ハワイイ紀行 完全版 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (558ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101318172

感想・レビュー・書評

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  • よかった。ずっと行きたいと思っているハワイ。楽園のイメージしかなかったけど、見方が180度変わった。しかし、百聞は一見にしかず!ぜひ近いうちにいきたい。
    2015.9.6

  • 初めてのハワイ旅行中に読みました。ハワイのことが良く分かるとともに、文化や文明など色々と考えさせられました。成田エクスプレスの中で読み終わりましたが、またすぐにハワイに行きたくなりました。

  •  各章ごとにハワイ諸島の「植物」「農業」「火山」「言語」「フラ(ダンス)」「サーフィン」「航海術」「天文台」などのテーマに絞って取材した、自然科学・文化人類学のような学術的な内容の多い硬派な本だった。
     読んで感じたのは、自然や歴史の中で人間はちっぽけな存在なのだということ。
     以下、印象に残ったこと

    ・西暦300~750年ごろ、無人島だったハワイ諸島に南東方向の島(マルサケス諸島)から約3000kmをカヌーで航海してポリネシア人が渡った。その事は物理的証拠もあって確かなのだけど、18世紀にハワイが西洋人に発見された時には、ハワイ諸島・マルサケス諸島のお互いが渡った人がいたことを知らないし、航海術も未熟な状態。カヌーのような小さな舟で、数か月間の航海が出来るとはとても思えなかったとのこと(1000年間経ち、それぞれの島で豊かに暮らしている内に忘れてしまったらしい)。
     そこで、1970年ごろ、ハワイの郷土愛の強い人達が中心となって、他の島の航海名人に弟子入りしたりして、大昔の造船技術・航海術だけを用いて同じ約3000km(ハワイ-タヒチ間)を渡り、ご先祖様の偉大さを証明してやった、という「ホクレア号」の話が、壮大で感動的だった。
     大昔、最初にハワイ諸島へ渡った人達は、そっち方向に島があるかどうか分からないまま全く陸地の無い海を、星だけを頼りに数か月間航海したのだということを思うと、無謀すぎて理解不能なのだけど、そういうフロンティア精神のある人がいたからこそ、今の人類の発展があるのだ、たぶん。僕はそういう人間にはなれないので、とても尊敬する。

    ・ハワイは18世紀に西洋から一方的に「発見」され、平和な島に突然白人がやってきて、彼らの宗教や文化や倫理観を押し付けられてきた。著者はそれを、ペリーが黒船で日本に来て開港を迫ったことと似ていると指摘する。
     違うのは、ある程度の大きさを持った日本が速やかに成長して欧米を真似て植民地を支配する側にまわったのに対し、ハワイは社会の規模がずっと小さかったために完全に制圧され、併合され、文化的にも抹殺に近い事態にまで追い込まれたという点であるとのこと。
     強制的に自分たちの文化を捨てさせられるという経験は想像つかないのだけど、日本に置き換えたら、日本語を禁止され、神社・寺を破壊され、皇族の方々が退位させられるということだと思う。考えるだけでも恐ろしい。そんな風にならないで済んだということだけでも、僕らは江戸~昭和の先輩方に感謝しなければと思う。

    ・西洋人がハワイにヤギや牛を家畜として持ち込んだことにより、ハワイ固有の植物は野生化した家畜に食べられてほとんど絶滅してしまったらしい。
     つまり、西洋人は、ハワイの人間を侵略したのと同時に、意図せずに自然も侵略していたのだとのこと。たぶん、西洋人が悪いというわけじゃなくて、人間が世界を移動することで自然の形は崩れざるを得ないということなんだと思う。

  • ハワイの紀行文にしてはしっかりしている。00.11.29.読破とある。埼大理工学部中退の作者..興味深い。

  • 「行ってみないとわからないことが多いから旅はおもしろい。」正にそうだと思います。
    最初は我慢しながら読んでました。面白くなってきたのは、Ⅳあたりから。

    ハワイイの文化やちょっとした歴史、自然の事が書かれていて、知識の補充には、よかった本でした。がっつり!入ったって感じです(笑)

  • ハワイをハワイイと本来の呼び方でタイトルとしている。ハワイイの歴史、気候、動植物、地形、活火山、先住民の生活様式、サーフィン・ウインドサーフィンの伝説、などなど、観光としてのハワイイ以外のあらゆるハワイイに関する事象を網羅的に紹介した紀行文。

    特に先住民達のはるか南(タヒチ)からの漂着に至る様など、どうやって先住民が、太平洋の孤島に辿り着けたのかなどは、非常に興味深い。

    また、文庫版では表紙の裏面が地図になっていたり注釈が載っていて皿に詳しくハワイイのことが分かるなど、これ1冊でハワイイの専門家に慣れる程の力作。

    観光以外のハワイイを知りたい人なら、読んでおくべき著作だと思います。

  • ハワイをハワイイと言いたくなるし、行きたくなる。

  • 本書を一言で紹介するのはチョット難しい。一人の作家によるハワイ紀行文、と紹介するには内容が豊富すぎるのだ。無理やり説明するなら、ディープなスポットをトリビア的な雑学を交え、詩的に紹介するガイドブック、と言ったところだろうか。

    文庫化にあたり新たに2章が加えられ、558ページと少し多めのページ数となっているが、12章のテーマごとに区切られているため非常に読みやすかった。テーマの内容は火山、植物、言語、フラ、サーフィン、すばる天文台、など多岐にわたっている。

    ハワイに訪れる人々の目的と言えば、おそらくほとんどが観光やショッピングなのだろうと思う。しかし、その土地には外来種によって絶滅の危機に瀕する植物があり、固有の文化を後世に伝えるために努力する人たちがいる事にも、少しは思いを馳せてほしいと思った。

    ちなみにハワイ語ではバスケのドリブルを「パイパイ」、サッカーのドリブルを「ペクペク」と言うのだそうだ。熱い調子でペクペク!とかパイパイ!と絶叫するハワイ語のスポーツ実況を想像して、思わずニヤニヤしてしまった。

  • ハワイに行く前から読み始め、帰りの飛行機で(着陸間際に)読了。ガイドブックってほど軽くはないのだけれど、ハワイの文化について多く書かれていて、とても参考になりました。滞在中に目にした、耳にした、いろんなことが、この本に書かれていたかんじ。

  • 観光やサーフィンなリゾートだけじゃないハワイイを、といっても、リゾートのハワイイすらよく知らぬ身だけれども、ハワイイ固有の自然、言語、文化、産物、それを守り、受け継ごうと活動する人々、アメリカ化の浸透、などさまざまなトピックスを説き起こしてくれて、少しずつ、読み終わるのがもっったいなく感じるほどどっぷりハワイイに浸かれた、紙の上の旅行を堪能できた。以下備忘録的に。/神がヒトという種だけを特別にかわいがってくれるという妄想はもう捨てなければならない/ロビンソン一族の私有地ニイハウ島/「一日ここでぼんやりしていた。少し泳いだし、いい日だったさ」/真昼のプリニウスでの、ホースで溶岩を止める試み/ハワイイ本来の植物は山の上の方に追いやられ、細々と暮らしている/ハワイイに最初にクックがヤギを連れてきて、天敵もおらず餌は食べ放題でたちまち増えた/キース・ロビンソン「なすべきことが目の前にあれば、ただそれをすればいいのだ」/ジェイムズ・クック。出会った島民に敬意をもって接し、その文化を軽侮の目で見ることもなかった。/カメハメハの統一。1810-9年。戦いは終わり、統治は安定し、王は敬愛を受けた。/カアアフマヌの合理主義。偶像は倒され神官の権威は失墜/池澤夏樹「楽しい終末」/はじめに詩があり、それに節がつき、振りが添えられてフラになる/大きなハワイイ語の辞書には様々な雨を表す単語が百三十、風を表す言葉が百六十載っている/バリーフラナガンのギター奏法。駒沢敏器「ミシシッピは月まで狂ってる」/チャールズとケリイのデュオ、ハパ/文字がないとなれば、朗唱と儀式と彫像と神殿がその抽象的な概念を伝える役を担う/マウ・ピアイルグは自分が知っている海域をはるかに離れたところで、赤道を超えて北極星が見えなくなるところまで行って、なおかつ目的地に船をピタリとつけた。/身内の集まりに、二千人が押しかける、遠慮という言葉が辞書にないハワイイの人/精妙な神話体系を作り出し、素晴らしいフラを生み出し、チャントを唱え、レイを作り、日々を飾った。/この海を走ってぼくが感じたのは、自分たちがいかに無力であるかと覚ることの快感、自然の力がいかに大きくて、予測不能で、こちらを無視しているかを実感することの快感だった。/池澤夏樹「明るい旅情」/ミッドウェイ海戦を戦闘詳報を綿密に読み込んで描いた澤地久枝「そう海よ眠れ」/アホウドリの振るまいをただ坐って一時間も二時間も見ているだけで心が心地よくゆるむ。遠くから息をひそめてモンク・クールを見ている喜びも忘れられない。/「宇宙をうたう」中公新書、日本の詩歌に登場する天体を縦横に論じてこんなに面白い本はない。/

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著者プロフィール

1945年生まれ。作家・詩人。88年『スティル・ライフ』で芥川賞、93年『マシアス・ギリの失脚』で谷崎潤一郎賞、2010年「池澤夏樹=個人編集 世界文学全集」で毎日出版文化賞、11年朝日賞、ほか多数受賞。他の著書に『カデナ』『砂浜に坐り込んだ船』『キトラ・ボックス』など。

「2020年 『【一括購入特典つき】池澤夏樹=個人編集 日本文学全集【全30巻】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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