- Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122053304
感想・レビュー・書評
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太平洋戦争開戦の直前に「総力戦研究所」の名前で36名の30歳代の優秀な各方面のエリート官僚たちが集められて、模擬内閣を開催した。彼らが出した結論は日米開戦すると日本は必敗とのこと。石油、造船などの消費と生産のシミュレーションはいずれも日本がじり貧になることを示していたようだ。当時の東條陸相への報告は、東條を動揺させたが、恐らく正規の内閣でも同じ結論だったのではないかとの推測。だからこそ、東條に口止めされたと考えられる。日米開戦を避けるため、昭和天皇が木戸幸一内大臣と図り「虎穴に入らずんば…」の心境で東條に大命降下。東條は開戦を避けるべく天皇の意図を感じていたようだが。展望がないまま、戦争へと突き進むことになる日本の無責任体制を鋭く分析している。初めて気が付いたが、空襲米機を撃墜した場合の捕虜をどうするかという議論の結論が出ていなかった!驚きである。やるという結論が先行し、見通しがあったわけではなく、つじつま合わせの数字で都合よく解釈して結論づける。日本的決定システムの典型的な失敗例だと感じた。
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各省庁、軍、民間のベストアンドブライテストを結集した総力戦研究所では、開戦前の段階で日米戦は敗北に終わるとの結論が導かれていた。
日米戦の敗北を予想した総力戦研究所における机上演習と、現実に開戦に至る経緯を並行的に描くことで、なぜ日本は合理的な決断ができなかったのかを導き出す。
かたやしがらみなくファクトに基づき意見を戦わせられた総力戦研究所の机上演習に対し、現実の政治には、開戦へと向かわせる時代の勢い、空気、軍部によるテロなどが付き纏い、そうした外部環境に対して受け身の意思決定をとった。さらには、総力戦研究所の模擬内閣メンバーも現実世界ではなんら終戦を早めるための動きもしなかったことに現れるように、誰もが、東條でさえも、自分を決断の主体として歴史の中に位置付けることなく、その場その時に自分の与えられた役割を忠実に果たすだけの(悪い意味での)官僚に成り下がっていた。 -
真摯に調査を重ねて出した証拠と論理に基づく提言でも、必ずしも政策に反映されるとは限らない。「失敗の本質」とともに。オススメ!
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国会で石破さんが安倍さんに読むように勧めたと言及していた話題の書。猪瀬さんのこと、東京オリンピックを現実にした気の良いおじさん都知事と思っていたけど、彼の本質は執筆活動にあって、そこでこそ本当の才能が発揮されるのだと思った。ディテールを積み重ねれば真実にたどり着く。意思決定はそうして行われるべきだと猪瀬さんは言う。真実にたどり着いたにもかかわらず、それをもとに意思決定を行うことができなかった故に、日米開戦を避けることができなかった。ただ、真実をわかっていても、その通りに決断できないのが人間だとも思った。
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昭和16年に、既に敗戦を予想していたとは。歴史の中で自分を位置づける習慣がなくなると、自分がどういう人間か曖昧になってしまう、という言葉になるほどと思った。
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無謀な戦争に突入したプロセスが
良く分かった -
総力戦研究所が辿り着く結論と実際の歴史を重ねて合わせて描かれている。なぜ負けると分かっていた戦争に進んで行ったかがよく書かれている。
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プロローグ
第1章 三月の旅
第2章 イカロスたちの夏
第3章 暮色の空
エピローグ
あとがき
巻末特別対談 日米開戦に見る日本人の「決める力」(VS勝間和代) -
全然面白くないので、途中で読むのをやめてしまった。
石破茂が勧めていたし、どういう過程で日本必敗の結論に達したのか、なぜ開戦に至ったのか、そういったところに興味を持った。しかし、模擬内閣の討論に関する記述は少ないし、小難しい話が多すぎる。文語体ばかり出てくるし、話はあっちこっち行ったり来たりするし、登場人物は各々の人物像が見えづらいしで、とにかくつまらない。
文語体の引用については、あって然るべきだと思うが、ただ引用しているだけで、著者なりの解説とか要約がないから分かりにくい。データとか当時の文書とか、それ自体重要だとは思うが、羅列されても意味が分からない。当然日本語としては理解できるが、いかんせん馴染みがなく読みづらいので、軽く説明を入れてほしかった。
また、各人物については、総力戦研究所に至るまでの経緯が描かれる人物が数人いるが、彼らが討論で中心的役割を担うかというとそうでもなく、なんのためにそれらの人物だけ取り上げたのか疑問。軸となる人物が特におらず、全体的にぼんやりしている。
誰か特定の人物の視点から見るとか、群像にしても主題となる模擬内閣以外の記述は極力削ぐとか、そういったことでより面白く、分かりやすくなるのではないかと思う。