- Amazon.co.jp ・本 (529ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101369280
作品紹介・あらすじ
真犯人Xは生きている-。網川は、高井は栗橋の共犯者ではなく、むしろ巻き込まれた被害者だと主張して、「栗橋主犯・高井従犯」説に拠る滋子に反論し、一躍マスコミの寵児となった。由美子はそんな網川に精神的に依存し、兄の無実を信じ共闘していたが、その希望が潰えた時、身を投げた-。真犯人は一体誰なのか?あらゆる邪悪な欲望を映し出した犯罪劇、深い余韻を残して遂に閉幕。
感想・レビュー・書評
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5巻まで全部オーディブルで聴きました。長かったぁ。
でも宮部みゆきの代表作No.1ですね。とにかく描写力が凄過ぎて殺人の場面なんて怖すぎるくらいでした。なぜこんなにも細かく描写できるのだろう、まるでドフトエフスキーのようだと思いました。
とにかくこの小説は凄い!ただこの題名はどこから来るのだろうと思っていたのだが、最後でわかるのですが、あまりに突然ピースがバカになってしまうのです。最後が残念だと思いました。
宮部みゆきは、読むたびに冗長過ぎるだろうといつも思うのだが、読み終わるともっと読みたくなるという妙な作品を書く作家だと思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
文庫で全5冊の大部の作品、ようやく最終巻まで読み進めることができました。
以下にネタバレがありますので、これ以降をお読みいただく場合はご注意ください。
自分としては、何より「模倣犯」の意味が分かって(再読ですから「思い出して」のはずなのですが、まったく覚えていませんでした…)ホッとしました。
前畑滋子の単なる思い付きから出たブラフ、大博打にあっさり引っかかってしまったピース。純粋な悪だの舞台を演出だのと大言壮語をしていましたが、仮面を剥いでしまえばその下にあったのはただの目立ちたがりで誇大妄想の子供の顔、ピースは言ってみれば「厨二病患者」だったのでしょう。掲示板やSNSでの論争に顔を真っ赤にして反論しているうちにポロッと自分の個人情報を漏らしてしまう中学生そのものです。
挑発された犯人が思わず犯人以外知り得ないことを口走ってしまうというミステリは数多くあります(と思います…タイトルを挙げろと言われてもすぐに思い浮かばないのが困りものなのですが)。ピースの告白シーンはこの大作の最大の見せ場です(前畑滋子がCMの入るタイミングを気にしているのが、かつてヒロミがCMにキレたときと重なり、さらにその場を支配しているのは前畑滋子でもキャスターでもピースですらなく、スポンサーであることを改めて思い起こさせます)。
でも、自分にとって本書のカタルシスはこのピースの告白シーンにはありませんでした。それよりむしろ、それまで節制し、自制を重ねていた有馬義男が、ようやく泥酔して、ようやく大泣きをすることができたことに、読者としても、何か心の中に固まり、蟠っていたものがようやく溶けてどこかに流れ出していくことを感じることができました。
ピースの仮面の下の幼稚な小物を引きずり出したこと、例え死刑の判決が出たとしても、そこに至るまで小憎らしい言説をうんざりするほど聞かされなければならないこと、そして苦労して死刑を勝ち取ったとしても被害者は戻ってこないこと。有馬義男は悪との対決を勝ち抜き、最後の勝者となりましたが、彼が勝ち取ったのはそんなことです。
そんな彼にできることは、自らに課していた節制を解いて大酒をのみ、涙を流すこと。読者にできることもその姿を見て涙を流すことでした。
改めて振り返ってみると、善VS悪は第一部の有馬義男VS犯人グループ、第二部ではカズVSヒロミだった善VS悪の戦いのカードは、第三部では前畑滋子VSピースです。
前畑滋子は有馬義男やカズとは違い、大人ではあるものの地に足がついているとは言い難い職業に就き、昼夜逆転した生活を送り、大酒を飲んで二日酔いになり、夫から家を追い出されました。だから有馬義男やカズといったヒーローたちと違い、正面突破の横綱相撲でピースを追い詰めることはできず、奇策で一発狙いのハッタリを成功させた彼女は、マスコミに得られたはずの席を蹴って、いったんは夫婦の縁を切ると公言した夫のところへ、よく言えば地に足のついた生活へ、言葉を変えたら退屈な日常へと戻っていきました。
結局日常を一日一日大切に生きている者が一番偉い…そう言えば「蒲生邸事件」でも、「ズルせずに現在を一生懸命生きている奴が偉い」って言ってましたっけ。
どちらの話でも、そうしていない奴を引っ張ってきて、対比させて見て初めて日常のありがたさが浮かび上がってきます。地に足が着いていない幼稚な者どもに日常の幸せを崩されたら、また最初から平凡な日々を積み上げていくしかないのです。
…でも、自分勝手な理由で何の関わりもない人たちの命を、幸せを奪う身勝手な犯罪のニュースをよく見る昨今、それだからこそ幼稚な者どもを蹴散らし、叩き潰す正義のヒーローを、「クロスファイア」の青木淳子のような超越的な存在が悪者を処分していくさまを、お話の中だけでも見届けたい、と思ってしまう自分もいます。どちらのお話も宮部みゆきの作品として存在するので、両方読めるファンは幸せ、です。
哀れなピースについて。
幼い頃からこの世に居場所のなかったピース。最初に実の母を手にかけたピース。心を許せる友人が一人もいないピース(あのヒロミにすらカズがいるのに)。犯行にまったく罪悪感を持たないばかりか、逆にその舞台の「演出」を楽しんでいるピース。
当初は司直の手がまったく及ばないように見えていましたが、第二部でカズが指摘したとおり、その計画には多数の穴がありました。5巻に入ってからは、その穴が次々に見つかり、身辺に警察の手が伸びかけています。カズに少年探偵団みたいだと喝破されたとおりその計画は幼稚で独りよがりなものでした。
まさか真犯人Xが自らスポットライトの下に現れるまいという思い込みを逆手にとってマスコミデビューした彼ですが、強固だったはずのペルソナは剥げかけて、本来の彼は「反感」という形で塚田真一や、武上や、前畑滋子や、ニュースキャスターにすら見抜かれています。
ところで、前畑滋子のブラフに引っかかって、全国民の前で犯行を自白した彼が、その場から逃走して篭城したのはなぜだろう、と考えています。
単にまんまと引っかかったことを恥じ入ったのか。
塚田真一に電話をし、その心をずたずたにすることで堕ちていく自分の道連れにしたかったのか。
自分には、作者が有馬義男とピースが話す機会を作りたかったのだろうと思います。
飲んだくれて泣くことだけが救いだった有馬義男が得た、唯一の復讐の機会を。
ほんの少し斜視であることについて。
塚田真一の交際相手、精神の均衡を欠きがちな彼にはもったいないほど活発で勝ち気で行動的で思いやりのある水野久美ですが、彼女がほんの少し斜視であることを塚田真一がとても可愛らしく、神秘的だと思ったという一節がありました。
女の子の可愛らしさの表現としてあまり見かけることのないこれって、実はかなり初期(1995年)の作品「夢にも思わない」にも出てきます。
「夢にも思わない」を読んだときはアバタもエクボ、ということなのかな?と思っていましたが(もちろんそれもあるのでしょうけれど)、人とは少し違う何かが見えているのではないかと感じさせることがある、ということのようです。
言われてみれば納得なのですが、あまり思いつくことのない褒め言葉(?)です。
なお、作者は公式サイトである「大極宮」の「宮部みゆきへの質問と回答」に、カズの視覚障害について、『高井和明というキャラクターは、子供のころに、「自分の目に見えていたものが、他人の目に見えていたものと同じではなかった」という体験をしたことで、他者に対する深い優しさを抱いた大人へと成長していくことができたのだ――』と書いています。
いずれも、人と同じものを、同じ方向を見ているようで実は少し違うものを見ていることは、神秘的で、素敵で、他者への思いやりを育てる源泉なのだ…ということを考えているようです。
何にせよ、お気に入りのようなので、今後の作品でまたほんの少し斜視であることが可愛らしくて神秘的で優しい女の子の登場を、楽しみにしておくことにします。
最後に。
怖々再読を始めたこの大部の作品でしたが、作品世界にどっぷり浸っている間はこれ以上ない幸せな時間でした。もともと「もっと作品の世界にとどまりたい、終わってしまうのであれば最後のページを読みたくない」と感じてしまう性質なので、このボリューム感は満足以外の何物でもありません。また、ところどころにあるキツイ描写も、有馬義男の最後の勝利を信じてしっかり読むことができました。
そして、読了してしみじみ思ったのは、ストーリーを追うことから解放されて本を読むことの清々しさです。
今回は1~5巻を通して再読したうえで、5巻まで通読した後すぐにまた再々読しました。初読の時はとにかく先が気になってタイトル「模倣犯」の意味を覚えていないくらい先へ先へと読み進んでしまいましたが、今回はいろいろなことを考えながら読む余裕がありました。ストーリーの力が最大の魅力である物語の、ストーリーを味わい尽くした後のあれやこれやをたっぷり堪能するのは、とても贅沢な読み方です(だって、再読、再再読をしたこの時間で、積読が5冊ずつ崩せたはずです)。
たまにはこんな読み方も悪くありません。
…なんて思っていたら、前畑滋子とピースのその後を読むことができる「楽園」を再読したくなってきました。
あれ、初読の時は「模倣犯」の記憶がほとんど消えていたはずだよなあ、今この状態で読むとまた別の感想があるんじゃないかなあ…。
まだまだ積読が大量にある状態にもかかわらず一度読んだ本を再読するのは、正直順序がおかしいと思うのですが、それでも何とか時間を作って前畑滋子とピースのその後を見届けられないものか、と考えています。 -
模倣犯とはタイトルとはこうだったのか、と一人で盛り上がりました。
劇場型犯罪者にこういう形で行くとは思わなかった。
ただ、被害者の家族はもちろんのこと、加害者の家族についても色々と考えないといけないなぁと感じました。
真犯人Xは生きている――。網川は、高井は栗橋の共犯者ではなく、むしろ巻き込まれた被害者だと主張して、「栗橋主犯・高井従犯」説に拠る滋子に反論し、一躍マスコミの寵児となった。由美子はそんな網川に精神的に依存し、兄の無実を信じ共闘していたが、その希望が潰えた時、身を投げた――。真犯人は一体誰なのか? あらゆる邪悪な欲望を映し出した犯罪劇、深い余韻を残して遂に閉幕! -
いやーーーーーーーっ長かった!!笑
全5巻!!
こちらはAudibleにて自分が聞き取れる最速の速度で早口を必死に聞き取りながらの読了…じゃなく聴了。最速でも長かった笑
若かりし頃、映画化された時に試写会を観に行って、中居くんの首がドッカーンと吹っ飛ぶラストに「は!?何じゃこりゃ!?」とんでもない映画だ…となってしまって、それ以来宮部みゆきさんから遠ざかってました。これは完全なる営業妨害だと思う笑(宮部みゆきさん本人も映画の途中で怒って途中退場したとかしなかったとか…笑 ネットで見た情報だから真偽は不明だけどこの大作にあれは怒るよな、私なら。と思った。)
クッソー!!あの映画さえ観ていなければもっと早くに宮部みゆきさん読み込んでたはず!悔しいっ!(いや、そもそもその時に原作の方は面白いはずと読んでみようとしなかった自分のせい。)
原作は全くの別物。別物というか首が吹っ飛ぶのが強烈過ぎて内容何にも覚えてなかったから新鮮に読めた。原作はちゃんと面白かった。
若干、いやもっと早くにピースを疑おうよ…感は否めなかったけど、色んな要素が詰め込まれていて、飽きる事なく全5巻聴き終えた。個人的にはそれまでの濃密さと比較して最後はダダダっと駆け足だったような、ラストがサラッと薄味に感じてしまった。それでもすごい物語だった。自分の娘があんな鬼畜の手に…とか考えたら発狂しそうだった。でもピースも可哀想な子供。生い立ちって、親の責任てやっぱり重大だよな、子育て頑張ろうと思った。(そこ?笑)
とにかくドッカーンのラストじゃなくて良かった!笑 むしろあの映画のラストはなぜああなったのか知りたい!あれで本当に良かったの!?監督さん!コント?原作者があれで納得すると思ったの?謎過ぎる…酷過ぎる…(いやむしろもう一回観てみたくなった)
ほぼ映画の感想になっちゃったけど、感想というかボロクソ言ってごめんなさいm(__)mただただ私には映画の方は合わな過ぎて理解できなくて残念でした…。でも原作は面白かったです!!意を決して読んで良かった。
これで避けてきた宮部みゆきさんの他の作品にもどんどんチャレンジしていける。-
2024/03/12
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Mayさん、こんばんは。
模倣犯5巻聴破おつかれさまでした。
ピースくんのあっけないラスト、私も盛り上げて盛り上げといてチクショー!と、まぁ...Mayさん、こんばんは。
模倣犯5巻聴破おつかれさまでした。
ピースくんのあっけないラスト、私も盛り上げて盛り上げといてチクショー!と、まぁスッキリか、の複雑な感じがしました。独りよがり男はこれくらい貧乏な終末を迎えないとね、という一種の同族嫌悪。中二病あるあるみたいな受け止め方でした(笑)
私は豆腐屋のオヤジに感化されまくったせいか、このフィナーレに普段は買わない高級豆腐を麻婆豆腐にして爆食いしたいくらい「ざまーみろ」でした。いや…オヤジはそれすら救ってしまうのかもしれませんが。悲劇の深さと、そのカラクリのあっけなさが郷愁をつのります。みゆきさん古典が好きだからかも?
ソロモンの偽証、別の作者かと疑うほど刺激的な作品です。その前に、私も中居くんの首が飛ぶところを私も楽しみます!2024/03/13 -
はるパパさん、コメントありがとうございます!
ラスト首が吹っ飛ぶよりは200%良いですが、なんかもっと期待してしまった自分がいたんですよね...はるパパさん、コメントありがとうございます!
ラスト首が吹っ飛ぶよりは200%良いですが、なんかもっと期待してしまった自分がいたんですよね^^;
高級豆腐を麻婆豆腐、ウケました笑
はるパパさんも「ソロモンの偽証」良かったですかー!ますます楽しみと共に長丁場に耐えられるかドキドキです!!
そして中居くんの吹っ飛ぶ首を観たらぜひ感想教えてください笑 私だけが酷評なのか?とレビュー書いた後に不安になりAmazonレビューを観たらやはり散々でした(^^;)2024/03/13
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昔ドラマで見たものの内容はすっかり忘れてしまい、原作は評価が高いものの長編すぎて手を出せずにいたが、この年末年始にゆっくり読もうと試みた。
つもりが、続きが気になってどんどん読み進めてしまった。
4~5巻は特に。
これは大作。読み応えあり。
有馬義男の実直な人柄に惹かれ、
言葉はとても印象的で毎回胸打たれ涙した。
被害者である孫娘と霊安室で対面するシーンは胸が詰まる。
もし加害者側の身内だとしたら、自分には何が出来るのだろう。
もし冤罪だとしたら、証明する為にどれだけの事が出来るのだろう。
どれだけの真実が埋もれてしまっているのだろう。
【人殺しが酷いのは被害者を殺すだけじゃなくて残ったまわりの人間をもじわじわ殺してゆく】
犯人が逮捕された事でひとつの区切りにはなるかもしれないが、残された遺族は日常と家族を奪われ、終わらない悲しみと苦しみを落としていく。 -
やっと最後まで読み終わったー!長い道のりだったけど面白かった。飽きることなく全巻楽しんだわ。事件がどう終息するのか最初から読めなかったけれど、そうなるのか〜というラスト。変に奇をてらうでもなくありがちでもなく、個人的に好きな終わり方だったのが嬉しかった。『ソロモンの偽証』同様、好きな作品になったな〜。
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ついに読み終わってしまった。
私の中で宮部みゆきナンバーワンは「火車」だけど、この話も人間の心理をついていてゾッとする。
自己満足のために簡単に人を殺してしまう。
それは自分の表現する完全な舞台の為だから。
吐き気がする。 -
いよいよ最終巻、どこで話が纏まって網川が捕まるのか、終わり際が急展開すぎて少し寂しい感じもしましたが、なにぶん急展開なのでページを捲る手も止まりません。
舌を巻くってこういう意味かぁ。。。