梶龍雄 驚愕ミステリ大発掘コレクション1 龍神池の小さな死体 (徳間文庫)

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (498ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198947330

作品紹介・あらすじ

“この物語に騙されるな!”
無数に仕掛けられた伏線が大逆転を呼ぶ!

「お前の弟は殺されたのだよ」死期迫る母の告白を
受け、疎開先で亡くなった弟の死の真相を追い大学
教授・仲城智一は千葉の寒村・山蔵を訪ねる。村一
番の旧家妙見家の裏、弟の亡くなった龍神池に赤い
槍で突かれた惨殺体が浮かぶ。龍神の呪いか? 座
敷牢に封じられた狂人の霊の仕業か? 
怒涛の伏線回収に酔い痴れる伝説のパーフェクトミ
ステリ降臨。

〈トクマの特選!〉
イラスト やまがみ彩

〈目次〉
第一章 飢えた群れ
第二章 龍の生贄
第三章 C=16調合法
第四章 殺意のとき
第五章 キ裂破局(クラック・カタストロフィー)

解説 三津田信三

感想・レビュー・書評

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  • モエタツ、一冊。

    母親が今際の際に遺した言葉に導かれ、沼で死んだ弟は事故死か他殺かの真相を探る昭和ミステリ。

    どストライクゾーン、入った。

    時代を感じ、誰かに常に見つめられているような不穏な空気を感じ、囚われのもどかしい時間を味わい尽くした。

    遅々とした時間からの急速な時間、この緩急の付け方も良いし、伏線の回収はまるで盛大にばら撒かれた節分豆を拾うかのよう。

    数々の覆しには脳内が燃え立つほど。

    そして見事な満足の読後感を用意してくれたカジタツさんに萌え立つ。

    口から思わず出る言葉は「今、このミステリが読めて幸せだよ」

  • ついに読めた〜!ずっと読みたかった龍神池の小さな死体。定期的にAmazonや古本屋で探してたけどいつも高額で買えなかった。復刊してくれてありがとうございます!

    なるほど、最高傑作と呼ばれるだけあっておもしろかった。無関係だと思われた事柄が、物語が進むに連れて、事件との繋がっていることが分かったり、ラストの兄弟の対決は迫力があって小説としても楽しめた。

    しかし、あらすじからして横溝正史的や京極夏彦のような民俗学的ミステリかと思いきや、龍神様の伝説はほとんど出てこないし、主人公も超論理的な大学の先生で、期待していたようなおどろおどろしい雰囲気などは皆無だった。推理小説なのだが、人間関係も割と重きを置かれているからか、2時間ドラマを見ているような感覚だった。

    勝手な話だが、そこが期待外れだった。評価が異常に高かった分、かなりハードルをあげてしまっていてのも事実。
    でも長年探し求めていた本作を、安価に入手でき新品の状態で読めて幸せです。

  • ひぇ〜ฅ(๑⊙д⊙๑)ฅ
    久々に鳥肌たった⁝(ᵒ̴̶̷᷄⌑ ᵒ̴̶̷᷅   )⁝
    すげぇな伏線回収だぁー( ੭ ˙ω˙ )੭

    あらすじ

    「お前の弟は殺されたんだよ!」と言い残し
    息を引き取ったお母さん……どえらい遺言や‍‍www
    それを聞いた主人公の智一くん
    気が気じゃあなくなり
    弟くん秀二の死の真相を調べる事に
    そしてある事件に巻き込まれ絶体絶命のピンチ
    果たして事件を解決し弟くんの死の真相にたどり着けるのか!?

    今回で2作目になるカジタツ本
    「清里高原殺人別荘」も凄いおもしろかったが!
    今作もすげぇ〜面白かった〜

    弟くんの死の真相を調べている最中に
    あれよあれよと殺人事件に遭遇
    罠に嵌められ殺人の容疑者に……(´・_・`)
    主人公智一くん!大ピンチ!脇が甘いぞ!(〃`・н・´〃)

    しかし!今作のヒロインである!
    ミニスカ探偵☆佐川美緒!参上♪♪
    大ピンチのポンコツ智一くんを助ける為に獅子奮迅の活躍……♡(⑉• •⑉)
    途中まで主人公美緒ちゃんでよくね〜?と本気で思いました。‍www

    しかーーし!今作の本筋はこの事件に在らず!!
    弟くんの死の真相こそが!本筋である!
    無数に散らばった伏線を怒涛の回収劇が始まり!
    その真相を知ってしまった瞬間!!
    鳥肌!!2回、いや!3回!ฅ(๑⊙д⊙๑)ฅ
    いや〜びっくりしたなぁ〜‍

    今回もとても面白かった〜カジタツ本
    隠れ名作と言われているが
    なぜ隠れなのか、分からない
    そのぐらい良かったです!


  • いや、これは凄い。傑作だ。 
    現在の事件のからくりに驚愕した後、過去とのつながりが明かされ、物語はさらなるカタストロフへ。戦時中の気配が残る寒村の雰囲気や、伏線回収、そして読者への挑戦状を思わせる一文まで飛び出し、これはもう徳間書店に感謝せざるをえない。


    ↓以下、トリックの記録含む感想
    まず、美緒が明かす赤髪連盟的真相。これがその後の智一の推理の土台になっていく。伏線は車を使うはずの花島先生が駅にいたこと、聞こえてきた電話での言葉など。ひき逃げの犯人が花島先生で、とすれば目撃者となっていてもおかしくはない都会風の男に脅されていたというのが巧い。

    そして、現在の事件での一番の驚きは、やはり死体の身元だ。だが、最初は花島先生の智一を騙すための言葉もあり、見抜く手がかりはやや少ないように感じた。が、あの二又の道、何者かの尾行、「電線しか通ってない」と電話の矛盾、吉爺さんに会う日だけ薬を飲ませなかったこと、などを考えればフェアと言えなくもない。

    そしてさらに驚くのが秀二は生きており、黒島先生と同一人物であるということだ。
    まず、マキ子の”秀二さん”という呼び名の伏線が巧い。マキ子が知るはずのない智一の母の病気を知っていたことなども補強となっている。
    そして犯人の黒島が、殺しても構わない(結局爺さんを一人殺しているのでむしろその方が楽)智一を殺さなかったこと、土地の者でないと知らない事実を知っていたことなどと組み合わせて秀二の現在の姿までも暴いている。

    そして、秀二の二度の入れ替わりの真相を知ることで、一気に秀二に対する印象は変わっていき、それは智一にまで及ぶ。これが壮大なカタストロフを生み出し、読後の余韻を生み出す。
    梶龍雄の今後の復刊も楽しみで仕方ない。

  • 「お前の弟は殺されたのだよ」
    死期迫る母の告白。疎開先で事故死したと聞いていた弟・秀二。大学教授である智一は真相を突き止めるため、秀二の疎開先だった山蔵という寒村を訪ねた。23年前の真実を突き止めようとする中、かつて弟が溺死したという龍神池に真っ赤な杭で突かれた死体が浮かんで──。

    名作と呼ばれながらも入手困難で、古書価格も高騰していた梶龍雄先生の復刊シリーズ。読み終わってみると、その評価通りの面白さ!弟は殺されたという導入から引き込まれ、迷い込んだのは閉鎖的な村社会。現在は滅んだ旧家・妙見家、その蔵に居たらしき謎の少年、龍神池にまつわる伝説、そして現在進行形で巻き起こる事件の数々。戦争前後の社会情勢を交えながら濃密に進んでいく。

    圧倒的な情報密度に隠された伏線の数々に、後半は「ああー!」「ええー?!」「そんなん考慮しとらんよ…」と声を上げるばかり。第二章までは情報量に比べて物語がゆったりで焦れるけれど、第三章からの怒涛の事件と推理劇から一気に心を鷲掴みにされた。ダムに貯められた水が亀裂から飛び出すかのような破壊的な真実の濁流。まさにこれは亀裂の物語なのだ。人間同士の、その心の亀裂。埋められない溝と欠落を覗き込む。その池に見えるのは龍神か、それとも生贄たちの死体か。

    ぼんやりした智一とキレがいい美緒の推理劇やかけ合いが面白い。トリック考察、アリバイ崩し、過去と現在の事件などなど、トラベルミステリ的な物まで取り入れられていてすごい。ここまで詰め込まれていたら何も言えねえってほど。ただ、解説の三津田信三先生が触れられていた瑕疵は言われてみると確かに!となって、そこだけは作品の亀裂となってしまっているのは残念。それでも充分すぎるほどの内容なので、復刊を機にぜひ手に取ってもらいたい作品。

  • ことに会話文がそうなのだけれど、文章が少し生硬な感じで、ちょっと読みにくい気がする。昔の国産ミステリは女性の描き方がめちゃくちゃなことが多いが、本作はそういうことはなく、探偵役を務める美緒嬢など魅力的。その代わりというのも変だが、主人公の感情の振り幅が大きすぎて、ついて行けないところがある。終盤、主人公はある人物に怒りを爆発させるのだけれど、それが唐突に過ぎる。確かに相手の人物は怒られても仕方のないことをしているのだが、それまで主人公がむしろ家族に対しても冷淡な人物として描写されてきただけに、無理矢理な感じは残る。ミステリとしては、意外な動機+大ネタで、そう来るかという感じ。

  • ● 感想
     1977年に「透明な季節」で乱歩賞を取っているが、著作が絶版で古書価格が高騰している梶龍雄の代表作の1つ。徳間の特選で復刊され、期待して読んだ。期待が高すぎたため、期待以上とまではいかなかったが満足できるデキではあった。
     メイントリックは、2つの人物入れ替えトリック。仲城秀二は妙見義典となり、妙見義典は「竜神池の小さな死体」となる。その後、23歳の頃に、大柏たえという人物の息子を殺害。別の人物=黒岩教授になりすます。
    AがBになりすまし、さらにCに成りすますという二重の人物入れ替えトリック
     秀次の死の真相解明のほかに、コンクリートブロックの亀裂の実験があり、そもそも、この実験結果改ざんのために、智一を山蔵にとどまらせるという「赤毛連盟」的トリックが加わる。
     この2つが有機的にかみ合う。すなわち、秀二の父は特攻の大熊弘三であるという「血」があり、秀二は母親を独占された智一に復讐をするために、同じ研究者として近づく。智一の研究を利用し、実益と復讐を行おうとする。
     さらには、伏線を仕込みつつ、黒岩のアリバイ工作が披露される。バーでの偽黒岩のアリバイは、この作品全体の人物入れ替えとも関係する。龍神池での物理的なアリバイ工作はご愛敬だろう。
     美緒による推理では、黒岩が犯人であることまでは辿り着くが、黒岩=秀二にまでは辿り着かず。
     智一による、大熊弘三殺し、秀二殺しと、三沢ダム決壊まで暗示したラストにつながる。
     印象としては詰め込み過ぎである。目新しい、斬新なトリックはないが、既存のトリックの組み合わせと、巧みな伏線がウリだろう。「やられた」とか、「えー」という印象まではないが、「うまい」、「なるほど」と感じさせる伏線は多数。玄人の評価が高い作品、売れないけど古書価格が高騰する作品っぽい印象である。
     期待が高すぎたから、期待以上ではなかったが、がっかりするようなレベルではない。文体も読みやすく、驚愕はできなかったが、感心できた秀作。★4としたい。● 「赤毛連盟」的構造
     仲城智一は、ダム建設のためのコンクリート関係で重要な実験を行っている。その実験結果を改ざんするために、仲城智一の弟でもある黒岩教授は、自分の弟は死んだと思っており、その死の真相を調べるために山蔵という土地に向かった仲城智一を足止めしようとする。
     コンクリートには、仲城智一の予測どおり、亀裂が入っていたが、そのコンクリートはすり替えられていた。
    ● 人物入れ替えトリック1
     戦時中、疎開していた際に、仲城智一の弟、仲城秀二は、妙見義典と入れ替わる。妙見義典は「竜神池の小さな死体」となり、秀二は、妙見義典として育てられる。
    ● 人物入れ替えトリック2
     妙見義典として生きていた秀二は、大柏たえという人物の息子を自分として殺害し、村を出る。その後、仲城智一に復讐するため、同じ研究をし、仲城智一を失脚させようとした。今回のコンクリート実験は、自分の手柄という実益と仲城失脚という復習を兼ねた計画だった。
    ● 秀次の出生
     秀次の父は、特攻の大熊弘三。大熊は父として秀二を疎開先に尋ねるなどしていた。
    ● 黒岩教授のアリバイトリック
     バーで自分の名を騙り、つけで飲んでいた人物を脅し、アリバイ工作に使った。この男については伏線がある。

    ● 時系列
    s43/9/2
     仲城智一、黒岩に授業を代わってもらい、弟、秀二の死の真相の捜査を始める。
    S43/9/3
     智一、麻川マキ子、青田京子、本庄明と会う。同日、麻川マキ子は黒岩教授の依頼を受け、夜、智一と食事をし、探りを入れる。
     山蔵でひき逃げ事件。犯人は花島医師
    S43/9/4
     智一、秀二の疎開先で教師をしていた工藤という老人に会う。
    S43/9/5
     智一、山蔵に行く。駅で、黒岩の依頼を受けていた花島医師に出会い、花島医師宅に泊まることになる。
     苗場鏡子から話を聴く。鏡子の案内で龍神池を見る。
     吉爺と呼ばれる井葉吉助だと誤解して、大柏辰平に会う。
    S43/9/6
     栗田巡査の話を聴く。
     秀二が疎開していた頃、疎開先と別の旅館の女将だった小谷直子の話を聴く。
     郷土の研究家の苗場浩吉に話を聴く。
     智一の荷物が、花島医師に荒らされる。
    S43/9/7
     智一が黒岩に襲われ、頭を打つ。
    S43/9/8
     智一の療養開始
     仲城の大学で学生運動が行われる。
    S43/9/9
     智一の療養2日目
    S43/9/10
     智一の療養3日目
    S43/9/11
     智一の療養4日目。佐川美緒が山蔵に来る。
     学生大会開催、封鎖解除の決議
    S43/9/12
     レントゲン結果報告。智一、翌日に帰ることになる。
    S43/9/13
     黒岩による伊葉吉助殺害。智一、容疑者となる。
    s43/9/14
     智一の取調べ。容疑者となった智一は、山蔵を出れない。
     花島医師が、黒岩に殺害される。
    S43/9/15
     新聞の切り抜きから、花島医師の家にあるはずのない新聞が見つかったことから、智一以外の者が犯人だという疑いが強くなる。
     智一、美緒、山蔵を離れる。このとき、智一は、秀二の父親が特攻の大熊弘三ではないかという疑惑を持つ。
     智一は、大学時代の友人で、警視正である高峰雄一に大熊弘三の行方の調査を依頼
     智一、研究室で、コンクリートのすり替えがあったことに気付く。
     智一、大熊弘三に会い、弘三が秀二の父であることを聞く。智一、弘三を殺害
    S43/9/16
     美緒による推理。美緒は、花島医師が、薬を飲まなくてよいといったことを聞き、推理小説でいえば、ここで犯人を推理するデータはぜんぶ出つくしたというところよ、と発言
     智一と、美緒が、黒岩の名を騙ってバーを利用している男を発見。黒岩のアリバイを崩す。
     美緒は、智一が、吉爺である伊葉吉助と大柏辰平を取り違えていることを知る。これがアリバイトリックに使われていた。仕掛けを利用し、発見を早めさせ、アリバイ工作をした時間が犯行時間と予測されるようにした。
     智一は、美緒の話を聴き、自分の推理を構築して麻川マキ子のところに。マキ子と秀二が知り合いであること、秀二が生きていること、秀二が黒岩医師であることをマキ子に伝え、マキ子のところにいた黒岩医師と対峙
     智一は、秀二を殺害
     智一はコンクリートの実験の結果を計測する。亀裂は入っていた。
     智一のところに美緒、高峰雄一が来る。智一は、黒岩教授と大熊弘三殺害について、高峰に話すという。そこに、三沢ダムのクラックについての電話がある。

  • 古本市場で高騰していた「幻の傑作」の「待望復刊」だそうだが、私自身は積極的に待っていた口ではない。クローズド・サークルの文脈から「清里高原殺人別荘」の書名を知り、それの作者として記憶していたのだ。とはいえ「ほう、『カジタツ』の復刻か」程度の感慨は持ってチェックしたものである。

    そのような、「何十年と妄想をたくましくしてきた組」と「まったくの偶然で手にした初見組」の中間のような立場からの感想としては、やや肩すかし。あるいは作者は狙っていたのかもしれないが、とにかく、ありとあらゆる予見や期待を裏切ってくるのだ。
    *冒頭いきなり死に際の母が「おまえの弟は殺されたのだよ…」→コールドケース、キター!!!
    *光の速さで噂が広がる山間の村、とにかく口の重い地元民たち→因習の村、キター!!
    *生贄伝説を持つとか言われる龍神池→民俗学ネタ、キター!!
    *杭だの糸だの→大型物理トリック、キター!!
    このへん、みーんな肩すかし。もちろんそれを上回る仕掛けは用意されているのだが、なんつーかラーメンの名店に行き、延々並んだあげくに美味い蕎麦を出されたみたいなコレジャナイ感は拭えない。
    肝心のネタ回りも、相当なところまでよくできている。前座1、2、3、どれも秀逸。中には本気で度肝を抜かれた傑作もあるんだが…これまた最後の最後で超特大、ほとんど「ウソだろ〜〜〜?」レベルのうっちゃりがかまされる。
    や、よくできてはいるんだよ、よくできては。しかしあまりにも斜め上を行きすぎて、ほとんどの読者はポカーンと置き去り。にもかかわらず、そのまま一気にラストまで突っ走ってしまうのだ。そしてまたこのラストが、超絶後味悪いと来ている。
    個人的には、それ自体は大好物(なんてったって麻耶雄嵩信者)。だがそんな悪趣味人に言わせれば、大ネタがあまりにも斜め上45度を成層圏までロケットで突き抜けてるせいで、ラストの後味の悪さをゆっくりじっくり味わい尽くせないのだ。
    けっして駄作ではない。どころか、隅々まで計算し尽くされている。しかしその計算そのものに、「なんでこんな式立てたかね…」感がつきまとう。

    蛇足まで。
    言うまでもなく、風俗描写は「論外」である。表舞台に立つ「社会人」は全員男。アラフォーにもなって自分ちのどこに何があるかも知らず、サル山内の保身にしか目が行かず社会に対する問題意識はゼロ、オタク的な専門分野への興味でなければミニスカと太腿のことしか考えてないクズが「ご立派なセンセー」で「知的な紳士」とされ、そんな奴よりよほど知的で、高潔で、果敢で、まっすぐな女性は「腰掛けのお茶汲み嫁候補」でしかない。己のどうしようもないクズっぷりを、そんな息子を望んで持ったわけでもない母親の「血」に責任転嫁する下衆発言には反吐が出た。
    しかし何より論外なのは、この言語道断な風俗描写に「隔世の感」がビタイチないことだろう。2022年の日本においても、この地獄は相変わらず「当たり前」であり続けている。

    2022/5/16読了

  • この医者めちゃくちゃ怪しいな…というあからさまなところには気付いても、この人とあの人が繋がっていたことは予測できなかったので大分驚いた。その上、結局二人は相入れないまま終わり、肝心の母の想いもはっきり解き明かされなかったので、随分と無情な話と思わずにいられなかった。トリックは割とシンプルだからこそ動機の複雑さが際立って、なんとも言えない読後感だった。

  • すごい!復刊に感謝です。

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著者プロフィール

1928年岐阜県生まれ。慶應義塾大学文学部英文科卒業。出版社勤務を経て文筆活動に。52年探偵小説専門誌『宝石』に短篇「白い路」が掲載され、ミステリ界へデビュー。77年『透明な季節』で第23回江戸川乱歩賞を受賞。『海を見ないで陸を見よう』、『リア王 密室に死す』など旧制高校を舞台とした清冽な作品で注目され、『龍神池の小さな死体』『清里高原殺人別荘』『葉山宝石館の惨劇』等、巧緻な作品で、本格ミステリファンの記憶に残る傑作を多数発表。90年逝去。

「2023年 『梶龍雄 青春迷路ミステリコレクション2 若きウェルテルの怪死 〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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