月の上の観覧車 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (351ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101230375

感想・レビュー・書評

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  • 短編集。ようやく読み終えた。
    前向きな話ではなく後ろを振り返る話なので、一つの話を読み終えた後に次の話に行く気にならず、結局2年がかりで読み終えた。
    最後の表題作「月の上の観覧車」がよかった。

  • なんかしんみりしました。

    トンネル鏡
    住んでいる街が嫌で東京の大学に進み地元を出て行く。就職し結婚し子供が生まれ家を建てる。母も呼び同居するが嫁とうまくいかず母は故郷へ帰ってしまう。嫁との溝が深くなりやがて離婚。自分も故郷へ戻る事を考える最中母が倒れ他界。歳をとった自分が故郷へ帰る電車の中、トンネルに入ると窓に映る自分の姿を見て人生を振り返る。

    上海租界の魔術師
    家に祖父が帰ってきた。祖父は昔、上海で魔術師をしていた。孫のかなめはマジックに興味津々。祖父はかなめ相手に色々とマジックを見せる。やがてかなめは不登校になる。祖父はマジックでかなめを変えようとするが当然そんな事では変わらない。祖父は突然倒れ他界する。祖父の葬式でかなめは祖父のトランクの中からマジックの道具を使い祖父の一番愛した人を投影させる。

    レシピ
    出来事の節目節目に出てくる料理で妻里瑠子の人生が語られる。大学時代から歳を撮った現在まで。顕司と結婚し子どもが生まれその子どもが手を離れた現在、夫顕司の不満が積もりに積もった里瑠子は離婚の決意をする。一言。食べ物の恨みは恐ろしい。

    金魚
    妻七恵が死んだ。田舎から出て才能のない自分と一緒になり苦労をかけた。ある日商店街の路地裏で子どもからもらった金魚を飼い始めた。病魔に侵されている自分には少しの安らぎになったのだろうか。亡くなった七恵に問いかける「お前は幸せだったかい」

    チョコチップミントをダブルで
    康介、綾乃、親子の関係。自分の夢ばかりを追いかける康介についていけず妻、史絵は離婚を口にする。自分の夢で生活ができる程甘くない。自分でも思っているがバイトをしながら職人の夢を続ける。元妻から今付き合っている人と再婚しようと思う。綾乃とはしばらく合わないで欲しい。年に一度綾乃と会える日に昔よくいった遊園地に行きアイスクリームを注文する。

    ゴミ屋敷モノクローム
    ゴミ屋敷の近所からクレームが役所に来た。生活環境課の渡辺はゴミ屋敷の住人にゴミを片付けるよう説得しにいく。

    胡瓜の馬
    小学三年生の時に引っ越してきた沙那との思い出の話。自分は高校卒業とともに東京へ出て結婚し、子どもも生まれた。沙那は地元に残り結婚したが別れ昔の同級生と再婚をし40歳の若さで他界した。自分の歩んできた人生は正解だったのだろうか。人生の分かれ道で違った選択をしていたら今でも沙那は自分の側で行きていたのだろうか。

    月の上の観覧車
    自分は継ぐつもりはなかったのだが父の娯楽施設の会社に必然的に入り当然のように社長を継いだ。バブルの時代に運もあり会社がみるみるうちに成長していく。しかしバブル終焉とともに会社も年々業績悪化、会社を売却することに。何かを思い観覧車に乗ると他界した母親。同じく他界した若い頃に父親。知的障害で生まれて13歳で亡くなった子どもの幻と会う。そして最後は癌で亡くなった最愛の妻との幻影と会話をする。人生に2周目があったらいいのに……


    人生での出会い、別れ、死をテーマに書かれているのかな。こういうアップダウンのない淡々とした話は凄く苦手で読んでる途中で自分の気持ちがどこかに飛んでいくのがわかるのですが荻原さんの話の流れが凄くわかりやすくしんみりと心に響きました。

  • 自分は主人公達より下の世代。胸を締め付けられながら読んだ。主役でいられる時期が終わっても人生は続き、想い出が美しくても運命は許してくれない。男達は自分を責めるが、一生懸命だっただけ。遣る瀬なくとも前に進む姿に心を打たれる。

  • それぞれがそれぞれの過去を振り返る。みんな思い出すんだなぁ、過去を。過去は痛いけど美しく映るね。ノスタルジック。

  • 8編の短編集。どの作品も現在の自分よりも過去を思い返している。今の自分と比較したり、これからの自分にどのようにつなげていくかを著している。
    人間はある時点を過ぎると将来や未来に対する想像や希望、期待よりも過去を振り返り、現在の自分の姿を思い後悔や感謝、幸福等を感じるのではないだろうか。この短編集の登場人物たちもそこそこの年齢でいろいろな経験を経て今の自分を感じている。今までの事を後悔したり、それまでのことを振り返りながらこれからの自分をどう生きていくか決意をもったりしている。
    どちらかというと重たい部分もある作品集ではあるが、「レシピ」は私と同世代の主人公が過去を料理と共に振り返るという設定で親しみやすく、また思いがけないラストに驚かされた。カラリとした終わり方ににやりとしてしまった。

  • 月と観覧車が起こす奇跡の出会い。前半のいくつかの短編は胸がグゥーっと苦しくなるような感じがしたけれど、読み終わってみれば心は温か。解説の冒頭の数行に激しく納得。

  • 人生は観覧車と同じで二周目はない。将来に夢を抱いていても、辛い過去を振り返っても、先送りも出来なければ、巻き戻しも出来ない。そして勿論、二周目はない。
    今を大切に生きようってベストな選択をしたつもりでも、成功よりも失敗が多いような気がする。
    生きていくことは難しい。でも、志半ばで生を喪った人たちの分も、生かされた人間は懸命に生きていかなければならない。たとえ一周だけの人生でも、その一周が貴重なのだ。

  • 失うから手に入れるのだ、手に入れたものは失うのだ、と思った。
    当たり前だけど、そうやって人生は続く。

    どれも好きだけど、特に「上海租界の魔術師」「レシピ」がよかった。
    上海租界の魔術師、とにかく終わり方が良い。
    レシピ、こういうサバサバした女の話が好き。男と出会いながら膨らませたレシピノートを憎むどころか愛している所が、またいい。

  • 月の上の観覧車はしみじみと心にしみわたりました。私もこんなふうに思い返す日が来るのでしょうかと思いました。

  • 記録

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著者プロフィール

1956年、埼玉県生まれ。成城大学経済学部卒業後、広告制作会社勤務を経て、フリーのコピーライターに。97年『オロロ畑でつかまえて』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2005年『明日の記憶』で山本周五郎賞。14年『二千七百の夏と冬』で山田風太郎賞。16年『海の見える理髪店』で直木賞。著作は多数。近著に『楽園の真下』『それでも空は青い』『海馬の尻尾』『ストロベリーライフ』『ギブ・ミー・ア・チャンス』『金魚姫』など。18年『人生がそんなにも美しいのなら』で漫画家デビュー。

「2022年 『ワンダーランド急行』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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