背教者ユリアヌス 上 (中公文庫 A 48)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (391ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122001640

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  • キリスト教が国教化されたローマ帝国で皇帝の座に就くことになり、古代からのローマの信仰を復興させようとしたユリアヌスの生涯をえがいた作品です。

    皇帝コンスタンティウスは、宮廷内で力をもつキリスト教徒たちの策謀に乗せられて、ユリアヌスの父を殺害します。ユリアヌスとその兄であるガルスは、幽閉生活を送ることになりますが、やがてユリアヌスは学問を志す青年ゾナスに出会い、彼の口から自分たちの身に起こった出来事の真相を知ることになります。

    三巻にわたる長編作品ですが、ドラマティックな展開が多いので、勢いをつけて読み進めることができました。「背教者」ということばだけではうかがうことのできない、ユリアヌスがめざしたローマ帝国の統治の理念をえがくことが本作のテーマのひとつだと思うのですが、上巻では学問に打ち込むことでそうした理念をはぐくんでいった、ユリアヌスの青年時代が中心となっています。

  • 辻邦生 「 背教者ユリアヌス 」1/3 ユリアヌスの人間像を説明した巻。異母の兄と弟、キリスト教とローマ異教、宗教と哲学、身分の違い、夢による予言と現実 など 対立軸が 何か起きそうな雰囲気を醸し出す

    辻邦生 「 背教者ユリアヌス 」2/3

    イリオンの廃墟から始まる 英雄ユリアヌスの叙事詩の巻。皇后エウセビアの愛は イリオンの廃墟と同様に 甘美な憂鬱の象徴

    ユリアヌスが 哲学に見出したものは 普遍的な正義を実現すること。キリスト教の持つ正義に普遍性はない ということか

    「人間のすべての営みは 〜一つであるべき〜それを言葉で表したのが 哲学。哲学と人間の実際の営みは 離れてはならない」

    辻邦生 「 背教者ユリアヌス 」3/3 著者が伝えたかったのは 「人間は永遠に未完成であるが、完成に向かって走り続けるのが人間である」といった人間観。

    その象徴として
    *ユリアヌスの考え続ける姿
    *成就されないローマの秩序
    *報われない ディアの愛 を繰り返し描いている


    キリスト教の中で人間は 神に考えを委ね、正義が行われず、憎しみの中にいる、ローマ異教に回帰することにより 人間性を取り戻す

  • 若いバシリア◆大いなる影◆幽閉◆幽閉の終り◆副帝ガルス

    第14回毎日芸術賞
    著者:辻邦生(1925-1999)

  •  歴史小説は好きでよく読む。が、それも日本か中国古代に限られる。最近改版が上梓されて世評の高い本書を手に取ったのはほんの気まぐれだった。そもそも辻邦生という人は北杜夫との対談くらいしか読んだことがない。舞台は4世紀のローマ帝国、本物の世界史ど真ん中で腰が引ける。高校時代は歴史が苦手で特に西洋史は鬼門だった。ひたすら暗記するばかりでこれのどこが面白いのか皆目わからなかった。なのでローマ帝国も大昔にヨーロッパの大半を席巻し東征したくらいしかおぼえていない。本作が雑誌に連載されたのがちょうどぼくの高校時代で、もしそのときに読んでいれば世界史に対する印象もずいぶん変わったろうにと残念だ。これに限らず総じて歴史小説はわくわくして面白いのに、教科としての歴史はつまらないのは何でだろう。教え方が悪いのだな。理想を追い求めて世間との乖離に悩み挫折してゆく青年皇帝ユリアヌス。宗教的な問題はさておき、その崇高な政治姿勢は現代でも輝いており、こんな為政者がいたらと見果てぬ思いを抱かされる。似たようなラテン語系の人名と地名がややこしくて読みにくいことを割り引くにしても、ストーリーは簡明でテンポもよく、一大叙事詩としてとても楽しめた。作者の文章力のたまものだろう。ただ、
    地名が現代と異なるので位置関係がわからない。新版はどうなっているかわからないが、絶対に人物紹介と地図を入れてほしい。

  • 親父から譲り受けたシリーズで2番目の良作。モンマルトル日記にはガッカリしたが、本作では作者のパワーを感じた。親族殺しが横行する弱肉強食の古代ローマで、「生きるとは」を考え自問する皇族ユリアヌスの生涯を描く。中編が楽しみ。

  • 最初の描写が辛かった。

  • 中学生の頃、親の本棚で見つけて読んだ作品。文章にも内容にも魅かれ、枕元に置き、気に入っている箇所を毎晩のように読み返していました。
    当時は背景知識等もなく、ドラマとして楽しんでいたように思います。
    後に、サトクリフのローマンブリテン四部作や塩野七生の著書に惹かれたのも、もとを返せばこの作品との出会いがあったからかもしれません。
    いろいろな意味で、自分にとっての原点となる作品のひとつです。

  • ローマ帝国の皇帝コンスタンティウスが病死し、その息子コンスタンティヌスが皇帝の座についた。国力復興の為、コンスタンティヌス大帝はキリスト教を取り入れた。その一環として、反キリスト教だった前皇帝の異母弟ユリウス一族を含む多くの人間が殺された。辛うじて生き延びたユリウスの息子ユリアヌスが主人公の物語。

    上巻は常に状況説明という感じだったので、読み進めることが辛かった。しかもこの時代の人間の名前が良く似ていることもこの本を難解なものにしていた。

  • 10代の時から繰り返し読んでいる心の友。信仰に対する理性の超越と、形而下における敗北を描き出す名著。
    真理は常に疑義を持つことが更なる真理へ到達する道であるという、真理など無く常に疑いを持つ理性こそがこの有為転変の現実世界のよすがであることを小説世界からも伝わってきます。

  • 2013/10/27完讀

    ★★★★☆

    君士坦丁大帝(コンスタンティヌス)瘋狂地迷信基督教聖遺物等東西,首都君士坦丁堡人人也將信仰基督教視為登龍之途,不加入基督教就不能擠進權利中心。原本是貧窮人信仰,有點粗糙、陰濕壓迫感的基督教,一躍成為國教。大司教因為危機感(害怕改朝換代基督教又被打入冷宮)為了鞏固基督教,決定排除異己,盡力鞏固基督教。並且和大帝的次男コンスタンティヌス攜手;大帝過世後,皇弟ユリウス一族就被他們全部硃殺,只不小心留下ガルス和ユリアヌス兩個血脈。

    ガルス和ユリアヌス從小生長在多疑的コンスタンティヌス的監視下,後來コンスタンティヌス的兄長被殺,弟弟也因為高盧的叛亂被殺,帝國開始四分五裂。在妹妹コンスタンティア的暗中協助下,他容認了副帝的存在。ガルス被任命為東方的副帝,ユリアヌス也開始獲得自由的生活。他喜愛學術,雖然因為受修道僧的感動受洗,且受大司教及皇帝的警戒,希望他能專注於基督教書籍上,但後來他還是深受プラトン、ホメーロス,還有希臘羅馬的異教的吸引。關於基督教的東西,都伴隨著無可言喻的苦痛,幼稚,饒舌,囉唆的干涉,愚鈍的熱心與虛偽,作品雖然對信者有益,但程度貧弱又幼稚。。但是古希臘的那甘美而端正的憂鬱,包含著普遍性優美的文體,溢湛著憂愁的聲響,精緻的論理,帶著花香的詩文與哲學,才是他想學習的。他在兄長受重用較為自由後,投入リバニウス的學塾學習。從好友ゾナス處知道自己父親被殺的原因,也讓他逃遁入學問之中,想藉著提升字地靈魂,與自然合一,獲得絕對的自由。過程中,也有過一場小小的戀愛。

    コンスタンティヌス用從波斯帝國學來的重裝騎兵,摧毀了高盧的叛亂(僭帝在里昂自殺),統一了羅馬帝國。之後,東方副帝ガルス的惡行傳到他耳中,無後顧之憂後他決定進行整治。ガルス前往米蘭的宮廷,並被逮捕殺掉。

    **

    第一次讀這位作家的作品,沒想到意外地流暢好讀,文筆優美精緻,看他描寫景色常常令我讚嘆。雖有些地方仍有冗贅之嫌,但目前看起來是本很好的作品,甚至比以前讀過的梅列日科夫斯基版更令我印象深刻。

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著者プロフィール

作家。1925年、東京生まれ。57年から61年までフランスに留学。63年、『廻廊にて』で近代文学賞を受賞。こののち、『安土往還記』『天草の雅歌』『背教者ユリアヌス』など、歴史小説をつぎつぎと発表。95年には『西行花伝』により谷崎潤一郎賞を受賞。人物の心情を清明な文体で描く長編を数多く著す一方で、『ある生涯の七つの場所』『楽興の時十二章』『十二の肖像画による十二の物語』など連作短編も得意とした。1999年没。

「2014年 『DVD&BOOK 愛蔵版 花のレクイエム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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