本当はひどかった昔の日本: 古典文学で知るしたたかな日本人

著者 :
  • 新潮社
3.59
  • (6)
  • (34)
  • (23)
  • (4)
  • (1)
本棚登録 : 398
レビュー : 40
  • Amazon.co.jp ・本 (233ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103350910

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 弱者に対する差別や虐待の残虐さは凄まじいものがあったなと、著者とともに古典を振りかえりながら思いました。

    そしてこの「弱者」に子ども、妊婦、老人、障害者、容貌の残念な人が含まれるんです。この中のどれにも該当せずに人生を終えられる人はいません。
    そう思うと、差別がないとは言えないけど、弱者が迫害されたり、直接的に危害を加えられたりせずに済む現代は、確かに幸せだと思います。
    特に驚いたのは、捨て子は野犬に食われるのが当たり前であったということ。
    悪評高い生類憐みの令だが、その中には捨て子を禁じる命令もあり、その点では画期的だった。お上が厳しく禁じるまで、捨て子はありふれた必要悪だったのだということ。
    少しずつだが確かに、日本人は社会をよいものにしてきました。同時に、ほんの少しずつしかよくなっていません。古典の描いた社会と現代の差異を考えるのは、日本人の現実と希望を見据えることだと思います。

  • 大変勉強になりました。
    古典文学からの参照がとても多く、昔の時代の読み解きだけでなくこんな面白そうな作品があるのか、という面でも楽しめました。
    文学からそれが書かれた時期の文化や人々の考え方が紐解かれていて、とてもわかりやすかったです。
    ですが、どの時代が良い・悪い、といった話はどの視点から時代を見るかにより、「一概には言えない」というのが真理だと私は思っています。
    ですから、こういった昔の酷い面だけでなく、逆に素晴らしい面両方学んだほうがよりその時代を理解できるのではないかと思います。
    まあ、タイトルが「本当はひどかった昔の日本」ですから、あえて良い面は書かなかったのだとは思いますが…。

  • 日本に限らず昔話には残酷シーンが結構多い。
    子どもを捨てたり、いじめがあったり、妻を殺害したり…。

    しかしこの本に紹介されているのはもっとすごい。
    村という運命共同体からはじかれたら生きていけないから、夜泣きがうるさい子どもを捨てなくてはならなくなったり、老人介護問題で家族がぎくしゃくしたり。
    ストーカー殺人があったりブラック企業があったりと、現代特有のような事件ですらすでに古典に書かれているという。

    びっくりしたのは生類憐みの令。
    学校で習ったときは、とにかく評判のよくない悪法ということでしたが、この本によると法の趣旨はとてもよいものであると。
    犬を捨ててはいけない以前に、病気の馬や牛などを捨てたり殺したりしてはいけない。
    さらには食うに困って子どもを捨てたり、病人を捨ててはいけない。
    これらは実際に行われていたことのようで、身分の高い人であっても、病気になると道端や墓場に捨てられることがあったらしい。

    “善悪問わず、現代人がやった程度のことは、とっくの昔に誰かがどこかでやっているものです。そうした謙虚な姿勢で古典を読み解けば、現代特有に見える病理や事件も実はそうではなかったと分かるし、同じ悲劇を繰り返さないための賢い対処法を考えることができるでしょう。”

    読みやすくて面白くて、目からウロコの楽しい本でした。

  • 確かになあ。昔昔の日本って、美化されているけどそんなことなくって、離婚は当たり前、子供や女性、妊婦なんて、差別の対象。生きるか死ぬかって感じの世界。不倫も上等
    だったんだってお話し。
    お妾さんの存在も「朝が来た」の主人公のころは当たり前だったんだし。1900年ごろは、子供も7人ぐらいいて、名前つけるのも、面倒だから1,2,3,4とか番号だったり、女性をもう生まないように留さんって名前だったりしたんだものね。
    衣食住足りて礼節を知る。
    そんな感じなのかもな。
    あとは、需要と供給の話かも。
    改めて気づかされました。

  •  著者は古典エッセイストだそうだが、日本の古典文学を広く大量に読んでいることがよくわかる。それらには、捨て子、虐待、奴隷、ストーカーなど極悪非道な話が散見され、15章に分けて紹介する。これらは実際にあったことを下敷きにしているだろうと示唆する。
     そして、ニュースで子供の虐待死などが報道されるたびに、それが現代という時代の問題扱いすることに著者は違和感を抱く。昔からあったのだと。昔はもっとひどかったのだと。
     昔はよかったという言説には注意が必要で、人の命がもっと軽んじられていたことを忘れてはならないと思う。本書は、読み物としても面白いし、そのようなことも考えさせてくれる本でもある。ゆっくり古文を読んでみたいな、という気にもなる。

  • 現代の日本社会の社会問題。
    育児放棄、虐待、介護問題、いわゆる「ブラック企業」。
    採用試験の面接での「容姿」…。

    これらは、今にはじまったことではなく、古代からあったことが、古典文学作品に描かれていることがわかる。
    しかも、数例ではなく、数多く。
    さらに、その実態たるや、現代と同じか、あるいは以上に苛酷なものがったことがわかる。

    いかに「法の支配」が重要なのかということも考えさせれれる。

    「昔はよかった」と嘆くのを今でもたまに見聞きするが、中世、近世でも、同じような言葉が見られるのがおもしろい。


    数多くお古典作品、有名なものからほとんど知られていない作品まで扱っており、また、他の参考文献を元にしながら、筆者の文章は進む。
    その資料の読み込みに感服するばかり。

    「今よりも昔の日本はよかった」というのが、淡い幻想であること、そして、昔も今も何もかわっていないということをつくづく感じさせられる。

    また、そこ(古典)から学ぶことも多いのも確か。

  • 昔は良かったという俗説を完璧に打ち破るエビデンスが満載されている本だ.育児放棄、貧困ビジネス、虐待の連鎖、マタハラ、毒親、介護地獄、ブラック企業、家族同士の殺戮、ストーカ殺人、残酷な若者、心の病、動物虐待、見た目社会、金目の社会、、、古典文学に出てくるこれらの実態を見るに、「取り戻そうとしている日本」とは何なのか、改めて考えてみた.安倍に読ませたいな.

  • 古典に精通した著者だからこそ書ける、内容。巻末の参考文献の多さを見ても「読んで教えてくれてありがとう」という感じ。歌舞伎なんか見ると、大した理由でもないのに娘を遊郭に売ったりするシーンがあるし、近松心中ものも「でも、なんで死ぬかな」と、いろんな解説を読んでも芯から納得したことはなかったのだが、これを読んで、かなり納得した。
    歯の治療をする時、「現代に生まれてよかった」とはいつも思っていたけど、ここまで昔がひどかったとは・・・。「今昔物語集」も抜粋しか読まなければ、こういうことって知らずに過ごすわけだよね。
    それにしても、法や意識は変わっても、人間はあやまちを繰り返し、ちっとも変わらないんだな、としみじみ。

  •  平安初期の『日本霊異記』には、若い母親がネグレクトの果てに我が子を死なせそうになる話が。『源平盛衰記』の文覚の出家に至るまでの話はストーカー殺人だし、『古事記』のヤマトタケルノ命は兄を惨殺してるし…。「昔は良かった」という幻想を捨てた方が、ラクだし賢い対処法考えられるのでは!?という本。

  • 「少年犯罪が増えている」という言説を証拠をもって否定するところから説き起こし、古典文学によって、いかに「ひどい」ことが普通に行われていたかを示す。
    綱吉が、捨て子や病人の遺棄を禁じた話もあり、古代から近代まで、価値観によって歪んで伝わっている話も多いと思わせられる。

著者プロフィール

1961年横浜市生まれ。古典エッセイスト。早稲田大学第一文学部日本史学専攻。個人全訳『源氏物語』全六巻、『源氏の男はみんなサイテー』『カラダで感じる源氏物語』『ブス論』『愛とまぐはひの古事記』『女嫌いの平家物語』(以上、ちくま文庫)、『快楽でよみとく古典文学』(小学館)、『ひかりナビで読む竹取物語』(文春文庫)、『本当はひどかった昔の日本』(新潮社)など著書多数。

「2016年 『文庫 昔話はなぜ、お爺さんとお婆さんが主役なのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

大塚ひかりの作品

ツイートする