- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106108006
感想・レビュー・書評
-
これまでの著書の方が面白かった。
モチベーションは大きく分けて二種類ある。一つはお金やモノ、役職ポストなど、外から与えられる報酬によって引き出されるものであり、「外発的モチベーション」という。もう一つは仕事そのものが楽しいとか挑戦心をかき立てるとかいうように、仕事の内側からわいてくるものであり、「内発的モチベーション」と呼ばれる。
名著『夜と霧』の著者であり、精神科医、哲学者でもあるV・E・フランクルは、人間存在の意味を追求する「ロゴセラピー」を説き、関連してこう述べている。「恐怖症と強迫神経症の病因が、少なくともその一部は、患者がそれから逃れようとしたり、それと戦おうとすることによって起こるふ不安や強迫観念の増大にあるという事実に基づいている」
このような現象を「精神交互作用」と名付けたのが、「森田療法」で知られる医学者森田正馬である。森田によると、そもそも神経症の不安や葛藤は正常な人にも生じる心理状態であり、自分にとって不都合な弱点を取り除こうと努力するほど、その意に反して自分に不都合な神経症の症状を引き出してしまう。
したがって「認知された期待」「自己効力感」「問題の重要性」を呪縛の三要素と呼ぶことができる。定式化すると、(認知された期待‐自己効力感)×問題の重要性=プレッシャーの大きさ、すなわち「承認欲求の呪縛」の強さである。
それでは結論として、どこを、どのようにほめたらよいのか?
その答えは、具体的な根拠を示しながら潜在能力をほめることである。潜在能力をほめることは、「やればできる」という自信をつける。すなわち自己効力感に直接働きかけることを意味する。すでに述べたように自己効力感が高まれば挑戦意欲がわく。かりに成果があがらなくても、潜在能力に自信があれば、成果があがらないのは努力の質か量に問題があるからだと受け止められる。そして、改善への努力を促すことができる。
第一に、友人や顧客からの声など第三者の評価を伝えることによって、受け取る側からすると信憑性が高くなる。…
第二に、何が賞賛に値するかをできるだけ文章にして具体的に示す。たとえば表彰する場合も、賞状には通り一遍の文言ではなく、理由を詳細に記述したほうがよい。またカードやスマートフォンのアプリを使って、ほめ言葉や感謝の言葉を伝える仕組みを取り入れている会社もある。口に出すのが照れくさい場合に使えるといったメリットもあるようだ。
第三に、「昨年はできなかった○○が今年はできるようになった」というように、進歩の度合を客観的に理解できる指標を示す。他人と比較するより、過去の自分と比較するほうが成長の実感が得られやすい場合がある。
第四に、ふだんはできないことがたまたまできたときなど、例外的な事象に注目する。とくにほめるところを見つけにくい場合に使える方法である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
承認は効果的。でも劇薬。
承認欲求の呪縛に注意。
自己肯定感を上げる。期待を下げる。問題の重要度を下げる。
問題の相対化。 -
(自信-期待)×事柄の重要性が問題。
承認欲求の呪縛から逃れるためには、自信を高めるか、期待を下げるか、事柄の重要性を下げるかすればよい。 -
自信をもたらす最大の要因は成功体験である。実際にやってみて成功したら自信がつく。しかし同じことを成し遂げても自分自身ではその価値がわからない場合がある。そんな時他人からすごいよくできたねと褒められたり以前に比べてどれだけ伸びたかを教えられたりすればその値打ちが実感出来、やればできるという自信が持てるようになる。それが新たな意欲をかき立て、また不安を和らげることにもつながる。だからこそ、周囲から承認と言う形でフィードバックを受けることが必要なのである。
三重県にある南部自動車学校は(褒めちぎる教習所)として知られているが(褒める)教習を始めてから卒業生の事故率が半数以下に減少し、運転免許の合格率は2014年からの3年間で4.5%アップしたと言う。
パスカルはこう述べている。人間の最大の下劣さは、栄誉を追求することである。だが、これこそまさに、彼の優越の最大の印である。なぜなら、人はいかに多くのものを地上で所有しても、いかに健康や生活の安定を得ても、他人から尊敬されない限り満足はしない。
期待を裏切ってはいけないと言う意識が心のどこかにある限り、その不安を取り除こうと意識すればするほど、まるでアリ地獄のように負のスパイラルに陥っていくのである。
実力があっても評価されないのは幸せだ。実力以上に評価されるのはどれだけ苦しいか。
セルフハンディキャップイングには、あらかじめ大きな期待をかけられるのを防ぐとともに、失敗したときに自己評価が大きく低下することを予防しようと言う意図も含まれている場合が多い。 -
『「承認欲求」の呪縛』(太田肇著/新潮社)vol.491
https://shirayu.com/blog/topstory/idea/7780.html