- Amazon.co.jp ・本 (351ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101230375
感想・レビュー・書評
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201804/人間の内面を静かに描く作品でした。良かった。
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悲しくなるお話ばかりであったが、共感できる部分が多かった。荻原浩、すごいなぁ。面白いだけじゃなく悲しさも切なさも胸に響く作者だ。
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著者は趣きの異なった小説を書く。本作は、重松清の小説のよう。主人公が過去を振り返る8つの短編。中年以降の読者には共感するものがあるはず。2018.2.23
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普通に考えてあんまり幸せでない話もあるし、何の救いもオチもない話もある。
でもいつのまにか暖かくなる話。
荻原浩を存分に味わえた。 -
人生に二週目なんていらない。
こんな風に人生を振り返った時に、まあ悪くなかったと思える人生を送れていればいいな。
チョコチップミントをダブルで、と月の上の観覧車が好き。 -
8話からなる。
短篇でいながら、8人の家族模様が、ずっしりと描かれている。
「トンネル鏡」――本当に、トンネルの中を走る列車ガラス窓に映る顔を見ると、精気の無い表情に、ハッと、我が目を失ったことがあった。
作者の言葉が、グサッと、胸に届く。
最後のトンネルを抜けた、。そこは海だった。で、明るい方向へと、向かっているのが理解できる。
「金魚」――縁日で、幼い子から、ふと手にした金魚に、妻の死から、嘆き悲しんでいたのが、立ち直っていく男の姿と、金魚への幻想。
「上海租界の魔術師」――孫から見た祖父は、上海で、マジックをしていたことがあり、大好きであった。
マジックも教えてもらったが、、祖父の葬儀の時にフィルムを見つけて撮影すると、そこには最愛の人であり助手のフェーテイエが、映し出されて、一緒にお棺の中へと、入って行ったのを見て、マジック以外に不思議なことがあるのだと、、、
「レシピ」料理の好きな理瑠子が、学生運動の時代から、料理が好きであった。
安くて美味しい物を作るのも。
結婚で必要なことは味覚を共有できるか出来ないかである。
味覚の好みの違いをジョークのネタに出来るのは恋人や婚約者同士まで。
人間の舌は変えられない。
それだけで、離婚へと、発展していくのだろうか?
「胡瓜の馬」――お盆に、実家に戻った修二は、同窓会に出るのだが、、、幼友達であり付き合ったことのある沙耶の死を知る。
迎える時は、早く戻れるようにと、馬型の胡瓜で、戻る時はゆっくりと牛型のナスで、、、と、。
「チョコチップミントをダブルで」――自分の夢を叶えるために、仕事を辞めてしまった康介は、離婚後、娘に会えるのは、1年に1度だけの誕生日の日。
自分の作成した椅子をプレゼントに、そして娘綾乃は、父と幼き日に約束したアイスをダブルで注文する。最後の「二つ」が、効いている。
「ゴミ屋敷モノクローム」――断捨離が、今流行りだが、我が家も、母のタンスから出てきたものは、懐かしい物や風呂敷、袱紗、着物をほどいた物から、子供の襦袢迄あった。
若き日の写真館の写真は、今でも捨てられない。
この作品の中の関口照子のおばあさんも、自分の若い日の思い出と、主人の撮ってくれた遺品の一部のモノクロ写真を残していたのだろう。
「月の上の観覧車」――観覧車が12時の所に来たら、月が取れるような気がしていた幼き頃の私。
この作品で、ガンに冒された社長が、最後に臨んだ観覧車に乗るという事。
自分が作った観覧車が、閉鎖になる前に、妻の涼子が、亡くなったが、母も、そして最愛の久生も、この観覧車の一周する間に会えると信じていた。
人生に一周だけの時間しかないのだろうか?
皆、家族それぞれドラマが、あるのだから、楽しい思い出を作りたいものだと思いながら、ちょっぴりおセンチな作品を読んで、人生の参考にしたいものだと、、、思った。 -
人生の折り返し地点を過ぎると、人は過去を振り返りたくなるのかも。
あの時…あの人と…
誰もが過去を思う時、頭をよぎることではなかろうか。
そんな物語が短編集として綴られている。
どれも心の奥に響くのは、私も折り返し地点を過ぎようとしているからなのかもしれない。
2017.12.11 -
荻原浩氏の作品には、珍しくシリアスなテーマの短編8作だった。
そんな中、本のタイトルになっている「月の上の観覧車」
老いてゆくなか、それまでの自分の人生を回想し、今の自分を考える内容。
自分も、これからの未来を考えるより、今までの人生を振り返る年齢になったなと思う今日この頃です。
解説の中で大矢博子氏が
「人は生まれてからしばらくは、未来を見て進む。
先が短くなるにつれ、20年後、30年後が自分にあるのか、それまで生きていられるのかを考えてします。
それは悲しい、寂しい。
だからそれに気がつたとき、人は回れ右をし、せめて『先』の限りが目に入らないように後ろを向くのだ、それゆえ『先』の代わりに目に入るのが、これまで自分がたどってきた過去だ」といっている。全くその通りだと思う。 -
萩原浩は「さよなら、そしてこんにちわ」以来7年ぶり。
それまでの作品は全部読んだ。
ほとんどが☆3以上だったはず。
でも今回は違った。
一つ目の短編を読んだところでほぼ諦め、
途中を飛ばして最後の表題作を読むも途中で断念。
刺激がなさ過ぎました。 -
全体的に温かくて「良い小説を読んだな」っていう感覚が残った。切なかったり悲しかったりする中にも希望が残るような。
私は「あの時ああしておけば良かった」と強く思うようなことは、まだそんなには無い。というのも多分、結婚とか出産とか、女性なら大きな岐路になるような出来事をまだ経験していないせい。
それらをこれから経験するにしろしないにしろ、そのことについて振り返って良かったと感じたり後悔したりするのは、もう少し先の年齢になってからなのだと思う。現段階では、まだどちらにも振れる可能性があるから。
この物語に出てくる人物たちは大抵がそれらを通りすぎた年齢で、大きな仕事をし終えた後だからこその後悔とか、過去への憧憬とか、そういった感情が多く描かれている。「あの時ああしておけば、今の状況は違ったかもしれない」とか、帯にもあるように「人生に二周目があればいいのに」とか。
どちらにしろ叶わないことなのだけど、きっと誰にでも、過去を振り返ってそんな風に思うような出来事が存在する。
だから私にとっては実感を伴わない理解のような感覚なのだけど、きっとこの先そんな風に思うことがあるのだろうな、と少し切なく考えたりした。何十年か後に私がまだ生きていたとして、もう一度読んでみたら、感じることはまた違いそう。
荻原浩さん…少し前に直木賞を獲った方だったかな?その小説も俄然気になり始めている。少し女性作家的な匂いも感じる優しくて幻想的な短編集だった。-
荻原さん。
元々スラップスティック(ドタバタ喜劇)で作家デビューし、その後映画化された「明日の記憶」あたりからシリアス&ハートフル路線に転...荻原さん。
元々スラップスティック(ドタバタ喜劇)で作家デビューし、その後映画化された「明日の記憶」あたりからシリアス&ハートフル路線に転身し、2016年「海の見える理髪店」で直木賞を受賞した作家さんです。
個人的には初期のスラップスティック、例えば「なかよし小鳩組」当たりも捨てがたいのですが、転身後の暖かな作品もなかなか良くて「愛しの座敷わらし」あたりもおすすめです。2017/10/06
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