ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
  • 早川書房
4.14
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本棚登録 : 3126
感想 : 263
  • Amazon.co.jp ・本 (398ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150311667

作品紹介・あらすじ

優しさと倫理が支配するユートピアで、3人の少女は死を選択した。13年後、死ねなかった少女トァンが、人類の最終局面で目撃したものとは? オールタイム・ベストSF第1位

感想・レビュー・書評

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  • 虐殺器官と対になっているハーモニー。
    でも実は虐殺器官のラストとハーモニーの世界は繋がっている。(これに気づいた時震えた)のでまずは虐殺器官から読むのがオススメ。

    アメリカを発端とする地球規模の暴動、戦争。
    殺して殺して殺しまくった悪しき経験から、人類は様々な医療リソースを開発し『健康であること』を第一に生きるようになった。

    肉体を管理するシステムを入れ、病気にならなくなった体。
    酒・タバコなどの有害物質は排除。
    食事などの生活習慣に関わることは全てシステムによって設計され、肥満・痩せ型がいない、全ての人が均一で健康な社会リソースとなった世界。
    まずこの世界観が超おもろい。
    のっけからすでに他の追随を許さないぼろ勝ち状態!

    そんな世界が息苦しく、命を捨てたがる3人の少女達。その1人トァンの一人称で物語は進む。
    虐殺器官はガチガチの男性一人称。女性一人称は柔らかい感じがして、こちらの方が読みやすい。てか書き分けが素晴らしい。
    『意識』についての脳の働きも面白かった。
    これを書く為にのにどれ程勉強したのかと思う。

    虐殺器官の世界が極端なマイナスだとしたら、ハーモニーは極端なプラス。
    そして最後は針が、機械が壊れ…
    人間は本当に極端すぎる。100-0やん!遊びあれ!
    私は例え病気が無くなったとしても、見せかけの優しさで窒息しそうになるこんな世界は嫌だし、ラストも本当に気持ち悪かった…
    読了した今『ハーモニー(調和)』に込められる様々な意味に気色わるっ!てなってる…
    未来の世界がこうならない事を切に祈る!

  • ◯毎日毎日忙しすぎて、むしろ気楽に読めると思い手に取ってみる。
    ◯世の中がより健康を追求したらどういう世界が起こるのかを突き詰めた世界観が面白い。まさにユートピアがディストピアである。
    ◯国会での審議や厚生行政を見てみると、まさにこの世界を求めているのかと思うと、ブラックユーモアを感じる。マイナンバーや電子マネーの普及が、この世界をより身近にも感じさせる。この辺りがSFの醍醐味なのだろうか。
    ◯しかしこの世界が実現するほどに、人間は潔癖ではないし、もっと適当で愛すべき存在ではないかとも思った。

  • 早逝の作家伊藤計劃氏の最高傑作ともいわれる。一度読んだだけでは、小説の意味が分からなかった。映画をみて、さらに小説を読み返して、これが傑作だと気付かされるた。
    第40回星雲賞日本長編部門、第30回日本SF大賞受賞作。

  • ハーモニー = 調和。
     全体がほどよくつりあって、矛盾や衝突などがなく、まとまっていること。また、そのつりあい。

    辞書でも、「ほどよく」とか、曖昧…
    やはり、こんな世界は、目指しても無理があるんやな。
    『大災禍』の後、その過ちの反省として、自身の全て(体、心-意識か…)を捧げる見返りに、全てを管理し、良い世界を目指す。病気もなく快適なユートピアにしようと!
    まぁ、結局は、ユートピアとは、反対であるディストピアなんやけど。
    こんなセリフがある。
    「精神は、肉体を生き延びさせるための単なる機能であり手段にすぎないかも…」
    今まで、精神(心かな?)が絶対上位にあるって考えてたけど、こんな考えもあるんやと驚いた(@_@)
    それなら、ラストも分からなくはない。それぞれの考えで、ハッピーエンド、または、バッドエンドになるな。
    深いわ(ーー;)

  • 「健康」は目的ではなく、手段である。

    「生きる」ということは、「健康的」であつた方が充実する可能性が高いが、ただ「健康」であったとしても、どれほどの充実を味わうことができるのか。

    物語の舞台は「なによりも健康であること」が優先され、常に自分の身体の状態を外部からコントロールされる世界。
    最後に残った砦は「脳」。
    「意識」とは、進化の過程で環境対応のために生まれたもので、社会が「健康」であるためには、「不健康」なことを考える「意識」は不要であるとされ、人の意識を無くすことが議論される。
    行き過ぎた「ユートピア」が「デストピア」に変わるとき…、

    SFの中ではなく、一部は現実に起きていると、思いませんか?

  • 読むまで、この物語に対して誤解があった。誤解の根拠は主に表紙のデザインにあるのだが、てっきり「ラノベ風味のSF小説」という軽い気持ちで読み始めたのだ。作者の伊藤計劃という名前はさすがに知っていたし、気にもなっていたが、どうにも表紙のデザインから受ける「ラノベ」的印象が、自分をこの物語から長らく遠ざけていた。
    雰囲気としては、たしかにライトノベル的なものをまとってはいるかもしれない。しかし、内容はむしろ硬派だ。SF小説であり、その舞台も徹底的に個人レベルの健康を「生府」とよばれる国家レベル(?)の組織が管理する世界である。この前提だけで、物語はファンタジーの性格を帯びるし、この世界こそラノベの十八番ともいえる領域である。
    だが伊藤計劃の『ハーモニー』はそれでは終わらない。このことは、文庫版の巻末に収録された佐々木敦とのインタビューを読めばわかる。伊藤氏は、一見軽く見えるこの物語に、実に周到な企みを潜ませているのだ。話はロジカルに展開するし、物語の世界も計算しつくされている。多くの人物が登場するけれども、無駄なキャラクターはなく、かつそれらのキャラクターは物語の中で一人ひとり個性が際だっている。
    重いテーマを女子高生に語らせていることに、読み始めこそ軽い違和感を覚えたが、これもまた伊藤氏の深い計算によって生み出されたシチュエーションであった。重厚なテーマも、一見そんな会話をしそうにないガールズトークをメインに進んでいくから、内容もすっと入ってくるし、リーダビリティも高い。
    トマス・モアが『ユートピア』を著して以降、おそらく多くのユートピア小説(対するディストピア小説も含めて)が書かれてきたが、伊藤計劃の『ユートピア』もまたその系譜に肩を並べ、歴史にその名を遺す作品となるだろう。そして、ユートピアとは、ディストピアと常に二律背反の関係として存在することを、あらためて教えてくれる。

  • 伊藤計劃さん難解かと食わず嫌いしてた。冷たく美しい世界に圧倒されつつ引き込まれた。

  • 意識のなくなった状態の人間。高度な社会システムに組み込まれた人間。
    それが究極の平和社会。という逆の発想が、こういう考え方もあるのか!と驚きました。おもしろい

    意識や意志があるために、苦悩し自殺者が多く出ている状況ならば、いっそのこと意識や魂のない世界に連れていきたい という趣旨のミァハの言葉に、胸に詰まるものがありました。

    最後のラスト数行を読み終えたあと
    余韻にどっぷりと浸かっていたくなった。

  • 伊藤計画は虐殺器官や今作のハーモニーを通じて、人間が生得的に備え付けられてると考えられてきた感情あるいは意識と言ったものの自明性に疑問符を投げかけている気がする。
    本作で一番印象的だったのは主人公の感情や意識についての思索。
    「社会的動物である人間にとって、感情や意識という機能を必要とする環境がいつの時点でかとっくに過ぎ去っていたら。我々が糖尿病を治療するように感情や意識を治療して脳の機能から消し去ってしまうことに何の躊躇があろうか。」
    合理性を極めたところには感情や意識はノイズでしかない。合理化、効率化の極致として感情の放棄がある。でも、その先にある究極に理性的な存在としての人間が一切の感情を持たずに生活する社会はあまりにも恐ろしい。まさに真綿で首を絞められるかのような緩慢な死が人類全体を包んでいる世界。
    意識や自由意志と一般に呼ばれているものは脳の中で複数の価値判断がせめぎ合う中で都度都度、弾き出された暫定的な回答に過ぎない。死への欲望に価値の重みづけをしてあげれば人は自然と自死を選ぶことになる。それがミァハが世界にかけた仕掛け。
    1984の二分間憎悪とかすばらしい新世界のユートピアとか至る所にディストピア小説の古典とも言うべき作品群へのオマージュが隠されているところも読んでいて楽しい。

    誰かにとってのユートピアは誰かにとってのディストピア。虐殺器官とハーモニーを続け様に読んでそのことがよくわかった。

  • 「優しさと倫理が支配するユートピアで、3人の少女は死を選択した。」っていう紹介文に引き込まれて、年末年始に読んだ。

    小説の設定や価値観はわりと現代社会が歩んでいる道に通ずると思ったし、人間の意識や本質は何か、それを進化論的に捉えるとどうか、はたまた科学という営みについて、示唆に富んでいて考えさせられることが多かった。ひとえに作者の想像力と表現力のおかげ。感嘆。SFって面白いなあ。。

    物語を読み終えて、人間の面白さとか価値はその不合理な部分にあるのかもしれないなと思った。人々の個性や考え方の違いは対立を生む元凶でもあるけど、人間を人間たらしめるものでもあるとも。

    最近実用書に傾いているけど、ありふれたビジネス書を読むよりも多くの学びと思考させられる一節があった。自分とは異なる価値観に触れて、自分自身や社会に対する考え方を養うという点で、改めて小説とか文学が果たす役割を再認識した。優れた文学作品は人生を豊かにしてくれるなあ。紹介してくれた子に感謝。

    もっと多くの文学に触れたいと思った年始でした。程々とかバランスを保つのって難しいですよね。

    • ばななっこさん
      とっても読みたくなりました!!
      とっても読みたくなりました!!
      2021/01/28
    • てぃぬすさん
      おお、おすすめだからぜひ!!
      おお、おすすめだからぜひ!!
      2021/01/29
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著者プロフィール

1974年東京都生れ。武蔵野美術大学卒。2007年、『虐殺器官』でデビュー。『ハーモニー』発表直後の09年、34歳の若さで死去。没後、同作で日本SF大賞、フィリップ・K・ディック記念賞特別賞を受賞。

「2014年 『屍者の帝国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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