- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101181578
感想・レビュー・書評
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再読。
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カルタゴを滅ぼし地中海の覇権を握った前二世紀後半から前一世紀前半のローマは、共和制の最後の時期という気配が非常に強く感じられた。
グラックス兄弟の改革も、その後のマリウス、スッラの改革も、ローマが巨大化したことにどのように折り合いをつけるかというためのものだったと思う。都市や都市国家の連合といった規模を超えた領域を統治することになったことから、必然的にローマの政治や経済、軍政のあり方が変わってきたことが、その背景になっている。
その中で、本巻ではスッラの改革が印象的であった。スッラ自身は少数の元老院議員による統治を最上のものとし、元老院の体制を強化するとともに、古代ローマから続いてきた執政官の突出を抑えるための制度を復活させている。ポエニ戦役やその後のスペインやオリエントでの戦役を通じてうやむやになっていた当地のルールを復活させるという意味で、ローマの保守派といってよい。
このような制度が、古代とはまったく様変わりしたローマにおいて、長期間維持されることがなかったというのは、必然的なことだったろうと思う。
一方、この巻でもう1点興味深かったのが、これまでの時代にも増して、個人のキャラクターを感じさせる登場人物が多かったということだ。
中でもスッラは、無期限の独裁官という絶対的な権限を獲得しながら、その改革が終わると速やかに身を引くという、歴史上でも珍しい動きを見せた。彼のように自分が善と考える政体を作り出すために力強く動く人物は、集団指導体制のローマの中ではなかなか登場しづらい。
ローマはこの後帝政に移っていくが、それ以前にスッラやマリウス、ポンペイウスといった、カエサルよりは小さい規模ながらも一時代を画した人物が登場し始めたということは、後のローマ政体の変動につながる伏線になっている。
元老院の権威を再興させるために一時的に絶対的な権力を握るという矛盾が、スッラという1人の人物の中にローマの歴史の転換点を表現しているように思えてならない。 -
[評価]
★★★★☆ 星4つ
[感想]
下巻はポンペイウスが活躍し、地中海をローマの海へと変貌させたという印象だ。
この時代のローマは混沌とした時代を乗り越え、さらなる成長を迎えた時代だね。この後のことを考えれば、ローマが共和国から帝国へと変貌する下地が少しずつ生まれつつあるということにもなるのだろうか。 -
ローマ人の物語 (7) ― 勝者の混迷(下) (新潮文庫)
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内容 :
前一世紀初頭、ローマは内外で混迷の度を深めていた。同盟者戦役に続き、小アジアではミトリダテス戦役が勃発、ローマも内乱状態に陥る。
戦役に勝利した名将スッラは反対派を一掃。
前81年、任期無期限の独裁官に就任し、ローマの秩序再建のため、国政改革を断行する。
しかし「スッラ体制」は彼の死後間もなく崩壊。
この後登場するポンペイウスは、ローマの覇権拡大を果たしたが…。
著者 :
1937年東京生まれ。学習院大学文学部哲学科卒業。
「ルネサンスの女たち」でデビュー、70年以降イタリア在住。
著書に「海の都の物語」「わが友マキアヴェッリ」など。 -
元老院派と民衆派の覇権争い。武力で覇権を奪い合い、破れた側は徹底的に殺され、奪われてしまう。それなのに対外的にはますます拡大していくから不思議。
この巻は登場人物が多い。逃亡先からローマに戻るなり反対派を殺しまくる民衆派のマリウス、民衆派を一掃し元老院の権勢を取り戻そうと改革を行ったスッラ、跡を継いだはずが独裁官となり海賊討伐とミトリダテス鎮圧に成功するポンペイウス、何度もローマに抵抗しローマ人を強欲と批判したポントス王国のミトリダテス、などなど。 -
少々身辺がバタバタしてて、前巻読了後、一ヶ月半も開いてしまった(>_<)
まったくの途中だったから、思い出し思い出し読み進めていったけど、やっぱり流れがよくわからなかった(>_<)
本来なら、きっと面白かったんだろうな( ´ ▽ ` )ノ
まあ、あとがきエッセイだけでもじゅうぶん面白かった( ´ ▽ ` )ノ
2018/03/27 -
ハンニバル・スキピオ・グラックス兄弟のように私の乙女心をくすぐる人物はあらわれませんでしたが、それなりに味のあるキャラクター続出です。
人格者で人気のあったマリウス。もう隠居かなと思いきや、怨念のかたまりと化した70歳の老将は殺戮行為、復讐の血祭りをなしとげます。
マリウスの自然死の後キンナの独裁。しかし正規軍としてスッラに向かうも、軍団総司令官の経験ない彼は暴動一歩手前の兵士を統率しようとして事故死。
スッラはローマ正規軍を破り、反対派を残酷に一掃。このまま彼の独裁かと思ったらあっさり隠居。58歳で23歳の女性と再婚、クーマの別荘で釣りや散策などで余生を楽しみます。
ローマの公人として初めてカスピ海に達したルクルス。兵士達との心の交流がうまくいかなかった。でも政界から離れた彼は芸術や豪華な美食を楽しむ人となります。
ポンペイウス。セントリウス戦役、海賊一掃、オリエント制圧完成。
スパルタクスの乱のスパルタクスはこの巻の中で一番かっこいい人みたいな気がします。
狡猾な王としてたびたび登場するミトリダテス六世。最後に彼側のローマに対する言い分も面白いです。彼なりに正義感があったのでしょう。
このようにたくさんの魅力的な人物が登場しますが、塩野女史は「いえいえ。こんなもので感心していてはいけませんよ。」と仰っているような感じです。
次から6冊。わくわくします。 -
前巻から続く、ローマの混迷の様子。
元老院体制を強化、堅持するために独裁的権力を振るったスッラ。スッラが小アジアに出征中にローマではマリウス、キンナが反旗を翻し、内乱が勃発。
その内乱に勝利したスッラは、元老院の権限を強化した後、自身も権力を手放す。
しかし、スッラの死後、ポンペイウスによって、元老院体制はさらに存続が危ぶまれる状態に。
海賊を倒し、小アジアを完全に平定したポンペイウスは、その戦争の終結に必要な権力の独占を求めたため、共和制の枠を壊してしまう。 -
護民官グラックス兄弟の改革とスッラ体制。カエサル登場前のローマ内政の混乱を描く2巻。