夜の鳥

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (177ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309203812

作品紹介・あらすじ

パパは泣いていた。「ぼくは自分の生徒たちが怖いんだ」それからパパは、しばらく先生の仕事を休むことになった。そしてときどき、夜中にふらりと、いなくなってしまう。木靴をはき、ウインドヤッケを着て。近所に行くときの木靴。遠くへ行くときのウインドヤッケ。近くと遠く。いったいどこをさがしたらいいんだろう。そんなときはいつも、あの鳥が、ヨアキムの夜をおおった。ノルウェー文学賞、ドイツ・ユーゲンバッハ賞などに輝く北欧文学の傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 「8歳のヨアキムは、パパとママの3人家族。都会のアパートで生活しています。パパとママは学生時代に知り合い、ヨアキムが生まれることになったので、一緒に暮らしはじめました。パパは家族を養うため教師になりましたが、しだいに心が不安的になり出金できなくなっています。ママは幼稚園の先生になる希望もかなわないまま、生活を支えるために働いています。
     両親の不仲に気付いたヨアキムは、夜ごと、自分の部屋のクローゼットの中で、「夜の鳥」が騒ぎ出す音を聞いてしまい、眠れなくなります。「夜の鳥」が消える日はいつになるのか・・。子どもの心理を繊細に描いた物語。」

    作者は、ヨアキムのまわりの子どもたちが抱えているさまざまな問題を描くことで、ヨアキムが抱えている難題を特別扱いせず、その中の一つだと示している。

    ヨアキムの両親は弱い。パパはパパの役割を務める前に、自分自身を取り戻さなくてはならない。


    ・・これ、ハッピーエンドにはならないのか?評判いいけれどもめちゃくちゃ暗そう、どうなんだろう。
    続編あり

  • これは、衝撃的だった❢これまでに奴隷船に乗せられた少年の話や白人から理不尽な扱いを受ける先住民の話を読んで、非常に重い内容ではあるけれど、何処かで「お話」という感覚があった。

    これもお話なんだけど…何処にでもあるテーマ、すぐ近くで起こりそうな内容なので、読んでいて辛くなった。それに表現力が半端ない

  • 40年前にノルウェーで出版され世界的に翻訳されている児童文学。親子3人暮らし。父親は教師として職を得ているも、教室にどうしても入れないので仕事をしてない。そういう人間だからしっかりしてる訳はなく、家出もする。子供8歳、不安。昨日、街でお父さんが歩いてるの見たよ、なんて言われる。どよーん。

    いい家庭だと思う。父も素直に自分の気持ちを息子に話し、母も、あなたは知らなくていいの、黙ってなさいなどと言わない。それが余計に不安に重なり、クローゼットに隠れる黒い鳥が、夜羽ばたくという妄想につながる。頑張れヨアキム。

  • なかなか重いです、終わり方。そこで終わるか〜と溜め息ついてしまった。続編あり。そちらも重いです。表紙は酒井駒子さんだったんですね。

  • きれいな物語
    皆優しい・・

  • ヨアキムの毎日は心安まらない。階段のシミには呪いがあり、地下室には殺人鬼がおり、洋服だんすには鳥が… そしてパパは仕事に行けなくなってしまう。
    酒井駒子の表紙絵に惹かれて手に取った本ですが、読むにつれて胸の奥をギュッと掴まれるようなヒリヒリした感覚に襲われました。父親は就業三日にして生徒の前に立つことができなくなり教職を辞してしまう。母親は望まぬ仕事に疲れてしまう。そんな両親のやり取りに心を痛め、隙あらば相手を攻撃しようとする友達関係に緊張を強いられる。今まで絶対だと思われていたものが崩れ、価値観がひっくり返る。小学二年生にしてヨアキムの世界はなかなかシビアです。それを象徴するのが夜になると洋服だんすから現れる(とヨアキムが認識している)鳥なのです。
    寝る前にベッドの下を何度も確認し、廊下の明かりが入ってくるように少しだけドアを開け、鳥を閉じ込めておけるように洋服だんすに鍵をかける。そんな少し神経質にも思えるヨアキムですが、少年らしい冒険心や恋心や利己心も垣間見え、それが物語を重いだけのものにしていません。読後心の中にヨアキムがスッと佇んでいます。

  • ノルウェーの児童文学。
    ヨアキムの父は中学教師を3日で挫折。心を病んでしまう。そんな父を、母はなんとか支えるが、母は自分の夢も諦めきれずにいる。
    ヨアキムの世界は不穏に満ちている。近隣の大人は魔女であり、そこらじゅうに呪いの罠が仕掛けてある。さらには地下には殺人犯が潜んでいるのだ。
    毎日を必死にやりすごすヨアキムだったが、「本当のこと」に気づき、自分の頭と心で考えだすうちに、世界は少しずつ色彩を変えていく。

    ヨアキムの世界が穏やかでありますように。鳥はもう暴れだしませんようにと祈る心地で読み終えた。
    大人の都合に振り回される子どもという図とは違う、子どもの世界の大きさを知ったような気がする。かつて自分にもあった世界ではあるのだけれど、ずいぶん多くのことを忘れてしまったようだ。

  • ノルウェー児童文学。
    子供が子供でいられなくなるときは、意外と早く来る。
    すごく良いのが父と子の関係性。父は情けない。そして対等なのだ。子供のヨアヒムを一人の自立した大人のように扱う。
    この作品は子供を除け者にはしない。その意味では垣根がない。実際、子供のころでも親を見るときは随分と下に見ることも多いものだ。子供なりの解釈は、けっこう正しい。大人は本当に情けない。ヨアヒムのようにじっくり見ればわかるし、父は弱さを隠すこともできない。けっこうそういうものだなあと思う。
    不安の形に、夜の鳥がいる。子供の視点にマジックリアリズムはよく溶け込み合う。マイブリットの神秘性も、きっとヨアヒムの脳内で処理しきれない存在だから、この視点からは謎が多い。好意、というものがどのようなものかわからない年齢にとって、それを表現することはできないし、できることはハンカチをあげる、ということだけ。読む側からはわかるけれど、語る視点では理由も気持ちも語ることができなく、それがどうにも可愛らしい。
    しかし、わかりやすいエンドを用意せず、成長や物語の落とし所が描き切れていない。終わりでもいいけれど。続編があるらしいので、そちらで補完でしょうか?

    あと木靴履いてるっていいな。1975年に木靴履いてんのか。たまんねえな。

    待つことは嫌だ、のヨアヒム。待つことというよりは、待たされているという被害者。真に待つことの楽しさを知るのは、ずっと先なのだろう。

  • 数日前に読了。以前から気になっていたものの、手に取らずにいたもの。
    訳文のもってまわった感が気になって、あまり入り込めないまま終わってしまった。とくに会話文が、あまりにも型にはめ込んだ翻訳調すぎると思う。そのせいかどうか、訳者が評価しているらしい「詩情」も、鼻につくキザさにしか思えなかった。訳者あとがきに書かれているような原書のよさが本当だとしても、訳に活かされていないのじゃないかしら。
    酒井駒子さんの、不安げな緊張感のある表紙がすてき。

  • 「飛ぶ教室」2013.秋号で岩瀬成子さんがオススメされてた本。
    ちょっと、かなり、ヒリヒリするお話だった。

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