すべての見えない光 (Shinchosha CREST BOOKS)

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (526ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784105901295

感想・レビュー・書評

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  • このままいつまでも 終わらず
    読み続けていたかった本でした……

    長いけど 読んで損はないです

  • まず作者のネタ拾いが非常に上手いと感じた。光を失った盲目の少女と、電波オタク少年が海賊ラジオ番組を通して繋がるという憎らしい演出。見えない光(見えざる手)によって戦況や市民の心情まで左右できるという皮肉めいた箴言。孫が遊ぶ携帯電子ゲームを通じて、アンテナを所有していただけでも処刑される歴史があったことを諭そうとするマリー。つまり、原題の通り、見ることのできない光(波)に翻弄される様々な人間模様を繋ぎ合わせている点が非常に秀逸。

    また(それが想像した通りかどうかは別として)中盤あたりでおおよその結末の見当はついてくるが、それでも最後まで飽きさせることのない物語展開。
    そして一番の妙手は節や章ごとに時系列を敢えて入り乱れさせ、読者にその飛ばされている部分を紡ぎ出させようとしている点だと思う。

    ただ強いて欠点を挙げるとすれば、戦争や人間の汚い部分(フレデリックを虐めるシーンや、ユッタ達がレイプされる過程など)の描写が少ない気がした。

    また、マリーのお父さんの最期と、炎の海の行方は詳述した方がスッキリしたと思う。
    ※戦前には3つのダミーまで作られて巧妙に隠されたのに、戦後は誰も探そうとしなかった(?)のかが不思議(あまり突っ込むべきところではないかもしれないが…)。

    もうひとつおまけに、ヴェルナーの最期があういう形なら、むしろホテルの地下で自身の父と同じような形で迎えた方が宿命のような気がする。
    ※ただ個人的には、二人は戦後に再度邂逅すると思っていたが…

    追伸
    あとこれは、絶対映画化されるはず。
    監督はミヒャエル・ハネケ希望

  • 2016年のガイブン界最大の話題作をいまさら読んだが、最も話題になっているときには書きにくかった感想。
    すごく面白い…のだが、私の好みからすると「面白すぎる」。日本翻訳大賞授賞式で柴田さんが「宝石なしでやって欲しかった」といったが、首肯する。そう、伝説的な宝石まで出てきて数奇な話がパズルのようにうまくまとまりすぎた感じはある。ヴェルナーとマリー・ロールはどう出会うのだろうとわくわくするが、そのぶん「けりがついた」後の残り数十ページが物足りなくもあった。小説の瑕疵とはいわないがnot for meというところ。
    映画化したくなりそうなベストセラーとして私の中では「海を照らす光」と同じフォルダに入る。サン・マロの写真をネットで見ると、破壊された後、元通り再建したそうで美しい石造りの街だった(ワルシャワ然り。ヨーロッパは「元通りに再建する」情熱と誇りが凄い。)映像で映えそう。
    翻訳は見事だ。原文の独特のリズムと詩的な叙情性が想像できる。藤井さんは「いままでの翻訳で一番多く読点を打った」といっていた。

    以下、藤井さんのツイッターからの情報。
    ・翻訳しているときに頭に鳴り響いていた音楽はスフィアン・スティーヴンスの『キャリー・アンド・ローウェル』→Amazonでダウンロードして聞きながら読んだ忠実なファン。
    ・表紙はキャパの写真で、キャパは戦中サン・マロを訪れて撮影もしている

  • 舞台は第二時世界大戦のドイツーフランス。
    …と云う背景だけでも、血腥くかつ悲しみに満ち溢れた予感しかしないんですが。

    どこまでも優しいお話でした…。
    雪のように白い髪を持つ少年兵と、小さな生物を愛する盲目の少女。この二人の出会いと云う一点に向けて、緻密に進んで行きます。舞台や時間がとびとびなので、これがどうやって結びついていくのだろうと云う気持ちでどんどんと頁を捲ってしまいました。
    一文が素晴らしく詩的で短いので、本当に小説なんだろうかとか思ってしまうほど。

    「戦場のピアニスト」をちょっと思い出しました。
    ある一点の為の冗長とも云える長い物語と云う部分だけですが。

    登場人物を一人一人丁寧に描いて行くところもとても良かったです。エティエンヌ大叔父さんとフォルクハイマー鬼軍曹先輩が大好きでした!

  • 名著

  • すべて現在形

  • 物語の初めは,描かれている情景が想像しにくく,なかなか前に進みませんでした。

    私は,幻の宝石,炎の海が出てくるあたりから,俄然面白くなりました。

    少し速足で読んでしまったのがもったいなかったですが,
    なぜ,ヴェルナーがマリー=ロールが海の中へ入れた家の模型を,彼女と別れた後持ち出したのか,炎の海をどうしたのか,など謎の部分が残ったがゆえに,いつまでも読後の余韻が消えない物語でした。

  • 盲目の少女のために、父が作った精巧な街のミニチュア模型。
    それと同じで、この小説には世界の構成要素のミニチュアが全て備わっているように思えた。
    醜さと美しさ、卑しさと尊さ、闇と光、不幸と幸福。
    それから、模型の世界を満たしてなお余りある愛。
    目の見えないフランスの少女と、ナチスドイツの少年兵を中心に据えたシビアな物語だが、著者の眼差しは温かい。
    スリリングでもあり、ページをめくる手が止められなかった。
    藤井光さんの翻訳は、今作でも見事。

  • ウンベルト・エコーの自伝的最後の小説を読んで、第二次大戦時のドイツが知りたく、行きついた本です。文がとにかく綺麗でこの調子大戦を書くのかとびっくりさせられます。無線機を隠している事と、博物館の宝物である宝石を隠している事の両方からそれぞれのドイツ兵が(片側はドイツに協力させられてる者)符合したように、大叔父とマリー・ロールの所にやって来ます。ここが圧巻ですね。  ところで地雷除去はドイツ兵がやったのでしょうか?

  • この作品は間違いなく反戦を訴えていると思いました。少女と少年の奇跡的かつ束の間の出会いに心が揺さぶられるのですが、ナチの暴虐によって登場人物は一人またひとりとひっそりと表舞台から消えていく事実に胸が痛みました。物語の進行はどの場面も暗示的で緊張感に満ちています。久しぶりに充分な満足感に浸りました。

  • マリー=ロールとヴェルナー。戦時中でなければ、違う形で出会えていればよかったのに。そしてフレデリック。この登場人物たちのことをいろいろ考えてしまう。読み応えもあり、久しぶりにどっぷり浸れた。

  • ツイッターで、吉村萬壱先生がこの本を紹介していて、「こんなの書きたいぜ」とコメントしていたので、一体どんな本だろうと思って買ってみたのですが、疑う余地のない傑作でした。

     1944年8月、ナチス・ドイツに占領されていたフランス、ブルターニュ地方のサン・マロという町にアメリカ軍が空爆を行います。
     そのときこの町にいたフランス人の盲目の少女と、ナチスの若い兵士の物語で、少女と兵士の話が交互に語られます。
     物語は時系列に沿って語られるのではなく、第0章では1944年8月7日、第1章では1934年、第2章では1944年8月8日、第3章では1940年6月 といった具合に、過去と現在を交互に行き来しながら1944年8月の焦点となるある時点を目指して物語がゆっくりと盛り上がりながら進行して行きます。

     物語性と詩情を兼ね備え、厚い本なのですがラストに向かってぐいぐい引っ張っていく力のある本でした。

     時間を割いて読む価値のある本だと思います。オススメです。

  • 前半、恐ろしく読みにくかった 翻訳のまずさなのかな
    ヴェルナーが軍に入隊したあたりから、ぐいぐい読めてきた ヴェルナーの友人で鳥好きのフレデリックの存在が良かった
    マリーが疎開した叔父の家の手伝い人のマネック夫人がすごくいい人だったのが救われた
    重厚な映画のような読み応えがあったが、前半の読みにくさで☆-1

  • 図書館から二度借り出し、二度とも延長した。
    とにかく長かった。
    とりあえず読みきった。

  • 盲目のフランス人の少女マリー=ロールとドイツ人兵士のヴェルナー、遠く離れている二人を繋いだものはラジオだった。戦時下の話なので悲しい場面もあるし、嫌な人も出てくるけど、そんな中での日常のささやかな歓びや、人の優しさ、強さ、迷いを、静謐で、繊細、美しい筆致で描いていて、そこに伝説の宝石を巡るサスペンスも加わり、後半は先が気になって睡眠時間を削って読んでしまいました。長い時間をかけての二人の邂逅は一瞬で、だからこそ余計切なさがこみあげ、読み終えた後も余韻が残る。2016年に読んだ海外作品の中で一番好きな作品。

  • 格調高い翻訳文学を久しぶりに味わいました。ヴェルナーとマリーロールの章が交互に現れ、二人の出会いへと上り詰める、静かな胸の高まりを感じました。出会いはほんの一瞬、でもそこまでに至る二人をじっくり見てきているから、素晴らしい時間だったのだと思えました。言葉をかわす二人の時間が永遠だったらどんなに良かったか、と思わずにいられません。こんな若い二人の生活、幸せを奪う戦争のむごさを改めて感じました。現代を描いた章もじつに印象的で、映画のラストシーンのように残りました。

  • 少年は電波に乗った声に導かれるように、サン・マロのアパルトマンの最上階へ。
    少女は父親から引き継いだ伝説のダイヤモンドを守り、戦火のサン・マロで電波に声を乗せて救助を待つ。
    1940年代から2010年代。一人の人間が生きる期間に文明は大きく変化する。
    数ページの断章を積み重ねて作り上げた、とてもスケールの大きい長編。
    この物語に幸せな人物は登場しないようにみえる。それでも悲壮感はない。
    淡々とした文章がしみじみ来る。

  • 新聞の書評に惹かれて読んだ本。簡単にいえば、マリー ロールという盲目の少女と、ヴェルナーという孤児院育ちの少年が、フランスとドイツで成長しやがて戦争に巻き込まれ、一瞬の出会いののち別れてしまう物語。だが出会うまでのなんて長いこと❗しかも出会いはほんの一日で、はっきり恋に落ちたかどうか定かではない。その後、ヴェルナーは戦死してしまうのが切ない。切ないといえばもう一人、ヴェルナーの士官学校の同期で、目の悪いフレデリック❗みんなからいじめのターゲットにされたあげく、廃人になってしまう。彼について書かれたところはあまりにひどすぎて胸が詰まる思いだ。
    とても長い物語だが、ものすごく細かい章に別れていて、マリーロールとヴェルナーが交互に書かれているのがおもしろいと思った。
    主人公たちの他にも、エティエンヌ、フォルクハイマー、ユッタなどの登場人物が個性豊かに描かれている。
    「アウシュビッツの図書係」に続いて第二次世界大戦を舞台にした本をよんだが、戦争がいかに残酷なものであるか考えさせられる本だった。

  • 電気技術などに天才的な才能を持ち、ナチスにその才能を買われたヴェルナーは孤児院で妹と暮らしていた。そこで、ヴェルナーは遠くフランスから聞こえてくるラジオで科学や工学を知った。
    視力を失った少女マリー=ロールは、フランスで博物館の鍵の管理をしている叔父と暮らしていた。
    遠く離れた大戦中は敵味方に分かれた二人が交互に描かれ、やがて敗北のナチスの戦場で二人は出会う。
    出会いは、ヴェルナーが直した放送機器がきっかけであり、ヴェルナーが聞いていたラジオ放送は、マリー=ロールの大叔父だった。
    奇跡のような出会いからマリー=ロールへの救い。そして、戦争の悲劇。
    後年、ヴェルナーの妹とマリー=ロールの出会い、そして現代のマリー=ロールと描き続けられる。

    ひたひたと押し寄せる感動と悲しみに、涙が止まりませんでした。

  • 最初は時系列がわかりにくく、読みづらかったが、ヴェルナーとマリー=ロールが気になって、止められなくなってしまった。

    描写が細かいところまで丁寧に描かれていて、じんわりと心にしみてくる。子どもだったヴェルナーが楽しみにしていたラジオの放送、マリー=ロールが海辺で遊ぶ様子。

    一つだけ、なぜヴェルナーは模型の家を持ち出したのだろうか? それが気になって仕方がない。そして、鉄の鍵の意味は?

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