新しい星

著者 :
  • 文藝春秋
4.04
  • (252)
  • (347)
  • (172)
  • (19)
  • (3)
本棚登録 : 3089
感想 : 295
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163914688

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 【ザ・インタビュー】苦難に乗っ取られない人生 作家・彩瀬まるさん「新しい星」 - 産経ニュース(2022/2/27)
    https://www.sankei.com/article/20220227-JXBFQGNJANP43C6F5GSNNT7R5I/

    彩瀬まるさん「新しい星」インタビュー 悲しむ人と、ともに無力さに耐える|好書好日(2022.2.4)
    https://book.asahi.com/article/14536199

    よい恋愛、結婚から出産へ「道」は真っ直ぐに続いていくと信じていたが…娘の死、夫との離婚で“一変した景色” | 文春オンライン(週刊文春 2021年12月16日号)
    https://bunshun.jp/articles/-/50630

    『新しい星』彩瀬まる | 単行本 - 文藝春秋BOOKS
    https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163914688

  • 図書館で半年待った。
    読みやすいので、あっという間に読了。

    やっぱりこういうのは悲しい。
    結構良かったけれど、悲しい。
    悲しいけれど、良かった。

  • 家庭や仕事、体調の事などそれぞれ問題を抱え、普通という枠組みから離れていくが、それでも前に進んで行く話。今を大切に生きようと思う。大切にしたい友人がいる人に。

  • 幸せな恋愛、結婚だった。これからも幸せな出産、子育てが続く……はずだった。
    順風満帆に「普通」の幸福を謳歌していた森崎青子に訪れた思いがけない転機―
    ―娘の死から、彼女の人生は暗転した。
    離婚、職場での理不尽、「普通」からはみ出した者への周囲の無理解。
    「再生」を期し、もがけばもがくほど、亡くした者への愛は溢れ、「普通」は遠ざかり……。

    このあらすじにひかれて手にしました。
    青子、〈茅乃〉、〈卓馬〉、〈玄也〉の4人組。
    大学の合気道クラブで一緒だった四人の男女同期生のオムニバス短編。茅乃と卓馬は既婚者で青子はバツイチ。
    玄也は独身で実は引きこもり。茅乃が乳癌になり、青子の発案で元恩師の道場に4人で通う。その間にも第2子の出産で帰省した卓馬の妻はコロナで戻れなくなり、少しずつ働き始めた玄也には友人ができたり。
    娘の死・乳がん・ひきこもり・夫婦のあり方
    「普通」ってなんだろう。
    1.新しい星、2.海のかけら、3.蝶々ふわり、4.温まるロボット、5.サタデイ・ドライブ、6.月がふたつ、7ひとやすみ、8ぼくの銀河
    の構成。
    娘を亡くした青子が、また自分が生きるために考えた時間。新しい星に生まれなおし生きていく。

    1.新しい星
    娘を生後2か月で亡くし、子煩悩で優しい夫とも離婚した、29歳の塾講師〈森崎青子〉。
    今なお掌に娘の体温を感じ、実家を出た彼女の、〈私は、失ったのではなく、得たのではないか〉という発見。
    ++本文で気になった部分++
    みんなが想像する「普通」からはみ出してはいけない。「普通」じゃないことが起こるのは、なにかしらの恥ずべき異常があるからだ。あなたが普通じゃないから、普通じゃないことが起こった。
    ++++++++++++++
    そうじゃないのに、枠であてはめられ、意見を押し付けらる。
    理不尽だ。でも自分自身の言動で誰かに普通を押し付けていないか?と立ち止まった。

    乳がんが見つかった茅乃に対し、
    ++++++++++++++
    「まずは、ペースを作ろう。」
    ++++++++++++++
    この一言は大事だ。
    生活…どんな時でも、生活がある。

    2.海のかけら
    玄也 独身で引きこもり。会社でのいじめ。
    ++本文で気になった部分++
    自分は根本的に、社会から排斥される弱さや醜さを持っていたんだ。
    そう、考え始めたら、こんな恐ろしい社会を平然と歩いていく、あらゆる人々に引け目を感じるようになった。
    「耐える」
    それぞれが抱えた問題を、理不尽を、不安を、人と分け合って耐える。
    ++++++++++++++
    苛められ、失意の底にいた玄也。だれだって理不尽な変化に日々さらされている。
    どうしたらいいのかもがき苦しんでいる中、茅乃のリハビリもかねて合気道に参加し始める。
    きっかけは人それぞれ。だと思う。その変化を待つ家族も本人もつらい。
    周りの気持ちに思い当たる人ほど、それでも身体は心は動けない。
    ひきこもりはつらい。
    まじめなひとが理不尽なことにさらされる。
    ++本文で気になった部分++
    社会には自分のような境遇の人間が抱えた問題を解決できなかったとき、
    自業自得だ、と見捨てるのではなく、次の生存戦略を一緒に考えようとする発想が、あったのだ。
    ++++++++++++++
    何げないことがきっかけで生存戦略を目指せる、知識はもちろん、
    当事者におしつけないかかわり方って大事だと思う。

    3.蝶々ふわり
    手術の跡を気にする茅乃が銭湯には入れることや、1人娘〈菜緒〉の前で泣けずにいることも聞く。
    ++本文で気になった部分++
    あるものとないものは似ている。そこに「ある」ものは、常に数パーセントの「ない」を存在の内に含んでいる。同じようにどんな
    「ない」にも、常に数パーセントの「ある」が混ざりこんでいる。
    ++++++++++++++

    ++本文で気になった部分++
    悲しみが邪魔だ。悲しみはこの世で唯一の味方のように寄り添ってくれることもあるけれど、今この瞬間はだめだ。世界と私を隔ててしまう。
    一分待ってね。いま言おうとしてたこと、ぜったいに飲み込まないで。
    ++++++++++++++
    そう言える茅乃と青子の関係性がすてきだと思う。

    4.温まるロボット
    自粛生活の中で抱える思い。
    新しい翻訳の仕事をみつけた青子と、家族と離れて、夫婦間との悩みをリポートで話せる関係。
    ++本文で気になった部分++
    病気で自分の人生が変えられるのはいやだ、
    やみくもにがんばらないようにする。今の自分になにが向いているか、どのくらいなら物事が抱えられるか、ちゃんと考えて、それ以上はやらない。
    抱えすぎないよう気をつける。そういうえらさもあるんだった。
    ++++++++++++++

    5.サタデイ・ドライブ
    玄也  犬を飼う。
    大人になっての友達の作り方。
    きっかけはわかっているけれど、大人になればなるほど臆病になって新しい人間関係を作るのが難しい。
    理不尽な変化の中から、母が犬を飼ったことで、散歩にでるようになった玄也。
    実はマスク生活で、人の視線が気になる人、いろんなことで
    顔を出したくない人には救われている人って多いと思う。

    6.月がふたつ
    ++本文で気になった部分++
    私が変えられるのは自分の運命だけなんだ。
    子どもの運命はそれがどんなものであっても、その子が一人で背負うしかない。
    親ができるのは、それを全うする姿を褒める。
    敬意を持つ。
    ++++++++++++++
    茅乃もそうだし、実は玄也の両親もそうだっただろう。青子の母も。

    7.ひとやすみ
    茅乃の死
    ++本文で気になった部分++
    どれだけ親しくても、長く一緒に居ても、その人を完全に知ることはできない。
    こうだろう、と思った像から、実際のその人の在り方はいつだって少しずれる。
    ふたしかで、揺れて、矛盾して、だからなんどでも会いたくなう。
    会い足りる、ということがない。
    ++++++++++++++
    8.ぼくの銀河
    新しく始めたバイト。
    玄也が動き出している。
    小銭を数えるのが苦手な人もいると気づく。自分自身の人間関係のしんどさを伝える玄也。
    そう、誰だって苦手なことがあるはず。
    そのことを自分自身が受けとめ、周りに伝えられるか、理解してもらえるか。
    自分が苦手なことを他人に伝えるのはとてもしんどい。
    でもそれを伝えることは、自分のことを受け止めることにもなる。
    自分も周りもよくなるのであれば、一歩踏み出したい、そう思えた。
    玄也が茅乃の娘、菜緒に対して、大人として理不尽な意見を押し付けた、苦しい思いをさせたとを謝罪するところが、本当にまじめな生き方をしていると思った。
    ++本文で気になった部分++
    「あなたは生涯を通じてけっして一人にはならない。」
    ++++++++++++++
    病気や肉親との齟齬など、4人の人生もいろいろある。
    生きている限り試練はこれからも連続する。
    病気になった時も、その状況を共有できる人、
    誰かに『キミは格好よかった』とお葬式で言ってもらえる
    そんな生き方は私には難しいかもしれない。
    でも、誰も可哀想なんかじゃ全然ない。
    そう思って希望をもって読み終えることができた。
    彩瀬まるさんの本は読みたくなる時がふいにおとずれる。

  • 近年、こういうテイストの連作短編集が多すぎて、オリジナリティをあまり感じられなかった。なにか一波乱起き、それを乗り越えて終わりというお決まりのパターンに、正直食傷気味。
    とはいえ、読後感はとっても良く、作品の評価が高かったり、直木賞に選出されるのも理解はできる。

  • 思い違い
    「闇雲に頑張りたくない」「もう無理したくない」などそれぞれの悩みを抱えた4人の仕事が家庭が変わる。卓馬が離婚、茅乃が高校生の一人娘を遺して亡くなる。遺された娘の誤解は「母は私を嫌っていた、いつも怒っていた」で、約束した事を何も実現してくれなかったと、だが真意はとても思いやりをもって真剣に大切にしていた事を知ることになる。家族の絆と友達との絆の違いが見える、話せる世界が多くの誤解もあることを知る。娘にとって母の想いは新たな人生を強く歩める事を悟る。一人じゃない素晴らしい人生はちょっとしたことで変えられる事を。

  • 今は亡き親友を思い出して泣けた。

  • 「新しい星に落ちる」
    理解者に出会えない、もしくはそう思い込んで不安な気持ちをよく代弁していると思う。

    大人になっても、人と向き合わないと生きていけない。自分のこともコントロールできないのに。
    そんな気持ちに寄り添ってくれる本。

  • 悲しくやるせないけど、静かで美しい…彩瀬作品の中でもかなり好きだなと思えた一冊。
    大学時代、合気道部に属していた4人の男女の連作短編小説。子供の死、突然の病、パワハラによる引きこもり、コロナ禍きっかけの家庭不和…理不尽な出来事になす術もなく、歩き出すこともままならずうずくまる。傷付いた心身へのダメ押しで、周囲のよかれと思った言動に更に傷付いてしまう。そんな負のスパイラルに陥った仲間への手のさしのべ方が自然で、でも理に適っていて、不必要に踏み込まない。その関係性に読む側も救われる。
    4人のそれぞれの家族間の軋みは、互いを思いやるからこその齟齬で、双方の気持ちもわかるだけに辛いところもある。一歩間違えればどこまでも暗く落ち込んでしまいそうな心に丁寧に寄り添い、少し気持ちがほぐれるユーモアも挟んでくれる。その流れが自然で、安心して息がつける。
    連作短編なので読みやすく、旅の描写や生き物の描写(タコがかわいい!)もすごくよい。何かがきっかけで深く沈みこんだとき、少しでも浮上できるよう…そっと見守ってくれるような物語。

  • 最後のページを読み終えた時、じんわりとした気持ちになるとともに涙が溢れてきました。


    大切な友人が心を病んで会社を辞めました。
    新卒で入社して1年と持たず、うつ病と判断されて会社に行けない日々が続いてると相談されたのは昨年末でした。
    私の方が精神的に不安定なところがあると思っていたので彼女の話にとても驚き、動揺したことを覚えています。

    今新しい仕事を前向きに考え始めてはいるものの、動き出けない友人にどう寄り添ったら良いか悩んでいました。
    この本は私にたくさんのヒントをくれたと思います。


    誰の人生もうまく行くことばかりじゃない。
    どんな絶望的な状況でも毎日は過ぎていく。

    友人は人生においてかけがえのない存在ですね。


    This novel is arguably my best this year.
    I want to recommend it to someone I care a lot about.

全295件中 21 - 30件を表示

著者プロフィール

1986年千葉県生まれ。2010年「花に眩む」で「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞しデビュー。16年『やがて海へと届く』で野間文芸新人賞候補、17年『くちなし』で直木賞候補、19年『森があふれる』で織田作之助賞候補に。著書に『あのひとは蜘蛛を潰せない』『骨を彩る』『川のほとりで羽化するぼくら』『新しい星』『かんむり』など。

彩瀬まるの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×