梶龍雄 驚愕ミステリ大発掘コレクション1 龍神池の小さな死体 (徳間文庫)
- 徳間書店 (2022年4月13日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (498ページ)
- / ISBN・EAN: 9784198947330
作品紹介・あらすじ
“この物語に騙されるな!”
無数に仕掛けられた伏線が大逆転を呼ぶ!
「お前の弟は殺されたのだよ」死期迫る母の告白を
受け、疎開先で亡くなった弟の死の真相を追い大学
教授・仲城智一は千葉の寒村・山蔵を訪ねる。村一
番の旧家妙見家の裏、弟の亡くなった龍神池に赤い
槍で突かれた惨殺体が浮かぶ。龍神の呪いか? 座
敷牢に封じられた狂人の霊の仕業か?
怒涛の伏線回収に酔い痴れる伝説のパーフェクトミ
ステリ降臨。
〈トクマの特選!〉
イラスト やまがみ彩
〈目次〉
第一章 飢えた群れ
第二章 龍の生贄
第三章 C=16調合法
第四章 殺意のとき
第五章 キ裂破局(クラック・カタストロフィー)
解説 三津田信三
感想・レビュー・書評
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モエタツ、一冊。
母親が今際の際に遺した言葉に導かれ、沼で死んだ弟は事故死か他殺かの真相を探る昭和ミステリ。
どストライクゾーン、入った。
時代を感じ、誰かに常に見つめられているような不穏な空気を感じ、囚われのもどかしい時間を味わい尽くした。
遅々とした時間からの急速な時間、この緩急の付け方も良いし、伏線の回収はまるで盛大にばら撒かれた節分豆を拾うかのよう。
数々の覆しには脳内が燃え立つほど。
そして見事な満足の読後感を用意してくれたカジタツさんに萌え立つ。
口から思わず出る言葉は「今、このミステリが読めて幸せだよ」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ひぇ〜ฅ(๑⊙д⊙๑)ฅ
久々に鳥肌たった⁝(ᵒ̴̶̷᷄⌑ ᵒ̴̶̷᷅ )⁝
すげぇな伏線回収だぁー( ੭ ˙ω˙ )੭
あらすじ
「お前の弟は殺されたんだよ!」と言い残し
息を引き取ったお母さん……どえらい遺言やwww
それを聞いた主人公の智一くん
気が気じゃあなくなり
弟くん秀二の死の真相を調べる事に
そしてある事件に巻き込まれ絶体絶命のピンチ
果たして事件を解決し弟くんの死の真相にたどり着けるのか!?
今回で2作目になるカジタツ本
「清里高原殺人別荘」も凄いおもしろかったが!
今作もすげぇ〜面白かった〜
弟くんの死の真相を調べている最中に
あれよあれよと殺人事件に遭遇
罠に嵌められ殺人の容疑者に……(´・_・`)
主人公智一くん!大ピンチ!脇が甘いぞ!(〃`・н・´〃)
しかし!今作のヒロインである!
ミニスカ探偵☆佐川美緒!参上♪♪
大ピンチのポンコツ智一くんを助ける為に獅子奮迅の活躍……♡(⑉• •⑉)
途中まで主人公美緒ちゃんでよくね〜?と本気で思いました。www
しかーーし!今作の本筋はこの事件に在らず!!
弟くんの死の真相こそが!本筋である!
無数に散らばった伏線を怒涛の回収劇が始まり!
その真相を知ってしまった瞬間!!
鳥肌!!2回、いや!3回!ฅ(๑⊙д⊙๑)ฅ
いや〜びっくりしたなぁ〜
今回もとても面白かった〜カジタツ本
隠れ名作と言われているが
なぜ隠れなのか、分からない
そのぐらい良かったです!
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「お前の弟は殺されたのだよ」
死期迫る母の告白。疎開先で事故死したと聞いていた弟・秀二。大学教授である智一は真相を突き止めるため、秀二の疎開先だった山蔵という寒村を訪ねた。23年前の真実を突き止めようとする中、かつて弟が溺死したという龍神池に真っ赤な杭で突かれた死体が浮かんで──。
名作と呼ばれながらも入手困難で、古書価格も高騰していた梶龍雄先生の復刊シリーズ。読み終わってみると、その評価通りの面白さ!弟は殺されたという導入から引き込まれ、迷い込んだのは閉鎖的な村社会。現在は滅んだ旧家・妙見家、その蔵に居たらしき謎の少年、龍神池にまつわる伝説、そして現在進行形で巻き起こる事件の数々。戦争前後の社会情勢を交えながら濃密に進んでいく。
圧倒的な情報密度に隠された伏線の数々に、後半は「ああー!」「ええー?!」「そんなん考慮しとらんよ…」と声を上げるばかり。第二章までは情報量に比べて物語がゆったりで焦れるけれど、第三章からの怒涛の事件と推理劇から一気に心を鷲掴みにされた。ダムに貯められた水が亀裂から飛び出すかのような破壊的な真実の濁流。まさにこれは亀裂の物語なのだ。人間同士の、その心の亀裂。埋められない溝と欠落を覗き込む。その池に見えるのは龍神か、それとも生贄たちの死体か。
ぼんやりした智一とキレがいい美緒の推理劇やかけ合いが面白い。トリック考察、アリバイ崩し、過去と現在の事件などなど、トラベルミステリ的な物まで取り入れられていてすごい。ここまで詰め込まれていたら何も言えねえってほど。ただ、解説の三津田信三先生が触れられていた瑕疵は言われてみると確かに!となって、そこだけは作品の亀裂となってしまっているのは残念。それでも充分すぎるほどの内容なので、復刊を機にぜひ手に取ってもらいたい作品。 -
ことに会話文がそうなのだけれど、文章が少し生硬な感じで、ちょっと読みにくい気がする。昔の国産ミステリは女性の描き方がめちゃくちゃなことが多いが、本作はそういうことはなく、探偵役を務める美緒嬢など魅力的。その代わりというのも変だが、主人公の感情の振り幅が大きすぎて、ついて行けないところがある。終盤、主人公はある人物に怒りを爆発させるのだけれど、それが唐突に過ぎる。確かに相手の人物は怒られても仕方のないことをしているのだが、それまで主人公がむしろ家族に対しても冷淡な人物として描写されてきただけに、無理矢理な感じは残る。ミステリとしては、意外な動機+大ネタで、そう来るかという感じ。
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古本市場で高騰していた「幻の傑作」の「待望復刊」だそうだが、私自身は積極的に待っていた口ではない。クローズド・サークルの文脈から「清里高原殺人別荘」の書名を知り、それの作者として記憶していたのだ。とはいえ「ほう、『カジタツ』の復刻か」程度の感慨は持ってチェックしたものである。
そのような、「何十年と妄想をたくましくしてきた組」と「まったくの偶然で手にした初見組」の中間のような立場からの感想としては、やや肩すかし。あるいは作者は狙っていたのかもしれないが、とにかく、ありとあらゆる予見や期待を裏切ってくるのだ。
*冒頭いきなり死に際の母が「おまえの弟は殺されたのだよ…」→コールドケース、キター!!!
*光の速さで噂が広がる山間の村、とにかく口の重い地元民たち→因習の村、キター!!
*生贄伝説を持つとか言われる龍神池→民俗学ネタ、キター!!
*杭だの糸だの→大型物理トリック、キター!!
このへん、みーんな肩すかし。もちろんそれを上回る仕掛けは用意されているのだが、なんつーかラーメンの名店に行き、延々並んだあげくに美味い蕎麦を出されたみたいなコレジャナイ感は拭えない。
肝心のネタ回りも、相当なところまでよくできている。前座1、2、3、どれも秀逸。中には本気で度肝を抜かれた傑作もあるんだが…これまた最後の最後で超特大、ほとんど「ウソだろ〜〜〜?」レベルのうっちゃりがかまされる。
や、よくできてはいるんだよ、よくできては。しかしあまりにも斜め上を行きすぎて、ほとんどの読者はポカーンと置き去り。にもかかわらず、そのまま一気にラストまで突っ走ってしまうのだ。そしてまたこのラストが、超絶後味悪いと来ている。
個人的には、それ自体は大好物(なんてったって麻耶雄嵩信者)。だがそんな悪趣味人に言わせれば、大ネタがあまりにも斜め上45度を成層圏までロケットで突き抜けてるせいで、ラストの後味の悪さをゆっくりじっくり味わい尽くせないのだ。
けっして駄作ではない。どころか、隅々まで計算し尽くされている。しかしその計算そのものに、「なんでこんな式立てたかね…」感がつきまとう。
蛇足まで。
言うまでもなく、風俗描写は「論外」である。表舞台に立つ「社会人」は全員男。アラフォーにもなって自分ちのどこに何があるかも知らず、サル山内の保身にしか目が行かず社会に対する問題意識はゼロ、オタク的な専門分野への興味でなければミニスカと太腿のことしか考えてないクズが「ご立派なセンセー」で「知的な紳士」とされ、そんな奴よりよほど知的で、高潔で、果敢で、まっすぐな女性は「腰掛けのお茶汲み嫁候補」でしかない。己のどうしようもないクズっぷりを、そんな息子を望んで持ったわけでもない母親の「血」に責任転嫁する下衆発言には反吐が出た。
しかし何より論外なのは、この言語道断な風俗描写に「隔世の感」がビタイチないことだろう。2022年の日本においても、この地獄は相変わらず「当たり前」であり続けている。
2022/5/16読了 -
この医者めちゃくちゃ怪しいな…というあからさまなところには気付いても、この人とあの人が繋がっていたことは予測できなかったので大分驚いた。その上、結局二人は相入れないまま終わり、肝心の母の想いもはっきり解き明かされなかったので、随分と無情な話と思わずにいられなかった。トリックは割とシンプルだからこそ動機の複雑さが際立って、なんとも言えない読後感だった。
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すごい!復刊に感謝です。