未来をはじめる: 「人と一緒にいること」の政治学

著者 :
  • 東京大学出版会
4.06
  • (39)
  • (44)
  • (19)
  • (5)
  • (1)
本棚登録 : 876
感想 : 59
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784130331081

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 3.5
    身近な人といることが政治。政治について考えるきっかきに良い本です。

  • 政治学を、人とどう関わるかという最小単位で身近な事例から説明しているのが読みやすかった。
    高校の倫理の教科書には載っていない、ルソーの人柄などを絡めて各思想について書かれているので、なぜその思想を持つに至ったかが分かりやすい。

  • ルソーの政治哲学が気になるようになった

  • 今話題の「学術会議」拒否問題の渦中?の宇野先生の著書。豊島岡女子中高校で先生が実際に行ったワークショップ?が元になっている。大学教員が中高生が目的意識を持ちやすいようにわかりやすく問題設定を行い、考えてもらうようにできているので読みやすい。ルソー・カント・ヘーゲルからトクヴィル・ウイリアムスジェームスまで、広く哲学者の問題意識に即した思想を紹介しつつ、今の日本の政治の問題点を炙り出している。やはり一番印象に残ったのは、「多数決は一つの決め方にすぎない。昔からあって当たり前と思っている制度も、たかだか200年前ぐらい前にできた
    ものであり、問題点を考えながらアップデートしていく必要がある」という事。ボルダ・ルール、二回投票制、分人民主主義などは、多数決よりも良い面が確実にあると思わせてくれる。
     この本でも問題になっているが、私は小選挙区制になってから日本人の政治離れは進んだと思う。日本に二大政党制が向かないことは明らかで、断絶と多様性の排除が進んでいるように感じる。熟慮民主主義は理想に過ぎないだろうが、政治の制度設計から考え直していかないと、小手先の「選挙に行きましょう」という呼びかけも虚しさしか残らないと思う。実際の政治の場以外に、市民がそのようなことを話し合える場所をどのように作っていくのか、そういうプラットフォーム造りこそが大事だと思うし、宇野さん自身が述べているように、「弱いつながり」としてのプラットフォームが大事に気がする。それは、東浩紀がゲンロン、やシラス、でやろうとしていることにも繋がる気がする。

  • 東大教授の著者が豊島岡女子学園の生徒たちに対して行った全5回の講義をもとに人と一緒にいることと政治について様々な観点から向き合い方についてまとめた一冊。

    選挙や男女平等、働きかた、未来予測など様々なテーマについて政治について講義されていて非常に考えさせられる内容でした。
    また講義を聞いている学生たちの意識の高さにも舌を巻きました。
    2016年の大統領選挙のことや今の民主主義の弱点などを知れたり、働きかたや社会保障と税負担の問題など自分たちの生活の中にも密接に関係のある政治について書かれており関心が深まる内容となっていました。
    また、ロールズやルソー、カント、ヘーゲルといった考え方から政治を考えるアプローチも面白いと感じました。
    そして選挙の投票だけではなく熟議民主主義やプラグマティズムといった意志の主張方法もあることも知ることができました。

    そんな本書の中でもジョブ型とメンバーシップ型の働きかたの違いや弱いつながりが大切なことは印象に残りました。また、文人民主主義や世代別選挙区といったものも今の政治に一石を投じる考えで興味深いものだと感じました。

    いろいろな人が一緒に暮らしていく為に必要なものが政治であるということが理解でき、自分たちの生活の身近なところで政治との結びつきを意識しながら生活していくことで未来をいい方向に向けていくことができるのではないかと感じた一冊でした。

  • 高校生への5回の政治学の講義をもとにしている。

  • 非常に考えさせられる本だ。民主主義が最近の制度であり、欠陥もある。それを乗り越える必要があるという若者へのメッセージだ。ただ、トクヴィルで、平等意識が不公平感を生むというのは本当だと思う。また、行政は社会主義を目指すと思う。

  • 政治哲学の今っぽい(いい意味)入門書。「政治のことなんて誰も教えてくれなかった」と言っている人に届け!

  •  ここ最近読んだ政治の本でいちばんの当たりでした。お笑い芸人のたかまつななちゃんの「政治の絵本」は政治の仕組みに特化した良本でしたが、こちらの本は、もっと根本的な、感覚的な疑問や問いから「民主主義とは何だろうね?」「政治って何だろうか?」と女子中高生の実感覚を大切にしながら理解を進めていっています。
     ここの大きなテーマでもあり、根源的な出発点でもある「人と一緒にいること」から、それぞれの分野で社会を良くしていくという志や希望、方法、考え方、視点の基礎を教えてくれます。
     この本の中では中高生が出てきます。やはり話のレベルは高校生の方が高いです。発達段階や知識経験の量からくる違いの差が大きいですが、裏を返せば早い段階で高い教育を受ければ、発達とともにさらに高度な力を育てることができます。きっとこの時、中学生だった子は同じ高校生になった時、当時の高校生よりも数段高い視座から物事を捉えているはずです。
     教育という大きなベース(基礎)は、多くの分野の出発点のような気がしています。それを持って、それぞれの得意な分野、好きな分野でそれを伸ばしていき、それぞれ分野で「もっとよい社会を創り出そう」という目的があれば、勝手に世の中は良くなっていく。ということがたぶんこの本の言いたいことだと思います。 
     この講義を受けた子どもたちが、いつか各分野のトップになると想像した時、出版分野のトップ・政治分野のトップ・金融分野のトップまで・環境分野のトップなどから大きなうねりを生み出すはずです。そういった意味で「教育は百年の計」といわれているゆえんだと感じます。どんな教育を実現していくかは永遠のテーマですが、教育に携わる人(親も含まれます)はそれをよく自覚して、常に心の奥底に置いておく必要がありますね。

  • 身近な切り口から政治を考える本。某女子中高での講義録ですが、平易に見えて難しい内容についていく学生がすごいと感心。内容も時事問題を取り上げつつ、古典も掘り下げるもので読み応えあり。「一緒に社会を変えていこう」とのメッセージが清々しい。

全59件中 31 - 40件を表示

著者プロフィール

東京大学社会科学研究所教授

「2023年 『法と哲学 第9号』 で使われていた紹介文から引用しています。」

宇野重規の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×