ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫 JA イ 7-7)

著者 :
  • 早川書房
4.19
  • (486)
  • (394)
  • (168)
  • (39)
  • (12)
本棚登録 : 5533
感想 : 383
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (398ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150311667

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 21世紀に起きた地球規模の核兵器使用による大災厄の反省から、社会は生存者の健康を極端に尊重するようになった。個別医療システムで超健康至上社会が実現した。誰もが病気にならず、平等で、平和で、争いのない社会。そこは人びとから意志、意識を奪い取る、強権的な優しさが支配する社会。

  • 「THE Books green」という本で、ある書店員さんが、
    「日本で一番この本を売りたい」と書いていたので、読んでみた。
    読み終わって、作者である伊藤計劃が既に亡くなっている
    ことが、悲しくなった。
    次の作品を読んでみたかった。

  • わたしには、この物語を、推し量ることができない。
    読後、最低でも一箇月はこの話で頭がいっぱいだった。
    優しさがやさしく首を締めてくる世界は、確かにディストピアだ。
    恐ろしいのは、そこから抜け出したかった彼女たちが選んだのも、またディストピアということ。
    どちらのディストピアか選べと迫られたら、最初のディストピアを選んでしまいそうだ…だって、結末の世界は、それ、「生きている」って言わないんじゃないの…?

  • 201705
    虐殺器官、屍者の帝国、ハーモニーの順に読んだ。
    WatchMeを入れてない人たちがその後どうなるのか。あーでも、表面上はわからないから何も変わらないのか。

  • 核戦争<大災禍>の後、健康が大きな価値を持つ時代。人々は健康監視システムWatchMeを身体に「インストール」し、不調があれば直ちに医療分子メディモル(つまり薬)が生成されて正常な状態を回復することができる。病気は基本的に撲滅され、寿命や不慮の事故以外で死ぬことが基本的に無くなったばかりか、痛みや不快さを感じることすらほとんど無い世界。
    そんな、身体が高度にシステム化され最適化された中で、やがて脳・心を操作しようとする考えが生まれる。脳の報酬系を操作し、最適な価値判断を行うように操作したらどうなるか―。それは、迷いの消失、全てが自明なものとしての判断、すなわち意識の消失に等値だった。
    ----------
    WatchMeやメディモルは医療の一つの理想形かもしれないが、とはいえ全くの夢物語というわけでもない。現在でも、ペースメーカーは患者の心拍に合わせて電気刺激を加えるし、糖尿病患者の血糖値を常にモニタリングして必要なインスリンを分泌する機械だって誕生している。そういう意味では、身体のシステム化・機械による代替は既に始まっていて、本書の世界とは単に程度の差でしかない、ということもできる。
    問題はシステムよりも人々の価値観、”空気”なんだろう。医療が進歩して寿命が延びるのは基本的にはうれしいことだが、だからといって「生きること」自体が生きる目的ではない、そのなかで何をするかという生の中身が大事なのだ。―とみんなが思っている、はずで。
    だけど、<大災禍>のようなことが起こったり、極限まで医療が進歩したりすると、その価値観も変わってしまうのかもしれない。生きること自体が目的となった世の中では、人間の精神・魂すら特別なものではないと考えられてしまうのは、ある意味自然なのかもしれない。

    人間の心・意識は「進化のために”場当たり的に”誕生したもの」なのか?「今はもう不要」なのか?
    (再読)

  • 大災禍(≓核戦争)を経験した後の世界。
    医療が発達した結果、病気というものの大半がなくなり、あらゆる有害な物から遠ざけられ、人々はお互いを慈しみ、支え合い、ハーモニー(調和)を奏でるのがオトナである、とされる世界になっていた。
    自分の体なのに自分の自由にならない、そういった世界を嫌悪するミァハは、トァンとキアンの2人を誘い、大人になる前に死を選ぼうとするが・・・。

    <以下、ネタバレです。>

    たぶん、『虐殺器官』と同じ世界のその後の話。
    所々で、タグで囲まれた記載のある独特な文章。
    最後の最後で、どういう事だったのかが分かり「!!」ですよ!
    争いや自殺がなくなり、迷いも、選択も、決断もない完全に調和した世界。
    完璧ではあるけれど、そこに個々の人間(・・・とは呼べませんが)の存在する意味がない、薄ら寒い世界。
    こういう設定の話は、割と好みです。
    これもまた、映像で観たい作品。今年か来年あたり、TVでやってくれると嬉しいなぁ。

    返す返すも、早世された事が残念でなりません。
    伊藤さんの書かれる小説をもっと読んでみたかった・・・。

  • 感想がうまく述べられないけど、とても面白かった。読み終わってからも、作品の中で描かれていた世界について考えている。怖い。

  • わたしの心が、幸福を拒絶した。

    前作「虐殺器官」の続編、というかその後の世界が舞台となっている。
    人が病気で死ぬことがない、徹底的に健康管理された社会。この話を作者が入院中に書いていたことが衝撃的。そして何より、作中に溢れていたコマンドの意味が分かった時は鳥肌がたった。表現方法が好みすぎる。
    百合っぽいって言われてるけど、男性から見たらそう見えるだけかな。女性の私からすれば、この程度、思春期の女の子なら大なり小なり覚えのある感覚な気がする。なので、あまり構えることなく多くの人に楽しんでもらいたい。

  • 急転直下、めくるめくスリルの果てに待っていたのは物語の、そして人間の根本を揺るがす結末だった。なんというか、タブーを破ってしまった感覚。よりによって小説が、そこに踏み込んでしまっていいのか……!!?(褒めてます)

  • 若くして亡くなった伊藤計劃氏の2作目にして遺作。
    世界観がとても良く練れていて、虐殺器官よりはこっちの作品の方が好きかな。
     完全に調和の取れた社会では、個の意識は必要なくなるのか?いやほんと、無くても別に問題ないんじゃない?と納得してしまいそうになるほどリアリティあります

全383件中 101 - 110件を表示

著者プロフィール

1974年東京都生れ。武蔵野美術大学卒。2007年、『虐殺器官』でデビュー。『ハーモニー』発表直後の09年、34歳の若さで死去。没後、同作で日本SF大賞、フィリップ・K・ディック記念賞特別賞を受賞。

「2014年 『屍者の帝国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

伊藤計劃の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×