ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
制作 : redjuice 
  • 早川書房
4.15
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  • (16)
  • (3)
本棚登録 : 1512
レビュー : 148
  • Amazon.co.jp ・本 (398ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150311667

作品紹介・あらすじ

優しさと倫理が支配するユートピアで、3人の少女は死を選択した。13年後、死ねなかった少女トァンが、人類の最終局面で目撃したものとは? オールタイム・ベストSF第1位

感想・レビュー・書評

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  • 虐殺器官以降の世界を描いたようなユートピア(解説では倒立したデストピアと記述される)小説。人工的に生活が管理され、病気が無くなった世界を描くが、本質は人の意識を管理するという部分。健康を管理するWatchmeという生体機械により人体の状態が常に管理されているが、脳は不可侵領域として維持されている(とされている)が、双曲線で定義される脳の報酬系の定義を変更することで、人間の意識を操作する。環境要因により変化する複数の無意識のせめぎ合いで、人の意識を形成するという考え方は、近年の人工知能研究で注目されるニューラルネットワーク(ディープラーニング)で同等の実装がなされる。また、作中で、意識を持たない民族が出てくる。理不尽な双曲線ではなく、価値を最大化するよう常に合理的な判断のみを下す集団。「哲学的ゾンビ」とも言われる。
    人工知能の行き着く先は「双曲線により価値を最大化できないが意識を持っていると考えられる」ものか、それとも「価値を最大化するが、意識を持っていないと考えられる」ものなのか。
    実装かもしれないが、あくまで程度問題で、結局は同じもののような気がする。

  • 非常に面白かった。ユートピアが実現した世界で人々が破滅の道を歩むとしたらどうなるのか、人間の意識と意志の仕組みと必要性、進化との繋がりなど、決してファンタジーに頼ることなく科学的・哲学的に書かれていたので勉強になった。

  • 伊藤計劃さんの本で2冊目に読んだもの。「虐殺器官」の後に読んだため、彼の世界観を存分に味わえた一冊。
    「確かに未来はこうなっているかもしれない」そう思わせる世界の仕組みにまず驚かされた。近未来的な世界だと感じた。
    未来にあるかもしれない影の世界を想像できる内容で、主人公が芯を持っている強い女性の活躍が印象的。
    最後が少しあっけなく感じたが、納得もできる終わりだった。

  • 21世紀に起きた地球規模の核兵器使用による大災厄の反省から、社会は生存者の健康を極端に尊重するようになった。個別医療システムで超健康至上社会が実現した。誰もが病気にならず、平等で、平和で、争いのない社会。そこは人びとから意志、意識を奪い取る、強権的な優しさが支配する社会。

  • 「THE Books green」という本で、ある書店員さんが、
    「日本で一番この本を売りたい」と書いていたので、読んでみた。
    読み終わって、作者である伊藤計劃が既に亡くなっている
    ことが、悲しくなった。
    次の作品を読んでみたかった。

  • わたしには、この物語を、推し量ることができない。
    読後、最低でも一箇月はこの話で頭がいっぱいだった。
    優しさがやさしく首を締めてくる世界は、確かにディストピアだ。
    恐ろしいのは、そこから抜け出したかった彼女たちが選んだのも、またディストピアということ。
    どちらのディストピアか選べと迫られたら、最初のディストピアを選んでしまいそうだ…だって、結末の世界は、それ、「生きている」って言わないんじゃないの…?

  • 誰かにとってのユートピアは、きっと誰かにとってのディストピアだ。逆も然り。

    虐殺器官よりも読みやすいけど、納得いったのはあちらの方だったかなぁ。
    続編と考えてもいいような虐殺器官よりもさらに未来の話。
    たまたまこれ以前に読んでいた小説でも過剰な健康至上主義への警鐘、WHOが出てきたので偶然とはいえ驚いた。

    ↓ネタバレ

    最初の方は思春期の少女特有の、美しく脆い世界の雰囲気がいい。なぜかケルト風の名前(男性名だよね)も、ミァハの理屈の厨二っぽさも好みだった。
    キアンの死は衝撃的だったし、明かされていくミァハの過去もドラマチックなんだけど、大人になってからミァハは急速に魅力を失って見える。
    というより成長しない少女のまま、自己中心的に行動しただけに思えて怒りさえ感じる。
    彼女は帰ろうとしただけだろう。本来の自分の故郷へ。そのために他人の命を失わせ、断りもなく意識を奪った。
    トァンが復讐をするのは唐突にも見えるが、理解もできる。彼女の憧れだったミァハはもういないし、目的のためにミァハがしたことはトァンにも身勝手に思えたんじゃないかな?

    わからないのはDummyMeはWatchMeの報告機能を書き換えるしか出来てなかったのか? 最後にトァンの意識も消えたならそういうことだよね。でもWatchMeは全人類に搭載されていたわけじゃない。少数の意識のある人々はどうなったんだろう?
    そして意識がもともとなかったミァハに意識が芽生えたなら、こうして意識のない幸福を作っても、また生まれてくるんじゃないかな?
    それが逆に希望に思えた。

  • 201705
    虐殺器官、屍者の帝国、ハーモニーの順に読んだ。
    WatchMeを入れてない人たちがその後どうなるのか。あーでも、表面上はわからないから何も変わらないのか。

  • 核戦争<大災禍>の後、健康が大きな価値を持つ時代。人々は健康監視システムWatchMeを身体に「インストール」し、不調があれば直ちに医療分子メディモル(つまり薬)が生成されて正常な状態を回復することができる。病気は基本的に撲滅され、寿命や不慮の事故以外で死ぬことが基本的に無くなったばかりか、痛みや不快さを感じることすらほとんど無い世界。
    そんな、身体が高度にシステム化され最適化された中で、やがて脳・心を操作しようとする考えが生まれる。脳の報酬系を操作し、最適な価値判断を行うように操作したらどうなるか―。それは、迷いの消失、全てが自明なものとしての判断、すなわち意識の消失に等値だった。
    ----------
    WatchMeやメディモルは医療の一つの理想形かもしれないが、とはいえ全くの夢物語というわけでもない。現在でも、ペースメーカーは患者の心拍に合わせて電気刺激を加えるし、糖尿病患者の血糖値を常にモニタリングして必要なインスリンを分泌する機械だって誕生している。そういう意味では、身体のシステム化・機械による代替は既に始まっていて、本書の世界とは単に程度の差でしかない、ということもできる。
    問題はシステムよりも人々の価値観、”空気”なんだろう。医療が進歩して寿命が延びるのは基本的にはうれしいことだが、だからといって「生きること」自体が生きる目的ではない、そのなかで何をするかという生の中身が大事なのだ。―とみんなが思っている、はずで。
    だけど、<大災禍>のようなことが起こったり、極限まで医療が進歩したりすると、その価値観も変わってしまうのかもしれない。生きること自体が目的となった世の中では、人間の精神・魂すら特別なものではないと考えられてしまうのは、ある意味自然なのかもしれない。

    人間の心・意識は「進化のために”場当たり的に”誕生したもの」なのか?「今はもう不要」なのか?
    (再読)

  • ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

    著者:伊藤計劃



    著書「虐殺器官」に引き続き本書を読んで見た。
    伊藤氏は既に亡くなっているのが残念でならないが、本書も「虐殺器官」同様に非常にメッセージ性があり「社会」をテーマにしている作品だと感じた。

    非常の論理性がありフィクションでありながら何十年か後にはこのように道を人類が辿るのではないかと思わせる、感じさせる。
    そういう意味では、今から人類が進んでしまうかもしれない一つの世界として今からこのような問題を考えていた方が良いのではないか。

    この答えは恐らく出ない。
    倫理的にはどうなのか?
    それでも人間は試して見たくなるのだと思う。


    本書は<大災禍(ザ・メイルストロム)>という全世界で起きた戦争と未知のウイルスが蔓延した事によって現代の「政府」が崩壊し新たな統治機構である「生府」という超高度な医療社会がモチーフとなっている。
    その社会は人間は公共のリソース(資源)として数えられる。
    健康で病気をしない事こそが幸福であるという思想が行き渡った世界。

    医療の進歩は目覚ましく、大人になると「WatchMe」を体に入れ、人体を常に監視し分子レベルでの異常を発見し即座に排除する。
    この世界からの殆どから病気は消し去られている。
    この世界にはデブも痩せもいない。

    皆んなが健康である事に強迫観念に縛られている。
    いや、強迫観念ではなく、そうする事が当然で疑問さえ持っていない。
    洗脳と呼んでも差し支えないかもしれない。

    そんな世界にまだ「WatchMe」を体に入れる義務の前の女の子3名が自分自身を、自分の意思で生きるために自殺しようとする所から物語が始まる。

    哲学的な側面もあり暗い世界も描かれており好き嫌いははっきりするかもしれない。
    でも読むと非常に考えさせられる。
    http://blog.livedoor.jp/book_dokushonikki/

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著者プロフィール

1974年東京都生れ。武蔵野美術大学卒。2007年、『虐殺器官』でデビュー。『ハーモニー』発表直後の09年、34歳の若さで死去。没後、同作で日本SF大賞、フィリップ・K・ディック記念賞特別賞を受賞。

「2014年 『屍者の帝国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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