青が散る (文春文庫)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (478ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167348021

感想・レビュー・書評

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  • 昔一度だけ読んだ事があった本を読み返してみました。
    テニス、恋、友人といった要素が盛り込まれた青春小説です。

    主人公は新設されたばかりの大学に入学する事になった燎平。
    気乗りしないまま入学手続きに訪れた大学事務局で、燎平は華やかな女性に出会いひと目惚れする。
    そして、そのまま入学手続きを済ませる。
    入学後、彼は彼女と再会し、さらに巨体の金子にテニス部の勧誘を受けて入部する。
    燎平と金子はテニスコートもない状態からたった二人のテニス部を立ち上げ、二人でテニスコートを造り上げる。
    やがて入部希望者が集まり、そこから様々な人間関係、恋愛模様が生まれる事となる。

    四季で例えれば、青春期は夏だと思います。
    テニスに、恋に、友情に、熱くエネルギーを燃やせる季節。
    ヒロインの名前も夏子だし、ギラギラした夏を思わせる話でした。
    と言っても、この物語の主人公である燎平は特にテニスに情熱を傾けている訳ではありません。
    ひと目惚れした夏子に対してもはっきり態度を取ることができない。

    元々やりたいから始めた訳でもないテニス。
    しかも、将来を約束されるような才能がある訳でもない。
    そんな事に青春の4年間という貴重な時間を使っていいものか・・・。
    主人公の燎平は逡巡しながらも4年間、テニスをやり続けます。
    私も主人公と同じ立場だったら同じように考えるだろうと思います。
    しかし、テニスを通して主人公が得たもの-人脈とか友情とか、人生訓みたいなもの、そして己の成長、そういったものは正に主人公だけの人生の宝物だと思いました。

    この物語は登場人物がリアルに生き生きと描かれています。
    明るい性格の主人公。
    華やかで気の強いヒロイン、夏子。
    その巨体と同じ気質の金子。
    ニヒルでクセのあるテニス部員の貝谷。
    清楚なお嬢様の祐子。
    彼らが本の中から立ち上がり、テニスのラリーをしている姿、あれこれと行動する姿が鮮やかに浮かび上がりました。
    以前読んだ時もそうでしたが、その中でも私は貝谷という男が好きです。
    厭世的な雰囲気を漂わせながらギラギラした生命力を内に潜ませる掴みどころのない男。
    彼が主人公に与えた影響も大きい。

    またこの物語ではテニスの描写も素晴らしい。
    試合の様子がはっきりとイメージできる文章で描かれています。
    主人公が明るい性格という事もあり、生き生きとした、健やかな生命力を感じる本です。

  • ひさしぶりに再読.読む前はこの本に共感,感動できるのは若いときだけではないかという不安があった.幸いにして読む前の心配は杞憂に終わった.これはやはり素晴らしい青春小説であり,テニス小説である.特に僚平とポンクとの試合の描写は迫真である.二人の女性の魅力もよりよくわかるようになった.「自由と潔癖」という言葉もどんどん重く心に響く.人生の切なさ,悲しさを青春を背景に描き出した永遠の 名作である.

  • 当時ドラマは見ていないのですが一度見てみたいなと思います。好き嫌いがはっきりするタイプの小説かと思いますが、青春のもどかしさ、明るさと暗さ、宮本小説ならではの関西弁の世界、私は好きです。2003年12月読

  • テニスを通じて繰り広げられる青春ストーリー。舞台は大阪なので個人的には非常に親近感をもって読むことができた。甘く切ない大学生たちの恋愛、また、男達の友情、ありきたりの題材だがその描写がとにかくうまく、読む側の想像力とあいまって非常におもしろくなる。話の結末がまたすごくて・・・。がむしゃらに読めます。

  • 燎平や夏子、貝谷や安斎や金子といった人物たちがどれも魅力的。そして、皆が心にそれぞれの「青」を抱えている。

    決してハッピーエンドではない、甘くない現実。
    だからこそだろうか、彼らの生きざまと自分が抱えるリアルが全く関係のないものに思えない。そして、物語の中にぐいぐいと引き込まれて、彼らの青春に身が詰まされて、いつのまにか「燎平、頑張れよ!」と応援している自分に気づく。

    物語のスタート地点は、燎平たちの大学入学直前。
    僕がこれを読んだのも、2年前の大学入学直前。

    今でも読み返して、彼らのひたむきさを見習い、自分の怠惰を戒める。
    僕の「青春」のバイブル。

  • 久しぶりにすごく好きだと思った作品。
    テニスに向き合う燎平を通して、自分の楽しかった高校3年間を思った。楽しくて楽しくて仕方なかった3年間、さらに真剣にテニスに向き合っていたらもっと違うものを見ることができたかもしれないと思った。
    毎日、一生懸命だったけど、考えてはなかった気がする。そんなことをふと気づかせてくれた一冊。
    心ばっかり使ってへとへとになるのではなく、頭を使おうと思う。

  • 初宮本作品。大学生のときに読んだ。天才かと思った。
    主人公が同年代だったので、感情がリンクしすぎてやばかった。この時期に読めて本当に良かったと、しみじみ思った作品。

  • 青春って感じで、個人的に何か好きです。
    作中に出てくる歌の歌詞がよかった。

  • 青春時代の話をいろいろな角度から描いているので非常に面白かった。

    最後も全部ハッピーエンドになるわけでもなく、非常に現実的だった。

    青春の物語。須佐に薦められる

  • 友達の車に乗ったらカーステから松田聖子の唄う「蒼いフォトグラフ」が偶然ながれ、懐かしいねという話になった。
    でも、この曲が主題歌だったTVドラマ「青が散る」を観ていなかったのが残念で、今さらながら本で読んでみた。

    「みんな重い見えない荷物 肩の上に抱えてたわ それでも何故か明るい顔して歩いてたっけ・・・・」

    歌の通り、切なくて、苦しくて、でも希望にあふれていた。
    読むきっかけができて本当によかった。

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著者プロフィール

1947年兵庫生まれ。追手門学院大学文学部卒。「泥の河」で第13回太宰治賞を受賞し、デビュー。「蛍川」で第78回芥川龍之介賞、「優俊」で吉川英治文学賞を、歴代最年少で受賞する。以後「花の降る午後」「草原の椅子」など、数々の作品を執筆する傍ら、芥川賞の選考委員も務める。2000年には紫綬勲章を受章。

「2018年 『螢川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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