夜の果てへの旅 上 改版 (中公文庫 い 87-4)

  • 中央公論新社
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感想 : 52
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  • Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122043046

作品紹介・あらすじ

全世界の欺瞞を呪詛し、その糾弾に生涯を賭け、ついに絶望的な闘いに傷つき倒れた"呪われた作家"セリーヌの自伝的小説。上巻は、第一次世界大戦に志願入隊し、武勲をたてるも、重傷を負い、強い反戦思想をうえつけられ、各地を遍歴してゆく様を描く。一部改訳の決定版。

感想・レビュー・書評

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  • 今まで読んできた小説の中で最も衝撃を受けた作品かもしれない。強烈な言葉の数々に圧倒された。
    人間と人生に対する呪詛がそのまま文学になったような作品。作中の以下の文章がこの作品の方向性を端的に表している。「完全な敗北とは要するに忘れ去ること、とりわけ自分をくたばらせたものを忘れ去ること、人間どもがどこまでも意地悪か最後まで気づかずにあの世へ去っちまうことだ。・・・何もかも逐一報告することだ。人間どもの中に見つけ出した悪辣極まる一面を、でなくちゃ死んでも死に切れるものじゃない。」
    人間の所業の汚さ、残酷さ、愚かさ、無知、搾取、生活の苦しみ、やりきれなさ、怠惰、退屈。これらすべてを人間・人生の真実として余すことなく暴き立てている。あまりにも強烈な言葉の劇薬。言葉で脳をぶん殴られる。

  • フランス20世紀の作家・セリーヌの手になる長編。第一次世界大戦に出征した青年バルダミュは世界中を飛び回り、この世の闇を目の当たりにして失望するが…。挑戦者募集中。

  • <愚かな若者がたまたま気づいた真理!「戦争って意味ないよな~」>



     よりよく生きようとか浮かび上がろうとかするところが全然ない男の話って、傑作が多いような気がするのです。本書も当てはまりそう。そのせいで面白くもあれば、気が滅入ったりもする★

     上巻は、主人公バルダミュが徹底的にクズ男ぶりをさらけ出す、何とも情けない話だった……と認識しています。戦地におもむくも、負傷してトラウマも負い、兵士として使い物にならなくなる。治療中に彼女を作ったつもりのようだけど、女にすがりつく様子が憐れっぽくて、すべてが愚かだといったことではなかったかな?
     しかし、ブクログで別の方の感想文を読んだら、全くそんな内容ではなかったように大絶賛されていて、「ん? 私の記憶違い?」と慌てて上巻のみ読み直しました。そこで時間を費やし力尽き、しばらく下巻に手が届かなかった……★ しかし、そこまでしたにもかかわらず、やはり意気地なしで女性に見下されるクズ男の話としか思えず……

     時代は第一次世界大戦の頃。パリで医学生をしていたバルダミュは、カフェで兵隊の行列を見てノリでついていっちゃった、短絡的な若者(に見えた)でした。実際の戦場で彼が感じたのは、戦争って意味ないよな、逃げたいな~というようなこと。その見解は結果的に合っていたけど、真理に目覚めたというよりたまたまそう思ったような印象です。しかも、自らアクションを起こして戦場を脱出したのではなく、お払い箱になったわけで★
     しかし、そこまで読んだら急速にはっきりしてきたのが、平気で大量殺戮できる者がもてはやされ、女どもが熱っぽく称賛を浴びせかけるこの世の危うさ。バルダミュ自身も一度は熱に浮かされて英雄を目指した一人でしたが、その奇妙な夢から醒めたのです☆

     下巻ではバルダミュがちゃんと医者になるため、もっと見るべき展開がありそう! 作者の半自伝的な作品と明かされているので、ダメさを一切隠さず圧倒的に率直だなという感想。

  • 3.81/922
    内容(「BOOK」データベースより)
    『全世界の欺瞞を呪詛し、その糾弾に生涯を賭け、ついに絶望的な闘いに傷つき倒れた“呪われた作家”セリーヌの自伝的小説。上巻は、第一次世界大戦に志願入隊し、武勲をたてるも、重傷を負い、強い反戦思想をうえつけられ、各地を遍歴してゆく様を描く。一部改訳の決定版。』


    冒頭
    『ことの起こりはこうだ。言いだしっぺは僕じゃない。とんでもない。僕に水を向けたのは、アルチュル・ガナートだ。アルチュルも、やっぱり学生、同じ医学生で、友人だ。クリシイ広場で、またばったり出会ったものさ。昼飯のあとだった。』


    原書名:『Voyage au bout de la nuit』(英語版:『Journey to the End of the Night』)
    著者:ルイ=フェルディナン・セリーヌ (Louis‐Ferdinand C´eline)
    訳者:生田 耕作
    出版社 ‏: ‎中央公論新社
    文庫 ‏: ‎381ページ(上巻)
    受賞:ルノードー賞


    メモ:
    ・20世紀の100冊(Le Monde)「Le Monde's 100 Books of the Century」
    ・世界文学ベスト100冊(Norwegian Book Clubs)
    ・死ぬまでに読むべき小説1000冊(The Guardian)「Guardian's 1000 novels everyone must read」

  • 下巻にまとめます

  • 不眠に悩まされる男の旅。

  • 長い詩を読んでいる気分。

    「パルプ」がおもしろくて、だからブコウスキーが好きだった作家ということでセリーヌに挑戦してみましたが…わたしにはまだ早かったようです。
    途中までしか読めなかった…アフリカでの熱波の日々まで。

  • 文学

  • どうしようもなさしか覚えてない

  • セリーヌ 「 夜の果ての旅 」 半自伝的小説。テーマは 生への執着、個人主義

    上巻は 軍隊→精神病院→アフリカ→アメリカ

    旅は想像力を働かせる
    *生から死への旅
    *人も、けものも、街も、自然も一切が想像のもの

    戦争は個人主義に反する=戦争英雄の否定
    *倫理的な立場ではなく、個人主義な立場で戦争反対
    *戦争は ちんぷんかんぷんの最たるもの〜こんなものが長続きするわけない
    *大佐は人間じゃない〜自分の死が想像できないのだ
    *人間は目先がきかない〜監獄からは生きて出られるが、戦争からはそうはいかない

    人間観=個人主義、悲観主義
    *どんなおりにも 恐ろしいのは人間だけ
    *誰だって 自分の死について 意見を持てるはず
    *完全な敗北とは 自分をくたばらせたものを忘れること〜人間の悪辣な一面を〜逐一報告できれば 死は無駄ではない
    *俺が考えるのは 生き延びることだけ〜それで十分
    *値打ちがあるのは命だけ

    世の中には 金持と貧乏人の異なった2つの人種がいる
    *自分の階級にとどまらなければいけない
    *値段を聞いたうえでしか、手を触れてはいけない
    *ましては 執着してはいけない

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著者プロフィール

Luis-Ferdinand Celineは筆名。一八九四年、パリ西北部の都市クールブヴァに生まれ、貧しさのなかで独学で医師免状を得る。第一次世界大戦で武勲をたて、復員後、国連事務局につとめ、各国を遍歴。のちパリの場末で医師を開業。一九三二年、『夜の果てへの旅』で一挙に作家としての名声を確立したが、反資本、反ユダヤ主義の立場からフランスを批判し、第二次世界大戦後戦犯にとわれ、亡命先のデンマークで投獄された。特赦で帰国するも、六一年不遇と貧困のうちに没す。

「2021年 『夜の果てへの旅(下) 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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