廃墟に乞う (文春文庫 さ 43-5)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167796037

感想・レビュー・書評

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  • 佐々木譲さん、直木賞受賞作品。「過去の清算」をテーマに扱う。短編小説で物足りない。その理由は、読み応えがありすぎるので、もう少し掘り下げて欲しかった!という裏返し。主人公は北海道警察の刑事 仙道は過去の無残な死体発見した。しかし、犯人を取り逃がした原因が自分にあったと指摘され、PTSDとうつ病を発症する。しかし仙道のパーソナリティは賢く、一本筋が通る、療養中の身で誰にでも優しくなれている。捜査の自由が利くので事件を紐解いていく新しい展開。独自捜査に限られるものの、仙道は過去を清算し職場復帰する。

  • 短編集。
    仙道さん、1話読む度に復帰が遠くなるような気がするのですが……

  • 佐々木さんの北海道警の作品です。主人公の仙道刑事は休職中ですがプライベートで事件にかかわっていく作品です。この本は短編のため、非常に読みやすく感じました。

    休職中の刑事が事件に迫っていくので、ちょっと内容も期待してしまいますが、事件の内容よりも、事件の真相というか、裏側の人間関係、人間の心の奥底の感情という、ドロドロとしたくらい感じのものを主人公の刑事を通して表現しているように感じました。

  • 私にとってはカウントダウンに続く2作品目となる佐々木譲先生の作品
    カウントダウンは友人からいただいた本だが、、、こちらも同じ友人からいただいた

    カウントダウン同様に北海道を舞台にした作品
    主人公は休職中の刑事という変わった設定の小説

    しかしなるほど
    刑事でありながら休職中という事になると自由度が増すというのか
    それでありながら刑事の洞察力もあり面白い展開ができるものだなと
    どうして休職中になっているかは最後に明らかになる

    本作は短編集となっており、多くが知り合い等から「休職中ならちょっと聞いてくれないかな」というような感じで相談を受けて始まる
    北海道の地理にはそれほど詳しくないですが、主人公は結構色々なところからお声がかかりつつ、それらエリアの所轄警察署に知り合いがいる
    警察官も色々なところで勤務を行うものなのだなぁと

    あとがきに書いてありましたが、佐々木先生は北海道の色々なところを描きたかったとの事ですね
    それに都合が良いのではないかと考えたのが「休職中の警官」という設定との事でした
    描きたい話がありきの設定だったのですね


    毎回、まずは現場を確認したり、聞き込みまではいかないながらも近辺の人に話を聞いて
    と進んでいくのだが、休職中であるがゆえの不自由さもある
    現場担当でも無いのになんでこんなところに来ているのか、なんで聞き込みみたいな事をしているのかという感じで同じ警官側から煙たがられたり

    逆に遺体が見つかっていない(ので事件化できていない)が殺人と思われるような事案にも首を突っ込めるという自由もある

    このキャラクター設定は秀逸
    小説として聞いた事がなく目新しく感じただけかも知れませんが面白いと感じました
    友人からもらった佐々木先生の作品はカウントダウンと本作の2作品だけですが、、、別の作品も読んでみたいですね

  • 仙道さんはいったい何があって休職に追い込まれてしまったのか気になりながら読み進めた。最後でそれがわかって『やっぱりな』という感じで腑に落ちた。ちょっと今までにない警察小説でした。

  • ミステリーの短編というと中途半端な謎解き物を想像し、ほとんど期待しないで読んだのですが、これはそういった類の物語ではなく、いい意味で期待を裏切られました。
    北海道各地の疲弊の色を帯びた都市を舞台に、そこで起こる其々の事件の背景で繰り広げられる人間模様を、トラウマを抱える求職中の刑事の目を通して描いたヒューマンドラマです。
    1話1話がくどくどとした説明過多ではなく、絶妙の長さと締めくくり方に非常に好感が持てます。
    内容的には弘兼憲史のコミック「人間交差点(ヒューマンスクランブル)」を彷彿させます。というか、そのまま人間交差点の原作にしてしまっても違和感ないくらい作品コンセプトが近いと感じました。

  • 直木賞作品を初めて読破しました。なんだろ、PTSDの治療の中、様々な依頼を受けて真相を突き止めていく刑事の姿に感動を覚えました。

  • 直木賞受賞作。

    短編6編ですが、全て続きです。
    ・オージー好みの村
    ・廃墟に乞う
    ・兄の想い
    ・消えた娘
    ・博労沢の殺人
    ・復帰する朝

    精神的疾患を患い、休職中の刑事が、友人・知人に請われて、北海道各地の事件を解決する手伝いをしていく物語。
    ミステリーです。

    殺人事件が発生するので、ミステリーは苦手ですが、なんでしょうこの物語は、人の切なさや哀愁みたいなものを感じて、好感を持ちました。


    小説読了200冊。ブクログ内で。

  • 佐々木譲さんの警察もの。安定感のある筆致とストーリー展開はホントに期待を裏切らない。舞台が道内の各所なのも色んな空気感を感じられて楽しい。

  • 休職中の刑事が「お手伝い」と称して次々と事件を解決に導く。連ドラにできそう。

  • 北海道を舞台にした、警察モノの短篇集。主人公は過去の事件のトラウマに悩みつつ、職務とは離れて、私立探偵のようなことをしていく。
    日本の探偵物の、「警察との関係が非現実」というところを上手くフォローしている。
    とてもおもしろい一冊。

  • 受賞する作品にははずれは少ない。
    警察ものの推理小説は世に多くあれど、
    読みやすく、でも先をあまり読ませない。
    考えさせずにオンタイムでその世界を読み進められる作品は少ない。

  • PTSDで休職中の刑事・仙道が主人公の短編集。

    休職中の彼にいろいろな相談が持ちかけられる。公務ではなく、でも完全に一般人ではない彼が、事件を警察とは違う視点から見つめ、事件の本当の姿を見つけていく。

    彼が犯人を捕まえるわけでも、トリックを暴くわけでもなく、派手な展開は無いのだけれど、淡々と被害者や被疑者の生い立ちや心のうちを見つけていく描き方が良かった。

    派手な警察小説を求めている方には物足りないかも。

  • 2014.1.26~30 読了
    相変わらずリアルっぽい警察小説。休職警官を主人公にすることで管轄外捜査を矛盾なく可能にしている所がアイディアもの。

  • 淡々と進んでいく辺りはハードボイルドっぽいかも

  • 2010年直木賞受賞。連作短編集。
    読み終わり、勝手な想像で一人の刑事の後ろ姿が目に浮かびます。
    長身でスラッとして長めのコートを着て、佇んでいる。
    細面で繊細な表情を思わせる。

    捜査時の後遺症で神経を患い休職中である仙道刑事が主人公。
    今は療養中のため捜査権を持たない彼が、伝手を頼って身内や知り合いをどうか助けてほしいと依頼されるところから始まる。
    ドンパチない、ハラハラない、解決も、その後もなく、派手な場面は一つもない。
    冬の雪深い北海道を舞台に、ただ考えをめぐらし、人と会い、場所を訪ね行き、その中で真実に近づくための一片を見つけていく。
    どの章も、終わりの数行が秀逸。
    やさしさもあれば哀しさもある。
    幾度か読み返し、余韻を味わった。

  • 短編集あまり読まないけど。北海道で読むと情景が具体的にイメージできてよかった。

  • 少しひねりが入った短編が6つ.どれも面白いが、「オージー好みの村」の聡美の秘めた恋が最後に反面するところが良い.最後の「復帰する朝」の中村由美子の立場もよく考えた構成だ.

  • 全体にモノトーンな感じで地味なのですが
    なぜか好き。
    特別「面白い!」という感じではないのですが、
    味わい深かったです。

  • わりとおじさん後半のイメージで読み進めたので、思ってたより若い設定だと気づいてうろたえた。かなり渋好みだと思います。派手なシーン皆無だし。

    刑事ではあるけれど捜査権のないなかで、地味に聞き込みを続ける姿が、刑事の矜持を持ち続けたいと願う真摯さを読者に見せるのです。

  • 読了後、読み返したくなるかというと意外とそうでも無いのだが、
    しかしきちんと最後まで読み通したくなる。
    短編ならではの登場人物たちの場への出入りが面白い。

    北海道という場所を書きたかったのだろうか…と思いながら読み進めた。
    (巻末の解説によるとやはりそうらしい。)

  • 面白かった

  • 主人公は同じだが、それぞれの事件に関連はない短篇集。主人公はすごく洞察力のある優秀な刑事として描かれているが、数年前はそうでもなく失敗をしている。
    休職中に成長した?
    まあ、描写といい構成といい、好きな作家なので好感が持てた。

  • 短編で淡々とストーリーが進んでいくので非常に読みやすかった。よくある短編同士が繋がっていることもないので変に気を使いながら読む必要もなく個人的には◎。佐々木譲ならではの警察の内部事情の描写もわかりやすく楽しめた。

    かなり早い段階で落ちがわかるので推理小説的な読み方をするよりも人間模様の描写に注目するとより楽しめるかもしれない。

  • 警察小説でも、休職中刑事のはなし。いくつかの話に分かれ、復職を目指す話。淡々と進むなかにも描写には重さがある。やっぱり派手じゃないけど確実に心にはいりこんでくるなぁ。

  • 北海道が舞台の連作短編集。面白かった。

  • 好きな小説家の一人である佐々木譲の直木賞受賞作品。
    刑事もの短編集だけど主人公の刑事は休職中。過去のある事件によってPTSDを患いその治療のため長期休職しているという設定。つまり、普通の刑事としての活躍ができない状態ながら事件に関わり解決の糸口を見出していく。様々な評価を受けている小説だが僕は高く評価したい。娯楽小説とは一線を画する本格的警察小説だと思う。何よりこの作家の筆力がにじみ出ている作品だと思うのだが。

  • 読み応えのある作品。
    無力感と遣る瀬無さが残るが
    職業の葛藤が表現されている。

  • 直木賞受賞作品だけに、完全にブランド買い(笑)
    著者は皆勤賞だから直木賞受賞したと謙虚にコメントしているが、実力は本物。
    連続性のある短編集だが、あえてメンタル休暇中の刑事が、直感を活かして現役刑事を出し抜き解決するストーリー。

    初めてこの作家を読む人にはイイかも知れないが、この作家は、やはり長編作がイイ。

  • この作家にしては内容的に地味な印象の連作短編集。ある事情から休職中の警官が出会う事件を通して人々の業を描いています。直木賞を獲得した本作品ですが、そもそも休職中に事件が解決できるのかよ…というプロットからそこまでは、と正直思いましたが、地味とは言え主人公が出会うそれぞれの事件の裏側に見える理屈ではない人間の本質性を描く筆力がさすがであり、必読の好短編集ではあります。

著者プロフィール

1950年北海道生まれ。79年「鉄騎兵、跳んだ」でオール讀物新人賞を受賞しデビュー。90年『エトロフ発緊急電』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞を、2002年『武揚伝』で新田次郎文学賞、10年『廃墟に乞う』で直木賞、16年に日本ミステリー文学大賞を受賞。他に『抵抗都市』『帝国の弔砲』など著書多数。

「2022年 『闇の聖域』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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