【文庫】 本能寺の変 431年目の真実 (文芸社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (345ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784286143828

感想・レビュー・書評

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  • 歴史上の出来事が後の為政者によって捻じ曲げられ、為政者にとって都合のいいストーリーに寄せられるのはよくあることだ。
    著者である明智さんの一族は、明治までは明田(あけた)姓を名乗っていたという。
    直系が絶えたのち他の名字に改姓して生き延び、明治以降にもとの名字に復した長宗部一族の例もある。
    ありのままの名字を名乗れないほどに、厳しい状況の中を生き抜いてきたということだろう。

    丹念に歴史資料をあたり、それぞれの文献をつき合わせ、解析し、ひとつの結論に至るまでの過程はとても興味深かった。
    例としてあげられているそれぞれの資料が、普段は目にすることがないものだけに余計に関心を引いたのだと思う。

    本能寺の変と呼ばれる出来事があった。
    信長の命に背いた明智光秀は進路を変え、本能寺に向い織田信長の命を奪った。
    その後、光秀はのちの豊臣秀吉によって滅ぼされる。
    史実として明らかになっているのはこういったものだ。

    そのときの信長や光秀の気持ちは、結局のところ本人の手による書状や周辺の人たちが書き残したものから推察するしかない。
    明智さんは一般的に「逆賊」と言われている明智光秀の一族である。
    資料の整合性が一部崩れている点も含み、身内による擁護と思われてしまうような一面も感じられた。
    だが、これも歴史解釈のひとつの説だと思えばとても読みごたえのある物語だった。

  •  本能寺の変は、現在定説とされてりいる理由ではない、と明智光秀の子孫が言いましたと言う内容。
     ぶっちゃけると忠臣蔵の赤穂浪士の子孫が、先祖の討ち入りしたのは、あんな物語に書かれてる内容じゃねーぞっていうことを、言った本的な。

     本能寺の変は、日本最大のクーデターと呼ばれるだけあり、後世の為政者(秀吉、家康)によって改ざんされているであろうということは予測出来る。
     そして、ドラマティックな物語でもあるから、軍記物になったり、さまざまな物語として描かれている。俗説であるそれらを踏まえ、私は「無理難題を押しつけてくる織田信長に切れた明智光秀が起こした謀反」だと捉えていた。

     が、本書ではそうではないと説明されている。
     生き生きと織田信長や明智光秀が陰謀を張り巡らせ、戦国の世を生き抜いた姿が浮かび上がる。

     最大の問題はココで。
     ぶっちゃけ文章が上手くない。物語として読ませるには固い。
     そして過去の俗説からの反証も、読ませるものにはなってない。もっと図式やフローチャートや表を使って!って叫びたくなる。
     あと、物語によってゆがめられた本能寺の変を、この書き手は(意図的ではないにしろ)物語という形で説明しているととに違和感は無いのだろうか、と少し思った。

     書いてある内容について真贋は分からず。
     興味深く、納得出来るのだが、恐らく事実とは異なるだろう。それは、子孫が書いているからではなくて、事実なんてものは当事者の数だけあるだろうと思うから。観測者(書き手)が見る視点でしか無いと思う。
     面白いけど、読み辛いのであまり人には薦めないかな。

  • 世間的には、目ウロコ本という評価かもしれないが、こんな感じの結論だろうという想像からは超えてはいない。特に目新しく感じる視点はなかったように感じる。

    ただ、「唐入り」が謀反の背景の大きな視点を占めると言うのは面白く感じたが、かなり強引な気もする。

    結局、過去の歴史。どうとでも解釈できる。でも、それだから面白いのだが。

  • 面白い。
    話としては面白いと思う。
    過去の研究者よりも史料を深く調べているんだろうと思う。
    過去の研究者を否定する所は説得力があると思う。
    431年前の出来事で本人に確認できないから仕方がないが、"初めて謀反という言葉が浮かんだに違いない"とか推測を断定的に書かれると本当にそうか?と思ってしまい、その後も同じ様なノイズが重なり、その度にあくまでも個人的見解ですとツッコミを入れたくなってしまった。
    面白いけどしっくりこないのは、歴史裁判所へこの歴史捜査結果を持ち込んでも、有罪には持ち込めないだろうと感じるからだろう。

  • 信頼性の高くない資料で打ち立てられてしまった定説を覆し、より信頼性の高い資料を踏まえて合理的に推論可能な範囲で歴史の真実を見定めようとしている著者の態度は支持するが、語られている内容に必ずしも同意できるものばかりではなかった。

    以下、あまり納得がいかない点。
    ・何故信長が1582年の時点で、家康を暗殺しようとしなければならないのか。武田が滅んだとはいえ、いまだ毛利、北条、上杉、長宗我部といった敵が存在しており、徳川をわざわざ敵に仕立てる必要性が低すぎる。

    ・光秀の土岐氏に対するこだわりが理解できないし、ましてや土岐氏を迫害したわけではない信長への謀反のために、土岐氏が理由になること自体がよく理解できない。

    ・家康が本能寺後に織田領の甲斐、信濃に攻め入っているのは確かに怪しいので、光秀との間に何某かの蜜謀があったのは事実かもしれない。でも、それにしては光秀支援のための動きが遅すぎる気がする。

    ・光秀の計画の全体像が見えない。信長を殺し、それでどうしたいのか。織田家を乗っ取りたいのか、それとも分裂させてまた群雄割拠の状態にしたいのか。前者なら、徳川と組むだけではなく、長宗我部、毛利、上杉ともうちょっと連携して、秀吉、勝家、一益等との争いに備えるべきなのに、そういったことに関して言及されていない(実際ないのだろうし)。後者だと、著者がほめている割に、光秀はあまりにも無計画な気がする。

  • 入院中に病院のロビーで見つけて読む。
    本能寺の変は信長が家康を打とうとした謀略を光秀が家康に内通して逆手にとったものという推論。
    内容は賛否あるだろうが、信長が国内統一後に中国への出兵を企てていたことが遠因というのが面白い。
    ちなみに『日本人と中国人』で秀吉の朝鮮出兵が当時から理由不明とされていたと書かれていたことがとても記憶に残っていたが、この本でそれは信長の生前の計画であったことが判って合点。
    たまたま病院で見つけた本の中で直前に読んだ本の疑問の答えを見つけるという偶然の方がびっくり。入院してよかった??

  • 20190812読了
    信長はなぜあれほど無防備に殺されたのか?なぜ光秀はあれほど見事に隙をつくことができたのか?なぜ秀吉はあんなにすぐ駆けつけられたのか?一つの仮説かもしれないが、当たり前と思っていたけど不思議なことがつながって一つのストーリーになっていてとても面白かった。信憑性があるように思う。

  • 信長、秀吉の政権で起きた三つの事件、光秀謀叛利休切腹、秀次切腹は唐入りで繋がっていたのだ。歴史は時の執政者によって都合の良い形に書き換えらる。

  • 明智光秀が織田信長を討った本能寺の変。

    信長の厳しい仕打ちに耐え兼ねて
    光秀は四国攻めへの移動中に、“敵は本能寺にあり”と急遽行き先を変えた。
    京都にいた家康は、命からがら三河に帰り着いた。
    豊臣秀吉は急遽毛利との和睦を結び、すぐさま兵を返して光秀を討ち、信長の仇をとった。

    これらの定説とされている事柄が、果たして真実なのだろうか?
    明智光秀の末裔が新たに見つかった史料をもとに、本能寺の変の真実に迫る!

    信長の思惑
    光秀の思惑
    家康の思惑
    秀吉の思惑
    それぞれの思惑が絡み合う事によって本能寺の変が起き、秀吉の元に天下が転がり込んだ。
    「こっちの方が真実に近いのかも…」

    いつかはここに書かれていることが“定説”になるのかもしれない。

  • 「本能寺の変」の首謀者は家康だったとして、かなり注目されました。

    序盤はワクワクしました! まずは、明智光秀が本能寺の変を前に詠んだ句を解読していきます。

    「時は今あめが下しる五月かな」

    解釈としては「土岐氏である自分が天下を治めるべき季節の5月になった」と信長への謀反の意が込められたとされているんですね。

    だが、著者は『惟任退治記』によるまやかしだとします。『惟任退治記』は本能寺の変の4ヶ月後、羽柴秀吉が大村由己に書かせた、本能寺の変の事件報告書。

    この句はただの季節を詠んだだけだと複数の資料から明らかにしていきます。

    ちょっと後半はご都合主義が強い気がしたのですが、実際の歴史資料からたどっていく作業は、エキサイティングです。

著者プロフィール

1947年生まれ。明智残党狩りの手を逃れた光秀の子・於寉丸の子孫。慶應義塾大学大学院修了後、大手電機メーカーに入社。長年の情報畑の経験を活かした「歴史捜査」を展開し、精力的に執筆・講演活動を続ける。

「2019年 『明智家の末裔たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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