絶望名人カフカの人生論 (新潮文庫)

  • 新潮社
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本棚登録 : 1985
感想 : 137
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102071052

感想・レビュー・書評

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  • いや、とても楽しく面白い本でした。
    ネガティヴ、後ろ向き、ダークサイドに満ちたカフカのお言葉の数々。
    「絶望名人」の二つ名の名付け親である編訳者の頭木弘樹さんには、大きな拍手を送り、握手を求めたいです。

    拙いレビューをくどくど書くよりも、まずは、章立てと、特に心に残った言葉を引用させていただきます。

    第一章 将来に絶望した!
    第二章 世の中に絶望した!
    第三章 自分の身体に絶望した!
    第四章 自分の心の弱さに絶望した!
    第五章 親に絶望した!
    第六章 学校に絶望した!
    第七章 仕事に絶望した!
    第八章 夢に絶望した!
    第九章 結婚に絶望した!
    第十章 子供を作ることに絶望した!
    第十一章 人づきあいに絶望した!
    第十二章 真実に絶望した!
    第十三章 食べることに絶望した!
    第十四章 不眠に絶望した!
    第十五章 病気に絶望・・・・・・していない!

    将来にむかって歩くことは、ぼくにはできません。
    将来にむかってつまずくこと、これはできます。
    いちばんうまくできるのは、倒れたままでいることです。
    ーフェリーツェへの手紙
    (本文34ページ)

    ぼくは今、結核に助けを借りています。
    たとえば子供が母親のスカートをつかむように、大きな支えを。
    ーフェリーツェへの手紙
    (本文232ページ)

    ある意味、ネガティヴの極端まで振り切れてしまっている言葉たちは、ほとんどの人にとっての自分自身の感情よりもネガティヴなはずであり、なんか逆に「いやいや、そんなことないで…」とカフカを慰めようとしているうちに、自分は元気づけられてしまうような効果があると思われます。
    ちょうど自分が怒ってる時に、もっと怒ってる人があらわれたら宥めてしまうように、あるいは泣きたい時に、すでに泣いてる人がいたら寄り添って声をかけてしまうように。

    もし仮に、カフカと同等(極端なので超えはしませんが)のネガティヴな人がいたら、一緒に絶望に同意しながら、わかりあえる友と出会えたことの感動に打ち震えることができそうです。

    ですので、これこそ万人受けする究極の本なのかも、と思わず考えてしまった、実にユニークな本なのでした。

  • 身体が弱く、仕事も嫌いで、両親との関係もうまくいかず、異性ともうまく交流できず、友人と交流しているよりは、一人で部屋にこもって文学に没頭していたい。だけど、生きていくためには、会社にいって仕事をし、部下ももって、いやいやながらも他人と交流していかなければならない。そんな絶望に近い悩みを抱えていたという文豪カフカ。本書はそんなカフカの生々しい姿を、日記や手紙をもとに紹介します。
    世の中、前向き、ポジティブが賞賛され、成功者による人生論が高らかに語られます。それはそれでいいのでしょうけれど、なんだか違和感を感じている普通の私たち、も同時に存在するのでは。悲しいときには悲しみ、苦しいときにはグチをいい、絶望する時には一度、しっかり絶望することが、実はそこから立ち直る大きな力になったりする、かもしれない。そんなことを教えてくれる一冊です。
    そういえば、映画「インサイドヘッド」でも、前向きポジティブだけじゃ、人生前に進めない。悲しむときにはしっかり悲しもう、というメッセージを投げかけていたことを思い出しました。

  • いつのまにかポジティブに囚われていたと、この本を読んで気づいた。

  • 読めば読むほど興味が湧いてくる。
    つい付箋をいくつかの頁に貼りつけながら読んでいました。

  • カフカの日記や手紙や雑記の中からこれでもかとネガティブな名言を連ねる作品。名言の後に編者の補足が小気味よくていい。
    読み易くて他のカフカの作品を読みたくなるのじゃないだろうか。僕はそう思った。

  • カフカです.....

    ってひろしみたいにやって欲しい

  • なかなか、楽しめますが、どちらかというと参考になる言葉というより、カフカ自身の魅力あふれることばということを感じます。ですから人生訓になるわけではなく、カフカ好きになる可能性がある本ということになります。
    人生論に絶望した!

  • ネガティブやな。とてもいい。それでもこの解説者の言葉は何か刺さる。解説とはきっとそういうものなのだろう。

  • 人生論,というより断章的なカフカの文とその解説。絶望に効く,という触れ込みで,読んだところまさにそのとおりだった。(今回について言えば読み進めて晴れてきて,最後は押しつぶされたが(苦笑))。偉大な文学者のこの絶望の深さを示すばらばらの日記・手紙その他を集めて,ほぼ2頁見開きの形に編集してくれ,さらに文庫になっているありがたさ。意外にも私にとっては,これまでにも読んだことのある「父への手紙」が響いた。それまで父への手紙は他人事のように思えていたが,どうも思い当たる節が自分にも多々あるように思えてならない。

  • まだ絶望が足りない

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著者プロフィール

1883年プラハ生まれのユダヤ人。カフカとはチェコ語でカラスの意味。生涯を一役人としてすごし、一部を除きその作品は死後発表された。1924年没。

「2022年 『変身』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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