悲しみのイレーヌ (文春文庫 ル 6-3)

著者 :
制作 : ピエール・ルメートル 
  • 文藝春秋
3.81
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本棚登録 : 3570
感想 : 451
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  • Amazon.co.jp ・本 (472ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167904807

作品紹介・あらすじ

『その女アレックス』の刑事たちのデビュー作連続殺人の捜査に駆り出されたヴェルーヴェン警部。事件は異様な見立て殺人だと判明する…掟破りの大逆転が待つ鬼才のデビュー作。

感想・レビュー・書評

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  • サイコキラーと刑事の熾烈な戦い! あなたはきっと衝撃的な真相と結末に襲われる #悲しみのイレーヌ

    ■レビュー
    悪夢のような、息苦しく抜け出せない感覚… なんとも、もがき苦しめられる作品です。

    次々と事件が発覚するが、大した実績が上げられずに捜査が迷宮入りしていきます。警察官たちの焦りが手に取るように読者に伝わくる。

    事細かくやたら丁寧に綴られる事件描写が凄まじい。
    なかり陰惨な殺人事件のため、読んでいてなかなか辛いんです。しかしこの昔ながらの殺戮表現で綴られるミステリーは、昨今の日本の小説では味わえない魅力がありますね。

    そして本書は陰気な雰囲気がいい意味で素敵。
    事件自体もそうですが、街の情景、警察内部の争い、事件の関係者などなど。全編通して雨でも降ってるんじゃないかと思えるほどの息苦しさ、蒸し暑さが文章からにじみ出ています。

    なんといっても本書の魅力は、ミステリーの真相部分。
    終盤の強烈な展開から怒涛の終焉までは、まさに読まずにはいられない熱中の読書タイムでした。こんなの読んだことねぇよっ

    次回作アレックスでは、いったいどんな仕掛けをしてくれるのか楽しみです。

    ■推しポイント
    この本は悪意と憎悪が読者に襲い掛かってきます。

    私もかつて人を憎んでしまったことがありました。
    しかし家族を持つことによって、いかに愛を育むか守るかを大切に、どんなことがあっても前向きに生きようと心に誓ったものです。

    彼の気持ちを思うと、ただただやるせないです。

  • 頭の中がふにゃふにゃになりました

    この大掛かりな仕掛けには参りました
    全体の8割を占める第一章と残りの第二章が仕掛けのヒントでしょう
    第一章と第二章は全然違うのです
    そして最後までスッキリさせてくれません
    全然整理してくれません
    この不親切さはシリーズ2作目の『その女アレックス』も同じでした
    そうピエール・ルメールはとても不親切な作家だと思うのです
    もちろんその不親切さは面白さにも繋がっているのですが

    よし、次は『傷だらけのカミーユ』だ
    カミーユが本当はどんな奴なのかあばいてやるぞ!

  • とてもおどろおどろしい描写の殺人事件からスタート、最後まで読み切れるか不安になりつつ読破しました!
    過去の事件とも繋がる痕跡があり、カミーユ警部が事件を調べていくと...なんと小説に書かれている内容と同じ状況で殺人が行われている⁉︎
    他の事件でも小説と同じ内容のものが見つかり、連続殺人として捜査が進みます。

    いやぁ、人が沢山殺されて酷い殺害方法いっぱい(°_°)
    そして、ビックリする展開が待ってます。
    次に読む予定のアレックスもこの感じなのかしら

    読後はドヨーンのお話でした


  • 若い女性2人が惨殺される、猟奇殺人事件が発生した。それも、猟奇殺人を扱ったある推理小説と寸分たがわぬ殺し方、死体の処理の仕方で。身長145センチの敏腕警部カミーユ・ヴィルーヴェンは、事件の手がかり求めて捜査の手を伸ばすが、何故か捜査情報が逐一マスコミにリークされてしまう。そして身重の愛妻、イレーヌが犯人の最終ターゲットとなり…。

    残虐の限りを尽くす猟奇的殺人。追い詰められていく捜査陣。そして全く救いのない悲惨なラスト。なんて作品なんだ! 「ルメートルのミステリー作家としての特質はこの死を玩弄する遊戯性にあるのかもしれない。ルメートルの作品内で行われるどんでん返しは、単なるサプライズ用ではなく、読者が共有している倫理観を転覆させて動揺を誘うために行われるものだ。」(解説)。まさにその通りだな。ムカムカする読後感の残る作品だった。

  • これすごいですね!
    面白かったです!
    出だしの殺人事件、殺害状況の異様さから凄い。

    『その女アレックス』から先に読んでしまったので結末はわかっていましたが…。 




    イレーヌの番はいつなのとハラハラしっぱなし。
    遂にそのときか、と読んでました。

  • フランスノアールの傑作 悲しみのイレーヌを読んだ。
    前半はマルティンベックシリーズの「ロゼアンナ」やエルロイの「ブラックダリア」が出てきて懐かしく楽しんでいたが、物足りないものがあり「その女アレックス」より劣るかなと感じていた。しかし後半の疾走感に一気に盛り上がり読了。読後感はイヤミスそのものだったが、満足度は高かった。

  • 異様な手口で惨殺された二人の女。カミーユ警部は部下たちと捜査を開始するが、やがて第二の事件が…
    『その女アレックス』のカミーユ警部のデビュー作。
    清々しいほどに騙された!怪しい所に何枚も付箋貼ってたのは何?笑。面白いけどグロ注意です。

  • 初っ端からこれでもかという凄まじい描写に、なぜこんな本を読み始めてしまったのだろうと一瞬後悔した。わたしは時々ランチを食べながら本を読むのだが、この本は間違いなく、そんな風に読むのには適していない。


    郊外のロフトで2人の女性の惨殺死体が発見された。
    カミーユ・ヴェルーヴェン警部が部下たちと共に現場に到着したとき、一番最初に目に入ったのは、壁に掛けられた女性の首だった。
    犯行現場となった部屋のインテリアや、そこに残されたものを調べていくうちに、カミーユはだんだんとそれらに強い違和感を頂くようになる。
    現場の壁にクッキリと残されたある印から、これが連続殺人事件だという見方が濃厚となった。そして過去の事件の資料を読むと、それはやはり残酷な手口であり、且つ何か違和感や矛盾を感じさせるものだった。

    キーポイントは『なぜ、そうでなくてはならないのか』ということ。
    それは意外と早い段階で明らかになる。しかし犯人はまだ分からない。
    そして犯人が分かってからも、わたしたち読者は更に騙され続けていることに気がつかないでいる。
    もう、本当にびっくりしました。

    あともうひとつ、この物語の主人公であるカミーユは身長が145cmしかない。そのことが、読んでいる間中ずっと付きまとう。この設定はすごいなと舌を巻いた。この物語を読むときは常にそのことを意識せざるを得ず、そしてなんだか落ち着かない気持ちになってしまう。まるで1本だけ足がわずかに短い椅子に、無理やり座らされているかのような感覚に近い。


    ありえないくらい残酷な事件を描いた小説は、世の中にたくさんあるんだなと思った。被害者の恐怖とそれを上回るであろう苦痛は想像を絶するし、そのほとんどが女性であることにあらためて心が痛んだ。

  • トリックの大胆さに驚かされた。

    ストーリーは、共通点の無い複数の猟奇的殺人の謎に迫っていくのだが、あまりに凄惨な殺人現場の叙述に高い緊張感と没入感とともに引き込まれる。

    例に漏れず、私も二作目「その女アレックス」を先に読んでいたので、オチの一つは分かっていたわけだが、それでも犯人はなぜ凄惨な殺人事件を引き起こすのか、読み解く部分は色々残っていた。

    そんな中突如、からくりが分かるのだが、分かった途端、頭はフラッシュバックの連続、パチパチと音を立てるような錯覚に襲われてしまった。

    このトリックは他ではなかなか味わえないので、読む価値はあるだろう。

    しかし、作品としての評価は、2つに分かれる。

    トリックが分かっても、登場人物や設定を読みつなぐことができれば高評価。そうでなければ、評価できない、そんな小説だ。

    残念ながら、私は後者だったが、ピエール・ルメートルはトリックになかなか凝った著者なので、三作目「傷だらけのカミーユ」に是非期待したい。

  • 傲岸不遜。醜悪。
    アレックスは未読且つ積読。
    しかし、この読了間もない気分で、その女アレックスに手が伸び悩む……。少し挟むか。

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著者プロフィール

橘 明美(たちばな・あけみ)
英語・フランス語翻訳家。お茶の水女子大学卒。訳書にスティーブン・ピンカ―『人はどこまで合理的か』(草思社)、デヴィッド・スタックラー&サンジェイ・バス『経済政策で人は死ぬか?』(草思社、共訳)、ジェイミー・A・デイヴィス『人体はこうしてつくられる』(紀伊國屋書店)ほか。

「2023年 『文庫 21世紀の啓蒙 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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