東の海神(わだつみ) 西の滄海 十二国記 3 (新潮文庫)

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  • / ISBN・EAN: 9784101240558

感想・レビュー・書評

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  • 2022.6.18読了。片方の子供は悟って自死を覚悟してしまう、もう片方は恐怖より捨てられた孤独の寂しさが勝る、どちらにしても悲しいものだな。また別では一石を投じようと死を覚悟で行動する者もいる。麒麟は血自体はもちろんやはり血生臭い話も苦手なんだな。だが王を麒麟が選ぶというこの世界の理に反発する者もいるとあり、盲目的にその理が受け入れられているわけではないと知って少し安堵した分、それ以上にこのシステムの危うさが怖い。一応王が道を誤った時は麒麟も共倒れでリセットされる仕組みにはなってるが、宗教と同様で基本的には信じるしかないのである。それが国そのものに関わってるとあっちゃ絶対なんか不具合起きるよこんな歪で不安定なシステム。そして案の定起きるのである。宗教によらずとも何を信じるかは各々の自由だと思うがその宗教に政治が結びついてしまうとろくなことにはならんなぁ。そしてやっぱり麒麟は哀れな生き物だな。今回は特に麒麟には何もないと明記されてしまった。麒麟への待遇はその性質を哀れむゆえのもののようにも思えてきた。麒麟は国と王への生贄と言っても過言ではないように思う。尚隆は玉座ではなく国が欲しいと言った。後に分かったが彼はもともと上に立つ者として育った。そこから地位そのものより何かをおさめる事が彼の存在意義になっていたのかもしれない。だからこそおさめる対象である民の存在が大事で、民が欠ける、ましてや民に生かされ自分だけ残るなんてのは逆鱗でしかなく、民なくして国も王も無いが尚隆の根本的な考えなのだろう。そういや忘れがちだがこの世界では人は木に成るんだった。願わなければ成らないのに捨て子が出るというのも変な話だ。それを仕方ないと言ってまかり通っていた事実が国の荒廃という理由だけではないような気がして本編では扱われていない異質な怖さを感じた。驪媚の自害の理由がいまいち謎だ。あの時あの場で彼女が自害、しかも流血を伴うならば麒麟である六太の昏倒は必至。倒れるまでいかなくでもどのみちショックで逃げる事はできないと想像できそうなものなのに何故自害を選んだか?彼女が自害したところで状況は好転どころか六太にトラウマを残すだけだったのではと思えて仕方ない。一応人質である彼女が死んだ事で斡由の信頼度が若干下がったがそれはごく些細なもので六太への心身的な影響の方がよっぽど大きかったように思える。神を、この世界では天命と言った方がいいか、天命を信じる者はどこか盲目になりがちだと思わずにいられない。仙籍に入るだけで寿命がなくなるってのもなかなかすごい話よな。正直いくらでも悪用できそう…。斡由の更夜の心理や行動に対する誘導は悪役ながら巧みだなと思った。

  • 延麒六太と延王尚隆の昔話。
    普段は飄々としてるけど、いざとなったら…の切り替えがカッコイイ。
    あとふたりのやりとりが微笑ましい。
    六太が連れ去られたあとのゴタゴタ感やいろんな登場人物の心情とか思惑が面白い。側近の性格が良い味出してる!

  • 「……お前、国が欲しいか」


    十二国記シリーズ3作目。
    私の推しの雁国のお話。

    陽子が王位についた頃には治世500年、安心安定の雁国だけど、始めからそうではなかったわけで…。

    雁国の好きなところに、王と臣の関係性がある。他のどの国にもない、よく言えば仲良し、悪く言えば礼儀知らずな関係が面白い。
    これも尚隆の人柄あってのことだけど。そんな尚隆に負けず劣らず自由な六太もかわいくて、こんな二人だからこそ成り立っているんだろうなと思う。

    尚隆は、はちゃめちゃに見えるけど、実はいつも本質に気付いていて誰よりも速く核心に迫る。王なのに自分であちこちに潜り込む破天荒さも、国のためにはなってる。
    周りは大変だろうけど、こんなリーダーがいてもいいのかもしれないって思ってしまった。

    そんな陽気な雁国だけど、国はまだまだ荒れていて、現代の姿からはとても想像できない。
    尚隆、六太、更夜、誰もが重い過去を背負っていて辛かった。
    よい国をつくるために皆がかける思いも様々で、どれも真っ向から否定はできないんじゃないか。
    3作目にして、初めて深く政治を描いていると思う。

    すべての巻の最後にある漢文。この巻の、最後の一文に感動してうるっときた。たくさんの犠牲は避けられなかったけど、雁国はこうやって豊かになっていったんだろうな。
    前に読んだときはこんな感想は抱かなかったと思う。再読の醍醐味。

    いろいろ書いたけど、結局は雁国最高!尚隆かっこいい!六太かわいい!に尽きる。
    この国に救われた国も多い。本当にいい国だと思う。
    これからも登場するのを楽しみにしておこう。


    2021.9.22 読了(再読)

  • 延王と延麒の話、この二人は十二国記でも大好きな登場人物だ(まぁ、嫌いな人はいないだろうが)が、この話で読者は、二人とともに十二国記での建国を経験する。

  • 十二国記シリーズ、エピソード3。
    延王尚隆と延麒六太のお話。
    尚隆は蓬莱の生まれ、陽子と同じ。
    飄々としているが、切れ者。
    読んでいてシティーハンターの冴羽獠みたいだと思いました。
    一見ちゃらんぽらん。実は有能みたいな。
    一国の主となり、国を治めるのはもちろん大変。
    だけど尚隆ならなんとかしてくれるみたいな期待感があり、面白かった。
    尚隆と六太、良いコンビです。

  • 記録

  • 二人がいなきゃ、全ての物語が繋がらない。陽子も泰麒も助からない。この物語の始まり。

  •  ちょっと今回のはダメだった。漢字が多すぎて中国の歴史小説を読んでいるみたいだったし、文体も必要以上に凝り過ぎていて読みにくかった。主人公の尚隆と六太がざっくばらんな性格と喋り方だから、その分、文章の雰囲気で作品全体の世界観を引き締めて、バランスを取ろうとしたのかもしれない。異世界の物語ながらどこか現実味があって、ゴリゴリのファンタジーながらひょっとしたら自分の身の回りでも起こり得そうな気がしてしまって、という今までの作風が好きでここまで読んできたけれど、ちょっとマニアック路線に走り過ぎた気がする。これでは、超コアなファンしかついてこられないんじゃないか。
     全然的外れかもしれないけれど。
     終盤の、たたみかけるような怒涛の攻防戦の描写はさすがだった。でも、そこに至るまでにどの登場人物にもあまり感情移入できずにきてしまっていたから、やっぱり盛り上がりには欠けた。
     次の作品を読もうかどうしようか悩んでいる。

    ---

    【第五巻までの登場人物】
    国名、諡号(本名)、麒麟名(本名)=台補名
    戴極国、泰王(驍宗)、泰麒(★高里要)=泰台補
    慶東国、景王(★中嶋陽子)、景麒=景台補
    雁州国、延王(小松尚隆)、延麒(★六太)=延台補
    ※( )内は本名、★は胎果

    【用語】
    常世: 十二国側の世界
    蓬莱: 日本側の世界
    蝕: 蓬莱と十二国の行き来をもたらす天災
    胎果: 蓬莱で人の子として生まれたが十二国に戻った者

  • 尚隆みたいな人を信じてついて行くってなかなか大変そうだ。 物語として読むととても魅力的な人柄だけど。

  • 本当にあっという間に読み終わる。
    今回は陽子も泰麒もお世話になった延王延麒の雁国を作り上げた頃の話。
    ファンタジー小説だけれど、その世界に生きる人間が人間らしく生きている様子が描かれているから惹きつけられるものがあるのだろう。
    続きも楽しみである。

  • 面白かった。展開もスピード感あり、4巻に続く内容だった。

  • 十二国記3。1994年。
    再読。
    延の王となった尚隆、キリンの六太。荒れた国を建て直し中の反乱。
    尚隆が王になった経緯、六太が更夜と知り合った経緯。更夜は妖魔に飼われている。
    尚隆は王の務めを果たさずに市井で遊んでいる、ように見える。ならば私が王の上に立とうと、更夜を使って六太を誘拐したのがアツユ。
    民のためを思うと言う人格者で民の人気高いアツユは、自分の非を認められないだけだった。あらら.

  • 風の海迷宮の岸に続く
    王とは?をテーマにした王と麒麟の心温まる話 
    この本もストーリーもよく 登場人物の描き方もよくて 読みやすかった
    ただ地名や役職名が最後まで理解しにくかった

  • まずは「民を犠牲にしてまで得る権力に意味はあるか」(1938年日本軍の進撃を食い止めようとダムを決壊させ数十万を犠牲にした蒋介石、と同じく)わけのわからぬ《天命》に逆らい幹由という小君主が暴走し土堤破壊を命じ信を喪うに至るまでの物語(秀吉の高松城水攻めも入っている)。と、日本の戦国時代、瀬戸内海の村上水軍の一首領が王としてスカウトされるまでの話が並行して語られる。仙籍、常人、獣人、妖魔という4つの知的生命が混在する十二国の世界は“差別の無い理想境”の暗喩か?定命の(理想も持たぬ)我々凡人は被差別民族なのだ

  • 延の王と麒麟の話。 出会いから、クーデター鎮圧まで。 延の初期の物語。

  • 十二国記の3作目。
    月の影 影の海が王となる決意の物語、風の海 迷宮の岸が麒麟の物語、本作は国づくりの物語。
    六太と尚隆の関係、更夜との関係などいろいろな関係性をからませながら物語はすすむ。
    それにしても自分の謝りを認めないという人間はいるものだ。延王の言葉は重い。だからこそこのあと500年も国が栄えたのだろう。

  • 延王と延麒の物語。

  • 王とは。
    任せろと言ったろう

  • 延王と延麒、二人の結びつきの原点、暖かい気持ちになりました。

  • おもしろい。

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著者プロフィール

大分県出身。講談社X文庫ティーンズハートでデビュー。代表作に『悪霊シリーズ』 『十二国記シリーズ』『東亰異問』『屍鬼』など。重厚な世界観、繊細な人物描写、 怒濤の展開のホラー・ミステリー作品で、幅広いファンを持つ。

「2013年 『悪夢の棲む家 ゴーストハント(1)特装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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