マグダラのマリア: エロスとアガペーの聖女 (中公新書 1781)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121017819

感想・レビュー・書評

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  • キリスト教には二人のマリアが存在する。聖母マリアと罪深きマグラダのマリアである。西洋世界におけるマリア信仰の歴史についての本を読み、マグラダのマリアに興味を持った。原田マハの小説に「まぐらだ屋のマリア」と言う題名のものがある。原田さんの作品の代表作の一つと思っているが、何故この題名なのかと思っていたが、マグラダのマリアの話を題材としている意味が今回改めて理解でき再読しようと思った。
    マグラダのマリアは聖女でもあり、娼婦でもある。正しく言えば自らの罪を回心し、聖女になったということである。聖女マリアは言うまでもなく聖なる存在、人々を疫病、災い等から救済する、あたかもキリストのように。一方で、罪深きマリアは罪を悔い、キリストに仕え、聖なるマリアよりもキリストにキリストに近い存在として聖書等に伝えられている。西洋絵画でマグラダのマリアは多くの作品の題材とされているがとても矛盾した要素を含んでいる。貞節と淫ら、美しさと官能。聖女マリアがより神に近い存在であるに比して、マグラダのマリアは人間に近く、人の罪深さを象徴していると感じた。多くの宗教が人間は本来罪深い存在とするところから始まるが、人はいつまでも罪深いものであり、罪から逃れられないのではないだろうか。

  • 回心した娼婦、聖女にして娼婦というイメージを持つ彼女であるが、聖書を紐解くとキリストの磔刑、埋葬、復活といった場面に登場するものの、罪や悔い改めといったテーマには直接関係していないことを指摘する。
    では、いつ、どのようにしてこのようなマグダラ像が形成されてきたのか。時代、宗派、地域などの視点から豊富な絵画・彫刻などの紹介も交えて解説。

  • 〈「復活」の最初の証人〉であり、〈最初の「使徒」〉にもなる
    =「使徒たちの女使徒アポストロールム・アポストラ」

    ヨハネ解釈とマタイ解釈
    美術ではマタイのほうが多い

    19
    アダムのような両性具有的存在への回帰や、あるいは、苦行者たちの禁欲主義的なジェンダー放棄の精神

    146
    Renaissanceがヴィーナスにしょうち象徴されるなら、baroqueはマグダラのマリアによって象徴される

  • 2000.01.01

  • 井出洋一郎さんの『聖書の名画はなぜこんなに面白いのか』で「マグダラのマリアに関してはこの本を」と強力にすすめていたので読んでみた。
    豊富な情報量に圧倒される。

    最初の章で、マグダラのマリアが聖書でどのように記されているか、福音書ごとに違いをまとめたものが面白い。
    さらに、娼婦のマリア、エジプトのマリア、ベタニアのマリアと混じり合っていくプロセスもよくわかる。

    欲を言えば、たくさん紹介されている絵画のほとんどが白黒だったのでもう少しカラーの絵があればさらに楽しく読めたと思う。

    マグダラのマリア研究の成果をこれだけくわしく新書で読めるのは本当にありがたい。
    著者の岡田先生と、知るきっかけを作ってくださった井出先生に感謝。

  • 授業でやった時は何が何だかさっぱり分からなくなりましたが、この本できれいさっぱり解決しました。でも、処女懐胎の方が面白かったかな?個人的には。

  • 聖母マリアの純潔とエヴァの原罪の間に配置されたマグダラのマリアは、解釈によって都合よく利用/消費された。
    15世紀までの教会によって規制・教化された図像に為政者である教会・修道会の権力性を、16世紀以降のバロック・ルネサンス期の図像に受容者の欲望を考えさせられる。

  • 苦手な新書を読もうキャンペーン!

    主に絵画を通してマグダラのマリアが時代によってどのように認識されてきたか、
    その変貌を辿る、というような本。

    ふつうにおもしろかったですよ。

  • キリスト教のことを何も知らないのに、こんな本を手にとってしまった。マグダラのマリアについて掘り下げられても、素人には右も左も分らぬことが多くあった。もうちょっと聖書のことを知っていたら楽しめたのかなぁ。とはいうものの、読了後にはそれなりにマグダラのマリアについて詳しくなれたので、悪くはなかったとも思います。こういう本に対して初心者である私が評価を下すのはフェアじゃないので、とりあえずの☆3つです。

  • ダヴィンチコード以来興味をもったので。ベタなミーハーですが。でも、ダヴィンチコードで言われるマグダラのマリアがキリストの子供を産んだというのはどうも信じられない話な気がした。髑髏をまとった聖女っていうその矛盾したような美しさに私は魅力を感じる。マリアがキリストを愛した気持ちっていうのが、宗教的な神への愛というより普通の人間的な、人を愛する愛情なのではないかと思えて聖女なのに他の聖人よりも親近感を抱いてしまう。それから絵画に描かれる彼女が美しすぎて挿絵をみるだけでも楽しめた。

著者プロフィール

岡田 温司(おかだ・あつし):1954年広島県生まれ。京都大学大学院博士課程修了。京都大学名誉教授。現在、京都精華大学大学院特任教授。専門は西洋美術史・思想史。著書『モランディとその時代』(人文書院)で吉田秀和賞、『フロイトのイタリア』(平凡社)で読売文学賞を受賞。ほかに、『反戦と西洋美術』(ちくま新書)、『西洋美術とレイシズム』(ちくまプリマー新書)、『最後の審判』『マグダラのマリア』『アダムとイヴ』(中公新書)、『デスマスク』 『黙示録』(岩波新書)など著書多数。

「2024年 『人新世と芸術』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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