千のプラトー 上 ---資本主義と分裂症 (河出文庫)

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309463421

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  • 田舎の純朴な少年がドゥルーズ=ガタリなんて知るはずもなく、いざ大学に入ってみればそれを当然に読んで議論できる秀才たちはごろごろいて、到底埋まりそうにない格の違いにキャッチアップも早々に諦めて平穏無事に終わった学生生活も今は昔、それを今になって読むというのも感慨深い。

    さて、そのドゥルーズ=ガタリの「千のプラトー」、副題の「資本主義と分裂症」は前作「アンチ・オイディプス」から引き継いでいるものの、その思想は分裂症分析から大きく離れてあらゆる方向へと広がっていく。広がり蛇行しながらぎりぎりの表現を試みつつより壮大な資本主義分析、資本主義批判が展開される。
    それは、変化の哲学であり、より具体的には強度・速度の哲学であり、つまりは微分の哲学。中心を持たないリゾームをはじめとして、システムそのもののダイナミズムこそが思想の核心となる。その過程はコード化ー脱コード化ー超コード化、及び領土化ー脱領土化ー再領土化というプロセス、その背後に存在するメカニズムこそが器官なき身体という欲望の体系。

    とにかく特異で強烈な文章ではあるけれど、根っこのとこはマルクスからの系譜を受け継いで、その後の思想の通過点になってるんだってことがよくわかる。
    資本主義のダイナミズムという視点はまさにマルクスが抱えていた問題意識の直接の承継。超コード化や再領土化に至るプロセスは形式的には止揚を思い起こさせるが、これもマルクスがヘーゲル左派の影響を受けていたことを考えれば納得感がある。
    そして、80年代のニューアカの論者たちが依拠した理論的支柱の一つがドゥルーズ=ガタリだったし、21世紀において超コード化や再領土化の概念はグローバル資本主義と繋がりネグリ=ハートの<帝国>論として結実する。
    資本主義批判の文脈からも現代思想の文脈からもドゥルーズ=ガタリを避けて通ることはできないのは間違いない。

    と整理してみたものの、まあ、書いてあることの9割がたはわけわからなくて、たぶん一生理解できなさそうなのだが、わからないなりにすごい本だってことだけはわかる。そしてなにより文体の密度や緊張感、どこに連れて行かれるかわからないスリル、そんなものを楽しむだけでも読む価値のある本だと思う。

著者プロフィール

(Gilles Deleuze)
1925年生まれ。哲学者。主な著書に、『経験論と主体性:ヒュームにおける人間的自然についての試論』『ベルクソニズム』『ニーチェと哲学』『カントの批判哲学』『スピノザと表現の問題』『意味の論理学』『差異と反復』『ザッヘル゠マゾッホ紹介:冷淡なものと残酷なもの』『フーコー』『襞:ライプニッツとバロック』『フランシス・ベーコン:感覚の論理学』『シネマ1・2』『批評と臨床』など。フェリックス・ガタリとの共著に、『アンチ・オイディプス』『カフカ:マイナー文学のために』『千のプラトー』『哲学とは何か』など。1995年死去。

「2021年 『プルーストとシーニュ〈新訳〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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