印象派で「近代」を読む 光のモネから、ゴッホの闇へ (NHK出版新書)

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  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140883501

感想・レビュー・書評

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  • 誰でも知ってる絵、よりも少しだけマイナーなところまで採り上げての解説は私のような半可通には有難い。
    カラー図版をふんだんに使い、読みやすい解説。
    著者の出世作がキワモノっぽいからといって食わず嫌いにすることは無い。

  • 多数の名画を紹介しながら、
    印象派の時代の移り変わりを読み解く。
    現代とは全く違う価値観や、そのとき起こった大きな変化がわかる。

  • 絵(美術)は解説されるものではなく感じるもの。…そんな風に言われそう思ってきたけれど 気にいった絵や世界的に評価されている絵の事はもっと知りたい。           
    文化の違う外国での作品の背景を知りたい。
    そんな欲求に答えてくれるのが中野京子さん。

    本書は印象派を取り上げ解説。
    とてもおもしろい。
    あとがきまでよかった。あと173Pの世界で活躍する日本人アーティストをもっと国全体で支援すべきの一文にはまったく同感。

  • さすが 中野京子さんの本

    多角的に絵を読ませてくれる

    今回は、社会や当時の環境について が焦点かな

    マネの『オランピア』や『草上の昼食』が、それぞれ
    ティツィアーノ『ウルビノのヴィーナス』『田園の奏楽』の
    女神や神話上の人物を 生身の人間にした絵
    というのには驚いた

    そうだったんだ!!

    しかし、一番最初に 『草上の昼食』を見た時の衝撃は
    忘れられない。

    びっちりと礼装した男性と 森の木漏れ陽の下
    ピクニックしているのは 全裸の女性!
    (うわ、何なんだ、コレ?! ・・・だった)

    中野さんは これは現在を見越した未来図だったかも
    なんて 書いてる
    ヌーディストビーチのピクニックね。

    そう見ると、なんか笑える

  • [図書館]
    読了:2011/12/16

    なぜ、「だ・である体」と「です・ます体」がこんなに混在しているの??
    すごく気になっていらいらする…。
    あと、ハプスブルクやブルボンはメインでない小さい画像もすべてカラーだったのに、こちらは白黒。値段は大して変わらないのに…。

    ヨーロッパ近代史の読み物として面白く読めた。ただハプスブルクやブルボンと比べると、印象派の絵自体にはあまり惹かれないので買いたいとは思わなかった。

    印象派、中学生のころまでは好きだった。特に、ルノワールの「イレーヌ・カーン・ダンベール嬢」。
    でも、「感じる」ことはできても「わかる」ことができずにだんだんと離れていった。一年ほど前、オルセー美術館展を見に行って(ポスト印象派と銘打ってあるが印象派の絵もちょっとあった)、はっきりと「自分は印象派が好みではない」ということが分かった。
    何となくいいな、と思っても、その「いい」という感覚は、輪郭が印象派の絵のごとくぼやけたままで、それ以上深まらないのだ。

    今は、自分が好きなのはベラスケスだとはっきり分かるが、印象派が日本人に好まれるのはやはり分かりやすさのためなのか。知識はいらず、アトリビュートやアイコンの解読の必要もなく、「明るいね」「きれいだね」と感じていればそれでいい。でも、主張がなにもないのですぐ飽きる。それが今の自分にとっての印象派、の理解。

    ただ、モネの『散歩、日傘をさす女性』は初めて見たけど良いな。
    中野さんの描写通り、「陽光のぬくもり、そよぐ風、草の匂いまで漂ってくる画面」

    保存しておける絵の具の開発、Who was Claude Monet? にも載ってた。

    ワシントンナショナルギャラリーにやたら印象派の絵がある理由。
    文化的に出遅れていたアメリカが「フランスものだからネームバリュー的におk」って理由で買い占めた。
    しかし、アカデミーの権威主義によって拒否された印象派たちもまた、成金の新大陸を軽んじた。
    アメリカからこれほど恩恵を受けながら、モネなどはあまりアメリカに自作を購入されたくない、とまで公言している。


    最後のページの、「にもかかわらず美しい」。この言葉がすべてと思う。

    主題も、主張も、問題意識も、解釈の余地もない。
    にもかかわらず美しい。
    「それこそが芸術の毒であり魅力。またそれでこそ、絵画は鑑賞者のものとなる」

  • [追記]
    こないだ頂いたポストカードがドガだった。
    今までだったら、単なる「ドガのバレエの絵」だったが、
    この本をよんだおかげで、この絵の背景や登場人物が何を表現しているかが、わかって絵の見方がかわった。

    知識というのが、見方をかえる。ということがよくわかった。
    ---------------------------以上 追記------------------------------------

    「怖い絵」シリーズの印象派の解説版。
    今回は印象派と呼ばれるドガやモネ、マネ、ゴッホ等を中心に、
    印象派とは何かがかかれている。

    フランス革命がおわり、ナポレオン3世の時代に今までの
    宗教画や人物画ではなく、感じたままに、
    思った通りに書くという絵画の革命がおこった。

    なるほど、印象派の絵画は内容がわからなくても
    なんとなく良いとか、直感的、感情的にみることができる。
    絵画が貴族たちの教養のひけらかしから
    一般市民が見ることになってきたという時代背景もあるようだ。

    歴史を重んじるヨーロッパよりも、新しい歴史を作りたいアメリカによって買われ、結構な数の絵画がアメリカの美術館にあるのはそのためらしい。

    最後のし目の言葉がぐっときた。「にも関わらず美しい」作り手がどんな人間だろうが、芸術は美しいものはうつくしい。それこそが芸術の毒とのことだった。

    美術館にますます行きたくなった。こういう本を読むと楽しみが深くなる。

  • 10/19
    やはり京子は面白いな

  •  わたし、疑問だったの。何でこんなにも日本で印象派が受け入れられるのか。

    いや、嫌いじゃないんだ。ドガとかロートレックとか割に好きな人結構いるし、モネの絵はやはりこう、ボーっと眺めて時間を過ごすとものすごく幸せな気持ちになれる。あのさざ波のような移ろいゆく時の変化をおさめた絵は傑作以外の何物でもないと思う。


    それでも変よ。だって、世の中にはもっと分かりやすい傑作がいっぱいあると思うの。宗教の背景が分からなくたって、神様の名前を知らなくたって、美しいものは美しいんだと言えるような絵はいっぱいある。でも日本ではとかく印象派の人気が根強い。


    ジャポニスムによる親近感?
    ぼやっとした曖昧さが似ているとか?

    どーもイマイチ納得できない。

    でもこの本読んで、もしかしたらって思う仮説ができたの。


    印象派って、当時新興国だったアメリカが、自身の文化的歴史の脆弱さに劣等感を抱き、「新しい価値観」として、古き伝統を持つフランス国内で批判を浴びていた印象派の絵を買い上げることで自分たちの脆弱さを補おうとした的なことが書いてあったの。


    アメリカと言う国を介して、フランス国内の新しい絵画に価値を付けた。だからこそ、画風が違うように見えても(モネ、ゴッホ、スーラは根源は近しくても同じような芸風の絵には見えないもの)「印象派」という一つのくくりができた。


     脱線するけど、それでも脆弱さって変わらないわよね。抜け道探して、これならばって思ったのが印象派なのかもしれないけど、絵画の歴史を思えばぽっと出のよく分からない新人(しかも他国のね)をベースにその気分を受け継いで歴史にしていこうって、なんか自分の脆弱さをさらに証明している感じがするわ。その点において日本ってもっと自分たちの持ってるもん自慢していいと思う。本当に。

     話を元に戻しましょう。まぁ脱線が関係なくもないんだけど。印象派よ。

     なんでここまで日本で人気があるか。

     この本読んで思ったのは、アメリカが価値を認めたものだからよ。価値を認めたと言うと語弊があるけど、「これらを価値のあるものとする。」としたから、日本はそれに従ったんじゃないかしら。

     おかしな話だけど。印象派は、ジャポニスムの影響を受けている。でも本にもあったけど、極東の文化に余りになじみがなくて浸透はしなかった。で、そのような新しいものに目を向けている気来の人たちをフランスは認めなくて(当時はね)アメリカにたんまり現在で言う傑作を持ってかれてしまう。そのアメリカの「価値」を、日本は西洋化を進めるにあたって取り入れたんじゃないかしら。

     だって、ジャポニスムを契機に、欧州との交流がより深まっていたら、絶対にもっとアカデミックなものが日本に導入されて然るべきじゃない?でもそうじゃない。西洋化に当たってそんな風にアメリカからフランスの美術が紹介されて行ったかどうかはまだよく分からないけれど、「アメリカがいいっていうものだから。」という理由は日本人にはとても納得のいく言い訳な気がする。

     バカみたい。なんか自分のコンプレックスに気付いちゃったみたい。印象派は好きよ。でもアメリカが挟まってそう思うのかもしれないなんて、ほんとバカみたい。だって、アメリカはフランスみたいな長い美術の歴史のある国に劣等感を持っていたからこそ、新しいものに目を向けて行ったのよ?日本にもあるのに。すごくすてきなものが、たくさんたくさんあるのに。


     わたしのこの考え方こそ、バカみたいなものなのかもしれない。

     でも思う。
     わたしはもっと、自分を知りたい。日本を知りたい。持てるものを差し出して、今の脆弱さを補えるような強さを持ちたい。

     日本はアメリカに従うしか生き方を見出せないような思考を植えつけられてるのかもしれない。そこから逃れるのは並大抵のことじゃない。
     でももっと、日本にしかないものや、日本人にしかできないようなこと、客観的に知って、トレードできるような図太さ、持っていいと思う。

     と言うようなことを思った。

  • 学術的に近代と美術の関係を追うなら、高階秀爾の新書「近代絵画史」(上下)を強くオススメする。格が違う。

    本書は図版がきちんとしていて、好感を持てる。そして、本書は、印象派を覚めた目で見る本である。背景を知ると、えーってなるような、テンションが下がるツッコミが満載。「にもかかわらず美しい」という一言に著者の芸術に対する立ち位置がはっきりしています。

    しかし、当時の歴史に遡ることも、また、今の時代性に基づいて鑑賞することも、双方私は大事だと思います。芸術は時代を超えたものではない。常に時代と向き合い続けられる作品のみが真に価値のある作品だと感じているからです。

  • 絵の向こうがわには、人がいて、生活や歴史がある。
    1枚の絵は隅々までメッセージに満ちている。
    そういうことを、ていねいに体系的に教えてくれた本。

    新書というと簡素なイメージがあるけれど、この本は絵が多くて文章も凝っていてすごくカラフルな印象です。

    絵を見るのは好き。でも感想は「きれいだな~」にとどまっている、という人におすすめです。
    1冊読むと、芸術が時代を超えて愛される理由に気づきます。

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著者プロフィール

早稲田大学、明治大学、洗足学園大学で非常勤講師。専攻は19世紀ドイツ文学、オペラ、バロック美術。日本ペンクラブ会員。著書に『情熱の女流「昆虫画家」——メーリアン』(講談社)、『恋に死す』(清流出版社)、『かくも罪深きオペラ』『紙幣は語る』(洋泉社)、『オペラで楽しむ名作文学』(さえら書房)など。訳書に『巨匠のデッサンシリーズ——ゴヤ』(岩崎美術社)、『訴えてやる!——ドイツ隣人間訴訟戦争』(未来社)など。

「2003年 『オペラの18世紀』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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