レキシントンの幽霊 (文春文庫 む 5-3)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167502034

感想・レビュー・書評

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  • 外にある脅威じゃなくて、自分の内側から湧いてくる怖さを感じさせる物語ですね。正直、あまり心地いいものではなかったです。

     じわじわ湧いてくるそういった感情を否定したり、打倒そうとしたり、逃げたり。または言葉を失ったり、白昼夢を見たり、分析してみたりと根源的な恐怖にさらされた時に人が見せる様々な反応が描かれています。
     普段の生活の中ではあまり意識しない、もしかしたら意識しないようにしている心の深淵部にあえて焦点を当てている。それは好奇心からなのか、それとももっと他の意図があってのことなのか。これを読んだだけではこの作者の意図は分からないな。

  • 「沈黙」を再読。人生で唯一、人を殴ったことがある時の記憶を話してくれる大沢さん。相手は青木という口先だけの嫌な奴。あるものの「深さ」を理解しているか否かが、大沢さんにとっては一番大切で、個で行うボクシングの中にそれを見つける。そんな彼が最も嫌悪するのが、「自分では何も生み出さず、何も理解していないくせに、口当たりの良い、受け入れやすい他人の意見に踊らされて集団で行動する連中」。語るべきものが何もない沈黙している連中への厳しい眼差し。孤高に生きる大沢さんへの敬意。着地点が、ビールというのが、素晴らしい。

  • 古い屋敷で留守番をする「僕」がある夜見た、いや見なかったものは何だったのか?椎の木の根元から突然現われた緑色の獣のかわいそうな運命。「氷男」と結婚した女は、なぜ南極などへ行こうとしたのか...。次々に繰り広げられる不思議な世界。楽しく、そして底無しの怖さを秘めた七つの短編を収録。

  • 短編集。
    村上春樹は長編のが好きかも。
    神の子供はみな踊るも読んだけど、あんま記憶にないし。

    この本の短編もあまりしっくり来なかった。最後のめくらやなぎの話しは良かった。これだけはまた読みたい。むしゃむしゃ。

  • 全体を通して、恐怖・孤独について描かれている。<br />「レキシントンの幽霊」「7番目の男」は、未来のある終わり方になっている。でも「7番目の男」の終わり方はちょっとストレート過ぎる。ねじまき鳥の後に書かれた2作だからか、本書でのトップ2だった。<br />「緑色の獣」は、単純で直接的な恐怖を描いているのだと思う。おもしろくはない。<br />「沈黙」では、『無批判に受け入れてそのまま信じてしまう人間』を恐怖として捉えているが、それ以上に『そういうことは突然起こるんです』という方が恐怖だろう。<br />「氷男」は、結婚への恐怖?おもしろくはない。<br />「めくらやなぎと、眠る女」も好きではない。

  • これはいい短編集だと思ったら、一番文章が好きなダンス・ダンス・ダンスのあたりで書かれたものだった。その頃の春樹に惹かれている。「沈黙」が春樹らしくないようででもやっぱり春樹らしいなって引き込まれたが故に最後が勿体なかったなあ。<br /><br />

  • 純文学をあまり読まない私でも村上春樹は面白いと感じる。普段読者をしていない人に是非薦めたい一冊だ。この短編のうちどれか一つはきっと、心に共感と寂しさを産むだろう。

  • 久々の村上短編集。「トニー滝谷」が一番面白いかもしれない。でも「めくらやなぎ〜」が一番好きかもしれない。「沈黙」が一番共感できるかもしれない。笑

  • 正直言って、
    あれ、村上春樹ってこんなんだったっけか、というようにこの短編集は無感動で終わってしまった。

    蛍や回転木馬の〜などの短編集とはまた違った雰囲気で、SFチックな物語とつかみどころのない"村上春樹らしい"登場人物がそこにあった。

    なくしたもの、気付いたもの、そっとしておいたもの。
    そういうものがつまった一冊、とでもいおうか。

  • ざ・村上ワールド。
    不思議な世界、なんとなく怖さをもつ短編なんだけど、どんどん読み進めてしまう。
    読み終わったあとに残る、なんともいえない怖さ・・・
    心の中につめたく、くらいものが残るお話。

    だけど、好きなんだなー

  • 『沈黙』を、それこそすべての人に読んで欲しい。キリスト教徒が聖書を配り歩いたみたいに、私はこれをすすめてまわりたい。

  • いまさらながら、生まれて初めての村上春樹。

    普段、小説はあまり読まない。
    というか、読めない。作品への感情移入が異様に下手だから。

    だけど、異様に下手くそな僕でさえ、作品に瞬時に引き込んでしまう
    「喩え」の表現力には心底驚いた。

    例えば、表題作の「レキシントンの幽霊」。
    夜中に目が覚めてしまった主人公が、少しずつ寝ぼけた頭から解放されていく様子を、
    「床にこぼれた豆を集めるみたいに、意識をひとつひとつ拾い上げて、自分の体を現実に馴染ませた」
    と表現している。

    はじめに記憶ありきではなく、はじめに表現ありき。

    このシーンはまるで僕のことを書いているよう、なのではなく、
    整理されていないごちゃごちゃの僕の記憶から、
    このシーンに合致した記憶を瞬時に強制的に引きずり出す、
    ものすごい表現力だと思った。まさに力。パワーですね。

  • 孤独が生み出す精神世界は
    その人をもう呼び戻せないほど
    遠い場所へ誘うか、もしくは
    堅牢な部屋の中へ閉じ込めてしまう
    けれどその世界だからこそ
    見つけられる答えがある
    そこから回復できるかどうかは別として
    回復する手段としては一つの方法であると思う

  • 村上春樹の短編集。その一篇、「トニー滝谷」が人生に大きな影響を与えた。孤独がもつ、強さと弱さ。「ショーシャンクの空に」にも通じる、なんとも言えない「したたかさ」がテーマだと思う。

  • 一般化してはいけないということを知る。

  • 村上春樹の短編はそこまで好きじゃないのだが、この本は何故か気に入って何度も読んでしまっている。どれも少しコワイ。実際に作者が体験した話も。氷男や、緑の猛獣も何だかゾッとした。そして私が一番気に入っている話は「沈黙」。何ともせつないのだが、人間って少なからずこういう嫉妬みたいな気持ちはどこかにあると思う。それにしても体験したくない・・・。

  • トニー滝谷を映画で観てから、原作のこちらを読んだ。

    トニー滝谷は、ただ孤独な男の話。

    映画が、原作の言葉をなぞるように作られているために、所々印象的で覚えている文章がある。

    春樹初心者の私が思う彼の文章は、読者のイメージをより著者のイメージに近づける言葉選びが徹底されている。
    物語全体として何を思うかは関係なく、ただ、「Aである」という状態をそれが何がどうしている状態に1番近いか、どんな香りでどんな形だったか、精緻に表現して作者のイメージとほぼ同じ形に伝えようとする。

    私にはそれが、トニー滝谷がデッサンをする際に植物の葉の葉脈の一本一本まで正確にクローズアップして描く様子と重なって見えた。

    長編小説が大きな木を描くようなものだとしたら、短編小説は花や葉の細かな美しさに光を当てて描くようなものなのかもしれない。

    私は彼によって、見たことのない美しい葉を見せてもらった。

  • 「トニー滝谷」と「沈黙」が好き。

  • 11021

    02/18

  • あんまり好みじゃない。

    だから途中で断念中。

    そのうちちゃんと読めるといいなー。

    からの読み終わり。

  • 村上春樹っぽい奇妙な作品たち。
    途中で気付いたけど、暗い、あるいは怪しい話ばかりだ。トニー滝谷は映画になっているようなので、近いうちに観ようと思う。
    短いストーリーでこれだけ登場人物の生臭さを表現する作者には相変わらず感服だが、長編と比べるとやはり物足りなさも残る。
    次は「めくらやなぎと眠る女」が収録されている『蛍・納屋を焼く・その他の短編』を読もうと思う。

  • 初めての村上春樹。
    はぁーん、独特、って思った。

  • 村上ワールド全開!

    表題作は高校国語の教科書にも掲載されているようですが、ぶっちゃけ教材としては不向きだと思います‥
    まったりとウィスキーとジャズを味わいながら、雰囲気を楽しむのが至高だと思うので。

    「トニー滝谷」が一番好きです。
    人との関わりがうっとおしくなった時におすすめ。

  • 1つ1つが大切に育まれたような短編中。
    読んだ事無いと思ってたけど、「七番目の男」は授業で読んだ事があった。1行目を読んでその先の光景を思い出したのには驚かされた。当時の僕にも何かを残していったらしい。

  • 「沈黙」が一番好き。とても好き。春樹の短編をはじめて心から好きだと思った。

  •  7編の短編小説集。


     収録されている7編の共通項は、"孤独"ではないかと思う。(彼の作品にはよくみられる傾向だと思うが)どのストーリーの奥にも、"孤独"がじっと息を殺してこちらをうかがっているような空気が漂っている。
     それはたとえばレキシントンの屋敷の中に、椎の木の根本に、語らない瞳の奥に、冷たい世界に、がらんどうの部屋に、波の先端に、そしてめくらやなぎの根に、あるのかもしれない。
     私は彼の作品のファンだし、いくつかを読み終えているが、この短編集はあまり肌に馴染まなかった。私には、少し平坦すぎたのかも。

     収録されている作品の多くが、長くなったり短くなり他の本に収録されているそうなので、そちらも読んでみたいと思う。

  • 不穏と孤独を内包する、7つの短編集。

  • 短編です。いつも思うけど、村上春樹さんの日本語はすごい。
    流暢というかきちっとしているというか
    妙にしっくりくるんだよなあ・・・

    短編もよいですね!

  • 氷男が一番印象に残った。
    氷男と出会い会話するシーンは、
    相手とのコミュニケーションを試みようとするにも関わらず
    結局は自分のことをより深く知っていき
    結局は自分の心を見失ってしまう絶望の物語のように感じてしまう。
    氷男と二人でいることを望めば望むほど、
    周囲からは遠のき南極という極寒の地にたどり着く。
    切なくて哀しいけど、何となく共感できる気がする。

    あとはめくらやなぎと、眠る女もよかった。

  • 村上春樹で一番好きな短編集。
    正直何回読み返しているのか分からない。読むたびに何か考える。
    特に表題作、「沈黙」「七番目の男」「めくらやなぎと~」を読み返すことが多い。

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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