- Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101302713
作品紹介・あらすじ
小夜は12歳。人の心が聞こえる"聞き耳"の力を亡き母から受け継いだ。ある日の夕暮れ、犬に追われる子狐を助けたが、狐はこの世と神の世の"あわい"に棲む霊狐・野火だった。隣り合う二つの国の争いに巻き込まれ、呪いを避けて森陰屋敷に閉じ込められている少年・小春丸をめぐり、小夜と野火の、孤独でけなげな愛が燃え上がる…愛のために身を捨てたとき、もう恐ろしいものは何もない。野間児童文芸賞受賞作。
感想・レビュー・書評
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「呪い」の呪縛を解くことができるのででしょうか。生まれ落ちて、すぐに使い魔とされた霊狐・野火。主の元での生活以外を知らないで育った。早くに親を亡くし、産婆とともに村の外れで暮らす少女・小夜。母親から異能を受け継いでいる。
小夜は、怪我をした野火を偶然助けたことで、二人の運命は重なり始める。
日本の山村風景、生活、日本の文化を織り込んでのファンタジー。
彼らは、領土を巡る地権争いに巻き込まれていく。決して、犯行できない主従関係をふたりの未来のために、呪いを解く術を探す。
もう少し読みたいぐらいのボリューム感。野間児童文芸賞受賞作。児童文学としてジャストサイズなのだと思います。母親を思う心、友情、愛情、誰かを守るために戦い抜く意思。ハリーも指輪も良いけれど、和風ファンタジーもお勧めしたい。
作中に、神の世とこの世の境界的な場所として「あわい」が登場してきます。このふたりの避難場所にもなるのですが、最近はあまり聞かなくなった言葉です。間というより、少し重なっているというような。昔、赤ちゃんをおぶって、包むものをあわいと言った様な覚えがあるのだけど、方言だったのか調べてもわからなかったけれど、微妙なニュアンスの良い言葉だと思いました。 -
上橋菜穂子さんの世界は初めてです
野間児童文芸賞受賞作品
これは児童対象だけでは終わらない、大人でも充分過ぎる程楽しめる和製ファンタジー、そして純愛物語だと思います
古き日本が舞台の郷愁を誘う世界観
豊かな自然と美しい風景描写
狐や天狗の和テイストが不思議な世界へ、そして何処か子供の頃へタイムスリップしたような懐かしい感覚を取り戻してくれました
<聞き耳>の才をもった12歳の少女・小夜
怪我をした一匹の霊狐・野火を助けたことからこの物語が始まります
やがて、隣合うニ国の争いに巻き込まれていきます
小夜を一途に想い、命懸けで守る野火
野火を信じる真っ直ぐな小夜
二人の孤独で健気な燃え上がる愛を中心に物語は展開していきます
想像していたエンディングとははるかに違い、何かもの寂しい感覚でありました
小夜が選んだ生き方に彼女の温かさを感じたとともに、若干12才の少女が選んだ道だと思うと胸が痛くなる思いでした
そして、ラストにこの展開を持って来る作者の発想に脱帽しました
いつの間にか野火に気持ちを持っていかれ、読み終わって半日経った今も、野火(狐)の日向の匂いがしそうなうなじの毛並みの絵面が、脳内の50%程占めています 笑
次は何を読もうかな -
私の中ではバルサとエリンの2つのお話だけでもう確固たるものがある、この作者さん。
その初期の作品であるこの本は、先日のフォローしている方のレビューを読んで手に取った。
亡き母から人の心が聞こえる〈聞き耳〉の力を受け継いでいる小夜、この世と神の世の〈あわい〉に棲む霊狐・野火、森陰の屋敷に幽閉されている少年・小春丸、ある夜、この3人が偶然出会ったところから始まる物語。
彼らは隣り合う2つの国の争いに巻き込まれていくが、過去の因縁の渦に巻き込まれながらも懸命に生きようとする小夜に、使い魔として生きながら彼女に寄り添おうとする野火、彼に毒づきながらも理解を示す玉緒の変化など、それぞれの健気な心情と行動はバルサやエリンの話に似通ったところもあり、この時代不詳だが美しく妖しい日本を舞台にした物語を楽しむことが出来た。
現在の作者の手際を思えば、小夜が持つ力のすべてが描き出されたわけではなかったように思えることや小春丸がなんだか置き去りにされてしまったような筋書きにはいささかの不満が残るところはあり。 -
呪者に呪力を授けられた霊狐・野火。
人の心の声を聞く能力を持つ
12歳の少女・小夜。
屋敷に閉じ込められている少年、小春丸。
やがて敵対する国同士の
領土争いに巻き込まれていく
小夜たち。
古き良き日本の風景や
和の心を感じさせる
冒険ファンタジー。
いやはや
上橋さんの作品は初めてだったけど
美しい日本語で綴られた
哀と死の物語に、
寝る間を惜しんで読みふけるほど
かなり引き込まれました。
なんと言っても
自分を助けてくれた小夜に
密かに恋焦がれる
特別な力を持った狐、野火の心情が
なんとも切ないのですよ…(>_<)
(小夜と野火の仲をサポートし後押しする鈴姉さんのキャラがまたカッコいいのです)
そして次第に心惹かれていく
一人と一匹。
倒さねばならない敵同士。
生まれたところも生きる場所も違う
小夜と野火の恋情は
まるであの
「ロミオとジュリエット」を彷彿とさせて
哀しくも美しい。
命の儚さとその価値を知り
少女は戦うことを誓い、
狐は少女の喜ぶ顔を見るためだけに
自らの主に反旗を翻していく…
もともとこの小説は
児童書として書かれたそうだけど、
子供の頃にこの作品を読めた人が
ホンマ羨ましいって思う。
けれど児童書は
決して子供たちだけのものではないんです。
絵本や児童書を大人が読んで
心が救われたり、
現状を打破する
ヒントを貰ったりって
実は結構あるし。
簡潔にまとめられた文章だからこそ
受け取る側の心のあり方によって
違う感想になるし、
想像力をかきたてられる
児童書という存在。
子供に響く話は
実は大人にも確実に響くんですよね。
果たして小夜の思いは届くのか?
「何かを得る者は
何かを失わなければならない」という
人生の真理を教えてくれる
切なく胸を打つラストは
少しほろ苦いけど、
自分は断然支持します。 -
王道のファンタジー。
生まれから隠された2人の子供と運命を握られた霊狐。
それぞれのサダメを恨んだり、諦めたりしながらあがなうことで成長していく子供達。
独特の世界観で読者を魅了する。 -
鹿の王、水底の橋、本作を読んで、作者のテーマは、自分や周りの未来のために、過去の遺恨に囚われず踏み出す勇気の話しなのかな、と感じた。あと5作ぐらい読みたい。
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圧巻の上橋ワールド、ありがとうございます。
上橋さんの作品はものすごく明るいとかではなくて、むしろ暗い。でも、その暗さや登場人物の苦難が、想像の世界にリアリティをもたせているんじゃないかと思う。
ラストに何があったかをあえて書ききらず、読者の想像に任せるのはずるいよなぁ〜。余韻に浸っちゃうじゃん〜。
話の密度はとても濃い。無駄なことは書かれず、もうちょっと詳細があってもいいかな?と思うくらいで、どんどん話が展開していく。
最初は小夜と小春丸の恋愛の流れになるのかと思っていたら全然違った。
人間に恋をする狐の野火が非常にかわいくて推せる。 -
『獣の奏者』を読んだ時、この人の中で死はバッドエンドを意味しないのだな、と感じた。
本作も、終わり方は決して晴れやかなものではなく、どちらかというと断たれてゆく哀しさに満ちている。
でも、それはバッドエンドではない。
特別な能力を持つが故に孤独である小夜とエリンの立ち位置は非常に似ている。
二人とも、自らを犠牲にしても遂げたい何かがあり、一途に純粋にそれを貫く。
そうして、その何かには、必ず生き物との情•絆が濃く存在している。
この純粋さに、私はたまらなく惹かれてしまうんだなあ……。
小夜と野火の想いの強さには誰も勝てない。
野火が人間と狐を行き来する、曖昧さの描写がすごく良かった。
使役する者とされる者の危うさもしかり。
だから二人が良しとする結末であれば、もうそれでオールオッケー!なのである(笑)
赤ちゃんのはネンネコだったわ(⑉︎• •⑉︎)
赤ちゃんのはネンネコだったわ(⑉︎• •⑉︎)
検索できなくて。
意味違うのかなあ?って。
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