検察側の罪人

著者 :
  • 文藝春秋
3.73
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  • Amazon.co.jp ・本 (508ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163824505

作品紹介・あらすじ

検事は何を信じ、何を間違えたのか。東京地検のベテラン検事・最上毅と同じ刑事部に、教官時代の教え子、沖野啓一郎が配属されてきた。ある日、大田区で老夫婦刺殺事件が起きる。捜査に立ち会った最上は、一人の容疑者の名前に気づいた。すでに時効となった殺人事件の重要参考人と当時目されていた人物だった。男が今回の事件の犯人であるならば、最上は今度こそ法の裁きを受けさせると決意するが、沖野が捜査に疑問を持ちはじめる――。正義とはこんなにいびつで、こんなに訳の分からないものなのか。雫井ミステリー、最高傑作、誕生!

感想・レビュー・書評

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  • ミステリの構成としては倒叙ものと言っていいと思う。前半が丸っと犯行までの序章となっており、後半はどうやって暴かれるのかという構成だ。

    元々司法試験に合格して検察官を選択する人は正義感の強い人だろうと思う。但しその「正義感」というのが厄介で、個々人の生い立ちや職業倫理などによって様々な上、正義を訴える人は我こそが正しいと思っているため妥協しない。他者の考えに対して譲らない。非常に面倒な感性だ。

    本作はミステリとして良く出来た作品ではあるが、私個人の「正義感」からすると納得出来るような結末ではないので☆4とした。
    正義感って難しい…。

  • 映画にもなった話題作を読了。
    自分なりの正義、信念を貫いて行動に移した2人。
    何が正しいのか。深く考えさせられる作品でした。
    時効、冤罪の中渦巻く今回の作品。
    一番救われなかったのは刺殺事件の残された遺族だと思いました。
    各々の結論も、自分で選んだ信念だったから彼らはまだ良かったのかなとも。

  • 映画化されることで、何かと話題なので読んでみた。
    前半は過去に強姦殺人事件を犯しながら、時効となり、立件出来なかった犯人が別件で容疑者となり、何とか有罪に持ち込み、過去の事件の復讐を企てようとするベテラン検事・最上の様子がメインで描かれる。個人的な感情で冤罪を企てる最上には全く同情出来ない。それは最上の元で容疑者に接していた沖野も同様で、彼は最上に反発するかのように検察庁を辞め、国選弁護士、雑誌の取材記者と共に事件の真相に迫っていく。
    立件されたら99.9%が有罪となる刑事事件に沖野の正義は勝てるのか?その様子を描く後半3分の1は読み応えがある。
    欲を言えば、最上の偽装工作よりも、沖野との対決部分にもう少しページを割いていると、もっと面白かったかもしれない。
    最上の動機にはあまり納得出来ないが、沖野の葛藤は同情出来る部分がたくさんあった。
    映画もそんな展開になると、さらに問題になりそうだけど…

  • 正義とは何か。
    検事沖野が背負ったものは秋霜烈日のバッジの重さと尊敬する先輩検事への疑念。
    バッジを外す決意をした沖野は事件の真相に迫る。

    冤罪はかくも容易く作られてしまうものなのか。
    これは読み応えあり。
    袴田事件の再審が決定した今リアルに迫る1冊。

    いろいろと考えるところは多い作品だったけれど
    最後は泣いた。
    正義とは? そして真実の意味とは?
    久しぶりに強く余韻が続く作品でした。

  • 読み応えのある、一級のリーガルサスペンスといってよいだろう。一時問題になった特捜部の恣意的捜査。冤罪問題。そして時効の課題が重く迫る。
    時効の壁に、まんまと逃げおおせる犯罪者。その時の被害者および関係者の心中如何やと。
    法律が改正され、時効の廃止された現在では、こういった問題は起こらないといえるだろうか。しかし、特捜部の体質、冤罪は、今後の課題としてまだ残っている。

  • 東京地検の検事・最上とその教え子の沖野。かつて最上が関わった女子中学生殺人事件で松倉は時効となる。しかし、最上は別事件の老夫婦刺殺事件で松倉を犯人に仕立て上げる暴挙にでる。そこで沖野が検察を辞め弁護士となり最上と決別し、対決する。最上は松倉を殺すという殺人、沖野は検察時代に得た情報を国選弁護人に漏洩するという罪を犯す。両者はお互い正義のために戦い、正義を勝ち取ることに執着する。両者の立場になると解釈は難しいが、人を殺してはOUT。沖野の絶叫には最上に対する敬愛を含んでいたと信じている。一読必至です。

  • 久しぶりの長編。また長編になるだけの読み応えがあった。
    検事についての仕事などが詳細に描かれてあって、勉強になった。逮捕、起訴、裁判などのシステマティックな流れも理解できた。ただ中盤までは話の展開が遅く忍耐強く読み進めなければならない。その後後半は怒涛の展開となり一気に読み進めた。作家の筆力に圧倒される。
    この本を読んだ後に、司法に携わろうと言う夢を抱く人はいないのではないか?現実の凄まじさを思い知った小説だ。

  • 読み始めたは良いものの、序盤なかなか進まなく、図書館から借りては返しを五回くらい続け、やっと読み終わった感想はというと。めちゃくちゃ面白かった。中盤から特に。終盤は大層泣けた。犯罪動機としてはちょっと安易じゃない?拙速に過ぎやしまいか?という気持ちも無きにしも非ずだけど、終盤の最上の周囲への優しさや、沖野の煩悶や、さらには現実ってきっとこうなんだろうなと思える、気持ちをどこに持っていったら良いか昇華しようがないやるせない終わり方。その辺が特に良かった。
    最上の家族がわりと納得しているようだが、そこに至るまでの過程をもっと書いてほしかった。

  • 検察も人間 憎しむ心は皆同じ
    その先を行動に起こすかどうかが分かれ道

  • 2016/11/24 500ページの単行本でしたが、後半からは一気に進みました。何か昔読んだような筋はあったけど傑作。★5

  • なかなか読み進められず、でも最後まで頑張って呼んだ甲斐があったと思う。

    検事のお話。
    新人検事が担当する事件の容疑者が、先輩最上検事の因縁の相手だった。
    最上がいた寮の一人娘が以前殺され、逃げ延びた犯人が今回別の容疑者になる。

    最上筆頭に今回の事件に関しては犯人じゃないそいつを、なんとか犯人に仕立てあげるお話。

    それを疑問に思い検察を辞めてまで容疑者を助ける新人。

    結果的に先輩検事の最上さんを逮捕することが出来たけど、その犯人は結局クソやろーだし正義って何?
    新人くんがしたかったことって何?
    最後はスッキリ!!じゃなく、彼のもやもやと自問自答で終わるところが良い。

    正義とは、正しいとは、人が人を裁くとは。
    感情を持った人間が、他の人の罪に関して制裁を決めるっていったいその制度なんなの。

  • 正義っていうのは
    痛みを伴わずに振りかざすことが可能な凶器。
    権力者の大義名分。
    だけど、爛れた欲望から生まれる悪意に立ち向かえる折れないつっかえ棒にもなるんだよな。

  • 冤罪は決して起こしてはいけないこと。最上の正義がズレてしまったのは悲しい。そこで沖野が立ち上がり、かつての尊敬する最上と対立関係になるが、最後で結局正義とは何なのか自問自答してしまう。

  • 最後の松倉見てたら冤罪で死刑になっても
    やむなしだったかも。
    検事でも裁判官でも弁護士でもだろうけど権力をもってて
    上に立つ人間ほど私情に踊らされてはいけない。
    映画版、松重さんの諏訪部役は見てみたいなあ。

  • ストーリー自体はさすが雫井さんで、
    読み始めはスローだったけど後半はぐいぐい読めた。

    ただ、どうにもこうにも理解できないところもあった。
    最上の家族の心情とか。
    松倉の今後をどう考えるべきか、とか。

    沖野はどんな人生を送るのかな。

  • 警察が犯人と目星を付けたら、そこからその容疑者を犯人にするべくストーリーが組み立てられ、それに沿って証拠集めをしてく。
    こういうふうにして冤罪は作られていくんだなーという思い。

    それに対して、まっすぐに正義を貫こうとする若手検事沖野。

    すっかり沖野に肩入れして読んでいたけど、沖野の正義は貫かれたはずだけど、どうなの。

    晴れて釈放された松倉の態度と白川弁護士の言葉。
    もう、これ、わたしの中ではどんでん返しとも言える衝撃だった。

    沖野がすべてを投げ打って貫いた正義は正しかったのか・・・なんてしみじみ考えさせられてしまった。
    もちろん、冤罪は絶対あってはいけないことだけど。

    この作品で泣くとは思わなかったけど、沖野と一緒に泣いてしまったわ。

    • xxnenexxさん
      奥野ってだれですか?読みました?
      奥野ってだれですか?読みました?
      2018/05/06
    • ひかるさん
      あ、沖野でしたね。失礼しました。訂正しておきます。
      あ、沖野でしたね。失礼しました。訂正しておきます。
      2018/05/06
  • 東京地検のベテラン検事・最上毅と同じ刑事部に、教官時代の教え子、沖野啓一郎が配属されてきた。ある日、大田区で老夫婦刺殺事件が起きる。捜査に立ち会った最上は、一人の容疑者の名前に気づいた。すでに時効となった殺人事件の重要参考人と当時目されていた人物だった。男が今回の事件の犯人であるならば、最上は今度こそ法の裁きを受けさせると決意するが、沖野が捜査に疑問を持ちはじめる―。 (「BOOK」データベースより)

    冤罪はこうして作り上げられるのか・・という本。実際こんなことまで起こるのか本当のところはわからないけど、時々ニュースで見る冤罪、こういうこともあるのかも。怖いなぁ。前科とか、日ごろの生活とか、そういうことで狙われるんですね。でもこの物語の中では、時効になったひどい事件の犯人なので、いいぞ、やっちゃえとも思う自分がいました。

  • 新刊として発売された直後に図書館で予約。待つこと半年。気長に待った甲斐があったと思える作品。
    正義とは何か?なんて考えさせられると言えばそうだが、タイトルからして内容が類推できる。とはいえ、ストーリー展開としては非常に面白く、現実問題として「こんな検事おるか?」「そんな奴おらんやろ!」って突っ込みを入れながらも後半部分はグイグイと引き込まれた。
    検察も組織だから縦割りになっているのも分かるが、なんかしっくりいかないものが残った。さらに。時効が成立した殺人事件の犯人。自分勝手な行動が発端となるが、最後の最後まで自分勝手な人物として描かれている部分をみるとちょっと後味悪い作品でもあるが、500ページ以上かつ図書館に返却する時間も気にしながらも珍しく集中して一気に読めた。

  • 2014/3/17読了
    最上と学生寮で可愛がっていた少女との間にはもう少し何か深い関係があったのではないかと最後まで考えていたが、特段何かあったわけでもなく、松倉を嵌めるために殺人をする動機がイマイチ薄いなぁと感じた。

  • とても重く辛いが、読み終わってみれば心に深くずっしりと残る作品。
    読み終わったときの切なさ、やり切れなさったらない。
    正義なんて考え方、立場によっていかようにも変化する。いったい正義ってなんなんだろう?
    前半は最上の何かに取り憑かれたかのような執念にゾッとしたが、終始覚悟を決めた態度と、ラストの白川・松倉の様子に、最後は最上の執念を実らせてあげたかったという気持ちになってしまった。

    個人的には沖野のキャラクターがもう少し魅力的であれば、最上との対比が際立ってよかったのになと思う。

  • 老夫婦殺人事件の容疑者として浮かび上がった男は、かつて自分が住んでいた寮の少女殺害事件の容疑者として時効を迎えた男。
    さらに取り調べの間に、少女を殺害した事を語り始めると同時に、今回の事件の容疑は否認。
    主任検事は、過去の事件の罪を購わせる為に、今の事件の犯人に仕立てようと、自らが罪を犯して犯人に仕立てようとするが、その罪も露見する。
    釈放された男は、吐露した少女殺人を再び否認しし、検察を愚弄する。
    正義とは何なのか。法とは何なのか。
    罰せられない法の限界と、人としての正しさの中に、まっすぐに生きる事への現実の壁が立ちふさがっている事を示してくれる。

  • +++
    検事は何を信じ、何を間違えたのか。

    東京地検のベテラン検事・最上毅と同じ刑事部に、教官時代の教え子、沖野啓一郎が配属されてきた。ある日、大田区で老夫婦刺殺事件が起きる。捜査に立ち会った最上は、一人の容疑者の名前に気づいた。すでに時効となった殺人事件の重要参考人と当時目されていた人物だった。男が今回の事件の犯人であるならば、最上は今度こそ法の裁きを受けさせると決意するが、沖野が捜査に疑問を持ちはじめる――。

    正義とはこんなにいびつで、こんなに訳の分からないものなのか。
    雫井ミステリー、最高傑作、誕生!
    +++

    500ページを超える長編ということを感じさせない面白さである。現実にこんなことがあったら大事件であり、一般市民は一体何を信じればいいのか、不信感の塊になってしまうような事件であり、起きた事柄だけを並べて見せられたら、最上は人間として最低だと圧倒的な確信を持って決めつけるだろうと思う。だが、その人間として、という部分でこそ、最上の苦悩とここまでの決断があったのだということがこの物語にはにじみ出ていて、犯した罪は到底許すことはできないが、人間として憎み切れないのである。松倉を断罪することができなかったという結果に、最上は一生晴れない思いを抱き続けることになるのだろう。松倉憎し、である。法という剣をもってしても、正義という思いをかざしていても、どうにもならないことがあるのだというもどかしさや無力感を思い知らされる一冊でもある。

  • アガサ・クリスティの、あの戯曲を思い起こさせる
    タイトルだけれど、こちらの方がぐっと重苦しい。

    正義とは何か。
    司法とは何か。
    どうするのが正しかったのか。

    金貸しをしていた老夫婦が殺害され、容疑者の1人として
    23年前に少女を暴行し殺害しながら逃げおおせた男の名が
    あがってきた。
    検察にも、警察にも、過去の事件に思い入れのある人間が
    捜査に関わっていた、、、


    決定的な証拠がないのをいいことに、否認を続け、
    罪を逃れるだなんて、ましてや、それが、いたいけな
    少女に対する卑劣な犯罪だなんて、正直、反吐が出るし、
    そんな奴、どんな目にあっても同情なんてする気になれない。
    その少女を可愛がっていた検事最上が、今度こそそいつが
    犯人であってくれればと思うのも、よく分かる。
    今度こそ、罪に問うてやると熱心になるのも無理はない。
    捜査をそちらに誘導するぐらいは「あり」だと思う。

    周囲に認められた優秀な検事である最上。
    そこで踏みとどまってほしかった。
    そして、罪を犯したものには、時効であろうと、
    なんらかの形で報いをうけてほしかった。
    事態が、過酷なほうに流れていくのには、目を覆いたかった。
    最上に、覚悟があるのが、いっそう辛かった。
    それでも、支えるものがあるのは、せめてもの、一筋の光。

  • 映画を見てよく分からなかったので、原作を読みました。ストーリーが丁寧に組み立ててあったので、よく分かり面白かったです。しかし、問題のベテラン検事の考えには共感できません。

  • 映画と話が全然違った。
    本の方が断然好きだ。

  • なんで、検察側の罪人?タイトルが不審だったけれど。検事がねぇ、そこまでするとはね。

  • あー、こうなっちゃうのか・・・と思う作品。
    勧善懲悪とは真逆の、懲悪しようとした側が失敗して犯罪者となった検察官に、殺人の罪を犯しながら時効になって罪を免れて逃げおおせた男。
    法治国家である国において私人による制裁はできないのだろが、被害者感情に立ったとき、なんとかならないのだろうか・・・と思う。

  • 最上の気持ちも分からないでもない。お世話になった娘の由季さんが殺されたが、犯人が捕まらないまま時効を迎えた。しかし、蒲田の事件で由季さんを殺した犯人が分かっても逮捕出来ないだったらと、その男を犯人に仕立て上げようとする。確かに検察官がやってはいけないが、だったら正義とは何かと若い沖野も間違ってはいないと思うけど。時効が廃止になって良かった。

  • どちらを塀の中に閉じ込めるべきだったのか。
    最初は少し入りづらかったけど、中盤からぐいぐいと引き込まれた。映画もアマプラで見てみようかな。

  • 文庫本上下巻にて読破。
    前半は面白いが、後半はあまり・・・

    最上を美化しすぎというか、彼がやったことが犯罪としか思えず、私刑を肯定するような内容に疑問を感じた。

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著者プロフィール

1968年愛知県生まれ。専修大学文学部卒。2000年、第4回新潮ミステリー倶楽部賞受賞作『栄光一途』で小説家デビュー。04年に刊行した『犯人に告ぐ』で第7回大藪春彦賞を受賞。他の作品に、『火の粉』『クローズド・ノート』『ビター・ブラッド』『殺気!』『つばさものがたり』『銀色の絆』『途中の一歩』『仮面同窓会』『検察側の罪人』『引き抜き屋1 鹿子小穂の冒険』『引き抜き屋2 鹿子小穂の帰還』『犯人に告ぐ2 闇の蜃気楼』『犯人に告ぐ3 紅の影』『望み』などがある。

「2021年 『霧をはらう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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