全12巻。

  • 信之が松代へ国替えとなり、上田から出発するところで物語は終わる。
    信之って家康より忍耐強いかも、
    佐助の死が伝えられる場面は、通勤車中にありながら涙が止まらなくなった。この歳になって涙もろくなったのに加え、人前でも平然と泣けるようになった。末期的かも。

    • ゆず太さん
      エンタテイメント!!
      著者の読者を楽しませようとするワクワク感がいっぱい。色々な人物が生き活きと躍動し、理路整然と組み立てられているのに感動...
      エンタテイメント!!
      著者の読者を楽しませようとするワクワク感がいっぱい。色々な人物が生き活きと躍動し、理路整然と組み立てられているのに感動する。
      2023/01/07
  • 全巻読了。
    公共放送で大金かけて制作している茶番のドラマがあまりにも情けなくて、本物を読んでみた。時代にそって縦軸横軸がしっかりしていて、登場人物にも魅力がある。(十一)(十二)はほとんど泣きながら読んでいた。幸村が息を引き取る時佐平次がそばに居てよかった。

  • 何回読んでも面白い。

  • 完結。
    幸村が出てこなくてどうかとは思ったけれど、一気読みだった。

    歴史物は楽しいんだけれども、疲れる。
    ミステリーに戻ってみようかな。

  • ついに読み切ったーーーー

    そして、真田家、ここで終わらないんだ!まだまだ信之生きるんだと思ったらなんだか感動。
    今に続いていく感覚が、歴史を面白くするんだろなー

  • 長かったけどなんとか読み終わった。
    幸村も信之もそれぞれ違う生き方をしたけど、それぞれ格好良かった。
    良い人生だなぁ

  • 信州の小大名から身を起こして、時代の大きな節目に名を轟かせ、領民に慕われる治世を行った真田家は、やはり稀代の一族だったと実感。長い物語だったが、一気に読ませてもらい、終わりも清々しかった。近々、上田を訪れる機会を得ているので楽しみ。

  • 大阪夏の陣の後に真田家が幕府の陰謀をくぐり抜け,松代にお国替えになるまで.
    何となく昌幸,幸村父子が主人公のように思っており,夏の陣で幸村が死んだあとに何の話が続くのか分からなかったが,実は信之も含めた「真田家」が全十二巻の主人公である.むしろ信之が主人公のこの十二巻があるからこそ,全ての伏線が収斂し,物語が閉じた感がある.
    十二冊,あっという間でした.おそらく何度も読み返すことでしょう.

  • 家康亡き後、真田を敵視する秀忠は改易を目論むがお江の知らせにより危機を逃れる。家を守るための謀略戦に挑む信之や清正の無念を晴らすお江たちの知謀戦は強引な徳川支配の鬱憤を晴らす痛快さがある。幸村の遺髪や佐助の遺品のエピソードが泣けるな。息子を亡くし国替えやお家騒動を乗り切り亡くなる寸前まで真田家を守り戦った信之。真田の武名を天下に知らしめた幸村。方法は違うものの真田のために戦い抜いた兄弟の物語が感動と共に終わってしまった。初めは分厚い本が12巻と長く感じたが、読みやすくて面白くすらすら読めた。

  • 真田幸村の少年時代から信之(信幸)のその後までが語られる大長編歴史小説。

  • 12巻完結の最終巻。
    真田幸村が亡くなってからの話で、兄、真田信之の話にシフト。とにかく信之がキュートですw
    徳川家康が亡くなり二代目将軍の秀忠の勢力中心な話。
    徳川勢力が頑丈になり、いよいよどの大名も反抗しなくなった世の中で
    徹底して各国の力や富を奪う戦略に
    信之と徳川の知恵比べになります。
    まだまだお江は健在で、草の者はお江だけだけど
    幸村から信之に仕える身になります。
    しかしながら、囲碁碁盤つくりの話がめちゃくちゃ面白かった。
    スカっとする。

    ラストはお国替えになり
    いままでの上田城から信濃国・松代へ移るようにの申し渡し。
    これは切なかったけど、領民たちから愛されてきた真田家がとにかくかっこいい。
    そんな感じです。
    秀忠からは嫌われていた真田家だけど、家康や三代目将軍の徳川家光からは愛されていたようで。
    明治維新まで残った真田家はやっぱすごい。
    初めての長編、楽しく涙あり笑いありで良かった。
    全てにおいて星五つ。

  • 読了。もう一度一巻から読んでみようか。

  • 長かった物語もやっと大団円。
    真田家をめぐる壮大なものがたりなのだけれども、それを含む歴史背景などを含めると膨大な人物が登場します。
    そのすべてを整合的にしかも魅力的に描いてあるのは本当に凄い。

    12巻を一気に読んでしまいました。

  • 子供の頃、児童文学で真田幸村を読み、子供ながら真田十勇士の活躍に胸躍った記憶がよみがえりました。
    私の中での歴史小説ベスト5に入ります。
    大好きな作品です。

  • 最終巻を3月26日に読了。平成23年9月から読み始めたので、約7ヶ月かけました。
    一気に読んだり間が空いたりとペースはまちまちでしたが、すごく面白いので、途中で断念するということはないだろうと思ってました。

    大阪の陣の後、真田家は信之のみになりますが、そこからがまた意外なほど面白いです。武人としての「家名」を守り高めた昌幸と幸村、「家」そのものを守る選択をした信之。それぞれが命を懸けて得たそれは、誉れ高き「真田家」として後世にまで語り継がれることとなりました。史実も魅力的であり、また小説としても非常に魅力的な作品です。
    佐平次や佐助、お江、草の者や家来、豊臣、徳川、数多の大名たちなど、戦乱の世を生きようとする姿がそこにいるかの様に書かれたこの作品は、まさに一大歴史小説でした。

著者プロフィール

大正十二(一九二三)年一月二十五日、東京市浅草区聖天町生まれ。昭和十(一九三五)年、下谷区西町小学校卒業、株式仲買店勤務。昭和十四年より三年ほど証券取引所にあった剣道場へ通い、初段を得る。旋盤機械工を経て昭和十九年、横須賀海兵団入団。敗戦の翌年、東京都職員として下谷区役所の衛生課に勤務。昭和二十三年、長谷川伸門下に入る。昭和二十五年、片岡豊子と結婚。昭和二十六年、戯曲「鈍牛」を発表し上演。新国劇の脚本と演出を担当する一方、小説も執筆。昭和三十年、転勤先の目黒税務事務所で都庁職員を辞し、作家業に専念。昭和三十五年、『錯乱』で直木三十五賞受賞。『鬼平犯科帳』『剣客商売』『仕掛人・藤枝梅安』の三大シリーズや『真田太平記』等、数々の小説で人気を博す一方、食や映画、旅に関する著作物も多く上梓した。受賞歴はほか吉川英治文学賞、大谷竹次郎賞、菊池寛賞等。平成二(一九九〇)年五月三日、入院していた東京都千代田区神田和泉町の三井記念病院で死去。小社では同じく単行本未収録のエッセイ集『一升桝の度量』(二〇一一)と初期戯曲集『銀座並木通り』(二〇一三)を刊行している。

「2022年 『人生の滋味 池波正太郎かく語りき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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