昭和16年夏の敗戦 (中公文庫)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122053304

感想・レビュー・書評

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  • 実家にいた頃は、8月6,9,15日ってちゃんと意味のある日で、お線香つけてお祈りしたもんだけど、一人暮らしになってからはどうしても感覚が薄れてきてしまっている。そんな危機感から、『東條英機処刑の日』とあわせて読了。
    戦争はしちゃダメ!という感覚は強いけれど、それだけでは足りない。空気や組織の力が強い時にも流されないほど、強い自分を持っていない。
    あの時代の空気感の中でも、勝ち目がないと判断できたのはどうして?にも関わらず、戦争へと突き進んだ要因は?そもそも、戦争が必要だと思わせるような事態を招いてしまったのはどうしてだろう?
    この本を読んで、自分が戦争の原因や背景を理解できていないということに気付けた。
    よく整理された本だなぁ、と感心するとともに、歴史的な事実を積み重ねて考えることが、これからに繋がるんだなぁ、と痛感。そのためにも、もっと勉強しなくちゃなぁと思った。

  • それほど面白くないけど、実際にこんなこともあったんだなって感じで読むといいよ。

  • 高校卒業までに読んでおくべき本の一つ。
    自分自身、小・中学校で悲惨さ残虐さのみ強調する反戦・平和授業を頻繁に受けた身なので、せめて学生の時に読んでいればよかったと本当に後悔する。

    昭和16年、平均年齢30代前半の若いエリートを官民から集めて作られた総力戦研究所の机上演習<シミュレーション>。
    35人の学生たちが模擬内閣<窪田内閣>で「日米戦日本必敗」の結論を出す過程と、その結論が分かっていながら東條英機を始めとした実際の内閣がいかに開戦に踏み切ることになったか、が書かれている。

    P180の「南方作戦遂行の場合の石油需要バランス試算表」に既視感…エネルギー庁の2030年のシナリオ比較表http://www.npu.go.jp/policy/policy09/pdf/20120629/20120629_1.pdf(P9 )に似てる。

    これに関して本書からの教訓を挙げるとすれば、数字という事実は政治遂行のためのつじつまあわせに使われるということ。

    日本の戦争についての反省では、一般国民の苦労やコリゴリ感、人が死ぬことの悲惨さ、軍人の残虐行為ばかりが目に付くが、結局、それだけの認識では戦争を防ぐことはできない。「軍部の暴走」だから彼らだけが悪く、「国民」が無垢なわけではない。「国民」にも責任がある。責任があるからこそ、なぜそうなるか、なったのかのワケを知る努力をしなくてはいけない。
    ワケが分からないのだからワケが分からない自分に罪はない、だからワケの分からないことを言い続けて自分以外の他者に責任転嫁し、非難してもいいなどということはない。結局そのワケの分からないピュアさを何かに利用されることになったり振り回されたりするだけ。

    で、「日米戦日本必敗」だったとして、開戦しなかったらどうなっていたんだろう?どっちが経済、国民生活に悪影響が少なかったか、ということだが、開戦しないという選択肢はとれたのだろうか?

    それにしても、この「総力戦研究所」と「日米戦日本必敗」は舞台向きの話だと思うのだけど、舞台や映画になったりはしてないのかしら。

  • 今から70年前、今の僕と同輩の各界エリートが集められた内閣直下「総力戦研究所」。開戦、そね後までを疑似内閣でシュミレーションした結果は、東条英機内閣発足前に、敗戦必至を導きだし、第三次近衛内閣にも報告されていた。
    東条英機は陸相から昭和天皇から内閣設立の大命を頂く。しかしそれは、天皇から東条英機への戦争回避のための期待のあらわれだった…

  • 軍部の暴走、持たざる国としての已む無しの行動、色々と太平洋戦争の原因を評した言葉は聞くけれども、果たして当時の日本は、戦争して勝てると考えていたのか、という疑問に答える本は今まで無かった。この本は、日本必敗のシミュレーション結果が当時から出ていたこと、またそれを活かせず戦争に突入していった理由・経緯が纏められており、非常に面白かった。
    ビジネスでも、「ある方向に進む」という全体の空気、それを補完するために「作られる」数字、その空気に逆らえない参加者、こういった戦争に突入していった日本が抱えていたものと、同質の問題が数多く存在する。この本を、ただ歴史を再確認するため、新事実を知るためだけに終わらせてはいけないと思う。

  • 大東亜戦争開戦直前に若手エリートたちが実際の結果とほぼ同じシュミレーションをしていたことをはじめて知りました。
    確かに無謀な戦争だったことは理解できましたが、そうせざろう得なかった状況があった事実は大変哀しく思いました。
    大東亜戦争に関する著書をもっと読みたくなりました。

  • 日米戦争日本必敗
    昭和16年の夏、官・軍・民の最良にして最も聡明な逸材(BEST&BRIGHTEST)達が集められ、国家総力戦のための人材育成が始まった。
    とはいえ、体制側も手探り状態で目的もあやふやなまま、見切り発車で始まった総力戦研究所だったが、構成は良かったようだ。30代の若手~中堅レベルの人員を官民から集め、各人の持つ知識や考え方をもとに模擬内閣が組閣された。
    そこで実際の太平洋戦争をシミュレートした結果、彼らは日本の敗北という結論に至った。日米開戦から4ヶ月前の出来事である。
    (最大の焦点は燃料不足だ。アメリカやイギリスもそれを見越していたに違いないが、日本への輸出禁止措置をとり、日本を東南アジア進出へ追い込んだ。)

    しがらみの少ない、けれどもある程度の仕組みが見えている30代の研究生たちを集めたこの試みは非常にすばらしい提案だったと思う。
    現在の社会でこのような会合が行われているのかは与り知らないが、組織を超えた会話体制がもっと普及すればいいのにと思う。少なくとも、自分の属する組織では行っていきたい。

    また、本書の1/3~1/2は実際の内閣、東条内閣について言及されている。
    戦争の引き金を引いた極悪人というイメージがあったが、彼の陸相時代から終戦までを通してみると、彼の葛藤を知る事が出来た。
    陸相時に作り出した流れに総理として抗おうにもついに流されてしまう場面はさぞ後悔に苛まれたであろう。
    最期まで天皇の忠実な臣下としてありたかった彼は踊らされることを自覚した上で全てを引き受けた。
    決して見直した訳ではないけれど、これまでの偏ったイメージから、実際に近づけたように思う。

  • 自分はなんとなく小説のようなドラマチックさを期待しながら読んでしまったので、読後勝手ながら物足りなさを感じてしまった。

    この本は太平洋戦争直前に行われた模擬演習と、実際に太平洋戦争を始めるに至るまでの経緯を解説することで、何故日本があの戦争を始めてしまったのか、その原因に迫ることを目的としている。
    その点、日米開戦までの意思決定の経緯についても、当時の時代背景についても丁寧に説明されており、大変勉強になった。

    だがどうしても今一歩に感じてしまうのは、「昭和16年のシミュレーション」に関する記述があっさりしすぎているからだろう。
    もちろん根拠のない虚構を混ぜられる方がずっと嫌なのだが、どうしても期待外れな印象を持ってしまった。

  • 何故。昭和16年夏の敗戦なのか。

    それは、本当の敗戦を迎える数年前に、
    「模擬演習」によってもまた、この様な結論が出たことを意味している。

    どうして戦争は防げなかったのか。

    著者の当事者への聞き込みと掘り起こしにより、
    その全容が明らかになっていく。

  • まずもって内容が薄い。
    そして、記述が曖昧なところが多い。
    また、シュミレーションで日本が必ず負けると分かっていたから開戦は避けるべきでなかったという主張があり、結果としても想定があたっていたことから根拠がありそうに見える。
    しかしながら、この想定を生かした上で戦争を行えば結果は変わっていたと思われる。
    つまり、正規戦を挑んだ場合、物量の差に敗れるというのであればその作戦をとらなければいいわけで、正規戦で敗れたという想定を根拠に戦争が無謀であったとはいえない。

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著者プロフィール

猪瀬直樹
一九四六年長野県生まれ。作家。八七年『ミカドの肖像』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。九六年『日本国の研究』で文藝春秋読者賞受賞。東京大学客員教授、東京工業大学特任教授を歴任。二〇〇二年、小泉首相より道路公団民営化委員に任命される。〇七年、東京都副知事に任命される。一二年、東京都知事に就任。一三年、辞任。一五年、大阪府・市特別顧問就任。主な著書に『天皇の影法師』『昭和16年夏の敗戦』『黒船の世紀』『ペルソナ 三島由紀夫伝』『ピカレスク 太宰治伝』のほか、『日本の近代 猪瀬直樹著作集』(全一二巻、電子版全一六巻)がある。近著に『日本国・不安の研究』『昭和23年冬の暗号』など。二〇二二年から参議院議員。

「2023年 『太陽の男 石原慎太郎伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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