- Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102010082
感想・レビュー・書評
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ギャンブルの描写が、ギャンブルを知っているからこそ書けるというものでした。主人公が後半に大勝負するところも含めて、ギャンブルにはいろいろな面があり、いろいろな局面をつくり、いろいろと作用することがよく描かれていると思った。そして、その魔性についても。このギャンブルの描写はちょうど良い距離感なんでしょうね。もっと深く、微に入り細を穿って描けそうな気もするのだけれど、そうなると個人的すぎて、ギャンブルとしてはひとつの断片的性格が強くなりそう。『賭博者』の極端なギャンブルの例たちが合わさって、ひとつの全体性みたいなものが感じられるようになっている。ギャンブルそのものについては、そう。ぼくもね、けっこう競馬とパチンコではあるけれどぐぐっとギャンブルに両足を突っ込んだことのあるひとだから、その点でこういう『賭博者』を書く作者(ドストエフスキー)のギャンブルについての知識というか、どれだけわかっているのかを値踏みするように読もうとしてしまうところがあります。さてさて、賭博の成功体験をもつ主人公はどうなってくのか。重要な脇役からの辛辣な「見抜き」で締めくくられています。そうなんです、ギャンブルにハマるとはそういうことなんです…。
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狂気がすごい
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ルーレンテンベルグなる観光地でルーレットに取り憑かれた人間模様。
賭博にハマった人たちの行動と心理描写のリアリズムが凄い。結局のところ大勝しても大敗しても破滅的な末路に陥るのは勉強になる。特にお祖母さんの顛末はテンプレート的ですらある。
魅惑のポリーナの描写が生々しいと思ったところ解説によるとモデルは不倫相手。更にドストエフスキー自身もギャンブル狂という実体験によるリアリティと納得。
ラストも印象的な賭博小説の逸品。 -
長らく積んでた「賭博者」やっと読みました。ドストエフスキーにしては短い物語で登場人物達の関係もそれほど混み入ったものではなく、読みやすい部類です。でも描かれる物語はドストエフスキー特有の圧倒的な熱量を有しており、凄まじい。人々の金銭欲と愛憎の渦、賭博場の熱狂……人間の持つ欲を剥き出しに描写する。賭博台で賭けているのは金銭だけではない。己の地位、誇り、未来、命すらも賭す。伸るか反るか、勝つか負けるか、正しく賭博場は人生遊戯。気性の激しいアントニーダが好きなキャラでした。
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お祖母ちゃんが登場してからの展開のジェットコースター感たるや。僕は頭に血が上りやすいタイプなので、ドストのほかの作品を読んでも登場人物に共感することが多いのだが、この本はまさに賭け事にハマった自分のシミュレーションに他ならないなと感じた。パチンコにだけは手を出すまい。自らの誠実な気持ちのすべてを、賭博室へ向かうための言い訳にすり替えてしまう描写がリアルで恐ろしい。
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【印象】
射倖心に取り憑かれている人間たち。
他人の死も恋愛事情もギャンブルでしかない。
【類別】
小説。頁278の記述によれば本作は「中編」。
【構成】
大きく分ければみっつの段階で語られます。複雑さなく時点構成されており、全体の分量もさほど多くないため、さっくりと読める作品でしょう。
【表現】
地の文は一人称視点。
文体は平易。
惹かれた台詞表現は頁87「せいぜいご自愛のほどを祈りあげますよ」。 -
ヤバイ。愛も金も人生をかけてルーレットにかける主人公の感情に完全に惹きつけられた。"ロシア人特有の病的性格を浮き彫りきする"と本の広告にあるが、この一発に全てをかける気持ちは誰もが持ってるんじゃないか??