三陸海岸大津波 (文春文庫)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167169404

感想・レビュー・書評

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  • この地の古今の資料、関連する海外の災害記録、生き残った方々の生の声。
    丁寧に集められ誠実に書いた本書からは、長い間隔をとりながらも繰り返し襲う津波と人知との攻防の様子が迫ってくる。
    本書が世に出たのは、東日本大震災発生の40年も前。これほどの経験をしてきた三陸海岸に、なぜ住み続けるのか?という傍観者の疑問にも、一定の答えを提示してくれている。
    官民一体となって懸命に施してきた対策を易々と凌駕し、数々の漁村を壊滅させた、あの大津波。その後引き起こされた、ある意味人災とも言われている大きな事故。今後も三陸海岸に生きていく人々はどうすれば良いのか?同じ国土に生きる我々は何をしたらよいのか?
    いつ来るか分からない恐怖に備えるためにも、読みつがれるべき一冊だと思う。

  • 3.11をTVで映像として見たよりも、心をえぐられた。特に子供たちの作文。

  • 読むことをためらっていたけど、読んで良かった。決して感傷的ではなく、あくまで記録に忠実に被害の様相を記した「記録文学」。いまなら正常化バイアスという言葉で表される行動が、被害を大きく広げていた。髙山文彦氏が解説に書かれた「迷信は人を怠惰にする」の言葉が重い。

  • 否応なく、押し寄せてくる自然の恐怖。
    人は、自然災害に対して、どう向かい合わなければならないのか。
    圧倒的な筆力、綿密な取材により、まざまざと見せられた大自然の恐怖。
    体験した者でなければ、分からない恐怖が、脳内で迫ってくる。

  • 最後に紹介されている津波体験者の言葉。三月の大津波を思うと、整理がつかない…。

  • 2012/10/20読了。備忘録として。
    二度の大津波により甚大な被害を出してきた田老村、築いた高さ10mを超える大堤防が三度目の津波を阻み、過去の二度の津波被害を受けた村の古老も「死ぬ人はめったにないと思う」と言った。だが昨年の津波で防波堤は一瞬で決壊、田老地区は死者200名を数えた。
    それでも、明治29年の大津波で死者26360名。昭和8年の大津波で死者2995名。平成23年の地震と津波の規模を考えると、死者200名超というのは非常に少ない数字だったと言える、ということか。
    津波は「よだ」と呼ばれ、明治29年には誰も津波という文字を使っていなかったという。海嘯と書いてつなみ、よだと読んだらしい。他に、親しい人が死者に声をかけると、死体は口から泡を吹く、という迷信、それに則った子供の作文が非常に読み物として優れていたと思う。

  • この本は2011年の大津波のことを記したものではなく、1970年に「海の壁」として刊行され、1984年に現在のタイトルになっている。
    三陸は歴史の残る前から何度も大津波の災害に遭遇して来た。その記録を作者が何度も地元に足を運んで、さまざまな人から話を聞き、記録を調べたものだ。
    現在防災のためにさまざまなハードウエアの対策が立てられようとしているけれど、どんなに対策したところで限界がある。必要なのはソフトウエア。教育であり意識であり伝承である。
    三陸町や釜石では「津波てんでんこ」として、親も兄弟も関係なく自分ひとりで逃げろ!という教育が徹底されて、結果として犠牲を最小限にできたといわれている。利己的という批判もあるようだけれど、ドラマじゃない現実の大災害にどう対応するのか、結局はてんでんこに考えるしかない。

  • 三陸を襲ってきた明治と昭和の津波がどのようなものであったかを証言と資料を持って記録した本。特に、小学校の作文を引用したものは、拙いながらも心に響く。田老近辺は繰り返し津波で被害を受けていることが分かるし、堤防で被害が少なくなったのも理解した。しかし、この堤防で大丈夫だろうと筆者が書いているにも関わらず、今回の震災では堤防を超えて津波がやってきたことは、自然は人知を超えた脅威をもたらすことを教えてくれている。

  • 23メートル・・・これは何の数字かお分かりだろうか?

    東日本大震災で起きた”大津波の高さ”と思う人もいるかもしれない。それも正解だが、ここでとりあげたこの数字は、昭和8年(1933年)に起きた”昭和三陸地震”の際に、三陸海岸に押し寄せた波の高さだ。

    知っている方も多いだろうが、実は、三陸海岸(北地方の太平洋側、青森県南東端から岩手県沿岸部を経て宮城県の牡鹿半島までの海岸の総称)は”津波の歴史”と言っても過言ではない。そんなわけで今回は、この三陸海岸の津波の歴史に焦点を当てた本を読んだのだが、色々なことに気づかされた。驚きの連続だった。

    (続きは、こちら↓)
    http://ryosuke-katsumata.blogspot.com/2011/04/23-81933-438-2004310-amazon800-amazon.html

  • 三陸海岸を明治、戦前、戦後、3度襲った大津波を体験者のインタビューを中心に記録したルポルタージュの傑作。「天候は晴れだし、冬だから津波は来ない」という老人たちの言葉を簡単に信じてしまう人々の心理が怖い。文藝春秋での吉村昭氏の講演の記事を最初に読んでしまったので、印象は薄れてしまったが、子供たちの作文は悲惨。学ぶべきものが多い作品と思う。

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著者プロフィール

一九二七(昭和二)年、東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。五八年、短篇集『青い骨』を自費出版。六六年、『星への旅』で太宰治賞を受賞、本格的な作家活動に入る。七三年『戦艦武蔵』『関東大震災』で菊池寛賞、七九年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、八四年『破獄』で読売文学賞を受賞。二〇〇六(平成一八)年没。そのほかの作品に『高熱隧道』『桜田門外ノ変』『黒船』『私の文学漂流』などがある。

「2021年 『花火 吉村昭後期短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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