十六の話 (中公文庫 し 6-51)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122027756

感想・レビュー・書評

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  • 司馬遼太郎記念館を訪ね、館内の額に掲げられた「二十一世紀に生きる君たちへ」を初めて読んで目頭が熱くなったのは2012年9月の出来事。その時買ってきた「二十一世紀に生きる君たちへ」の記念館特別装丁版をとある人にプレゼントしようかどうか悩んでいた時、その同じ日程の中で持ち帰ってしばらく書棚で順番待ちになっていた本書にその文章が含まれていることを知ったからあっさり踏ん切りがついて手放すことができた。その後の運命も数奇なもので半年とたたないうちに記念館を再訪することになり、あんだけ悩んで手放した本もまた悩まなくてよいように二冊購入して持ち帰ることにした(笑)

    そしてその後再渡米してから本書を読了。意外や意外、伏兵現るでこのタイミングでは「訴えるべき相手がないまま」に突き動かされた。理由のひとつはマーク・トウェインの登場。Woody Allen監督のMidnight in Parisの中でHemingwayが主人公に向かって鋭い眼光で聞く。"Do you like Mark Twain?" 回答次第では殴りかかられそうな勢いでである。自分ならどう答えられるであろうか。しどろもどろになるのは明白である。ただ司馬さんはこうした回答を持っていた。アメリカ人ではないからアメリカのことについて知らなくてよいのではない。またアメリカ人ではなくてもアメリカのことは知っていてもよい。「二十一世紀に生きる君たちへ」をアメリカに住む日本生まれの大人向けに書き直しておいてくれたのがこれに違いない。勝手な自分の解釈ではあるが、今後このふたつの文章を交互に読み返し続けたい。

  • 歴史小説は昔から好きでよく読んでいるが、特に司馬遼太郎の作品は気に入っているものが何作もある。
    司馬遼太郎の作品は読みやすくて、それでいて話の途中の脱線というか、雑談が面白い。自分の祖母や祖父の昔話を聞いているかのような感覚。
    そのような雑談をメインに集めたのが本書かと思う。
    司馬遼太郎が子供の頃に石鏃集めに熱中したこと、謎めいた文庫本の表紙の理由、井筒俊彦との対談などが印象的だった。特に井筒俊彦については、今度読んでみたいと思う。

  • 緒方洪庵など珍しい題材が多くて、その点は良かった。一方で空海などの思想系に話がいくものも多く、自分には理解出来なかった。

  • 適当に開いたところから読める。どこを開いても面白いネタばかり。緒方洪庵の素晴らしさを知る。彼について更に知りたくなった。

  • 久々に司馬遼太郎を読むといいなぁ。
    文章が簡潔で、リズムがいい。
    時折考え込みながらページを進めた。

  •  井上 博道の「美の脇役」はぜひ購入したいと思った。
     「山片蟠桃のこと」が目的で購入したのだが、同著に収録された「ある情熱」が素晴らしい。
     山片蟠桃については、コメと金、科学的でありつつ俗信を破壊しながらも名前は「蟠桃」であるというところ、商人の社会は奉公して業を身につけ、やがて自立するにもかかわらず、野望を持たなかったのに合理主義者であったこと。あらゆるところで境界線に立ち続けたこの男は、西部邁がもう少し生きていれば、必ず彼を取り上げて、マージナルマンとしてケインズや兆民や諭吉以上に論じていたことだろうと思われる。
    【かれは、コメを根底からカネとして見ることによって仙台藩の財政のむだをのぞいた。つまりコメから”貴穀”という迷信をとりのけた点、蟠桃の思想性が経済に生かされたといっていい。
     まずやったのは、農民の年貢をとりたてたあとの”残米”のぶんにかぎって、藩と農民は商取引の関係になった。】【藩は買い上げた残米(蟠桃はこれを買米と名づけた)を、日本最大の消費地である江戸へまわす(廻米)のである。藩が、米屋になったといっていい。このあたらしい機構のおかげで、以後、江戸市民のたべる米のほとんどは仙台米になった。買米と、それを海陸をへて江戸へはこぶ廻米のためには、仙台と、港の銚子と受け手の江戸に役所を新設せねばならなかった。その役所の設立・維持と人件費は升屋が肩代わりすることにした。その費用として、蟠桃は”サシ”というものを申し出て、ゆるされた。ふつう米俵の検査をするとき、竹ベラで俵を刺して米の品質をみる。サシに、一合ほどの米がのこる。その残った米を升屋がもらうことで、三ヵ所の役所の経費を支出した。もっともこれが意外に大きく、支出をさしひいても年に数千両が升屋のふところに入ったという。藩も、大いにうるおった。農民から買米する場合、蟠桃の考案により、藩は”米札”という紙幣でもって支払った。紙幣の裏付けは、当然現金である。藩は江戸で売った米をもって現金を得る。その現金を、藩は両替商に貸して、利息を得る。その利息は藩にとって莫大なもので、これによって仙台藩は財政のたてなおしをした。つまりは、ゼニ経済になることによって、仙台藩はすっきりした財政をもつことができたのである】

     しかし、この本における、もっとも重要な文章は「ある情熱」これ一本である。文倉平次郎という男の、咸臨丸を追いかけ続ける一生を端的に書いているのだが、司馬は幕末軍艦咸臨丸という彼の著作を大絶賛している。学問ってのはこうだろ? というのを、あこがれを持った筆致で述べている。司馬遼太郎が、こういう男になりたかった……と言っているように感じる。私もしびれた。在野研究が注目される今、この咸臨丸の本は、ぜひとも読んでみたいと思う。

  • 司馬遼太郎 「 十六の話 」歴史エッセイだけでなく 文学論、華厳経(けごんきょう)など仏教、開高健への弔辞、井筒俊彦、江戸思想、大阪など 他の本へ広がる本。電子書籍にしてほしいくらい良書。「洪庵のこと」「21世紀に生きる君たちへ」は感動。

    著者の作家の原点
    *(戦争が終わったとき)なぜこんなバカなことする国に生まれたんだろう
    *昔は〜こんなバカなことする国ではなかったに違いない
    *日本人とは何か

    重々無尽(華厳思想)
    互いに関わり合い〜連動をして 新たな関係を生み続ける

  • 作家仲間や旧知の哲学者への弔辞や講演など、16の短編で構成されている。著者の小説と同様、想いや情報の量が半端ない。
    個人的なお薦めは、小学校の教科書向けに書かれた緒方洪庵の話。ウチの事務所のある淀屋橋界隈は、洪庵の適塾の他に、大阪商人がお金を出し合って建てた懐徳堂など、市井の人が開いた大きな学問所がある。いにしえの、お金も情報量も少ない中で学んでいた姿から自分を振り返ると、、、たるんどるなぁ~

  • 三十数カ国語を話せたという哲学者、筒井俊彦氏に関する話、華厳経に関する話、「幕末軍艦咸臨丸」を執念でまとめた文倉平次郎の話などが印象的。

  • 開高さんの弔辞が載っているとのことで、読んだ。「二十一世紀に生きる君たちへ」という教科書にも載っている有名な文章がある本。初めて国語の授業が始まったときの様子や、文学の意義について書かれてるのが興味深い。水、といえば水を持って来てもらえる環境に生きていてどうやって言語の訓練ができるのか。そりゃそうだ。

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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